表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/156

105 唯、夏の理由を知る。

「ぷはーっ。」


 …飲んだわけじゃないからね、顔を洗っただけだからね。

 実は泳げない私にとって、顔を洗うことはちょっぴり冒険(ぼうけん)だったりする。


―――呼吸のタイミングが…どうもわからないんだよね…。


 昔、友だちに相談したら大爆笑されたんだけど、私にとっては至って真剣(しんけん)な悩み。

 鼻で呼吸すると入ってきちゃいそうだし、口を開けるのも難しいし…目はもちろん怖くて開けれないし…。

 それはさておき。


「良い匂いがする!」


 お魚が焼けた香ばしい匂い、お味噌(みそ)の優しい香り…食欲をそそる梅干しの…。

 我慢できずにテトテトと()けだした私。

 ごはん、ごはん。


『ぷや!』

「おいしいですか?」

『ぷやや!』

「そうですか!よかった…。」


 すっかりプラちゃんにメロメロなガーネット姫。

 あーんしてあげてるし、これジャイアントさんがみたら嫉妬(しっと)するんじゃ…。


「ガーちゃん、ありがとね。」

「いえ。今日は大根のお味噌汁です。お魚の骨、ある程度はとっていますが…食べるとき気をつけてくださいね。」

「はーい。いただきまーす!」


 ごはん作ってもらって、お魚の骨までとってもらって…立場が完全にプラちゃんと一緒な私。

 もうこのままあーんもしてもらおうかな…。

 なんて冗談(じょうだん)はさておいて、お味噌汁を一口。


「おいしい!()みるわぁー。」

「ふふふっ、ユイ…ふふふっ。」

「?」


 よくわかんないけど、とっても楽しい朝ごはんです。


『ぴよ!』―――おいしいー!

『ぷややー!』





「よいしょっと…。ユイ、寝袋は私が持っていても大丈夫ですか?」

「えーっと…うん、大丈夫。」


 私が持ってると、間違いなく無くしちゃうし。


「はい。」


 テントの片づけをしてくれてるガーネット姫、お皿とキッチンの片づけをしてる私。

 だいたい魔法でなんとかなっちゃうこの世界、汚れだって魔法でひょい。


―――なんて便利…。


 ますますズボラ加速中な私。

 またまた思考を読まれたみたいで、フリルさまからジト目な視線がとんできた…。

 それを口笛で受け流して、ちょっと気になってたことを聞いてみた。


「ねぇねぇ、フリルちゃん?」

『ぴよ』―――なぁに?

『ぴよよ!?』―――ボ、ボクのお魚ならあげないよ!?


 大慌てで必死にお魚を3匹くわえたフリルさま。

 食欲大暴走の私だけど、さすがにフリルさまの分まで取っちゃおうとは思ってない。


「そ…そうじゃなくてね。あのさ、ハナミズキ・タウンが暑いのって、やっぱりフリルちゃんのお友だちが関係してるの?」

『ぴよ?』―――どゆこと?


 小首を傾げたフリルさま。

 雪たくさんなタケノコの村、春らしい陽気につつまれてた王都…そして熱気あふれる真夏のハナミズキ・タウン。

 四季がころころ変わりまくるこの世界、とっても不思議だけど…理由の一端(いったん)はこの前教えてもらった。


「フリルちゃんの力が、冬の力だから…タケノコの町の周りには雪が降ってるんだよね?」

『ぴよ』―――うん。そだよ。


 たしか正確にはフリルさまのもとになった魔法柱、それが冬の力をもってて…えーっと…。

 なんかそんな感じで、雪が降ってたはず。


「ハナミズキ・タウン、とっても暑くて夏みたいな感じだし、もしかしたら夏の力を持ってる 鶯遷(おうせん)の三鳥 が関係してるのかなー、なんて思ったりして。」

『ぴよよ』―――ユイちゃんにしては鋭いね!

「ですね。私、そんなこと考えもしませんでした。」


 テントの部品を片手に、コクコクと(うなづ)いてるガーネット姫。

 ()められてる…んだよね?


「…。」

『ぴよぴよ』―――でも、ボクたちは関係ないよ。それに夏の力は…。えっとね、ハナミズキ・タウンが暑いのは、もともとなんだ。

「そうなんだ。って…もともと?」

『ぴよ』―――うん。ガーネットちゃん、知ってる?

「いえ…私、存じません。」


 首を振ったガーネット姫。

 王国の歴史にはかなり詳しいガーネット姫。

 お姫さまだからと言われればそうなんだけど、そのガーネット姫ですら知らないとなると…。


―――大昔の話なのかな?


 珍しくさえてる私。

 自分で言うのもなんだけど…。


『ぴよよ』―――そっか、じゃあ説明するね。この前さ、魔法柱とか大賢者さまとかのお話したじゃん?

「うん。」


 ユイのちゃちゃっと解説シリーズ第一弾。


 昔むかしこの世界に「魔法柱」というものがあって、とてつもない力を()めてた。

 それを昔の人たちが活用して、文明の基礎を築いた。

 でも、魔法柱はすごすぎるから、悪用されないように幾重(いくえ)にも守りをしいたんだけど…その防御システムが暴走しちゃった。

 そこで大賢者さまは、暴走を繰り返さないために…魔法柱の力を鳥の姿に変えた。

 それがフリルさまたち、鶯遷の三鳥…なのです。


『ぴよよ』―――まだ魔法柱があった頃はね、この王国があるあたりはずーっと夏だったの。

「ずっと暑かったってこと?」

『ぴよ』―――うん。本当かどうかは知らないけど、大賢者さまはそう言ってたよ。

常夏(とこなつ)の土地だったんだね。」

「初めて聞きました。そんな歴史が。」


 ちょっと語()力あるところを見せたつもりなんだけど、見事にスルーされた私。


 コホン…もとの世界でも、ずーっと夏日な国とかあった。

 この世界も、昔はそんな感じだったみたい。


『ぴよよ』―――だから、ボクたち三鳥の力が及んでいる場所は…季節が変わってるんだけど、ここは昔のまんまってことだね。

「ふぇー。じゃあ、ハナミズキ・タウンにはフリルちゃんたちの力、届いてないんだ。」

『ぴよ』―――そだね。だから、カエデの町からこっちへの街道、強いモンスターがたくさんいたんだよ。

「なるほどね。じゃあ、プラちゃん、よくここまで無事だったよね。」


 モンスターの世界は弱肉強食。

 強いモンスターが跋扈(ばっこ)しているフィールドでは、プライアントはその辺の小石みたく吹っ飛ばされちゃう。

 一番近い出現エリアからも結構距離があるし…。


「ですね。プラちゃん、怖くなかったですか?」

『ぷやや?』

「そうですか。」

「…ガーちゃん、なんて言ってるかわかるの?」

「いえ、まったく。」


 すがすがしいほどの一言。

 なんならちょっとどや顔なガーネット姫。


「フリルちゃん、翻訳(ほんやく)してよー。」

『ぴよよ』―――ボクもわかんない。

「あらら…。」


 言語の壁、ここに出現。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