第84話 完成された『呪い』
今回から話の中心となる『呪い』について関わっていきます…一体どのような呪いで、誰にかけられているのか…少し推理しながらでも見ていってもらえると嬉しいです!
それでは、どうぞ!
「エル、ルリ!!申し訳ないが今回はこの後に用事が出来たから早めに終わらせるぞ!!」
グレムがそう言うと、エルとルリは同時に返事をした。
『はい!!ご主人様!!』
今回、受けているクエストは、『キマイラ2頭とルビアスネークの討伐 討伐難易度星28』である。
キマイラ2頭は別にそこまで強くはないのだが、問題はルビアスネークである。ルビアスネークは『最凶の蛇』と言われ、冒険者から恐れられるほどの強さがある。
何が強いのかと言うと…ルビアスネークの毒である。ルビアスネークは、口から吐いたり、噛み付いたりして敵に毒を食らわす。その毒は、触れると皮膚がただれ、被ると、全身が溶け始める。また更に、噛みつかれた場合、毒は一瞬で体全体に周り、即死してしまうという恐ろしい蛇である。
ちなみにルビアスネークは全長30mもあるとても大きな蛇である。
まずキマイラから処理しようとルリは正面から突っ込む。すると、キマイラは火を吐いてきた。だが、ルリはその火をも斬り裂いて、キマイラを真正面から斬りつけた。
ズバアァン!!!
「ギャオオオオオオオオ!!!」
キマイラの顔面に大きな切り傷ができる、それにキマイラは悲鳴を上げる。斬りつけた後、キマイラの背後に来たルリは、振り返ってキマイラの方向に歩きながら言った。
「今日は…用事があるから…早く終わらせないといけないの…ごめんね…。」
そう言った瞬間、ルリは消えた。キマイラは周りを見渡す、が、見つからない。
ルリは、空高く飛び上がって、真上にいた。ルリは上から急降下しながらキマイラのライオンの首元を斬りつけた。
「<<獣神の斬撃>>!!」
ズバアアアァン!!!
キマイラのライオンの頭は胴体から外れた、その後、山羊の頭は数秒動いていたが、あまりの大きな切り傷に、大量の血を流して死んでしまった。
「よし…!上手くいった…!…エルの方は…大丈夫かな…?」
エルはルリがキマイラをいとも簡単に倒したのを見て言った。
「私だって負けませんよ!ルリちゃん!!ご主人様から褒められるのは、私です!!」
「ギャオオオオオオオオ!!」
キマイラは咆哮をする、そしてこちらへと走ってきた。エルはキマイラが咆哮をした瞬間に、魔法を唱え始めていた。
「<光の精よ!今こそ我に、巨大な悪を討ち滅ぼす弓矢を授け給え>!!」
光がエルの腕に集まっていく、その光は<<天の輝弓>>よりも頑丈で、より、強そうな弓矢を作り上げた。
「<<天の強弓>>!!!」
ビュン!!!
その光の矢は、強く、キマイラのライオンの頭を貫いた。
ジュバアアアァァン!!!
キマイラのライオンの頭には大きな風穴が空いて、脳に大きなダメージが入ったのか、キマイラは倒れた。そして、ピクリとも動かなくなった。エルは自慢げにルリに向かって言う。
「どうですか!!私も強くなっているんですよ!!」
だが、ルリはグレムが魔術を使おうとしているのに目を奪われていて、こちらを見ていなかった。しかし、それをエルも気にせずに、グレムの魔術を目を輝かせながら見ようとする。
グレムは言う。
「う〜ん、魔術で倒そうとは思うが何にしようか…あんまり使ってないのは…よし、風にしよう。」
そう言って腕を組んで悩んでいたグレムの足元に、緑色の魔法陣が光りながらほとばしる。
「<我、風の神に頼もう者なり。自然災害をも凌駕する、その遥かなる風の力を我に貸し給え>!!!
辺り一帯に立っているのもやっとなほどの強い風が吹き始める。そして、グレムの右の掌に小さな竜巻のようなものが出来ていく。
「食らえ、ルビアスネーク、<<風神の獄竜巻>>!!!」
グレムが右手からその小さな竜巻を放った瞬間、その竜巻はとてつもなく大きくなり、ルビアスネークを飲み込んだ。あまりの風力にエルとルリも引き込まれそうになる。グレムは2人を抱き寄せて、強すぎる風の中でピクリとも動かず立っていた。
ビュオオオオオオオオオ!!!!
