37.同じ穴の狢
「もうマジ最悪だった」
「そこまでとは思わなかったわ・・・」
いつものファーストフード店にいつメン(死語)の3人が揃っている。
「とりま、どうにもならない的な?」
「ええ・・・」
今までの根詰めた集まりとは違い、事の深刻さ故、あきらめにも似た空気が漂う。
「佳市のばか・・・」
「まぁ結果、別れたんだから、良かったじゃん?」
「それはそうだけど・・・」
その中でも恵理のダメージは深刻で、いつもの威勢は全く見られず、どうしても腫れ物に触るような扱いになってしまう。
「一応さ、同じ人を好きになった訳だし? 少しはあいつの事、分かりあえる思ったんだけどね。ここまでだとは・・・」
「興をそがれた?的な?」
「小郡さんが難しい言葉を使ってる・・・」
「ゆかりん? これでもお姉さんなんだぞ? ちゃんと敬ってる?」
由香と真奈美は精一杯の気遣いのつもりで、ふざけてみせるが、恵理は下を向いたまま何かを考え込んでしまっていた。
「えりっち、さっきから何を考えてるの?」
「何か悔しくて・・・」
あんな女に佳市が傷つけられた事実と、何も力になれなかった自分の不甲斐なさを悔やんでも悔やみきれずにいた。
「でもさ、紀元ってぶっちゃけどうなの? この前、学校で見たとき、なんかもう大丈夫そうだったよ? 何か恵理だけ気合入っちゃってない?」
「え?・・・どういうこと?」
「ん? 紀元は元カノとえりっちが話をすることを望んでたのかなって?」
思い返せば、心美と話をすると言った際、別段止めもしなかった。かと言って、頼むとも言われていない。自分が心美の本性を知る事で佳市にためになると思っていたが、実は全く自分よがりの行動だったのでは?と不安になる。
「まさか、あんまし意味なかった?」
「んー? ウチらの中では意味あったよ? あいつの本性を知れたし、問題の答え合わせだってできたから。でも恵理と紀元の関係には意味なかったんじゃない? 記憶が戻った時点で、トラウマを乗り越えたと思うけど?」
この言葉で、自分は本当に心美と一緒だったんだとやっと気付いた。
自分が知りたいだけで、佳市のことなど何も考えていなかった。いや、考えていたけども、同じ気持ちだと思い込んでいた。自分がしてあげたいことを佳市は望んでいないなど微塵も考えていなかった。
「やばい・・・アタシ取り返しのつかないことしたかも・・・」
「え? そんなこと無いっしょ? もしそうだったら、ちゃんと紀元も止めていたと思うよ? 多分、恵理が気が済むまでやらせてあげたかったんだと思うけどね?」
「うわぁ・・・マジイケメン・・・」
「ちょっと恵理? 漏れてるわよ?」
「もういいかな? バカップル相手にすんのメンドイ」
真奈美は苦笑いとも微笑みとも取れる表情で、恵理を見つめてくれていた。
やっぱこの先輩は苦手だし、敵わないと感じてしまう。
「で、今、佳市はどこにいるの?」
「あっ・・・」
スマホがまたピコーンと鳴る。
開くと、散々ゲームに付き合わされたのか、ゲッソリとしている佳市と勝ち誇った様な満面の笑みで写っている妹の写メが送られてきた。
「うちに居るの忘れてた・・・」
「「おい!?」」
「ごめん!帰る!」
慌ただしく荷物をまとめ、店から出ていく恵理を2人は生暖かく見送った。
「さぁ!最後の仕上げといきますか!」
「悪いけど、このままにするのは学校のイメージ的に良くありませんからね。調べてきたこともあるので、全部ぶちまけてやりましょう」
残された本物の強者は、テーブル一杯に書類を広げ、何やら話し始めるのであった。
現在、筆者は恵理と佳市の甘々を書きたくて仕方ありません!グッと堪えます!ですが漏れます!