2.チート?
ご愁傷さまと書いてあるって事は…俺は死んだのか?
にしては姿もそのままだし…
自分の姿を見える範囲で確認する。
痛いところなどはなくむしろ少し体が軽く感じた。
賢人は気を取り直してパソコンを開く、なんか送付したメールがあると書いてあったのでそちらも確認してみる事にした。
二通目には自分の生い立ちから穴に落ちるまでの事が書面になっていた…あまりに長くて途中飛ばしたがとりあえずわかったのは自分は死んだという事。
死因が時空の歪みに落ちたらしく、これはメールを寄越したヤツらの所為でそのまま亡くなるのは申し訳ないと配慮して、他の世界に転移となったらしい。
謝罪文と共に慰謝料代わりのパソコンとショルダーバッグを送ると書いてある。
三通目にはパソコンの使用方法が書いてあった。
それによるとパソコンとショルダーバッグは元のいた世界と繋がっているらしく元の世界でパソコンを通じて買ったものなど手に入るらしい。
それは少し助かると思い早速起動する。
とりあえず腹が減ったので試しに何か食べ物を頼んで見る。
軽くパンと牛乳を頼んでみた。
「ピロン」とまたパソコンが鳴るがパンなんて出てこない。
「嘘だろ、騙された!」
パソコンを開けばお届け完了のメールが来ている。
まさか家に届いたとか…
それならこんなのなんの意味もない。
諦めてパソコンをしまおうとショルダーバッグを開くと中にさっき頼んだあんぱんと牛乳が入っていた。
「え?どうなってるんだ…」
ショルダーバッグを覗き込むと底が見えない…明らかに奥行きがおかしい。
でも手を伸ばせば取り出したいものに手が届く。
このショルダーバッグも向こうと繋がっているのかも…それならここに入れば帰れるんじゃ!
グイッと体をショルダーバッグに入れようとするが口が小さくて中へ入るのは難しそうだ。
まぁ入ったところで帰れる保証もないし…
「さよなら」
そう言って笑って同僚と消えた彼女の顔が浮かんできた。
力が抜けて地面に座り込む。
そうだ、帰ったところで自分の居場所なんてない。
会社に思い入れもないし…
そう思うとここで頑張ってみるかと力が湧いてきた。
賢人はあんぱんを掴んでガブッとかぶりついた。ごくごくと一気に牛乳を飲んで流し込む。
食べ終わるとそのままゴロンと寝転ぶとやけに空が青く感じた。
しばらく空を眺めてから立ち上がり今後の事を考える。
「まずは住む場所だな、この世界にもさすがに人はいるよな…」
とりあえず当たりをつけて歩き出すことにした。
「はぁはぁ……」
しかしいくら歩いても人にも会わなければ町や村らしきものにも出くわさない。
それに道路も道もない、ただひたすら森や草原を歩いている。
川を見かけたので顔を洗ったが飲むのは怖かったので水を買って飲んだ。
何時間歩いたかわからないがもう足がパンパンで歩けない。
賢人は「無理!」とその場に倒れた。
「もしかして人って自分しかいないの!?」
叫ぶが誰も返事などしてくれない、これでは前と同じじゃないか…
「もうやだ!歩けない」
賢人はパソコンを取り出した。
「こうなったら家でも買ってここに建ててやる!なんでも買えるんだから家も大丈夫だろ」
しかし家は土地とセットか土地があって初めて建ててくれる…
それにネットでポンと買えるものなんて無かった。
「クソっ!」
ならばと見ているとコンテナハウスに目が止まる。
「これなら!」
賢人は迷わずポチッとボタンを押した。
しかし出てきたのは…『残高不足です』の文字…
「残高?」
賢人はもう一度パソコンの説明書を開くが何も書いてない…そう思っていると「ピロン」またメールが届いた。
『何かを購入するのにはお金がかかります。まぁ当たり前ですが…そのお金は生前山田様が持っていた金額になります。残高は購入画面の本人画面から見ることが出来ます。そちらの世界で貯めたお金も使用する事は可能です。その際はショルダーバッグにお金を入れて下さい。』
「はぁ!?」
賢人は急いで残高を確認する。するとそこには49800円と書かれていた。
「5万円あったはずだったが…あっ!あんぱんと牛乳を買った分が引かれてるのか…」
あとこれしかない…そりゃ家も買えないか
ガックリしているとまたメールが届いた。
『ちなみにそのショルダーバッグから取り出せる大きさの物しか送れませんのであしからず。』
賢人は思わずパソコンを叩きつけそうになる。
「人の命奪ったんだからもっとチートな設定にしとけよ!」
しかし文句を言う相手の顔も見えないと言ってても虚しいだけだった。
賢人はとりあえずコンパクトになるテントと寝袋を購入する。
押してみたら買えたのできっと届くだろう。
ショルダーバッグを見ると確かに届いていた。
テントを取り出し試行錯誤しながらどうにか組み立てる。
その日は疲れたので寝袋にくるまり寝る事にした。
「俺は一体どうなるんだ…」
寝袋の中でショルダーバッグをに抱きつき賢人は疲れからすぐに眠りに落ちてしまった。