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【完結済】人生に正解なんて存在しない  作者: 空腹の汐留
本章
15/45

12.出来た後輩と不出来な先輩

久しぶりに何か食べよう。


そう思い立ち、冷蔵庫を開けた。

綺麗にすっからかんで、卵すら切らしてた。

この時間からATMに行くと手数料取られるから行かない。

でも財布の中には512円しかない。

カップ麺とオニギリくらいは買えるかな?

勿論、コンビニなんていう()()()には行けないので、遅くまでやってるスーパーまで行く決心をする。




服を着替えていると、ドアを叩く音がする。


ビクッ!と体が反応した。


もしかして、()()()が来たのかもしれない。


急に額が汗ばんでくる。



「紀元センパーイ、永遠でーす。いませんかー?」


明らかに奴とは違う声に安堵した。


声の主は大家さんの孫娘で中学の後輩、【公文永遠(くもんとわ)】だった。


この前、壊れたドアノブを修理してもらったので、その様子でも見に来たのかもしれない。


「今出まーす。どうしたのこんな時間に?」


「良いから開けてくださーい」


急かされる様にドアを開けた。


「やっと開きましたー。生きてて良かったです」


その言葉に何かを見透かされた気がした。


「どうしたの?遅い時間なんて珍しいね?」


「そっちこそ珍しくこんな時間に電気が点いていたので」


そうか。いつもこの時間はバイトしていて、僕の部屋は真っ暗のはずだ。それが電気が点いていると不自然に思えるかもしれない?思わない?良く分からなくなってきている。


「体調崩してて、バイト休んでるんだよね」


「えっ?体大丈夫ですか?取り敢えず中入っても?」


「あ、どうぞー」


まぁ直ぐに帰るだろうと思い、招き入れた。


「相変わらず、狭い部屋ですね・・・」


君がそれ言う?


「センパイなんかやつれてませんか?ちゃんと食べてます?」


「実は調子悪くて、数日食べてない・・・」


はぁ~と深い溜息をつかれ、いきなり頭を小突かれた。色々、台所近辺を物色していたが、本当に何も無いのが分かったのか、無職の旦那でも見るような表情で、僕の前に座る。


「お金無いんですよね?何か余りものでいいなら持ってきますから」


「いや!お金ならあるから!施しはいらないから!」


焦りながら制止する僕の手をするりと潜り抜け、部屋から出て行ってしまった。



人から物を貰うのは苦手で、極力避けてきた。施しを受けているようで、惨めに思えてくる。働けるなら働いて、そのお金で物を買いたい。それが僕のアイデンティティだった。


だからこんな強硬手段に出られるのは正直困る。受け取らないと逆に失礼になってしまい、受け取るしかなくなる。そうすると耐えてきたものが崩壊しそうで怖わい。


戻ってくるよね?来ちゃうよね?



案の定、ものの10分くらいで、永遠は戻って来た。

なんせ自宅は僕が住んでいるアパートの隣だ。


おにぎり二つとオカズを三品ほど皿に盛ってある。

それをレンジで温めてくれる。


久しぶりに舌が味を感じた。


そして惨めな自分と、暖かいご飯に涙が止まらなくなった。


「ちょ、ちょっとセンパイ? どうしたんですか?」


「・・・わかんない」


明らかにいつもと違う僕に、永遠は狼狽えてしまい、アワアワとしている。


水道水を飲むと少しだけ落ち着けた。


そんな僕を見つめる、永遠の優しい表情に吸い込まれそうになる。


「きっと、辛い事、またあったんですね」


違うんだ。


人の優しさに触れてしまうとこうなってしまう。いつも僕の周りから人は去っていった。そんななか生きてきた。たかだが16年の人生かもしれないが、その16年は僕の全てだ。先輩達にも、あいつにも、優しさを感じたときはこうなってしまっていた。

今日だってそうだった。


僕は本当に脆い。


情けない・・・



不意に僕の背中を永遠が叩いてくれた。


トントントン って子供をあやすような


「なんだよ?」


「センパイは自分で抱え過ぎなですよ。無理しないでくださいね? 困った時は誰かを頼っていいんですよ?」


後輩にそんなこと言われると、さらに惨めに感じるじゃないか。


やめてよ。

僕まだ頑張れるから。

大丈夫だから。


「急いで食べないで、ゆっくり食べて下さい?誰も取りません」



また、泣きながら、差し入れてもらったご飯を食べ続けた。


明日は9時予定でアップします。


また明日、心美が暴れます。

どういった価値観なのか想像してみてください。

まだまだ心美の深層心理までとはいきませんが、お楽しみ下さい。

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