11.僕はもう分からなくなっている
自殺未遂バレした夜。
久しぶりにスマホの電源をつけた。
あれ以来、自宅に置きっぱなしになっていた。
連絡を取りたくなかった。
メッセージを見たくもなかった。
どうせ彼女の上塗りの言葉で埋められてる。
そして
僕の予想は当たっていた。
from SNS
9/9
心美:『今日欠席?教室に行ったら、来てないってきいた』12:40
心美:『体調悪いの?行こうか?看病してあげる!』17:33
心美:『気づいたら連絡ちょうだい!』19:12
9/10
心美:『今日寝坊しちゃって、お弁当ないの。ごめん!』8:09
心美:『大丈夫?心配です』17:35
心美:『体調悪かった?ハードワークだったもんね』23:10
昨日
心美:『今日も欠席?佳市の上履き、また悪戯されてたよ?』9:22
心美:『お弁当、勿体ないよ?』12:37
心美:『連絡下さい』23:51
今日
心美:『登校していますか?上履き無くなっていました』8:14
心美:『お休みですか?』11:28
心美:『大好きです。心配です。』12:49
心美:『会いたいよ』17:33
事実と嘘が織り込まれた不快な文が並ぶ。
彼女は浮気現場を目撃された事を知らない。僕が登校している事も知らない。
僕が何も伝えていないから。
だから偽りの言葉を並べれるのだろうか?
『大好き』『会いたいよ』が僕の心を掻き乱す。
他の男とあんなことしておいて、よくこんな言葉が使えると思う。どういった思考回路なのであろうか?理解しようとさえ思わないが。
こみ上げてくるまた胃のムカツキ。
出るものは水分のみ。
そろそろ食べないと本気で死ぬ。
流石に餓死はしたくない。
スマホがピーンと鳴る。
心美:『既読ついた♡やっと元気になれた?会いに行ってもいい?』
また吐き気が激しくなる。
気持ち悪い。
体調も彼女もどっちもだ。
今日は他の男と予定が合わなかったのだろうか?なので今更家に来るとか言いだしたのかもしれない。
こちらは顔を見るだけでフラッシュバックで卒倒しかねないのに。会える状況じゃない。
佳市:『ごめん。大丈夫。ちょっと近々に稼がないといけなくて。だから会えない。ごめんね。』
嘘で固められた言葉に嘘で返したつもり。何が悪いって言うのか?だが気持ちはザワついていた。
心美:『そっか。体調悪いのに頑張るね。でも体が一番だよ?心配だから無理しないでね?明日のお弁当は?』
佳市:『ごめん。暫くは要らない。また宜しくね。』
心美:『そっか。無理しないでね?早く会いたいよ?大好きだよ』
佳市:『おつかれ』
そこで画面を閉じた。
中身の無い会話。
本当はそんな事ないのに、上辺を繕うだけの意味のない会話。自分が使った嘘にやりきれない気持ちになっている。正直こんな事をしたくない。本心から話しをしたい。それなのにあなたは・・・
スマホを布団の上に置き、頭の中で今の出来事を整理する。
彼女はいつも通りだった、なのに僕は違った。
どちらが間違いで、どちらが正しいのか分からなくなる。
何も無い部屋の何も変哲もない天井を見上げる。
ちょっとだけお腹が空いた気がした。
19時に次を投稿予定しております。
主人公、ちょっと諦め気味ですね.........。