4.それが上手な人なんていない
未遂の描写があります。
苦手な人は本当にごめんなさい
無断欠席をしたその日
スマホの電源も切り、変わらずひたすらボーっとした。
考えから逃げるように、天井だけを見つめていた。
ただ時間が過ぎていくの待った。
昨日見た事が全て夢でありますように。
そんな事だけを必死に考えようとしていた。
ちょうど昼を過ぎた頃、急に心の歯車が回り出した。
よし、死のう
そう思い立って、久しぶりに体を動かしてみる。
縄などないので、どうやって死のうかな
そういえば前に、あるミュージシャンがタオルを首とドアノブに巻きつけて、事故死?自殺?したと聞いた事がある。
それだ
長めのタオルを引っ張り出し、玄関のドアノブに、ほどけないようにきつく結び、輪っかを作った部分に首を突き入れ、全身から力を抜いた。
苦しい これで死ねる
少しずつ意識が遠のく中、涙が溢れてきた。
「じーちゃんごめん」
そんなのが頭をよぎった瞬間、ドアノブが壊れ、床に転げ落ちた。
死ねなかった 失敗した
次はどうやって死のう。
飛び降りとか?
飛び込み?
だが今日はもうやめよう。
なぜか上手く死ねない気がする。
とりあえず明日学校に行ってみよう。
最後に遠くから皆の顔だけ見たい。
死に方はそれから考えよう。
首にタオルが絡みついたまま玄関で眠りについていた。
次の日は思ったより自然に始まった。
ほぼ二日間何も口にしていない僕は、他人にとって余程奇妙だったんだろう。
すれ違う人がいつも以上に僕を避けて通った。
そういえば、どうやって学校に来たっけ?
覚えてないや。
本当に無意識のうちに自分の席についていた。
いつもは直ぐにちょっかいを掛けてくるやつらも、遠巻きに見てくるだけだった。
「そんなに僕って哀れ?」
無意識のうちに言葉に出てしまう。
誰に向かってでもない。
ただの独り言。
「あ、あんた首の痣・・・なんなの?」
隣の席の女子が、妖怪でも見るような目で、俺の首を指さしながら話しかけてきた。
普段、一切話さない人で僕を虐めてこない人。
それ以上の情報が僕にはない。
「うん?何の事?」
「鏡・・・」
「あ、ありがとう」
手鏡を手渡され、自分の首を見てみると、タオルで作った輪っかと同じ太さの痣が、首にくっきりとできていた。
「わぁ。返すね。ありがとう。ちょっと死のうと思ってね。」
後から聞いた話だが、本当にそう言ったらしい。
自分では覚えていない。ずっとボーっとしていたから。
その後の授業の事も覚えていない。
何か先生やクラスの人にも声を掛けられたと思うが、僕の頭の中は
死のう
で一杯だった。
他の事なんかどうでもよかった。
五限目が終ったころかな?教室の入り口から、聞き覚えのある声がした。
「・・・け、佳市?!大丈夫?!」
そのモノの言葉を聞き終えた瞬間、僕はその場で嘔吐していた。
本日の19時更新で次話をアップ済みです。