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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
25/45

22.あらわになる女の本性

今回は主人公でません。

秘密を守り通せる人間はいない。

口を堅く閉じても、指先でしゃべり出す。

全身の毛穴から裏切りがにじみ出る


─ジークムント・フロイト─




準備室の三人はこの連休中も頻繁に連絡を取り合っており、彼女の行動については大体把握することができた。心美自身が何の意図で佳市に近づいたのか、どういった意味で派手な交際関係を持っているかは不明なままであった。



そして一度、情報を整理するため、ファストフード店で顔を合わせた。



「で、紀元とどこまでいったの?」


「まずはそこから」


聞かれるとは思っていたが、何もしていないことを誇るべきか、恥じるべきか恵理には分からず、返答につまってしまう。


「・・・抱きついた」


「からの~?」


「撫で撫でしてくれた・・・」


「からの?」


「・・・それだけ」


2人は はははははっ と声を出し笑ってしまう。別に友達を嘲笑するつもりは毛頭無いが、3日間もともにして、まるで進展がない2人が微笑ましく思っていた。ましてや恵理は見た目は完璧とも言えるギャルのため、遊んでいるイメージが強く、それも相まって笑いが止まらなくなってしまった。


「・・・だから言いたくなかったのに」


「まぁまぁまぁいいんじゃない?ぶふぁっ」


真奈美が話を止め、流そうとするが、笑いが漏れてしまう。恵理は顔を真っ赤にしながら、うつむき、しゅんとしている。


「例の話に移りましょう・・・」


由香もなんとか笑いを堪えながら、話を戻した。


「この休み中に色々調べたけど、彼女は中学時代の友達とかと一緒に、あまりよろしくないお店に出入りしていることは分かったわ。で、そこで知り合った男性にブランド品をプレゼントされたり、高級なお店へ招待されているようなの」


どこで調べたのか、由香はタブレットの画面を見せながら、雄弁に2人に説明をしだした。そこには「出会い喫茶」や「相席レストラン」などで撮った心美の写真が映し出されている。


「全部、別のフォロワーのアカウントから拾えたわ。男に引く手あまたな自分達を誇りたいのかしら?次から次へと出てきたわ。で、その場所に彼女がいたのは間違いない」


「ここでパパ活やえんこー相手を探していたってこと?」


真奈美が不快そうな声で話し出す。

恵理も予想はしていたが、こんな簡単に情報を残してしまっている、心美の思考が理解できず、途中で見るのをやめてしまった。


「最低だね。ここって未成年は入店禁止でしょ? ってことは年齢を偽って入店したってことだよね? これって学校に知れたら、停学とか内容によっては退学もんじゃん?」


「ほんと、馬鹿よね。でも、本当にそうなのかは分からなかったわ。実際に写っている友達に確認するか、本人が語らないと真相は分からない。状況証拠的には十分だけど。本人達はまさか赤の他人が、ここまで見ている事を想像してなかったようね」


「ちょっと考えれば分かるのにね・・・。でも実際にえんこーしている証拠はないってわけだよね」


情報社会の世だ。必ず誰かが見ており、噂になってしまう。本人達が失念していた、という訳ではなく、気付かぬ所で、色々と繋がってしまう恐ろしさを知らないだけであろう。だが恵理にとってはそんなことはどうでもいい話であった。


心美の意図が知りたい。


これには、直接本人が話す必要があった。

現状、手元にある証拠だけで、心美の学校生活に与える影響は計り知れない。だが佳市との関係性に答えは出ていない。なぜ物やお金に困っていない彼女が、貧困に喘ぐ彼と付き合ったのか?それも自分から告白したのだ。もしかしたら、尽くす女をアピールすることで、自分の裏の顔を隠すための防波堤にするつもりであったかもしれない。


