俺はこれからどうすればいい?
気づいたら、目覚まし時計がけたたましくなっていた。いつのまにか朝になっていたらしい。
結局昨日はほとんど眠れなかった。かつてないほどに学校に行きたくなかった。
「陸、いつまで寝てるの!?起きなさい!!」
母がせわしくドアをノックしている。…そうだ。今日は俺以外にとってはなんでもないただの一日なのだ。
…それは桜にとってもか。…そうか。別に俺は実際にフラれたわけじゃない。勝手に片思いして失恋しただけだ。俺はいつも通りふるまえばいいのだ。
「母さん、今起きた。着替えて行く。」
とは言ったものの、俺は制服のままだった。帰ってからそのままずっと寝ていたので少ししわになってしまっている。
「…ふうー。」
伸びをして無理やり気持ちを入れ替えて幾分かマシな気分になったものの、やはり依然として一つの重大な問題が頭をもたげていた。
…俺は桜にどう関わればいいのだろうか。これから彼女を振り向かせる、という気力は正直なかった。何年も一緒にいて脈ナシなのに今更アプローチなんてあまりにつらい話だ。つらいといえばそもそも彼女と顔を合わすのも俺にはつらいことだ。
…いつか桜は誰かと付き合うのだろうか。その時、俺は再び失恋しなきゃならないんだろうか。…俺といたらむしろ迷惑なのではないだろうか。
色々な絶望が胸の中に去来して、俺はひどく寂しい結論に達した。
―桜とはもう幼馴染をやめよう。
しかし一度そう決めると、今までが嘘のように心が軽くなった気がした。
「っよし。」
勢いよくドアを開いて階段を下りる。俺は今日から生まれ変わるんだ。
「ちょっと、早くしなさいよ。桜ちゃんもう来てるよ。」
桜、という言葉にドキリとした。…そうだった。これがあった。これが俺が勘違いした原因なんだ。幼馴染特有のイベント。しかし俺はもう今日で終わらせる。もう失恋はしたくないから。