第88話 神出鬼没の凶獣
今回は引き続きダンジョン編です!!悪質な嫌がらせ、もとい人殺しをしていたワイドたちを倒した後のグレムたちを描いています。是非、楽しんで見ていってください!
それでは、どうぞ!
40階層〜50階層にかけて、探索をしに来た冒険者たちのパーティに、あまりにも残虐な殺し方をしていたアダムアビスランクの犯人、ワイドたちを倒したグレムは、1度ポータルを使って地上へと戻り、拘束したワイドたちを置きに行こうとしていた。
「これでよしっと、…俺は1回ポータルで地上へ戻ってこいつらを置いてくるよ、どうやら話によると、自分が行った階層まではすぐにポータルで戻れるらしいし、エスパーダさんにもああ言ったしな。」
「分かりましたご主人様!!じゃあ私とルリちゃんはここで待ってますね!!」
「大丈夫か…?2人に何かあったら…。」
「舐めないで下さい!!これでも私たちはダイアモンドですよ!!ご主人様が強いように、私たちも強いんですから!!」
エルはドヤ顔で自信ありげに言った、君は可愛いなぁ。ルリもそのエルの言葉に頷く。
「そっか…じゃあ、ちょっと行ってくる…それで、あなたはどうします?」
グレムはパーティの中で、自分以外の全員が殺されてしまった女性に声をかける、そして言葉を続けた。
「このままここにいても魔物が来ますし、せっかく助かった命です、パーティの皆も、きっとあなたには生きていて欲しいと思っていると思います。だから、1度地上へ戻りませんか?」
グレムは彼女に問いかける、すると彼女は少し俯いた後、顔を上げて言った。
「そうですね…皆の分も…生きなきゃ…、はい…地上へ戻ります。そして、パーティの皆に恥じないよう、生きていこうと思います!」
グレムはその言葉を聞いて、彼女の方へ手を差し伸べて言った。
「それでは、行きましょう。」
「はい!」
その女性は笑顔で言った、その瞬間、シュン!!とグレムとその彼女そして、拘束したワイドたちは消えた。
シュン!!
「よっと…本当に地上へ出れた…不思議だな。」
グレムたちが着いたそこは、大迷宮の入口前だった。来た時に入口前にいたお爺さんはまだ同じところに立っていた。グレムは女性に言う。
「それじゃあ、ここで。どうか、お元気で。」
「これはせめてものお礼です。」
チュッ
「では、ありがとうございました!そちらもお元気で!!」
彼女はそう言うと、町の中へと走り去っていった。グレムはあの女性に頬にキスをされた事を確認するように、キスされたところを手で摩る。
「『せめてものお礼』だとしても、大きすぎるほどじゃないかな。」
そう言うと、入口前にいたお爺さんは笑った。
「ふぉっふぉっふぉっ。お主ら、災難じゃったの、犯人を捕まえてくれたのはお礼を言おう、ありがとう。」
「いえいえ、当然のことをしたまでですからっと。」
そうグレムは返して、お爺さんの近くに拘束したワイドたちを置いてから、そのお爺さんに言った。
「申し訳ないのですが…エスパーダさんが来たら事情を話してこいつらを引き渡してもらえませんか…?」
「ふぉっふぉっふぉっ、こんな老人を頼るとは、少し高齢者に対しての敬いが足りてないんじゃないか?それに…そんなこと忘れてしまうかもしれんぞ?」
「忘れませんよ、だってあなた、この大迷宮の精霊でしょう?だからここに長時間立っている、そして、話してもいないのにこっちで災難が起こったことを知っていた…ね?そうでしょう?」
「ほぉ…見破られたのは久しぶりじゃな…。そこまで分かられていたら何も言うまい、分かった、エスパーダさんでいいんじゃな?あの〜紫色の髪の鎧の美人の。」
「はい、お願いします。では、また。」
そう言うとグレムはポータルで元いた階層へと戻っていった、その大迷宮の精霊は空を見上げて、その後に言った。
「アウストレラスよ……星の導きは本当じゃったんじゃな…。」
そう言って、その精霊は1粒の涙を流した。
シュン!!
