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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
8/45

5.居場所なんてここしかない

僕は嘔吐しながら倒れたそうだ。


教室が急に騒がしくなったのだけなんか覚えている。


そりゃそうだ。


急にゲロを吐きだす男子が爆誕したんだ。

パニックにもなる。


遠くで数人が僕に罵声を浴びせてたけど、内容は覚えていない。



その後は、誰かが呼んだのか、男性の先生に担ぎだされ、保健室に無理やり連れていかれた。


何か色々聞かれたようだが、


「死にたいです」


しか返さなかったらしい。


気が逝ったと判断されたに違いない。



保護者にも連絡したそうだが、親権は隣街に住む、大叔父であり、年齢も70後半のため、耳も足腰も悪く、誰も引き取りに来てくれなかった。


児童相談所にも連絡を入れたそうだが、既に15歳以上のため、良くて一時保護。

じゃあ体調不良で入院を、とも考えてくれたが、身元保証人に名乗る人も一切いないため、それすら出来ず、仕方なく学年主任の車で自宅まで送られた。


もうこのまま僕が自殺しても仕方ない。


そう学校は判断したんだと勝手に思った。










心美の浮気現場を目撃してから、二日。


この頃からやっと記憶がハッキリする。


朝いちばんで、クラス担任が訪問してきた。


学校に来れるか?

親権者を変えたら?など無責任な提案もしてきた。

親はどこ?とか。


分かっていたら苦労してない。


誰も親権者になりたくないからこうなっている。

成年後見人?障碍者じゃないから下りないんだよ。


もう色々と調べた結果が今の生活なのを理解してくれなかった。



「学校には行きます。授業はしばらく出ません。」



それが答えだった。


奨学金を貰うために、絶対に学校に行く。

休み過ぎると、直ぐに打ち切られるのは聞いていたから、嫌々でも行くしかない。


死のうとしているのに、奨学金の心配をするなど、矛盾だらけの自分が嫌いになる。そもそも自分評価ではマイナスに振り切ってるので、今更嫌いになっても大したことじゃないけど。





突然だが

僕は心美と付き合いだしてお弁当を作ってくれるようになるまでの約4カ月間、家庭科準備室で昼食を取っていた。虐めがエスカレートした時期には、()()()()()もしていた。


成り行きは、入学して直ぐ虐めがスタートし、授業中に僕の異変に気付いた家庭科の先生から、準備室に来るよう勧められたからだ。


今、家庭科準備室は、教師1人と非常勤講師が1人席をもっており、僕の様な外れ者の最後の居場所だった。僕以外にも2年生の先輩女性1人が登校し、準備室登校を()()した先輩2名が休み時間になるたびに顔を出していた。


よく保健室登校とか耳にするが、保健室は意外と多くの人が出入りする。

いじめの対象が登校している事が分かった時点で、あの手この手で何かを仕掛けてくる連中には、さほど効果が無かった。


だから家庭科準備室だった。




準備室のドアを開けると、家庭科教師【二階堂文子(にかいどうふみこ)】が目を潤ませながら、向かえ入れてくれた。50歳くらいのおばさん先生なんだけどね。


二階堂先生はクラス担任や生活指導、学年主任から昨日の学校での様子をひと通り聞いており、僕のことを酷く心配してくれていたようだ。


「ご心配おかけしました」


そういってお辞儀をして下を向いたままの僕の肩に先生の手が触れる。


「なんであんたばかり、こんな事になるの・・・うちの息子と同じ歳なのよ・・・なんで」


涙がドバっと湧き出てくる。



準備室の入り口でおばちゃん先生と抱き合いながら、子供のように泣いてしまった。


家庭科の授業なんて無かったって人もいるでしょう。

でもこの高校にはあるようです。


評価、ブクマありがとうございます。

感想はできる限り返しますので、こちらもよろしくお願いいたします。

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