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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
31/45

28.依存と体質

「佳市、ごめんね? うちの家族うるさくって」


「ちょっとびっくりしましたけど、皆良い人ですね」



ベッドの上と床。それが今の2人の距離。

手を伸ばせば簡単に届くのに、どちらもその手を伸ばすことをためらった。


隣に家族が居るから?たしかにそうかもしれないが、それ以上にこの2人の関係は初心であった。少しは恋愛経験のある2人だが、なぜかいつも以上に意識をしてしまっている。


あれだけ濃密な3日間を同じ部屋で過ごしたはずなのに、何故か恥ずかしさが勝ってしまう。あの時の関係は一体なんだったのだろうか?と2人とも考えてしまう。自分が自分ではないくらい大胆だった。ただをそれを求め合っていた。


「ねぇ? 永遠ちゃんの事どう思ってる?」


恵理が気になっていることを話し出す。別に聞きたいわけでもなく、知りたくもない。この空気感を壊してしまうかもしれない。だけど無意識に出てしまう。何か話さなければ、という焦りがそうさせた。


「今でも後輩って気がするんです。恋愛感情とか、まだ感じないというか。突然すぎたのもあるかもしれません。意識しろって言われたら意識はしますけど」



また沈黙が流れる。



別段不機嫌になるような内容でもない。

だが次の言葉が出てこない。


「先輩が、俺を意識しだした時ってどんな感じだったんですか?」


どんな感じ?どうだったんだろうか?

意識しようと思って何かしたつもりもなく、知らずのうちに「後輩男子」から「気になる異性」になっていた。知らないうちに、佳市の事を目で追っており、彼に近づきたかった。


実は、恵理はもう男性恐怖症を克服していた。

それなのに準備室に通っていたのは、()()してしまった佳市にもう一度会いたかったからだ。このまま自分のクラスに戻ってしまうと、佳市と疎遠になってしまうかもしれない。その恐怖心からずっと男性恐怖症を装っていた。準備室に居たら、もう一度、佳市に会えるはず。そんな打算が彼女にはあった。


エナジードリンクを飲み続けたのも、そういった意味があった。匂いで自分を思い出してくれるかもしれない、そういった期待。そして元カレの好きだったコーヒーから、佳市が口にしていた物に変えたことも、自分を中身から彼の好みに変えたい。そんな願望からだった。


「わかんない。でも、自傷を止めてくれた時よりも前からだと思う。佳市が準備室に戻って来た時には、もう抑えきれないくらいだったかな」


「そうなんですか」


普段と変わりない口調で、佳市への想いを伝えてくる彼女に、佳市は思わずドキッとしてしまう。あの頃から遠山先輩は俺に対して、好意をしめしてくれていたのかと思うと、恥ずかしくも、嬉しくもなってくる。


「だから、彼女と別れたってメッセージ見たとき、泣いちゃった。ごめんね?佳市は辛かったと思う。なのにアタシは嬉しかった。これからはちゃんと佳市に想いを伝えられるって、安心もしちゃったかも」


「それは酷い話ですね。でも、先輩が居たから俺は別れることができたんだと思います。もし先輩達がいなければ、ズルズルとまだ付き合っていたと思います。原因がなんなのかは分かっていませんが、別れてスッキリした気分です」


自分って酷い女だな、と恵理も自分を見つめ直す。だからといって後悔もしていない。紆余曲折あったが、想いの相手が今隣にいる。その事実だけで満足できる。もう離したくない。


だが永遠との関係も彼女にはあった。

2人はお互いあったことを確認しあい、想いを伝えあっている。ライバルではあるが敵ではない。そしてどちらかが1人勝ちをする気もない。抜け駆けはしても、自分だけのものにすることは出来ない。2人して支えていく覚悟を固めている。



恥ずかしさをグッと体の中に押し込める。



永遠のためにも一歩進む必要があった。

そして何よりも自分が求めていた。



あとは佳市にワガママを言えるかどうか。



「佳市。敬語やめて?ムードなくなる」


その言葉の意味を最初はわからなかった佳市も、直ぐにその真意に気付く。


「いいのか? 本当に」


「逆にこのままはやだ」


順序が間違っている。そう偽善者は言うかもしれない。だが恋愛に正式なプロセスなど存在しない。一般的な価値観はあるかもしれないが、それを飛ばしたって何の問題もない。恋愛の形など人それぞれである。

始まりは淡い恋心か、肉体関係か、突然の衝撃か、どんなパターンがあったっていい。重い軽いもある。始めが依存かもしれない。でもこれからが大切。そう恵理は自分の気持ちを整理している。


「先輩?そっちいっても?」


「いいよ。でも、名前で読んでね?次先輩って言ったら殺すから」



────彼女の想いを受け止めたい



「恵理?顔、見せて」


薄っすら明るい暗闇の中で、恵理に覆いかぶさりながら、小さな顎をゆびで優しく導き、自分を見つめさせる。その瞳はなぜか潤んでいた。嬉しさなのか、不安なのか、そのどちらもなのか。


「好き?」


「ちょー好き」


「俺も好きだよ」




初めて2人の唇が重なり、心の底から通じ合う


指が絡まり、お互いの存在を確かめあう


始めは優しく 徐々に激しく


まるでお互いのこれまでの時間を濃縮したような


そんな触れ合いだった







(永遠ちゃん、次はあんただよ)


こわっ・・・。


これで区切りがつきました。


※最近、ブクマ数が一進一退の攻防ですw

ダラダラ書いているからでしょうか?申し訳ございません。

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