第94話 誰だって、いつだって
今回は第7章、最終回となります。このアルガルド王国はこれからどうなっていくのか、そして、グレムたちが起こした行動とは…?話の展開に期待しながら読んで頂けたらと思います!
それでは、どうぞ!
ガシャン!!!キイィィィ……
ある兵士が牢獄の扉が開く、そこには俯いているケイローンがいた、ケイローンはその入ってきた兵士に言う。
「なんだ…?遂に俺の死罪が決定でもしたのか?」
「馬鹿なことを言うな、ミハエル王から直々の命令を受けてここに来た。お前と話がしたいそうだ。」
「あいつが…?俺と…?…まだ何か不満があるのかな…。」
そう言ってケイローンは立ち上がってその兵士に付いていった。
トントン…ガチャ……
2回ノックをしてから、兵士は王室のドアを開き、入って言った。
「ご命令通り、ケイローン様を連れて来ました!!」
ミハエル王がその兵士にこう返す。
「ご苦労様、じゃあもう下がっていいぞ。」
「はっ!!承知致しました!!」
そう言って兵士はその部屋から去っていった。その後、ミハエル王はケイローンが座るようの椅子をわざわざ、自分で持ってきて置いて言った。
「これに座ってくれ。」
「……………?」
ケイローンはミハエル王の自分の扱い方に不信感を覚えた。前はもっと乱暴な扱い方だったのに…どうして急に…?
そう思いながらもケイローンはその椅子に座る、ミハエル王も自分の席についてから話し出した。
「兄には信じられないかもしれないが、この話を聞いて欲しい。」
ケイローンはさらに不思議に思った。今、この人殺しをした者を確かに兄と言った。前はお前だった。
「実は昨日、ある冒険者がこの国にできた大迷宮の最終階層を踏破したそうなんだ。」
「ほう…それは凄いな…。」
ケイローンはまだ戸惑いながらも返事をした、ミハエル王は続ける。
「その時なのだが……最終階層にどうやら私たちの父親の魂が乗り移ったワイトがいたそうでね……それを倒した後にある事を言ったそうなんだ…。」
「?待て待て、正気か?そんな事が有り得るのか?」
「だから『話を聞いて欲しい』と言っただろう、取り敢えず聞いてくれ。…その時、父は…『元々は、私が酷い政治を行っていたから悪かったんだ…そうは思っていたが…自分のせいにどうも出来なくて…あの2人には今更だが、迷惑をかけた、すまなかった。と伝えておいて欲しい…。』と言ったそうなんだ。あの暴君は、どうやら俺たちのことをもしっかりと考えてくれていたらしい、それで思ったんだ。」
「はぁ……一体何を思ったんだ。」
ケイローンは少しため息をつきながらミハエル王に言った。
「兄に、王としての私の補佐役を頼みたい。」
「………は?」
一方、グレムたちはギルドに来ていた。
ギルドに入るとすぐに他の冒険者に声をかけられた。
「70階層踏破したって本当ですか!?どんな感じでした!?」
「自分たちのパーティ…40階層で少し辛いんですけど何を直したらもっと深くまで潜れますかね!!??」
「本当に尊敬します!!このギルドに最初に来た時と言い今回の大迷宮の件といい…本当に素晴らしいと思っています。」
グレムたちは「ありがとう」やそれ以外の言葉を少し返しながらも逃げるようにリルルの元へと向かった。
「はぁ……ただ攻略しただけなのに…。」
「それがどんなに凄いことか分かってないんですか!?前人未到なんですよ!?」
リルルにもこう言われる…どの英雄様にだって褒められるのを休む日は必要だろうに……。
「で、今日は何しにここに?」
リルルはグレムに少し首を傾げて言った。
「最後の挨拶です。」
「えっ…。」
リルルはいきなりのグレムの発言に少し涙を零す、グレムは心配して言う。
「ああ、すみません!本当にいきなりで!こんなにお世話になっておきながら、突然こんなことを言われたらさすがに少し寂しい気分になりますよね!!ごめんなさい!!」
リルルはそのグレムが必死に出した言葉に涙を拭いてから言った。
「こちらこそ…お世話になりました。これから先も、未来永劫、あなたの功績はこのギルドのみならず、他のギルドでも称えられるでしょう……本当に…本当に……ありがとう…ございました…うぅ…。」
リルルは我慢していたようだが最後の方で抑えていた感情が爆発して涙を流してしまった。グレムはハンカチを取り出してリルルの涙を拭きながら言った。
「また、絶対に会いに来ますから。それまでは…あなたはあの綺麗で、可愛い笑顔のままでいて下さい。」
リルルはその言葉に泣きながらも、あの綺麗で、可愛い笑顔を作って返事をした。
「はい!ずっと…待ってます!!」
「俺が…お前の補佐…?いきなりどういうつもりだ?俺は人殺しだぞ?」
ケイローンはミハエル王のいきなりの発言に驚いて言葉を返す。
「その事は確かに大事ではあるが、水に流そうと思ったんだ、父は…自分の政治の仕方が悪いことを分かっていた…分かっていたのにやめられなかったんだ…それに…兄が父を殺そうとするのも、分からなくはなかったからな。」
