第87話 不純なアダムアビス
今回は前回の後書き通りの話、ダンジョン内で悪いことを企む奴らが…?という話です。書くのにかなり時間がかかりましたが、その分今回は読み応えがあると思いますので是非、楽しんで読んでいってください!!
それでは、どうぞ!
グレムたちは引き続きダンジョン探索を行っていた、現在は40階層目に到達したところである。
「あれ?エスパーダさん?」
グレムは見覚えがあったため、ある鎧を着た女性に後ろから声をかける。エスパーダはその言葉に反応してこちらに振り返って言う。
「おお、グレム君たちじゃないか。君たちもダンジョン探索に?」
「はい、そうですが…王国騎士団の団長とその団員たちが何故ここに?」
グレムが言うように、40階層への入口付近にはエスパーダの他に、王国の兵士たちが集まっていた。
「いや、実はだな、最近、40〜50階層の間で悪いことを企む奴らがいてだな…いわゆる警備に来ている所だ。」
「詳細を聞いていいですか?自分たちもこの後、進むうちにその『奴ら』に会うかもしれませんので。」
エスパーダは頷いてから言った。
「どうやら、その『奴ら』はかなり優秀な実力者なのだが…その力を使って財宝を強引に横取りしたり、他のパーティを危険に晒すようにわざとモンスターハウスに行かせたりしている。挙句の果てにはトラップをわざと発動させてそのパーティの命に関わる行動もするらしい…かなり悪質な輩だ。」
嫌がらせ……にしてもやりすぎだ。最終的には冒険者の命に関わるようなことも平気でやっているのか…許せないな…。グレムはエスパーダに言った。
「分かりました、注意しながらもそいつらを見つけたらなるべく拘束しますね。そうしたら帰る時に地上かエスパーダさんの所へ持ってきます。」
「例え君だろうと、相手もかなりの実力者だ…アダムアビスランクが何人もやられている…くれぐれも気をつけてな。あと、協力、感謝する。」
「いえいえ、それでは。」
そうグレムは言って、エルとルリを連れてその場から去っていった。エスパーダ団長は去っていくグレムたちの背中を不安そうに見届けていた。
ズバァン!!ズバン!!ズバン!!
「よし…こっちは終わり…。ご主人様の方は…!」
ルリは任された方向の敵を全て倒し終え、振り返った。すると、グレムが魔術を使おうとしていたので、目を輝かせた。グレムの足元には、青色の魔法陣が光りながらほとばしっていた。
「<<青の水竜>>」
そうグレムが唱えると、水でできた大きな竜がグレムの掌から出てきて、グレムの目の前にいた敵たちをバクン!!と飲み込んだ。
飲み込まれた敵たちは、まるで本物の竜に食べられたかのように消化されていく。ルリはより一層目を輝かせた。その水の竜は、敵を殲滅し終わると、グレムの掌の中へと戻っていった。
グレムはそうして一段落着くと、「ふぅ」と言って、汗を拭った、そして岩の上に座る。
「だいぶ下まで来たな〜、敵の数も強さも確かに段違いだ、一旦少し休憩にしよう。エル、こっちこい。」
現在は48階層目、1階層目とは比べ物にならないほどの差をグレムは感じていた。グレムがそう言うと、ルリはその隣に座った、エルはその反対側に座る。グレムはエルの肩に手を当てて、魔術を唱えてから、言った。
「<<供給>>」
「エル…どのくらい魔法を使った?」
グレムの言葉にエルは返事をする。
「大体の敵はご主人様とルリちゃんに倒してもらったので、自分は大丈夫です!」
「嘘をつくな、さっき<<天の投槍>>とか連発してたろ。」
「バレましたか…はい…カツカツまででは無いですが、まぁまぁ魔力は減っています…。」
「それならちょっと多めに魔力を渡しておくぞ、心配だし。」
「いえいえ!!ご主人様に迷惑をかける訳には…。」
「いいんだよ、仲間だろう?助け合っていかなきゃ。それに、俺の魔力にはまだ全然余裕あるし。」
グレムがエルに<<供給>>で自分の魔力を分け与えながらもそう言うと、エルは気になったのか聞いてきた。
「ご主人様の魔力って…どれくらいあるんですか?」