あの子に限って、そんなことするはずがない


───という免罪符が欲しかっただけ。 


だがそこじゃない、と恵理は思っている。もしそれだけであれば、佳市と肉体関係をもつ理由にならないのだ。恵理は佳市から肉体関係があったことを聞いていた。その事実を知った時、今までにないほど激情していまい、衝動を抑えることに必死になった。だが自分自身も過去に数人の男性と肉体関係をもっているため、何も言えない事に直ぐに気付いた。大切なのは過去ではなく、これからだと思う事でなんとか耐えていた。


「・・・うわぁ、この写真の子、知り合いの妹だ・・・」


真奈美が見てはいけないものを見てしまった事に苦悶の表情を浮かべ、頭を抱えてしまう。まさかこの件に近しい人物が関わっているなど、誰しも思いもしない事であっただろう。


「小郡さん、その筋からお話聞くことはできそうですか?」


「・・・デリケートな問題だけど、聞いてみるね。ちょっと家庭を巻き込みそうだけど、仕方ないか・・・」


「えぇ。うちの高校の品位に関わる問題なので、私たちが口を出すのも間違っていないと思います。よろしくお願いします」


「おけまる」


真奈美は直ぐにスマホを取り出し、その知り合いに連絡を入れた。恵理も横目にそれを見ながら、ある事を決心していた。


「アタシ、直接()()()と話をする」


「「えっ!?」」


突然の恵理の発言に2人は呆気に取られる。

佳市が心美に対して大きなストレスを抱えている事は分かってはいるが、こちらから直接的な関わりを持とうとは、真奈美も由香も思っていなかった。ある程度は佳市に想いを寄せている恵理が、突拍子もない行動をする可能性は考慮していたが、まさか自ら問いただすと言いだしたのは予想外であった。あくまでも現時点では佳市と心美で問題であるとの認識だった。


「だって、これうちの学校の問題になるかもしれないんでしょ?」


「でもそれは、学校全体に対して訴える事であって、佳市の彼女と私達の誰かが接触する必要性は感じないわ?」


「佳市には、あいつと別れてもらう。けど、それ以外の事は私がなんとかする。それ以上の事を佳市が知る必要も、する必要もないよね? 佳市もう一杯一杯なの。私、そんな人にこれ以上の負荷をかけたくないの!」


「・・・あんたね」


「えりっちそれは・・・」


恵理の発言は明らかに間違っていた。それは本人にも分かっていた。だがこれ以上、佳市が心美と接することによって、さらなる彼の精神崩壊に繋がっていく可能性は否定できない。もしそうなってしまった時、自分がどうなるか?それを想像するのが怖かった。


「惚れた弱みってこと?」


「ゆかりん・・・ちと違う」


「アタシは佳市の代わりにするだけ。それが恩返しだと思ってる」


「えりっちそれは違うなー。でも止めれないよね?」


由香より真奈美の方が、そういった事に理解はあるのであろう。飲み込めない由香の背中を真奈美が触れながら小声で「もうこの子()()気分なの」と耳元で囁いた。


「ふ、2人だって、佳市と何したのか聞いてきたじゃん!」


「そ、それはそうだけどさ・・・」


煽った手前、どうしていいか分からない2人に対して、恵理は「今更なに!?」といった感情をぶつけてしまう。もちろん佳市を思っての行動なのだが、実際は自分が知りたいという欲求が勝っている。


「わかったわ。でも気を付けて? 相手が何をしてくるか分かったものじゃないわ? まずは佳市の安全を確保してから、行動に移ってね? 今、佳市と心美さんが直接顔を合わすことだけは無いように配慮して頂戴」


「うん。それは分かってる。だから、一時的にうちに来てもらおうと思ってる」


「あーぁ。もう・・・えりっちは馬鹿だね」




全くもってバカげた考えであるが、2人は恵理の性格からして、どうしようもないと諦めるしかなかった。


あらわになったのは


心美と恵理・・・どっちもかな・・・


もう心美が佳市に牙をむくことはありません。

ここから恵理と心美のバトルが始まります。


あとどんなに好きでも高校生の男を自宅に同棲レベルで招き入れるのはダメですよー?お互いのためにならない。やんちゃな子にある出来ちゃったなら別ですけど。

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