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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒い犬のぬいぐるみ

作者: ピニタリヤ

僕の家のぬいぐるみはよく喋る。

黒い犬のぬいぐるみで名前はクロってタグに書いてあった。

このぬいぐるみを買ってから暫くして、急に喋るようになった。

しかも、俺の前でだけで、とても偉そうに喋る。


「クロのクローン〜」

いろいろ喋るが、何かあるたび、決まってこの言葉を付け加えてきた。

正直言って、なんかムカつく。

普通に会話する分には構わないが、それでもどこか腹が立つ。


「お前もぬいぐるみなら、もう少し可愛げってもんを出したらどうなんだよ」

「もともと可愛いから、そんなもの出す必要ないックロ」

「お前な〜、そんな事言ってると、いつか捨てられても知らねぇぞ?」

「クロのクローン〜♪イェイ♪」

何を話しても、結局はこうなる。

だから、軽く頭を叩いたりするわけだが、それを親に見られた時は恥ずかしさのあまり、悶絶しそうになった。


けれど、時間を共に過ごすうちに、この関係をよく思い出す。

今思えば、この関係も悪くはなかった。

日々成長していくなかで、段々このクロといる時間を大切にしていることに気づき始めていた。


けれど、別れは唐突なもので、一人暮らしを始め暫くした時、クロは一言も喋らなくなった。

拗ねて喋らなくなっただけだと思った。

でも、いつまで経っても喋ってはくれなかった。


仕事から帰っても、いるのは喋らなくなったぬいぐるみ。

「犬なんだから、吠えたりしてみろよ....」

涙が出てきた。


孤独を和らげる存在がどれだけ、自分自身にとって救いになっていたか。

俺は、身に染みて感じてしまった。


仕事が大変でも、帰ればクロと話し合える。話せるからこそ、1人じゃないって思えたし、頑張れた。例えクロが寝ていても、いびきがうるさかったから、苦笑いしつつも隣で寝ていた。


誰かがいる、寄り添える。そんな暖かさと、その逆の寂しさ。両方を知って




僕はまた、成長した。



ありがとう、僕の心のクローン。

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