「そうだな〜、無限…って言ったら語弊になるかもだけど、そこら辺の魔法使いの魔力の何万…いや何億…?…これじゃあ分かりにくいか、じゃああれだ、コップ1杯の水の量を一般の魔法使いの魔力量とすると、俺は海の水の量くらいかな。」
「う…海…ですか…?」
「うん、海。それくらいはあると思うぞ、あっと、そろそろいいか…。」
グレムはそう言ってエルの肩から手を離した、その後にルリに言う。
「ルリも疲れたろ、そんな時のためにこんなものを持ってきました。ジャン!!エダカの実〜!!ほれ、食べてみろ。」
グレムはそういった後、1つのその木の実をルリに渡した。ルリは早速口の中に入れる、すると、どこからともなくとてつもない幸福感と、力がみなぎるような感覚を得た。ルリは驚いて自分の体を見始める。
「あれ?ルリもしかして『エダカの実』食べたの初めて?」
ルリは大きく首を縦に振って頷いてから言う。
「うん…!!ご主人様…!!何これ…!!凄い…!!」
ルリは元気いっぱいになったのかしっぽまでフリフリさせている、可愛いっ。グレムはそう思いながらも説明し始めた。
「『エダカの実』はだな…この世界の中でもたった100本位しか無い木、エダカから取れる木の実でな。それを食べたものは、幸福になり、さらに今まで出せなかった力を引き出すことが出来るようになると言われているんだ…そんな感じがしたか…?」
ルリは首を思いっきり縦に振る、だがその後にルリは言った。
「けど…それだけ希少なら…値段とかも高いはず…、ご主人様…まさか…私の為に…?」
そうルリに言われるとグレムは顔を赤くした、そして立ち上がって言う。
「よし…!!じゃあ行くか!!」
「これは図星ですね…分かりやすい。」
エルがそう言うとルリは言った。
「でも…元気が出たのは本当…ご主人様…ありがとう…、これでまだ…役に立てる…!!」
ルリがそう言うと、グレムは「気にするな」と返した。
「あった〜階段…これを見るの何回目だろう。」
グレムたちは次の階層、49階層目に続く階段を見つけた。エルがそのグレムの言葉に対して言う。
「これで…49回目ですね…。」
「あと30階層以上あるのはちょっと骨が折れるな〜、きりがいい階層で一旦地上へ戻るか〜。」
そういいながら49階層目に向かって階段を下りていくと…悲鳴が聞こえた。
「誰か!!助けて!!」
グレムたちは急いで階段を下り、49階層目の扉を開き、悲鳴が聞こえた方向へと走った。すると…
悲鳴を出したであろう女の人は、何かとてつもなく重いものに引き潰され、倒れていた。辺りにはかなり新しめの血が飛び散っている。
グレムはすぐ彼女の脈を取る、まだ弱々しく体に血が流れているのを感じ、エルにすぐに言った。
「エル!!まだ生きてる!回復魔法をかけてやってくれ!!」
「は、はい!!」
「<<完全回復>>!!」
そうすると彼女は、数秒の間静かだったが、いきなり咳き込み始めた。
「ケホッケホッ……あれ…?私…。」
「大丈夫ですか!?」
グレムがすぐに声をかける、すると、彼女は反応した。
「助けてくれたんですね…ありがとうございます…ですが…。」
彼女はそう言うと、ある方向に顔を向けた。グレムは彼女を抱き抱え、エルとルリを連れて、彼女が顔を向けた方向に走ると…
「これは…。」
その目の前には、男2人と、女の子1人が無惨に殺されている光景が広がっていた。ある男は上からとてつもなく重いものに潰されたように死んでいて、他の1人は壁に押しつぶされていた。女の子は至る所に矢が刺さって、見るのも嫌になるくらい酷いものだった。
その光景に、エルは思わず目を伏せ、ルリは少し怖がっていた、グレムが抱き抱えていた女性が話し始める。
「全員、私のパーティメンバーです…私も同じように、発動させてもいないトラップに襲われました…急に後ろから、大きな丸い岩が転がって来たんです…。」
グレムは思っていた。間違いない…こんな事をするのは、エスパーダさんが言っていた『奴ら』しかいない…、ふざけやがって…。
グレムから黒いオーラが出てくる、抱き抱えられていた女性はそのオーラの恐ろしさに鳥肌が立った。
