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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
21/45

18.露骨な先輩

あなたは好きな人の過去を知っていますか?


余程の幼馴染でも無い限り、友人や家族や本人の口以外から相手の過去を知ることは難しい。


この日、遠山恵理は偶然にも公文永遠から、佳市の過去を知る事ができ、浮ついてしまう。そんな心を静めつつ、彼の自宅へと戻ってきた。扉の前で少しだけ心を落ち着け、部屋に入っていく様は、さながら新妻にでもなったつもりである。


だが扉を開けた瞬間、現実に引き込まれる。


部屋に居るはずの佳市が居ない。


(もしかして、また変なことを・・・)


恵理の心は一転して、どん底へと突き落とされる。

コンビニで買ってきた物を袋ごと床に落としてしまうが、拾い上げる気力もなく、その場にへたり込んだ。


(離れなければずっと・・・)


悔恨の思いが心を犯し、涙腺が崩壊していく。





不意に恵理の肩に誰かの手が触れる。


ドキッとしたが、直ぐにその手が誰のものなのか分かり、安心する。


少し歪な大きな手のひらの感触が、恵理のくすんだ気持ちを浄化してくれる。


「けいいち・・・」


振り返ると、佳市が恵理を包み込むような笑みで見下ろしていた。


「けいいち!」


そのまま彼の腰に抱きつき、腹部に頬を寄せてしまう。

佳市も恵理の頭に手をおき、まるで大切な物を扱うような優しい手つきで、撫でてくれた。


「来てくれてありがとうございます。不出来な後輩で申し訳ございません」


昨日の様な消えそうな声ではなく、準備室で共にすごした、彼女が求めている男のものに戻っていた。


「どこいってたのよ・・・」


「いないから、辺りを・・・」


何故か申し訳無さそうに、でも照れくさそうな表情につい笑いが込み上げてきた。


「プッ・・・もう!ばか!」


「僕だって心配したんだよ?」


「あんたの傍から居なくなる訳ないじゃん?」


「いなかったし!また抱き締めて欲しかったのに!」


「・・・んんんんn」


その言葉に、我慢しきれなくなった恵理は、腰に絡んでた手を離し、そのまま勢いよく首に回してしまう。身長差のため、佳市の首にぶら下がる様な不格好になってしまうが、それも構わず胸元に顔を埋めた。


「あんた 僕って・・・」


「先輩は佳市って・・・」


「ずっと前から呼びたかった・・・」


「ずっとそうやって呼んでください」


自分の自傷を咎めず、受け入れてくれた時と同じ、優しく、暖かく、心地よい感覚が恵理の抑えていた想いを解き放ってしまう。


(もうどうなったっていい。どんな罰でも受ける。アタシはこの人が大好きなんだ)


「また頭撫でて」


自分が首に手を回した際、途切れてしまった行為を再開するよう佳市を催促した。


「先輩。自宅に呼んでおいてあれですけど。ちょっと露骨すぎますよ? 俺まだ彼女いるみたいなんで、直ぐには気持ちに応えられないです。このままなし崩しになると、節操無さすぎてお互いに変な噂が立ちますよ?」


「そんなのしらない。撫でて」


佳市は困った顔をしながらも、恵理の頭を優しくかい撫でた。ふと上を見上げると、あの痣がよく見える。まだハッキリと色濃く、佳市を侵食する病魔のように残っていた。


「首、大丈夫?」


「大丈夫ですよ。痕だけですし」


「バカ後輩。早くしてね」


恥ずかしくも、もう自分を止めることは出来ない恵理は、彼に決断を迫ってしまう。


「そうですね。終わらせなきゃですね」


「うん。でも、アタシ達も頼ってね。皆、あんたのこと心配してんだよ?」


「本当、心配ばかりかけるダメな後輩ですね。そんなののどこがいいんですかね?」


「もち・・・ぜんぶ・・・」


これは早急に行動を起こさないと、大変な事になってしまうと佳市も察し、心美との決別を再度心に確認する。


「本気で頼りにしますよ? いいんですか?」


「うるさい。あんたは黙って撫でてろ」




(もう絶対に離さない。もう絶対に壊さない)

ちょっと甘い話なので、刺激が欲しい人には物足りないですかね?


回復してそうに見えますが、まだまだです。


でも1人ぼっちのままだと死のうとか考えたと思います。この人卑屈ですから。

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