「それでも…国民は認めるのか?放送したんだろう?酷い野次を飛ばされるかもしれんぞ?」
「実は…放送なんてしていないんだ。国民は皆、まだあの事件の真相を知らないままだよ。兄が牢獄に入っていたっていうのも、誰にも広めていない。だから…大丈夫だ。」
「お前…なぜ…あんなにも怒ってたじゃないか…しかもお前、『私たちの父を焼き殺したお前に、就ける場所などどこにもありはしない。』とも言ってたじゃないか…それなのに…なぜ…。」
「気が変わったんだ、父にも悪い所があったこと、兄にも悪い所があったこと、これで差し引き0、つまりは…0からのスタートを、今から始めようという事だよ。そのためには、兄の能力が必要だ、私はあなたの背中を必死に追いかけていた、そんな人が補佐についてくれるのであれば、私も安心だ。どうだ?やってくれるか…?」
「はぁ……分かった、分かったよ。その位置に着かなきゃ俺もスタートを切れないからな。あとお前…『気が変わった』っていうの…嘘だろ。あの時は本当にお前は俺に怒っていた、だから誰かに何かを言われたとしか考えられない……どうせ、あの冒険者なんだろう?」
「ハハハハハ!!さすが兄だ、バレてしまったか。そうだよ、彼に上手く言いくるめられたという訳だ、凄い冒険者だろう?」
「とにかく意地を張るお前を言いくるめるのはかなり難しいが…彼ならできるだろう。それだけの能力を持ってるって感じがしたからな。お前もお前だ…人殺しを王の補佐なんて…。」
「ハハハ!!これから宜しくな、兄様。」
「その呼ばれ方腹立つな…兄か兄上にしてくれ。」
そう2人は笑って、互いの手を握った。
『あなたは心のどこかで思っていたんじゃないんですか。このままだと1人になってしまうと、家族唯一の生き残りになってしまうと、そして何より……悲しく、寂しくなってしまうと…。』
『違う!!私は!!そんな!!そんな………。』
『王だからって、全てを飲み込めばいいんじゃないんです。たまには考えて、悩んで、自分で答えを導き出しましょうよ、これから先のあなたのためにも。』
『………ありがとう。』
『………それでですがミハエル王、あなたの兄の事ですが…今回の王城の事件の話は水に流しませんか?』
『君は…急に何を…。』
『だって、ゼイザス王にも悪い所があった、そして父の暗殺をしたケイローンにも悪い所があった、これで、差し引き0じゃないですか。だったら、あの素晴らしいほどの能力を持ったお兄さんを放っておくのはどうかと思います。しかも、ミハエル王、国民にケイローンのこと、放送してないでしょう。』
『!?なぜ知って』
『あなたは本当に家族を大切にする人だ、なら、この際、頼りましょうよ。あなたが長年背中を追いかけ続けた、そのたった1人の兄の事を…。』
グレムたちが馬車に乗り込もうとしていると…声をかけられた。
「グレム君!!」
それはミハエル王だった、グレムはすぐに言葉をかける。
「上手くいきましたか?兄の説得。」
「ああ!!問題なく、補佐役に命じられたよ!!ありがとう、君の言葉が無ければ、この国の時間はいつまでも止まったままだった!!やっと先に進める!!本当にありがとう!!」
「気にしないでください、ただ、言いたい事を言っただけですから。それでは、お元気で。」
「ああ!!君も気をつけて!!」
グレムが最後に馬車に乗り込むと、すぐに馬車は動き出した。
この国の時間は、あの事件以来、ずっと止まったままだったのかもしない。
暴君の王と、それを許さなかった者が起こした大事件、あんなにも歴史に残る悪い事は無いだろう。
だが人は、誰だって、いつだって、悪い事を考えてしまう。少しの弱みに付け込まれ、自分の理性が効かなくなり、行動を起こしてしまう。
それを克服するのは難しい、しかし、克服するために必要なのは、自分の理性じゃない、他人からの声かけだ。そうやって、付いてきてくれる、何かを言ってくれる人が近くにいることが、1番大切なのであろう。
「あ!!」
グレムは急に声を出した、エルとルリは少しびっくりする。その後にエルが聞いてきた。
「ご主人様…何か忘れ物でも…?」
「いや、最高の軍事力を見せてもらうの忘れてたなって思って…。」
「あ!そういえばそうですね!けど、戻りませんよ!!もうお別れはしたんですから。」
「くっそ〜見たかったな〜、まぁいいか…。それより次だ次、未来の事を考えよう。」
「未来ですか…なんかワクワクしてきました!!」
「そうだろう?じゃあ向かうぞ!!次の王国に!!」
「もう動いてますけどね!!」
そうエルが言葉を言った後、3人で笑った。
馬車内は、楽しそうな笑い声で溢れていた。
どうでしたでしょうか?
次からは第8章、また新たな話が始まります…今度はグレムがまさかの教師に……?乞うご期待下さい!!
それでは、また次回お会いしましょう!