「よっと…。」
グレムが元いた49階層へと戻ると、すぐにエルとルリに声をかけられた。
『おかえりなさい!!』
「ああ、ただいま。じゃあ、先に進むか!」
「レッツゴーです!!」
「おー…。」
エルとルリは元気に声を上げた。
「よし、あった、50階層目への階段!!」
「結構探しましたね…思ったより、時間がかかりました…。」
「どうやら構造を見るに、下の階層へ進めば進むほど大迷宮も広く、大きくなっているっぽいな。」
「成程…だからこんなに時間が…でもルリ…頑張る…。」
「まぁでも、頑張りすぎてもあれだし、疲れたら途中で地上へ戻って休もう。けど、地上へ戻ってみた限り、まだ夕方にもなってなかったけどな。」
そう言って、グレムは50階層目への階段が続く扉を開けて、階段を下っていく、2人はグレムの背中に付いていった。
階段を下り終わり、また扉を開けるグレム。そして扉の先へと進み、こう言った。
「ここが…50階層…。」
グレムは声を上げる、それもそうだ、なぜならさっきまでただの洞窟にいくつもの分かれ道が続いているだけの大迷宮だったのが、いきなり、木々が茂り、自然が溢れたとても大迷宮とは思えない景色に変わったからである。
「本当にここは大迷宮なんですか…?信じられません…。」
エルが言うと続けてルリも言った。
「洞窟じゃない…しかも…明るい…ルリ…驚き…。」
全員がその光景に見とれていた、すると、どこからともなく狼の魔物が何体も出てきた。エルとルリはすぐに杖と短剣を構える、するとグレムは自分から前に出ていき、こう言った。
【引け…我の通る道に来るんじゃない。】
そう言うとグレムの周りの狼たちは震えだし、「キャンキャン!!」と言って散り散りに逃げていった。その時、グレムの目は赤く光っていた。
早速エルが興味を湧かせて聞いてくる。
「ご主人様!!今のは何ですか?新しい魔術ですか?」
「いや、正確に言うと魔術ではない。まぁ…追い追い説明しよう…。」
「今じゃダメなんですか?」
「説明するのが難しくてな…、ちょっと理解するのにも説明の仕方を考えるのにも時間がいるから…今は置いておいてくれ。」
「分かりました、楽しみにしておきます♪」
「いや、そんな凄いことでも無いけどな…。」
「ご主人様に凄くなかったことはありません!!全部驚かされるものばかりでしたよ!!」
エルはそう言った、グレムは「ありがとう」と言ってエルの頭を2回優しくポンポンと叩いた。
「特に…何も無かったな…。」
グレムたちは50〜54階層まで、ほぼ何も出来事が起こらないまま、55階層への階段にたどり着いてしまった。
「魔物はいたんですけどね…あんまり好戦的じゃなくて、こちらに気づいても無視されましたもんね。」
「ルリは戦わせて欲しいのに…大迷宮…よく分からない…。」
「ま、まぁきっと55階層には何かあるさ、何故なら最高到達者が辿り着いた階層だからな!!」
そう言ってグレムが55階層への扉を開けると…中には階段ではなく、小さな闘技場の様なものが設けられていた。
グレムたちが中へと入ると、周りが青い炎の松明で照らされる。なるほど…そういう事か…。グレムは何かに気づき、エルとルリに言う。
「エル、ルリ、戦闘準備は出来てるか?」
「はい!!ばっちり!!」
「ルリも…大丈夫…!いける…!!…けど…何で…?」
「すぐに分かる、よし、じゃあ行くぞ。」
そう言ってグレムたちが小さな闘技場のような円の中へとはいると…
ドスン!!!
正面に見たことも無い、両手に片手斧を持った巨大な魔物が上から降りてきた、エルとルリは驚きながら言う。
「ジャ、ジャイアントオーク……?」
「いや…それにしてはちょっと姿が違う…あの魔物は…一体…。」
ルリがそう言うと、グレムが返事を返した。
「そうだ、あれはジャイアントオークじゃない。あれはーーーー」
「ギャオオオオオオオオオォォォ!!!」
その魔物は敵を前にして、大きく咆哮をした、グレムはその後に言った。
「ーーーミノタウロスだ。」
そして、後ろへ少しエルが引こうとすると…
「熱っ!!なんですか!これは…!!」
その3人とミノタウロスがいる円の外側には、青い炎で壁が作ってあり、逃げられないようになっている。
「逃げ場も無し…か…エル、ルリ、行くぞ…!!」
『はい!!』
「ギャオオオオオオオオ!!!」
ミノタウロスは咆哮をしながらグレムに突進してきた、グレムはその場から動かずに、思いっきりミノタウロスの頭に拳を入れた。
バコォン!!!
ミノタウロスは仰け反って、後ろに倒れそうになる、その後ろにはルリが短剣を持って構えていた、そしてジャンプをしてミノタウロスの背中を斬りつける。
「<<獣神の連撃>>」
ズバン!!ズバババババン!!!
目にも止まらぬその連続する斬撃は、ミノタウロスの背中にいくつもの深い傷痕を作った…だが…
「ブモオオオオオオォォォ!!!」
ガッッッキイイィィン!!!
