俺をなんとも思ってないらしい。
登場人物
空海 陸…主人公
春木 桜…ヒロイン
五月菫…ヒロインの友達
あいつ…主人公の友達
「桜は好きな人いないのー?」
委員会が早く終わって、教室に戻ろうとしたとき、ちょうどそんな会話が聞こえた。
「えぇ?いきなり何よ?」
照れたような声で答えているのは紛うことなく俺の幼馴染、桜だ。盗み聞きが悪いのは百も承知ながら、どうしても気になって俺は咄嗟に隠れてしまった。
「あぁ、でも桜はあれか。幼馴染の空海君と付き合ってるんだっけ?」
当然のような調子で桜に尋ねている。俺の名前が出てきて、いよいよ緊張してきた。
実際のところは俺たちは付き合ってるわけではない。俺が小さい頃からずっと片思いしているのが現状だ。
「え!?いや全然!?全く!!付き合ってないわよ!」
その通り。しかし、この流れはもしかして…。
「ええ!?あれで付き合ってないの?…そっかあ。…でも空海君のこと桜は好きなんだよね?」
やっぱり。俺がずっと気になっている核心があっさりと聞かれていた。
心臓の鼓動がとてもうるさい。握った拳の内が手汗で湿り始めたのをなんとなく意識しながら、俺は桜の言葉を今か今かと待ちわびていた。
「えぇー!!べ、別に好きじゃないわよ!ただの幼馴染!!」
「えーなんで?空海君かっこいいじゃん。」
「カッ、カッコいい!?…と、とにかく、そういうんじゃないんだから!」
「えーホント?」
「ほ、本当よ!あ、あんなヤツが彼氏とかありえないから!」
「とか言いつつー?」
「だからないって!!ゼロ!!可能性ゼロよ!!」
「えーひどーい。」
「はいはい。もういいでしょ。菫はどうなのよ?」
「ええー。あたしはね…」
俺の頭は真っ白になっていた。衝撃を受けた。
―桜は俺のことはなんとも思っていなかった。
その事実を飲み込むまで俺は結構な時間ぼんやりと立ち尽くしていた。気づくといつの間にか彼女らの話題も変わっていた。
事実を飲み込むとなぜか怒りが込み上げてきた。俺を好きになるかどうかなんて桜の自由なのに、怒っている自分にさらに腹が立った。
俺はもう何もしたくなくなって、とにかく一人になりたかった。荷物を持ち帰るのも忘れて俺は一直線に帰って、布団を被った。