そうしてグレムたちがその場所に立っていると、目の前にあった岩の上から男3人が出てきた、そして言う。
「どっかで見た顔だな!おい!!やっとやり返せるぜ…。」
「あの時は世話になったなぁ…お陰で俺たちは笑い者だ。」
2人がそう言うと、最後の1人はこう言った。
「よぉ…英雄様…。3日…いや、4日ぶりか?ここならギルドの規約を無視してお前たちを殺せる…存分に楽しませてくれよ…?」
その3人は、この国に来た初日、ギルド内でギルドに対して失礼な態度をとっていた3人だった。グレムは3人に向かって笑いながら言った。
「ああ、お前らだったか…な〜んだ。王国の団長までもがかなりの実力者って言ったから期待してたけど…あははっ、雑魚3人じゃないか!!」
「てめぇ…。」
その男の中の1人がグレムのところに向かおうとしたその時、その2人を指揮していた男、ワイドがその男を止めて言った。
「行くなダレンス、奴の思う壷だ。単純な実力じゃ、俺たちはあいつに敵わない。」
もう1人が言う。
「けど、今までそんな奴いなかったじゃないですか!!いけますって!!あいつの『英雄』も、どうせ話を盛っているにすぎませんよ!!」
「黙れバレク、どうせなら俺たちの本当の実力を見せてやろうぜ…?」
ワイドがそう言って笑うと、他の2人もニヤリと笑った、グレムは言う。
「作戦会議は終わったか?」
するとワイドは笑いながら言った。
「ああ、バッチリだ!!地獄を見せてやるよ…。」
「じゃあ、俺も地獄を見せてやる。」
そう言った瞬間、ワイドたちは大迷宮のトラップを発動させ始めた。
グレムは抱き抱えていた女性を安全な場所に下ろし、エルとルリにも戦いずらくなるから待っていてくれと言って、自分から罠に当たりに行く、その女性が言った。
「無理ですって!!逃げてください!!」
その言葉を聞いたワイドは笑いながら言った。
「へへっ、どちらにせよもう遅ぇよ!!!」
グレムの元にはとても大きな丸い岩が転がり、さらに何本もの矢が飛んできていた。ワイドたちは「勝った!!」と思った次の瞬間、
ドカァン!!!
「は?」
トラップで転がってきた丸い岩は、グレムが殴るとまるで脆い粘土で作ってあったかのように簡単に割れた。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
グレムは今度は飛んできた矢を…
ドンッ!!っと飛んで全て空中でキャッチした。そしてそれを、そのままダレンスの元へと思いっきり投げた。
「へ?」
ダレンスはあまりに一瞬のことで反応出来なかった、全ての矢が彼の体に刺さる。
ドスドスドスドスッ!!!
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」
ダレンスはあまりの痛みに悲鳴を上げた。グレムは地面に着地して言う。
「言ったよなぁ!?『地獄を見せてやる』って!!ギリギリ死なない程度に怪我を負わせて、お前たちにやられたパーティ全員の分、やり返してやるよ!!」
「やってみろ!!」
ワイドはそう言ってまたトラップを発動させる、バレクは少しダレンスの事を思って、戸惑いながらも、ワイドのようにトラップを発動させた。
今度は左右から壁が迫ってくる、そして逃げ場を無くすように前からも後ろからも魔物が迫ってきた。グレムは全く戸惑わずに、魔術を唱える。
「<<分身>>」
そう唱えると、グレムは3人に分身した、そして、迫り来る壁を1人が普通に止めて、残りの2人はまた迫り来る魔物たちを倒すために、1人は前、もう1人は後ろに立ち、魔術を唱え始める。
前にいたグレムの足元には赤い魔法陣が、後ろにいたグレムの足元には黄色い魔法陣が光りながらほとばしる。そして、それぞれが同時に詠唱を始めた。
「<炎の神よ!今こそ我に目の前の全てを焼き尽くす炎の力を与え給え>!!!」
「<雷神よ!天地を揺るがすその雷鳴を今、我の手で轟かせん>!!!」
「<<炎神の燼滅>>!!」
「<<轟く稲光>>!!」
ボワアアアアァァァァ!!!!
バチッ…バリバリバリバリッ!!!!
