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悪役令嬢、94回目の転生はヒロインらしい。キャラギルドの派遣スタッフは転生がお仕事です!  作者: 柊 一葉


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デート

は?

なんですって?ナビゲーターが、正キャ員?


振り向くより先に、リオルドの腕が私の身体に巻き付いた。

こ、これは先日のバックハグの再来!心臓がまたドキンと大きく跳ねた。


「たまにポイントなんてどうでもよくなるときって、ありません?」


お腹に響く低い声。顔は見えないけれど、彼がまた不敵に笑っているのがわかる。


「マデリーンは、ポイントが溜まったらどこへ移籍するのでしょう?正キャ員になって、どうしますか?」


「どうって」


出番の少ないギルドに移籍して、正キャ員になってたまに意地悪する程度で後はゴロゴロする。それが私の願望なんだけれど……


「せっかく捕まえたのに、つれない人ですね」


「どういう意味?」


私の赤い髪をゆるゆると弄るリオルド。背中から伝わってくるぬくもりが、私の思考を停止させる。


「あなたに協力はしますが、私は正キャ員ですから自由にできます。この意味、わかります?」


「意味って……?」


耳に吐息がかかる。

何この人、本当に18禁ギルドの出身なのでは!?


永遠にも思える沈黙の後、リオルドは突然明るい声を出した。


「あなたの父親が出てくるまで約一時間、食べ歩きしましょう!」


抱き締めていた腕をパッと離すと、彼は私の右手を掴んで路地をずんずんと進んでいく。


「え?は?え???」


ついていけない私は、手を引かれるままに足を進める。足がもつれて転びそうになるも、ぐいっと引っ張り上げられて転ぶことも許されない。


「さぁ!この世界は食文化が豊かなんですよ~。マデリーンもきっと気に入ると思います」


振り返った顔は、ただのイケメンだった。

一体どっちが本当のリオルドなの?混乱した私は、ただ彼を見つめるだけで何も言えない。


「甘いもの、好きなんです。付き合ってくれますよね?」


「はぁ」


彼は勝手に店を選び、揚げたパンや串に刺さったフルーツなどを私に買ってくれる。王都では食べ歩きをしている庶民はわりといて、確かに食文化は充実しているみたいだった。


よくわからないまま、ハグハグとおやつを食べ進める私。

なんだかデートみたい。

そう思ったら、まともに彼の顔が見られなくなってしまう。


リオルドがこっちを見て微笑むたび、私は警戒してビクッと肩を揺らしたが、彼は普通に甘いものを頬張って楽しそうにしていた。


やはり本当に食べ歩きがしたかっただけなの?わからない。

私には、悪役令嬢のことしかわからない。


「何にも知らないのね、私って」


そういえば、これまでポイントを稼ぐことに必死で、ストーリーを楽しもうとか食べ歩きしようとか思ったこともなかった。何度も何度も失恋したけれど、人の心の機微には疎いし、現実には恋なんてしたこともない。


ぼんやりしていると、リオルドが私を見下ろして言った。


「どうしました?」


この人は、正キャ員として何度もこういうことしているのかしら。

私以外のヒロインとも、抱き合ったり食べ歩きしたり……?


「ん?何か?マデリーン?」


彼の笑顔を見ていると、何だか苛々してきた。胸のあたりがむかむかして、何でもいいから八つ当たりしたくなる。


黙っていると、彼は穏やかな笑みを向け続ける。はたから見れば、恋人同士が見つめ合っているように見えるかもしれないけれど、私は腹が立ちすぎてだんだんと睨むように目を細めていた。


「えーっと、何か怒っていらっしゃいます?」

「……別に。甘いもので胸がむかむかしただけ」

「おや、甘いものはお嫌いでしたか?それなら」


そう言うと、彼は私の手に残っていた揚げパンにかぶりついた。人の食べかけを遠慮なく口にできるなんて、さすがは18禁出身(もう決めつけている)だわ。


こんなことは恋人にしかしないでしょう、普通は!?


「あなた羞恥心はないの?」

「ありますよ?」

「嘘」

「本当」

「ないわよ」


断言すると、リオルドはちょっと困ったように笑った。


「でもいいじゃないですか。デートなんですから」

「デート!?」


何を言っているのかわからない。ナビゲーターなのに、この人との会話に通訳が必要だわ。

右手で顔を半分覆い、呆れかえってしまう。


しかしここで、予想外の展開が訪れた。


「マデリーン……?」


パッと顔を上げると、そこには庶民風の衣裳を纏った王子様が。その隣には、「なんで!?」という顔をして目を瞠るソフィーユがいる。


あぁ、ソフィーユ。あなた全然庶民に見えない豪華なワンピースね。いいわ。それでこそ悪役令嬢よ。どんなときも、お金のにおいをさせる装い。素晴らしいじゃない。


そんなことを思っていると、ぐいっと肩を抱かれて私は体勢を崩す。

思わず手をついたのは、リオルドの胸だった。


「おや、こんなところで偶然ですね」


涼しい顔でリオルドは話しかける。

王子が一瞬にしてピリッとした空気に変わった。もしかして嫉妬しているのだろうか。え、もうヒロインに惚れているの?


いつ?

ねぇ、あなたいつヒロインに惚れたの?


困惑するしかない私は、リオルドと王子の顔を交互に見た。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「甘いもの、好きなんです。付き合ってくれますよね?」 [一言] コミカライズ(pixiv→裏サンデー→マンガワン)から、リオマデを求めて原作にやってきました! ちょw ここ、コミック…
[一言] わかるwwwハーレクインとかもそうだけど、ヒーローが何もかもを投げ出してヒロインだけを選ぶような、そんな惚れ方するエピソードあった?いつ???ってなるのよくあるwwww
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