25.無知は罪であり、知であり、、、
他人の家はなぜか落ち着かない。
空間のせいか?生活の臭のせいか?なぜだか分からないが、ソワソワしてしまう。
「自宅の様にくつろいでね?」
そんな風に言われても、全くと言ってくつろげない。
何か自分がすることはないか?手持無沙汰になってしまう。
「ちょっと?あんたキョドリすぎ」
「え?なんか落ち着かなくて・・・」
今、佳市は遠山家に身を寄せている。
これは恵理が、佳市の精神状態を考慮し、今の環境に1人で身を置くのは心配であるとの説得を受け、それに折れる形でこうなった次第である。
室内には独立したリビングダイニングにトイレ、それぞれに別れた部屋、脱衣場を併設した浴室、その全てが佳市にとって新鮮であり、夢のような光景であった。
「テレビでも観る?」
「・・・うちテレビないから良く分かんないかも」
「そっか、佳市の家、テレビないもんね」
そう。テレビすらない佳市の家で音と言えば、外を車が走る時、冷蔵庫のコンプレッサー、時計の秒針、隣人の生活音がそれにあたる。
だがこの部屋にはテレビの音や家族の会話、様々な音が溢れている。それも落ち着かない原因なのかもしれない。
「そろそろ晩御飯の用意をするけど、佳市君苦手なものは?」
「ありません・・・」
食べれるものはなんでも食べる佳市にとって、好き嫌いなどできない。出されるなら虫だって食べる。それくらいの精神で生きている。それも一般家庭と佳市の境遇との大きな違いなのかもしれない。
「あら、助かるわ。恵理なんて今だにピー「ちょっと!ママ!」」
大方、ピーマンであろう・・・
何も隠さないでいいのに、と佳市は思うが、子供っぽい一面を知られたくないのか、恵理は全力で京香の口をふさいだ。
「あらあら。ごめんなさいね?じゃあここからは若い者同士で」
そう言って、京香はキッチンへ戻っていく。
突然、家族の会話ってこうゆうものなのかな?と佳市は感じた。
(じーちゃんと何話してたっけ?)
そう思い返すと、祖父との会話は常に、佳市の近況を報告することであった。今日なにがあったか?どんな勉強をしたか?一方的に話す佳市に、「ウンウン」と祖父が頷く。それが家族の会話だった。祖父から佳市に話をしたことなど、食事や勉強のことくらいだ。何をしていたのか?どんな人生だったのか?など聞くことは無かった。
(もっとじーちゃんの事知りたかったな)
恵理の家族に触れたことにより、自分の家族ってなんだったんだろ?と佳市は思い悩んでしまう。両親に捨てられ、まるで腫れ物の様に親族の間を転々としていた過去が蘇る。
家庭を知らない、父親を知らない、母親を知らない、この事が佳市という人間を構成していく上で、一番の”欠損”であることは間違いなかった。あるべく家族の姿を知らない佳市にとって、暖かい家庭を知る事が何よりも居心地が悪い。佳市自身もそれに気付いていた。
「俺、やっぱり帰ります」
「えっ?ちょっと?何を今更?」
恵理が不安と焦りを混ぜた表情で、佳市を制した。
「なんかやっぱり、俺って1人なのが似合ってるよ。俺に家族は向いてない」
その言葉に恵理と京香は衝撃を受ける。
佳市の声には人らしさが全く無く、冷たく寂しい、彼の中に潜む、闇が表に出た様だった。
「俺にはよくわかんないんです。何となくここに居てはいけないんじゃないか?って感じがするんです。ごめんなさい」
もう2人とも何も言えなくなり黙り込む。それでも恵理は佳市に必死に手を伸ばそうとするが、実際の距離より、彼の腕はあまりにも遠い場所にあるように感じる。
「本当にごめんなさい。色々準備して頂いた事を反故にしてしまい」
「やだ・・・やだ・・・やだ・・・」
恵理は駄々をこねた子供の様に、不満をあらわにした。それが佳市への自分勝手な欲求であることも分かってはいたが、そうせざるを得なかった。
「先輩?ごめんって・・・」
「だってこのままどっか行っちゃいそうだもん!だからやだ!行かないでよ。置いてかないで・・・一緒にいたいよ・・・」
立ち尽くす3人に何とも言えない空気が流れる。無常というか、虚空と呼ぶべきか、とても悲しく、決して埋まる事のない距離感が漂う。
「────ただいま・・・ウオッ!?メッチャイケメン!! だ、だれこの人? おねーちゃんの彼氏? ってか修羅場でしたか・・・?」
もう一人の家族は状況をつかめないまま、鞄を床に置いた。
また重くなりましたね。
この佳市ってのが私を惑わします。
ですが何とか更生させます。
ちなみにざまぁと更生でこの物語は成り立っております。
ざまぁはまだか?と思う人はぐっとこらえて!




