7.お昼だョ!全員集合
誤字報告助かります。
ありがとうございます。
昼休憩 準備室は途端に賑やかになる。
2人の先生に加え、ここを卒業した、2人の先輩が加わり、総勢6名での時間になる。
電子レンジや瞬間湯沸かし器も使え、冷蔵庫だって使用可能なこの部屋はご飯時だけ無双できる素晴らしい空間だ。そのため卒業したものも昼食だけは戻ってくる。文明の力には勝てない。
「うぃ~す。おぉぉっ!? 紀元じゃん! 戻ってきちゃったか~」
そう言ってダイナミックに入室してきたのは、3年の【小郡真奈美】先輩。
ゴールデンウイークくらいまではここの住人だったが、トラウマを克服することができ、今ではシャバで元気に頑張っている。
「真奈美先輩、お久しぶりですね。また戻ってきちゃいました」
「私も何回も出戻りしたから、徐々になんとかなるっしょ!」
僕とは正反対で、実に楽観的で、竹を割ったような性格の人だ。
こんな人でも悩みを抱えるんだな、と思うと、少しだけ勇気が沸いたものだ。昔の話しだけど。
「こんにちわー。恵理いるー? あれ? 佳市? 珍しいね」
2年の【浜本由香】先輩が直ぐ後に入ってきて、これでメンバー全員集合。
浜本先輩は何故か俺の名前を下で呼ぶし、やたら距離感が近いので、遠山先輩とは違った意味で対応に困る。つい先日、ここを卒業して、保健室へステップアップしたばかり。
今も実態があるのを確認するかの様に、俺の身体をガシガシ触ってくる。
僕はまだ浮遊霊なんかじゃありませんよ?浮遊しかけただけです。呪縛かもしれないね?
ここからは”女3人寄れば姦しい”とは言ったもので、昼食の時間は爆発的に五月蠅くなる。
そして僕はこの時間が苦手だ。
ただ単に五月蠅いからじゃない。
自分の昼ごはんがあまりにも質素過ぎて もとい 貧乏過ぎて、とても女性の前にお披露目するレベルではない。
米が有ればまだマシで、酷い時は10円菓子数本で済ませる事がある。
決して小食ではなく、本当にお金が足りない。
そして今、バイトも休んでしまっており、当然昼食代など僕には払えない。
幸いな事に心美の件で、食欲もないので、今日は飯抜き決定だ。
「あれ?紀元、今日はご飯無し?」
向かいの机でカップ麺を食していた遠山先輩が俺に気づいた。
「今日は無しですね。いつもの事です」
「あんた、少しやつれてるから、何か口にしなさいよ?お金なら貸してあげるから」
二階堂先生はいつも俺に金貸すコールをしてくれるが、一度も借りたことはない。一度でも借りてしまうと常習化しそうで、それが嫌だ。
「んー。ちょっとアタシ購買行ってくるわ」
まだ食い足りないの?遠山先輩が準備室を出て行った。
まぁあの胸には相当な栄養をため込んでいるのでしょう。
でも、昼時の購買など、生徒でごった返しているので、僕たち外れ者には最難関課題のはずなのによく行けるな~と思う。
「ふ~ん。えりっちそういう事するんだね?」
「小郡さん、恵理は意外とそうなの」
「え~?去年は違ったってば!」
僕が知らない時の話しに加わるわけにもいかないので、ボーっと今日持っていた教科書を眺めて時間を潰した。
「はい。紀元、これ飲んで」
いつのまにやら遠山先輩が準備室に戻ってきて、僕にスポーツドリンクを押し付けてきた。
「ど、どうしたんすか?これ? いいですよ。我慢できますから」
「アタシもそういう時期あったからさ。ちょっとわかるんだよね」
僕たちのやり取りに先生と先輩方が目を合わせた様に思えた。
グイグイとドリンクを僕に押し付けて、遠山先輩は自分が使っている机へ戻った。
「えりっち~ちょっとお話しない?」
「先輩、マジそういうのいいから」
もう先輩2人の会話についていけないので「いただきます」して、スポーツドリンクに口を付けた。何故か蓋が既に開いていたが、遠山先輩が気を利かしてくれたんだろう。
こういうところは変に気が利く人なんだよね。
ちゃんと飲んでますよ?遠山先輩。そんなチラチラ見なくても。
その後も繰り広げられる、女子特有の会話に少し鬱陶しさと、懐かしさを感じながら、耳を傾けていた時だった。
「で、紀元は何で戻ってきたの?」
小郡先輩の一言で、僕の記憶の底に押し込んでいた扉がフルオープンし、あの光景がフラッシュバックする。
もう出るものが無いはずなのに、激しい吐き気が襲い、トイレへと駆け込んだ。
遠山先輩はギャルなのに・・・ヤン・・・ぐふ
19時と20時に短いのを連続投稿予定してます。
重たい内容ですが、進行上必要なので、耐えてください・・・
何とか少し軽くして上手く伝えれないか、頑張ってみます。
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