凄まじいほどの炎と稲妻が魔物に向かっていく。その炎は魔物を全て灰と化させ、稲妻は一瞬で魔物を貫いていく。そして、稲妻はそのまま、グイッと曲がり、バレクの元へと向かっていった。
「ひっ!!」
バレクはそれに気づき、必死に避けようとする…だが、その稲妻はどこまでもバレクを追尾してきた。
「何で…!!どうして…!!こんな魔法見た事な…ぎゃああああぁぁぁ!!!」
バリバリバリバリッ!!!
バレクはその稲妻の餌食になった、彼はそのまま倒れて気絶した。
「さぁ、残るはお前だけだぞ、ワイド。諦めたらどうだ?」
「ここまでこけにされて…諦められるか!!あれを発動させてやる!!」
そう言ってある壁の一部分をワイドは押し込んだ、それに伴ってトラップが発動した。
すると、グレムの上から液体が降ってきた、グレムはそれを普通に受ける、すると、ワイドは笑いだした。
「ハッハッハッハッハ!!!成功だ!!お前が今被った液体は、全身に痛みを走らせて、最終的に死に至らせるという毒だ!!あまりに簡単だったな!!俺たちを舐めて油断しすぎたんじゃないのか!?ハッハッハ!!!」
「ご主人様!!」
エルがそうグレムを心配する、ワイドはずっと笑っていた…だが…
「それで?毒が何だって?」
グレムは人間には致命的な苦痛を味合わせる毒を食らったはずなのに、平気にしている。ワイドはそれを見て、その言葉を聞いて、驚きながら言う。
「なぜ…苦しまない…?人が死んでもおかしくない毒だぞ…?」
「残念ながら俺に毒は通じない、昔から毒に耐性を付けていたからな。今ならルビアスネークの毒を食らっても平気でいられる、じゃあ…試してみようか…。」
そう言ってグレムは魔術を唱える。
「<<集結>>」
グレムの掌の上に、そのグレムが被った毒の液体と、地面に広がっている毒の液体が集まっていく。そして、それは1つの紫色の球体となった。
ワイドはこれから何をされるのか分かったようで、必死に逃げようとする。
「ま、まさか…やめろ…やめろ…!!!」
「これは今までお前らにやられたパーティ全員分の苦痛だ、黙って受け取れ、この汚れたアダムアビスが。」
ビュン!!!
グレムはその毒で作った球体をワイドへと投げた、ワイドは必死に走って逃げたが、無駄だった。
バシャン!!!
「あ、ああ…うわあああああぁぁぁ!!!!」
ほぼその毒がかかったと同時に体に激痛が走る、痛い、辛い、苦しい。その全てがワイドを襲った。
「終わったな…。」
グレムがそう言うと、エルとルリが目を輝かせながら近づいてきた、エルが言う。
「さすがご主人様です!!!あんな数の罠や魔物を相手に、一瞬も引けを取らないなんて…やっぱり凄いです!!」
「ありがとう、エル。」
グレムは笑顔でそう返し、エルの頭を撫でた、その時、グレムはすぐに手を離した。しまった、ルリにやる感覚でやってしまった…。
「ご、ごめんエル、嫌だったか…?」
「そんなことは無いです…むしろ…嬉しかったです。」
そう言ってエルは顔を赤くした、可愛いいいいい!!と思っていると今度はルリが言ってきた。
「ご主人様…判断する早さが普通の人と違う…本当に凄い…あんな一瞬であの判断力…ルリ…尊敬する。」
「ルリもありがとう。」
グレムはそう言ってルリの頭を撫でた、嬉しいのかしっぽをフリフリさせている。2人とも可愛いすぎてやば〜い!
そうしていると、あの時、助けた女性が話しかけてきた。
「あの…窮地を救って頂きありがとうございました!!しかし…あれほどの実力者をあんな簡単に…少し失礼ですが…あなたたちは、何者ですか…?」
「『"元"魔王様が異世界旅行を楽しむみたいですよ?』というパーティ名でダイアモンドランク冒険者をやらせてもらっています。私はグレム、こちらのダークエルフは仲間のエル、こっちの獣人は仲間のルリと言います!」
グレムがそう自己紹介すると、彼女はあまりの驚きに絶句した。
どうでしたでしょうか?
次回はまさかのグレムたちに思わぬ危機が!?という話になると思われます!期待して待って頂けたら嬉しいです!
それでは、また次回お会いしましょう!




