16.はじまりの選択
恵理視点です。
誤字報告ありがとうございます。
好きになった相手は他の誰かの恋人だった。
そういった話は別段珍しい事ではない。
その後の選択も様々だ。
強引に奪い取る者、タイミングを伺う者、気持ちを捨てる者、無かった事にする者、思い出にする者、意識をさせて振り向かせる者、相手の恋人に知られる事なく関係を持つ者もいる。
今、彼女はどの道を選択をするか、悩んでいた。
ことの始まりは、佳市から恵理に届いた最初のメッセージだった。
『心美と話しました。無理です。』
佳市から届いた初メッセージに胸をときめかせ、タップした刹那、他の女の名前に嫉妬を覚えた。
一体何を話したのか?ざわつく胸を抑え込み、直ぐに電話を掛けるが、無常にも呼び出し音が数を数え終わる。
イラつく気持ちを抑え、もう一度、彼のスマホを鳴らす。
かすかに画面から声がした。
彼の声なのは直ぐに分かったが、力なく、呟くように受け答えするだけ。
時間をかけ、ゆっくりと、どうしたのか、何があったのかを聞き出した。
要領がえないところが多く、ひどく混乱していた。
そして恵理は、直接佳市の自宅へ行くことに気持ちを固める。
母親に全てを話し、夜遅くに外出する事の許可を願った。意外にもあっさりと了承をしてくれ、それどころか「何かあるといけないから」と財布に入っていた現金を全てを掴ませてくれた。
免許を取ってから殆ど乗る機会が無かった、原付を引っ張り出し、彼の自宅へを向かう。
「けいいち!」
自宅前の階段に座り込む、佳市を見つけると、恵理は強く強く抱きしめていた。
冷たい
人肌とは思えない感覚が伝わってくる。
そっと顔を覗くと、僅かに微笑んでいるが、感情は感じられない。
そんな微笑みは見たくない。そんな顔しないで
何であんたばかりこうなるのよ?
不器用だから? お人好しだから?
それだけでこうなるしかなかったの?
「佳市?しっかりしてとか言わない。でも一緒にいて?何とかするから」
苦悶の表情の中に薄っすらと笑う彼。
もっとちゃんとした形でここに来たかった。
恋人として、彼女として来たかったのに。
叶わなかった彼女の想いは、今の彼には伝わらないい。
主人公視点はお休みです。
大人だとこういった状況にはなかなかならないんですけど。
多感な高校生とかだと、心配になって急に押しかけたりしたことありませんか?
私はありません・・・。周りはあったみたいですね。青春ですね。
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