俺の友達が言うには。
※主人公の友達視点。
春木さんはいつもと違って一人で教室に入ってきて目を真っ赤にしながら怒った顔をしているもんだから、何かあったと察するのはあまりに容易なことだった。…陸とまた喧嘩でもしたんだろうな。はぁ、面倒な奴らだな。
しばらく後に陸も教室に入ってきた。足取りは重くげんなりとした雰囲気が遠目でもわかる。わかりやすい奴らだな。
俺は自然な笑みを作って、陸と接触を試みる。
「よお。」
「…ん。」
もう関わってくるなオーラが半端ない。ただ、無視して引き下がるわけにもいかない。こんな辛気臭い空気を放置するのは居心地が悪くてかなわん。
「…お前、春木さんとなんかあったのか?」
「…なんで?」
「なんでって、そりゃお前の顔にそう書いてあるからさ。また喧嘩でもしたのか?」
「…はぁ。…まぁ、厳密には違う。…後でちょっといいか?」
「オーケー。」
怒ってるというよりは辛そうに訥々と話すのを聞いて、ああこれはいつもとちょっと違うな、と直感した。春木さんを見やると、こっちも意気消沈という感じで机に突っ伏して五月に心配されていた。…ホントめんどくさいやつらだな。
――
昼休みになって食堂で陸から今回のいきさつをすべて語ってもらった。
「…ということなんだ。」
…あほくさ!!!なんだそりゃ!!こいつも春木さんも拗らせすぎだろ!!両想いなのは傍から見てもバレバレってレベルなのに、どうしてこうなるかね?
「はぁー。ばからし。」
「馬鹿らしいってなんだよ!俺は真剣に考えて…
「すまんすまん、ちょっと声抑えてな?」
結構本気で怒った顔をしている。…そうなんだよなあ。本人からしたら至って真面目にしたことだから尚更たちが悪い。仮に俺がこいつにどんだけ春木さんは脈ありだ、といっても頑として信じようとしないだろう。…どうするもんかね?
どっちもあまりに素直に意思疎通ができてないから話がこんなに大きくなってしまったと思う。それは、そういう意思疎通の努力がなされていないからそうなるわけで、そう考えると事あるごとに喧嘩を仲裁してきた俺にも責任の一端はあるのかもしれない。…少し干渉が過ぎたかもな。
「まぁ、真剣に考えた結果なら、それでいいんじゃない?」
「…え?」
そんなびっくりした顔すんなよ。陸は俺に相談を持ち掛けてきた時点で無意識にまた春木さんと和解しようとしていたのかもしれない。だけどすまん、今回ばかりは俺は何もしない。これはお前ら二人の問題だからな。
「何事も試してみればいいさ。本当にどうしようもなくなったときはまた俺に相談してくれよな。」
「…ああ。分かった。ありがとな。」
さあ吉と出るか、凶と出るか―。




