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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
36/45

33.狂った歯車が動き出す

「私の初めても貰って下さい」


この一言に、佳市の顔は途端に険しくなった。

先ほどまでのおどけた雰囲気が無くなり、静かな憤りが、永遠にも伝わっている。


「冗談でもそんなことを言わない方がいい」


「私、本気です」


佳市の声はいつもより低く、そして威圧的であった。

永遠も悩んだ末の結論であったため、簡単に引くことはなかった。


「まず俺には恵理がいる。それを分かってるよね? ちょっとふざけすぎじゃないかい?」


「ふざけてません。恵理さんと色々と話し合った結果です。お互いに納得の上で、お話をしています。勿論、センパイの同意があったうえですが」


「分かった。なぜそうなったか説明してくれないか?」


「勿論です」





永遠は凛とした目で、佳市を見つめながら、事の顛末を話し出す。


『初めては大好きな人としないと、私みたいに後悔するよ?』と恵理が永遠に話したことから始まる。


恵理は”初めて”を、中学時代の同級生で終えていたが、相手は好きな人でも、彼氏でもない。周りの友達も徐々に経験を終えはじめ、話についていけない焦りと、性に対する好奇心から、後先を考えず、その場の勢いで済ませていた。それが佳市に出会った事により、後悔に変わっていた。


『アタシは”初めて”を大好きな人と経験できなかったけど、トワは違うよね? それにいつどこで、どこかへ連れ込まれ、”初めて”を奪われるかもしれないんだよ? だからトワが佳市を本当に好きだと思えて、後悔しないなら、それがいいと思う。アタシも何も言わないよ? アタシは永遠ちゃんにも幸せを感じて欲しいし、後悔してもらいたくない』


永遠は恵理が元カレとその兄弟からレイプをされたことも聞いていた。経験者だからこそ、余計にその言葉が重く、永遠にのしかかってくる。


『もしトワの初めての相手が嬉しいな。なんか別の意味でも繋がるっていうか、佳市の事でこれからも楽しく話をできそうで。アタシたちもうマブじゃん?だからそんな関係もいいかなって』





「そんなこと話していたんだね・・・」


「はい。それで私は決心しました。センパイがいいって。そしてセンパイが居候している間に、想いが本物だって気付きました。だって・・・センパイが笑顔に・・・なるなら・・・それで良いって素直に・・・恵理さんなら大丈夫だって」


言い終える頃には、永遠の目には涙が溢れていた。

悲しさも感じない、純粋な想いから流れた涙だと、佳市にも分かる。


だが佳市には恵理への想いはハッキリとしているが、永遠へは曖昧であった。そもそも2人と同時に関係を持って良いと思えない。本来なら恵理と別れてから、永遠と関係をもつべきである。だが今、恵理と別れようとも思わない。かといって、永遠の決意を無碍にできない。激しい葛藤と、自己嫌悪に陥ってしまう。


「永遠には苦労を掛けたね・・・」


はい?といった顔を佳市に向け、「苦労なんてしてませんよ?」と永遠は返してきた。いつの間にやら、涙も止まっている。


「え? 恵理と仲良くするの嫌なんじゃないかって・・・」


「いいえ? 私も恵理さんと仲良くしているセンパイを見るとほっこりしますし、恵理さんもそうみたいです。なんかポリアモリーって言うみたいです。だから2人と付き合うってものありですよ? シェア彼氏って感じです」


「シェアって・・・スイーツじゃないんだから」


2人の想いを受け、自分の意志の弱さが嫌になってくる。

果たしてそんな都合よく、解釈してもいいものだろうか?

本当に2人は納得しているのか?浮気じゃないのだろうか・・・


浮気・・・


浮気?



その時、佳市にある光景が蘇ってきた


忘れていた、あの景色が




「セ、センパイ? 顔色が急に・・・」


「う、うん・・・ちょっとね・・・思い出した・・・」



貪るように求めあっている男女


あの日、あの時、見たもの、話したこと


そして 一つずつ点が蘇り 一つの線となっていく



(俺は同じことをしようとしている? 違う? お互いの了承があるから? それでいいのか? 本当に? 心美の事を何も言えなくなる? どっちだ?)


激しく思考が交差し、結論を急かしだす。

だが一つずつ問題を解いて行くほかない。

前は苦痛に感じた光景が、逆に自分を冷静にさせてくれた。



「永遠の気持ちは分かった。でも今直ぐ結論は出せない。ちょっと恵理と話をさせて欲しい。いいかな?」


「むぅ!折角、おめかししてきたのに!」


膨れる永遠の頭を撫でてやると、「今日はこれで勘弁してあげます」と顔真っ赤にして、部屋から駆け出して行ってしまった。






「───あんな感じなのに、本当にエッチできるのかな?」


後輩が本当に決心できているのか、不安を感じながら、スマホを手に取る。


「もしもし? 恵理? 思い出した事があるんだけど、今から会えるか?」




スマホの向こうでは、歓喜の声と、部屋の中で慌てて動き回る年上彼女の足音が聴こえてきた。


永遠にとって恵理は

同じ人に恋する同士であり、女性としても尊敬できる先輩なのかもしれません。


尚、現時点で佳市はモノアモリーでありモノガミーです。


9/27 おまけ 投稿しました。

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