ミノタウロスは振り返って2本の斧を同時にルリに目掛けて振るった、ルリは短剣で何とか受けるが上に跳ね飛ばされてしまった…と思うと…
ルリはニヤッと笑って空中で回転し、天井を思いっきり蹴ってとてつもない速さでミノタウロスに突っ込んだ。その短剣には『バチバチ』と雷が宿っていた。
『私に…雷魔法が…?』
『そうだ、俺がルリの適正魔法を調べた時、微かだが、雷の属性を検知した。』
『でも…ルリ…どうやって魔法を使えばいいか…分からない…。』
そうルリが言うと、グレムはこう返した。
『魔法に使い方は決まっていない、だから、ルリがこう使いたいと思えばきっと出来るさ!俺が保証するよ。』
『ご主人様…、うん!ルリ…頑張る…!!』
バチバチバチバチッ!!!
「ありがとう…ご主人様…。」
ルリはそのままミノタウロスを斬りつけた。
「<<迅雷の爪痕>>!!!」
バリバリバリバリッ!!!
ミノタウロスにはまるで雷に打たれたかのように全身に電撃が走る、グレムがその時に言った。
「エル…トドメは任せた。」
エルはその命令が来るのを分かっていたかのように詠唱を始めていた。
「<光の精よ…今こそ我の目の前に佇む巨大な悪を討ち滅ぼす大剣を授け給え>!!!」
「<<天の大剣>>!!」
エルが右腕を上げたその先に、光で出来た大きな剣が現出する、そして、エルはその右腕を思いっきり下げた。
ドオオオオオオォオォォォン!!!!
その大きな光の剣はミノタウロスを真っ二つに斬り裂いた。半分になったミノタウロスは地面にドシャッと倒れた。
「やった…。」
エルは力が抜けたようにその場に座り込む、すると、グレムがこちらに走ってきて、さらに抱きしめてきた。
「エルー!!よくやった!!いいチームプレイだったぞ!!ありがとう!!」
ご主人様とのあまりの近さにエルは戸惑って口が上手く動かないが、必死に言葉を返す。
「い、い、いえ!!ご、ご主人様が…私に任せてくれそうだったので…やっただけ…です…!!」
「それでも良かったぞ〜!!これなら他のも楽勝だな!!」
グレムはそう言った後、こっちに走ってきたルリも抱きしめて、褒めた。
「ルリ〜!!いつの間に身につけてたんだ!!ご主人様はびっくりだ!!良くやってくれた!!」
「これも…ご主人様の力があったお陰…私は別に…。」
「そんな事ないさ!!出来るようにする為に自分で努力したんだろう?まずその努力を称えたい!!頑張ったな!!ルリ!!」
グレムはさらに力強くルリを抱きしめる、ルリは顔を赤くしていた。
そうしていると、どこからか声が聞こえた。
【天晴…まさに天晴だ…。】
どこから声がしているのかとグレムたちが耳をすませると、そのミノタウロスの死体から声がしているのに気づいた。
【初めて負けた…前にここに来た冒険者はつまらない程、弱き者たちであったからな…。】
グレムはその言葉に奴らの事を思い出しながら返答する。
「きっとそいつらは、自分たちのランクに自惚れて、大した実力を持っていないのに俺たちでも勝てると思い込んでいるような奴らだったからだろう。」
【お主の言う通りだ…確か…そいつらは『アダムアビス』と言っていたな…お主たちは…その上のランクとやらなのか…?】
「ああ、ダイアモンドって言うんだ。」
【『ダイアモンド』…ありがとう、覚えておこう。私はここから先へ行くための門番のような者、お主らはその私を倒した。さぁ…行くがいい。更なる試練がこの先に待っているかもしれんがな。】
「ありがとう、こっちもお前みたいな奴と戦えてよかったよ、じゃあな、ミノタウロス。」
【礼なんて…いや…お主らからなら、有難く頂いておこう。では、さらばだ…】
そう言うと、ミノタウロスの死体は塵となって消えていった、グレムは2人に言う。
「さぁ、行こう、冒険が待ってる。」
「『更なる試練』…ワクワクしてきました!!」
「エル…けど今度は…私がトドメを刺したい…譲って…。」
「え〜!!ま、まぁ1回くらいは良いですけど…。」
「あははは!2人とも、交代交代だな。くれぐれも喧嘩はするなよ?」
3人は笑いながら、次の階層へと足を運んでいった。
どうでしたでしょうか?
次回からは正に未知の階層へと足を運んでいきます…グレムが少し何かに悩んでしまったり…?これ以上は次回で!!楽しみにしていてください!
それでは、また次回お会いしましょう!




