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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
26/45

23.決別

会話調なので、苦手な方はすいません。

俺の精神はギリギリだったらしい。


どこか最後で踏ん張って来たと思っていたのに、それは自分の甘い考えだったようだ。

当の前に俺の心は折れていた。自殺しようと行動した時点で、分かっていた事だが、どこかで認めたくなかった。そう理解した時点で、自分の全てが壊れてしまった気がするから。


何を間違えたのか?

そんなことを考えたくなかった。全部が自分の大切な思い出だった。そこに間違いなんてあると思ってなかった。心美と付き合ったことも間違いとは思いたくない。彼女と一緒に居れた時間は、辛くもあったが、自分を認めてくれ、求めてくれたと思ったからだ。


だが遠山先輩に抱きしめられた時、その間違いに気付いた。

心美が肯定してくれたのは、俺の存在ではなく、俺の行動だと気付いた。

それほど、抱きしめられた感覚は俺の心を温めてくれた。


心美を抱いている時の充実感とは全く違う。

必死にお互いを求めあう行動に、その一瞬は心を満たされ、何とも言えない快感が体を突き抜ける。


先輩が俺にしてくれた事はそれをも超える何かを体に植え付けた。ただただありのままの自分を受け入れてくれ、包み込んでくれた。そんな感覚は、心美には一度も覚えたことはない。それが俺の中の答えだと思う。


「俺は遠山先輩には救われてばかりだな」


今となっては、心美と別れる理由を思い出す必要はない。

先輩が教えてくれた温もりだけで、心美との時間をもう一度取り戻そうとは思わない。それが十分な理由になる。今になってようやくわかった。



もう一度、心美に電話しよう



俺は、心美に電話を掛けた



彼女が電話に出る。雑音が聞こえない。自宅にでもいるのかもれない。


『あ? 佳市?この前どうしたの? 心配だったんだから』


『心配かけたね』


『ううん? 良いの! でこの前の事、考えてくれた?』


この前の事は俺が忘れてしまった何かなのだろうか?意味が分からない。でももうそこに拘りは無い。もう別の理由で君とは一緒に居たくないのだから。


『ごめん。ちょっと言ってる意味が分かんない。でも言いたい事があるんだ』


『え~なになに? エッチしたいの? もう少し後ならいいよ?」


俺の心とは裏腹に、短絡的な話しかしてこない彼女にいら立ちを覚える。


『俺はもう一緒に居たくない。心美との時間に疲れた。別れよう』


意外な言葉を言ったつもりはないが、彼女はどこか意外な雰囲気で押し黙った。


『なんで? どうしたの?』


『君との時間を思い出しても、嬉しさや楽しさはあったけど、俺自身が癒されたとか、そういう感覚がないんだよね。何でなんだろ? って思った』


『え~エッチとか沢山したじゃん? ご飯一緒に食べたりとかしたよね? デートも! それで癒しが無いとか酷くない?』


『確かに酷いかもしれない。でもそういった時に癒しとか、安心は感じなかった。ただ心美に愉しんでもらいたいって一心でいたんだ』


そう感じてる事だけを正直に述べた。それがどんな結果になろうと気にする必要も今はない。この恋愛は間違っている。


『なんか酷いよ。 もっと沢山一緒にいてもらいたかったのに。満たしてもらいたかったのに。自分勝手過ぎない?』


『自分勝手なのは、俺だけなの? 君は俺を満たしてくれないのかな? 俺だけが君のために色々とすればいいの?』


『当たり前じゃん? 私と付き合ってるんだから、私を満たすのは彼氏の仕事でしょ? それに私毎日お弁当作ってたよね? それって佳市のためでしょ?』


『そうだね。お弁当には感謝してる。本当にありがとう。でもあの時間もちょっと違うと思っていたんだ。君は僕が話をするまで、ずっとスマホ触ってばかりで、何も言ってくれなかった』


『人に作って貰っててその言い方は酷くない?』


その言葉にも彼女に俺に対する思いを感じなかった。心配しているとかは本心だと思う、でもそれは俺に会えないっていう、心美の欲求から来てると思った。お弁当も俺に会う口実というか、自分を満たすためのイベントというか、そんな物を感じた。そして過去の自分には分からなかったであろう、誰かが俺を思いやってくれるという気持ち。この短期間だが、先輩や永遠、先輩のお母さんに触れ、その感覚が分かった。じーちゃんには勿論感じていたが、それは家族だからできると勘違いしていた。


『だから、お弁当の事は本当に感謝してる。でも俺が心美に対する気持ちは、本当にずっと一緒に居たい、っていう感情とは違うんだ。だからごめん。そしてもう一度言うね? 別れよう』


『本当に皆勝手だね。折角の楽しい時間を壊してくれて』


『それはごめん。最低だね』


『本当最低。別れたいのは分かった。また話そう?』


『もう話すことはないんだ』


もうこれでおしまいにしたい。その気持ちだけで、なんとか踏ん張る。

何に?この時間に?自分の折れてしまいそうな心に。


『そう。でもまた声は掛けるね』


『うん。さよなら』


『はぁぁ。じゃあ』


そう言って心美は電話を切った。

皆勝手とはどういう意味だったんだろう?少し疑問に思えたが、もう終わったんだから気にすることもない。





「先輩に報告だけでもするかな?」

一応、サヨナラすることはできました。


でもまだ謎はありますね・・・

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