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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
22/45

19.想いと重い

「あの~先輩? いつ帰るんですか?」


「佳市が髪切ってる間に家でシャワってきたよ?」


そんな素っ頓狂な顔で言われても、困ってしまうんですが・・・

ってか既に家に帰ってまた戻ってきたんだ。


四畳半のアパートに、高校生が2人も居ると、さらに狭く感じる。

先輩はいつもと変わらず、エネジードリンクを飲みながら、雑誌を読んでいた。

たまにこちらをチラッと見ては、慌てて目線をそらす。


「親御さん心配「許可とってるよー」・・・ですか・・・」


なんとも言えない2人だけの時間が流れる。

先輩の横顔はいつもと変わらないと思う。でも、俺には少し違って見えてくる。


昨日までは準備室の仲間みたいな感じ。

でも今は、俺の事に露骨に好意を寄せてくれていて、甲斐甲斐しく、一晩中抱擁してくれた存在。大なり小なり意識をしてしまう。


でも俺は、心美と別れてない。

別れようと口にはしたが、返答をされることなく電話を切っていた。だから正式には別れていない。だからと言って、帰れとも言えないので、こんな状況になっている。


「さっきからチラチラなんですか?」


「・・・カッコいいなって・・・・・・」


瞬間湯沸かし器の様に、一瞬で顔真っ赤にしながら俺に応えてくれる。そんな真っすぐに言われると、こっちまで恥ずかしくなる。


「ざす・・・」


そんな言葉しか返せなかった。いつもならもう少し馬鹿を言える関係なのに、ちょっと意識するだけで、ぎこちなくなってしまう。こんな俺でも変わらず好きなのだろうか?ふと疑問に感じる。


「そういえば、永遠ちゃん来たわよ?」


「え!?いつですか?」


「朝。あんた寝てたから、アタシが色々と話をしておいた」


「あ、ありがとうございます。何かすいません。後から顔だけ見せておきます」


自分が眠りこけている間にそんなことがあったなんて・・・

わざわざ応対してくれた先輩に申し訳なく思う。心配して俺のとこに来たのに雑務を押し付けたように感じ、スッキリしない。


あれ?ちょっと先輩が膨れてる・・・

多分、知らない女の子と、俺が知り合いだったから妬いているのかな?心美も嫉妬はしてたけど、全然違う反応だった。寄せ付けない雰囲気を出して、隣にいた俺ですら怖く感じる時もあった。


「な、何か、永遠とありました?」


「別に?外で少し話して帰ってきただけ」


「そ、そうなんですね? 問題ないならよかった・・・」


先輩は自分の頭をチョイチョイと指をさし、撫でろと意思表示をしてくる。

俺は先輩に手が届く距離まで近づき、屈んだまま先輩を撫でた。


「満足」といった表情で、先輩は俺に笑いかけてきた。


もし先輩と付き合っていたら、俺の今はもう少し違った形だったかもしれない。こんなに精神を押しつぶされることもなく、平穏な生活をおくっており、なんでもない事が楽しく感じていたのかもしれない。もし、の話をしてもどうしようも無いのは分かっているけど。


心美と付き合っている自分は無理をしていた。ちょっと俺の話がつまらないと、直ぐに不機嫌になるし、常に笑顔にさせなといけないっていうプレッシャーを感じながら付き合っていた。相応しい男を演出させられていたというかなんというか。自分が自分では無かったという覚えはある。


今ここに居る俺は、ちょっとだけ『俺』とか慣れない言い方をして無理してるけど、そんなに苦じゃない。むしろ自然体でいれる。先輩とはお互いに弱い部分も見せあってきた仲であるのも大きいかもしれない。ダメなところも良いところも全部じゃないけど知ってる。それが安心に繋がるのかなと感じた。


「先輩? 俺と一緒にいてくれて、知り合ってくれてありがとうございます。 一生忘れられない宝物です。これからも大切にしていきます」


本当にこの人達に出会っていない自分を想像すると震えてくる。多分、ここには居ないだろう。何がなんでも死んでいた可能性が高い。だから生きていることに、救ってくれたことに対する感謝の気持ちが口から溢れた。


「ちょちょちょちょちょっと!? なに!? んんんんn!」


明らかに狼狽え、真っ赤になってしまった。


俺は先輩の前に座り直し、深々と土下座をかまし、下をむいたまま、もう一度感謝の言葉を口にした。


「本当にダメなやつですけど、これからもよろしくお願いします!」


先輩は黙ったままだったので、そのまま顔を上げた。口元に手を当て、目に一杯の涙を浮かべている。そして直ぐまた俺に抱きついてきた。髪の毛からは、なんとも言えない香りがし、俺の鼻を刺激する。くすぐったい様な、心地よいような、何とも言えない青春の匂いかもしれない。


「あんた、もっと自信を持って? 色々頑張ってきたんだから。もう1人にしないから。皆、あんたが好きだから。抱えないで?これからは沢山話をしよ?どんな事でもいいから。だから・・・ずっと一緒にいよ?」


「先輩・・・最後重いです」


「アタシ重い女だから」



胸元でクスッ笑う先輩に、「この人もダメな先輩だな」って思え笑えた。

恵理も賛否あるかな?と思いますが。

一途なのかなんなのか。

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