表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/156

104 唯、粉砕する。

 りんごの欠片(かけら)がひとつ。

 プライアントが寄ってきて、おちょぼ口でもって器用にパクパク。


『ぷよ!』

「みてみて!食べてる!」


 気に入ったみたいで、片っ端からどんどんと食べ進めてる。

 あ、ちなみにりんご(くだ)いちゃったのは私ね。

 ちょっと握力ミスりまして、粉々になっちゃった…。


「かわいいですね…。(いや)されますぅ…。」

『ぴよよ…』―――ボクのアイドルの座が…危ないぴよ…。


 たしかにフリルさまと違って、急な毒舌(どくぜつ)とかないもんね。うん。


―――でも…一応モンスターだしな…。


 エサをあげて良いのかどうか問題。

 町のなかに入ってきてるわけだし、冒険者的には捕まえなきゃいけないんだけど…。


「ユイ…この子、連れていけないでしょうか?」

「へ?」

「いえ…その…プライアントちゃんは温厚(おんこう)な性格のはずですし、カバンのなかなら良いかなと…。ダメ…ですかね?」

「私は大丈夫だけど…。」


 フリルさまの方をちらりと見る。

 モンスターだし、フリルさま目線でいくと…敵になるわけだし…。


『ぴよ?』―――ボクも大丈夫だよ。賢者(けんじゃ)さまもプライアントを魔法で従えてたし。


 なんともなかったみたい。


「ほ、本当ですか!?」

『ぴよよ』―――でも、契約魔法(けいやくまほう)を使えないと難しいかも…ガーネットちゃんにはまだ使えないし…。

「そうですか…。」

『ぷよよ…』


 シュンとしちゃったガーネット姫。

 フリルさま曰く、契約魔法で従えない限り、長い距離の移動は無理なんだそう。

 モンスターにはそれぞれ出現地域みたいなのが決まってて、そこを越えての移動には限界があるみたい。


―――やっぱりフリルちゃんは特別なのかな?


 そこらじゅうびゅんびゅん飛びまくって、瞬間移動までできちゃうフリルさま。

 さすがは「鶯遷(おうせん)の三鳥」、格が違うってやつかな…。


―――ん…?そもそもモンスターじゃないからか。


 自問自答した私。

 ところで肝心(かんじん)の契約魔法、90レベルにならないと使えないらしい。

 ふたりぶんのレベルを足しても足りない。

 まだまだ道は遠そう。

 私ならなんとかなるかもだけど、ガーネット姫が使えないと意味がないし。


「フリルちゃん、なんとかならない?」

『ぴよ…』―――うーん…無理かも…。

「良いんです、ユイ。もっと強くなってから、また来ますから。」

「ガーちゃん…。」

「今までは冒険者になりたい…それだけでしたけど、今からは目標ができました。プラちゃん。絶対迎えに来ますから、待っててくれますか?」


 くるりと振り返って、はにかんだガーネット姫。

 視線の先にはプライアント。


『ぷよ…ぷや!』

「良いこです!まずはごはんを食べましょう!…あ、まだ作ってませんでした…。ちょっと待っててくださいね。」

『ぷやー!』


 そのまま仮設キッチンへと向かったガーネット姫。

 プライアント改めプラちゃんは、ぽんぽんと飛び跳ねまわってる。

 応援してくれてるのかな。


「フリルちゃん。いつもありがとね!」

『ぴよ…?』―――きゅ、きゅうにどうしたの?


 突然のことで、きょとんとしてるフリルさま。

 いつもみたいにもふもふしてあげたいけど、ちょっぴり真面目モードな私。


「えへへ…なんでもない!」

『ぴよ』―――もしかして…また何かつまみ食いしたの…?

「ち、違うよ。」

『ぴよよ』―――冗談だよ。ユイちゃん、これからもよろしくね!

「うん!」


 ちょっとだけ「(きずな)」が深まった…満天の星の下。





 あれからしばらくして、ギルド出張所でシャワーを借りた。

 おなかいっぱい、お風呂も入った…お着がえも終了…となればあとは。


―――寝よう。


 キャンプにて寝袋に(すべ)り込んだ私たち。

 ちなみにガーネット姫とプラちゃん、すぐに寝ちゃった。

 疲れてたのかな。

 すやすや気持ちよさそうな寝息だけが聞こえてくる。


「海鮮焼きそば、おいしかったね。」


 ちょっと眠れなくて、フリルさまに話しかけた私。


『ぴよよ』―――うん。ユイちゃんも教えてもらったら?

「そうだね…って、フリルちゃん、それどういう意味?」


 もふもふを捕まえて、もふもふする私。

 別に怒ってるとかそういうわけじゃないよ。

 いつもの光景。


『ぴーよ』―――なんでもなーい。

「もふもふしちゃお。」

『ぴよよ』―――もうしてるじゃん…。

「えへへ。」


 そして気づいたら朝になってる。

 これもいつもの光景。


 翌朝、トントンという軽快な音に目を覚ました私。

 キャンプの入口を開けると、ガーネット姫が仮設キッチンで何か作ってた。

 もぞもぞと寝袋から脱出して、魔法収納(まほうしゅうのう)からお気に入りの(くつ)を取り出す。


―――よいしょっと…。


 トントンつま先タップ。

 こちらも軽快なリズムで準備完了。


「おはよ、ガーちゃんぅぅぅふわぁぁぁぁん…。」


 くるりと振り返ってくれたガーネット姫。

 右手には包丁、左手には人参を持ってる。

 そして前髪(まえがみ)がぴょんって跳ねてる…かわいい。


「おはようございます。眠れましたか?」

「うん。ぐっすり。あれ…フリルちゃんとプラちゃんは?」

「キャンプの横で遊んでますよ。」

「横…?あ、本当だ。」


 追いかけっこなのかな、プラちゃんがフリルさまを追いかけてる。

 フリルさまは飛べるけど、あえて飛んでないんだと思う。

 地面をテトテト歩き回って逃げてる。


『ぴよよ』―――こっちこっちー!

『ぷやー!』

『ぴよ』―――のぎゃーっ…(つか)まったー。

「ふふっ。」


 あまりのかわいさに、思わず笑いがこぼれちゃった。


『ぴよ』―――ユイちゃんだー。おはよー!

『ぷや!』

「おはよ!フリルちゃん、プラちゃん。」


 すっかり仲良くなってるおふたりさん。

 ちなみにプラちゃんだけど、フリルさまの羽とガーネット姫のペンダントを持ってる。

 フリルさまの羽があれば、他のモンスターに倒されちゃう心配がなくなる。

 ガーネット姫の紋章が入ったペンダント…これがあれば、冒険者に捕まっちゃうこともない。


―――たぶん…現状世界最強のモンスターだよね…プラちゃん。


 最弱と呼ばれることもあるプライアント、今は誰も勝てない存在になってる。


「朝ごはん、できましたよー!」

「はーい!フリルちゃん、プラちゃん、先行ってて。私、ちょっとお手洗いに。」

『ぴよよ』―――はーい!

『ぷやや!』


 いつもよりにぎやかになった朝。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