104 唯、粉砕する。
りんごの欠片がひとつ。
プライアントが寄ってきて、おちょぼ口でもって器用にパクパク。
『ぷよ!』
「みてみて!食べてる!」
気に入ったみたいで、片っ端からどんどんと食べ進めてる。
あ、ちなみにりんご砕いちゃったのは私ね。
ちょっと握力ミスりまして、粉々になっちゃった…。
「かわいいですね…。癒されますぅ…。」
『ぴよよ…』―――ボクのアイドルの座が…危ないぴよ…。
たしかにフリルさまと違って、急な毒舌とかないもんね。うん。
―――でも…一応モンスターだしな…。
エサをあげて良いのかどうか問題。
町のなかに入ってきてるわけだし、冒険者的には捕まえなきゃいけないんだけど…。
「ユイ…この子、連れていけないでしょうか?」
「へ?」
「いえ…その…プライアントちゃんは温厚な性格のはずですし、カバンのなかなら良いかなと…。ダメ…ですかね?」
「私は大丈夫だけど…。」
フリルさまの方をちらりと見る。
モンスターだし、フリルさま目線でいくと…敵になるわけだし…。
『ぴよ?』―――ボクも大丈夫だよ。賢者さまもプライアントを魔法で従えてたし。
なんともなかったみたい。
「ほ、本当ですか!?」
『ぴよよ』―――でも、契約魔法を使えないと難しいかも…ガーネットちゃんにはまだ使えないし…。
「そうですか…。」
『ぷよよ…』
シュンとしちゃったガーネット姫。
フリルさま曰く、契約魔法で従えない限り、長い距離の移動は無理なんだそう。
モンスターにはそれぞれ出現地域みたいなのが決まってて、そこを越えての移動には限界があるみたい。
―――やっぱりフリルちゃんは特別なのかな?
そこらじゅうびゅんびゅん飛びまくって、瞬間移動までできちゃうフリルさま。
さすがは「鶯遷の三鳥」、格が違うってやつかな…。
―――ん…?そもそもモンスターじゃないからか。
自問自答した私。
ところで肝心の契約魔法、90レベルにならないと使えないらしい。
ふたりぶんのレベルを足しても足りない。
まだまだ道は遠そう。
私ならなんとかなるかもだけど、ガーネット姫が使えないと意味がないし。
「フリルちゃん、なんとかならない?」
『ぴよ…』―――うーん…無理かも…。
「良いんです、ユイ。もっと強くなってから、また来ますから。」
「ガーちゃん…。」
「今までは冒険者になりたい…それだけでしたけど、今からは目標ができました。プラちゃん。絶対迎えに来ますから、待っててくれますか?」
くるりと振り返って、はにかんだガーネット姫。
視線の先にはプライアント。
『ぷよ…ぷや!』
「良いこです!まずはごはんを食べましょう!…あ、まだ作ってませんでした…。ちょっと待っててくださいね。」
『ぷやー!』
そのまま仮設キッチンへと向かったガーネット姫。
プライアント改めプラちゃんは、ぽんぽんと飛び跳ねまわってる。
応援してくれてるのかな。
「フリルちゃん。いつもありがとね!」
『ぴよ…?』―――きゅ、きゅうにどうしたの?
突然のことで、きょとんとしてるフリルさま。
いつもみたいにもふもふしてあげたいけど、ちょっぴり真面目モードな私。
「えへへ…なんでもない!」
『ぴよ』―――もしかして…また何かつまみ食いしたの…?
「ち、違うよ。」
『ぴよよ』―――冗談だよ。ユイちゃん、これからもよろしくね!
「うん!」
ちょっとだけ「絆」が深まった…満天の星の下。
■
あれからしばらくして、ギルド出張所でシャワーを借りた。
おなかいっぱい、お風呂も入った…お着がえも終了…となればあとは。
―――寝よう。
キャンプにて寝袋に滑り込んだ私たち。
ちなみにガーネット姫とプラちゃん、すぐに寝ちゃった。
疲れてたのかな。
すやすや気持ちよさそうな寝息だけが聞こえてくる。
「海鮮焼きそば、おいしかったね。」
ちょっと眠れなくて、フリルさまに話しかけた私。
『ぴよよ』―――うん。ユイちゃんも教えてもらったら?
「そうだね…って、フリルちゃん、それどういう意味?」
もふもふを捕まえて、もふもふする私。
別に怒ってるとかそういうわけじゃないよ。
いつもの光景。
『ぴーよ』―――なんでもなーい。
「もふもふしちゃお。」
『ぴよよ』―――もうしてるじゃん…。
「えへへ。」
そして気づいたら朝になってる。
これもいつもの光景。
翌朝、トントンという軽快な音に目を覚ました私。
キャンプの入口を開けると、ガーネット姫が仮設キッチンで何か作ってた。
もぞもぞと寝袋から脱出して、魔法収納からお気に入りの靴を取り出す。
―――よいしょっと…。
トントンつま先タップ。
こちらも軽快なリズムで準備完了。
「おはよ、ガーちゃんぅぅぅふわぁぁぁぁん…。」
くるりと振り返ってくれたガーネット姫。
右手には包丁、左手には人参を持ってる。
そして前髪がぴょんって跳ねてる…かわいい。
「おはようございます。眠れましたか?」
「うん。ぐっすり。あれ…フリルちゃんとプラちゃんは?」
「キャンプの横で遊んでますよ。」
「横…?あ、本当だ。」
追いかけっこなのかな、プラちゃんがフリルさまを追いかけてる。
フリルさまは飛べるけど、あえて飛んでないんだと思う。
地面をテトテト歩き回って逃げてる。
『ぴよよ』―――こっちこっちー!
『ぷやー!』
『ぴよ』―――のぎゃーっ…捕まったー。
「ふふっ。」
あまりのかわいさに、思わず笑いがこぼれちゃった。
『ぴよ』―――ユイちゃんだー。おはよー!
『ぷや!』
「おはよ!フリルちゃん、プラちゃん。」
すっかり仲良くなってるおふたりさん。
ちなみにプラちゃんだけど、フリルさまの羽とガーネット姫のペンダントを持ってる。
フリルさまの羽があれば、他のモンスターに倒されちゃう心配がなくなる。
ガーネット姫の紋章が入ったペンダント…これがあれば、冒険者に捕まっちゃうこともない。
―――たぶん…現状世界最強のモンスターだよね…プラちゃん。
最弱と呼ばれることもあるプライアント、今は誰も勝てない存在になってる。
「朝ごはん、できましたよー!」
「はーい!フリルちゃん、プラちゃん、先行ってて。私、ちょっとお手洗いに。」
『ぴよよ』―――はーい!
『ぷやや!』
いつもよりにぎやかになった朝。




