106 唯、駆けつける。
テント返却のため、ギルド出張所へと向かった私。
カエデの町にあるギルドの出張所ということで、こじんまりとした感じの建物になってる。
依頼の受諾とか、アイテムの換金はできるので、冒険するぶんには困らない。
「すみませーん、ありがとうございました。」
受付には「御用のときは呼んでください」と張り紙がされてたので、カウンターの奥…のれんの先へ向かって呼びかけてみた。
たぶん昨日のお姉さんが出てきてくれると思う。
テント借りるとき…「今日は夜勤なんです」って言ってみえたし。
「はーい。あ、テントですね。そこの棚に置いていってください。」
「はい。」
やっぱり昨夜のお姉さんだった。
テントをゴトっと棚に戻し、動かないようにベルトで固定する。
―――よし…と。
「あの、お姉さん。」
「はい、何でしょうか?」
「お魚がとれなくなってるって聞いたんですけど、何かご存知だったりしますか?」
もしかしたら問題解決の依頼とかが出てるかもしれない。
それにちょっとでも情報があった方がありがたいし。
「それが、ギルドの調査でもよくわかっていないんですよね。漁師さんたち困ってみえますし、何とかしたいのはやまやまなんですが…。」
「そうですか…。」
「もし詳しいことがお知りになりたいようでしたら、砂浜を東に進んだところに桟橋がありますので、その辺りで話を聞かれると良いと思います。漁業関係者の皆さんがいらっしゃるはずですから。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「いえ。」
手がかりないかなと思って掲示板もチェックしてみたけど、ピンとくるような情報はなかった。
もっとも…私がピンとくるかどうか問題はあるんだけど…。
―――フリルちゃんに相談だね。
そのままギルド出張所を後にして、キャンプ場へと戻った私。
今後の予定、考えないと。
■
朝日が差し込むキャンプ場。
ベンチに座り、プラちゃんをよしよししてるガーネット姫。
フリルさまはというと、うらやましそうな表情で見守ってる。
―――かわいい…。
表現の正しさはさておいて、フリルさまの飼い主は私のはず。
というわけで。
「フリルちゃん!」
『ぴよよ!』―――ユイちゃん、おかえりー!
「ユイ、ありがとうございました。」
「ううん。」
『ぴよ』―――ユイちゃん、ユイちゃん!
バサバサと飛び回って、私の右肩に着地したフリルさま。
いつもは頭上にドスンって着陸するんだけど、今日はすっごくソフトランディングだった。
『ぴよよ』―――ユイちゃん、だっこ!
まさかの甘えん坊さんモードに突入したフリルさま。
びっくりして反応が遅れたけど、優しくだっこしてあげることにした。
「よしよしー。」
『ぴよー』
「ふふふっ、フリルさまも甘えん坊さんですね。」
『ぴよ』―――えへへ。
フリルさまは氷の力をもってるので、抱えてるとひんやりしてとっても気持ちいい。
フリルさまの甘えたい欲求と、私の涼しさ欲求が見事にマッチング。
しばらくはこんな感じの冒険になりそう。
「ガーちゃん、浜辺を…どっちだっけ…えっと、どっちかに進むと、桟橋があるんだって。そこでお魚いなくなっちゃった事件の話、いろいろと教えてもらえるかもって、ギルドのお姉さんが。」
「桟橋なら…おそらく東の方ですね。ギルドの地図に載ってましたし。」
「そこ、行ってみよっか。」
「はい。」
というわけで、行き先決定。
原因も何もわかんないけど、このまま放っておくわけにもいかない。
最後に消火の確認をして、キャンプ場を後にした。
『ぷや!』
「おとと…どうしたんですか?」
『ぷやや!』
ガーネット姫に抱っこされてるプラちゃんが、急にもぞもぞし始めたみたい。
なにかを伝えたがってる様子だけど、言葉の壁にさえぎられてる私たち。
―――でも…何か起きてるってことだよね。
フリルさまならともかくとして、普段あれだけおとなしいプラちゃんが騒いでるとなると…絶対なにかある。
そしてなにか起きてる場合、頼れる最強の探知役がここにいる。
「フリルちゃん、周囲でなんか変わったことない?」
フリルさまの探知はすごい。
一応私にもできるらしいんだけど…探知とか、そういう細かいの無理なんです…。
丸投げばっかりでごめんなさい…。
『ぴよ…』―――うーん…あ、なんか海の方が騒がしいよ。
「海…?」
フリルさまのセンサーにひっかかったということは、きっとモンスターの類だと思う。
普通にしてるときには探知しなかったみたいだし、おそらくそんなに強敵っていうわけじゃなさそう。
悲鳴とか戦闘音みたいなのは聞こえないから、町に被害が出てるわけでもなさそう。
―――お魚いなくなっちゃった問題と関係してる…?
だとすると早く行った方が良さそう。
原因を見つけることができれば、対処の方法も考えられる。
…考えるのは、フリルさまに基本お任せだけど。
コホン…とりあえず海の方へ。




