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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
4/45

1.貧乏人に彼女が居たらだめですか?

超がつくほどのド貧乏。


自宅は築五十年の木造二階建ての四畳半一間。

風呂なしトイレ共同。

どこぞの大学の苦学生かと思われる生活環境が【紀元佳市(のりもとけいいち)】高校一年生の自宅だ。


風呂は夏は二日に一回、冬は三日に一回の銭湯で。それ以外は流しでタオルで体を拭くだけ。

洗濯は週に二回のコインランドリー。日々のご飯はお金が無い時などは、五枚切りの食パンを一日一枚二つに切って食べる。


貧乏を通り越して貧困ともいえる状況。


そして天涯孤独の身だった。


両親は生まれてすぐに蒸発。親族の家を転々とし、やっとの思いで、中一の時に祖父に引き取られた。だがその祖父も半年前に他界。財産は伯父叔母に全て持っていかれた。


残ったのは僅かな家電と家具のみ。


それでも高校受験に成功していて、奨学金でなんとか通学している。

このままでは社会に出た途端に借金生活が確定するハードな人生。


当然、部活など出来る余裕はなく、バイトの合間に勉強をするルーティン。


交通機関?なにそれ美味しいの?と言わんばかりに移動はもっぱら自転車。

高校まで片道一時間。10kmの道のりも慣れたものだ。



そんな佳市にも彼女が出来た。


入学して二か月、隣のクラスの綺麗系で人気がある【佐々原心美(ささばるここみ)】に突然告白され、付き合うことになった。


デートはもちろん自転車で行ける範囲で、公園とかショッピングモールなどだ。

心美も佳市の環境を理解しており、「2人で居れるだけで十分だよ~」と言ってくれる。


昼食の時間も貧相な食事を広げていた佳市のために、文句一つ言わずにお手製の弁当を毎日作ってくれる。校内では出来損ないの旦那を支える、できた嫁と評判になっている。


無論、心美の周りは佳市と別れ、「もっとマシな男に乗り換えな」と繰り返し説得しているが、本人が「私は、佳市が笑顔になってくれるだけでパワーでるから」と毎度のごとく切り返すため、諦めムードが漂っている。


せめても、と思い、格安SIMと格安スマホだが、心美といつでも連絡取れるように、厳しい生活費から捻出してる。


from SNS

心美:『佳市、今日もバイトお疲れ様!』

佳市:『ありがとう!心美がいるから頑張れるよ!』

心美:『もう~。体壊したらもともこもないんだからね?』

佳市:『うん!気を付けるよ!心美のお弁当毎日食べたいからね!』

心美:『明日は一日バイトだけど、何かちゃんと食べてね?』

佳市:『了解!何食べたか報告するよ!』


初カノであり、健気に支えてくれる心美に感謝しかない。


「ごめん!大学を卒業したら今までの分をお返しするから!」


心美に苦労を掛ける度に、佳市が口にする口癖だった。


「本当に心美には迷惑かけてばかりだな。絶対に幸せにしてみせる!」


今日もそう決心し、スマホの電源を切って布団に横になった。




翌日も、朝から引っ越し業者、夕方から居酒屋でのホールスタッフのハードワークだった。そんな大人もへばるほどの疲労も、心美を思えば忘れられる。


今日はお店が暇だったため、早上がりとなった佳市はスマホの電源をつけた。

心美からバイト終わりの連絡が入っているはずだ。




はずだった。




どれだけ更新をしても心美からの連絡はなかった。


電話を掛けたが、普通なら5コール以内で取るはずが、10コールしても呼び出し音が続くだけだった。


(もしかしたら、バイト帰りに事故にでもあったかも?)


そう思うと、いてもたってもいられず、心美のバイト先に全力疾走で向かった。

心美のバイト先は知っていた。以前一度だけ、近くまで送っていったことがある。

居酒屋から自転車全力で10分。大して遠くない距離にあるカフェだ。


心美のバイト先に着くと、まだ営業中であったが、店内には心美の姿を確認できなかった。

佳市の頭の中はバイト帰りに事故にあっていると()()()()()いるため、その光景を不自然に感じない。


「まずは何時に上がったか確認しよう」


そう呟きながら、意を決して店内に入った。


ぜひ、感想とブクマ、評価お待ちしております。

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