ルビアスネークは、その大きな竜巻の中で狂うほど回され、体はバラバラになり、死に絶えた。数分後、何も無かったかのようにその竜巻は消え、正面の地面にルビアスネークのバラバラになった死体が降ってきた。
エルとルリは、グレムに抱き寄せられたまま、そのあまりの魔術の凄さに驚いていた。目を輝かせてルリは言う。
「ご主人様…竜巻も…起こせるの…?」
「ああ、今見たろ?…あと、ごめんな、エルとルリの体、先に掴んでおくべきだった。危なかったろ?」
「そんなこと…ない…それにしても…凄すぎる…!やっぱり…私…ご主人様の魔術…好き…。」
「そうか?そう言われると嬉しいな、ありがとう。けど、ルリもあれ凄かったぞ!真上から急降下して首を斬り落とすのかっこよかったし!!」
「そんな…私は…全然…。」
そう褒められてルリは顔を赤くする、そしてぴたっとグレムにくっつく。するとエルも言ってきた。
「あんな風の魔術、初めて見ました!!やっぱり魔法より魔術の方が優れているのでは?…と思わされるくらい凄かったです!!」
「ありがとう、でもエル、魔術じゃ魔法に敵わない点もあるんだ。優れているのは魔法で間違いないよ。エルだって、さっき光魔法の応用で<<天の輝弓>>より強い弓矢を作り上げたろ?あれは凄かったな〜、脳天をぶち抜いたのかっこよかったぞ、…だがあんな風に魔術は応用出来ないんだ。決められたものを使うだけ、ただそれだけなんだ。」
「ありがとうございます!!ご主人様に褒められて光栄です!!…魔術は…そうなんですか…なんかすみません。」
エルは喜んだ後にすぐしゅんとした。やべっ可愛い、恐ろしいほど可愛い。グレムはそう思いながらも言う。
「気にしなくていいさ、さぁ、じゃあ一旦ギルドに報告してから、朝の依頼に向かいますか。」
『はいっ!!』
2人は同時に返事をし、ギルドへ向かって歩いていくグレムに付いて行った。
この日の朝…
グレムたちは朝早くからギルドに来て、クエストを受注していた。
『こんなにも朝早くからキマイラ2頭とルビアスネークなんて…本当に大丈夫ですか…?』
黒髪のポニーテールの受付嬢は受注確認の判子を依頼書にしっかりと押しながらそう言って心配する。
『自分たちは大丈夫ですよ、心配なさらずともダイアモンドランクの実力を見せてやります!……それより、あの日以来…ああいった冒険者は来ましたか?』
グレムは3日前、このギルド内で、ギルドに対して失礼な態度をとったアダムアビスの冒険者たちのことを思い出しながら言った。すると受付嬢は頭を下げながら言った。
『あの時は本当にありがとうございました!!そのおかげもあってか、あの日以来、あのような冒険者は来ていません。本当にありがとうございます!!』
その受付嬢はそう言ってペコペコと頭を下げる、グレムは言った。
『それなら良かったです…、ああいうのがトラウマになって、受付嬢をやるのが怖くなってしまい、辞めてしまう人とかもいますから…それにあなたは美人さんだから更に辞めて欲しくないです…。』
そうグレムが言うと、その受付嬢は顔をカアッと赤らめて言った。
『そんな…私が『美人だ』なんて…。それに、辞めようとは思いませんよ…たまにあなたみたいな方から声をかけられるのであれば、私は…』
そこで彼女は言葉を言うのを止め、『いや、なんでもないです…。』と言った、その時だった。
バァン!!!
ギルドの入口のドアが思いっきり開けられた。このシチュエーション多くね?何回見たよ、これ。
そして鎧を着た者がギルドの中に入り、受付嬢の元へ走ってくる。グレムたちは邪魔にならないようにどいた。そして、その兵士と思われる者は女性らしき声で受付嬢に言った。
『ここに…グレムという者がいると聞いている…!!どこにいる…?』
受付嬢はグレムたちの方に手を向けて言った。
『そちらに…。』
するといきなりその兵士はグレムの手を両手でがっしりと掴んで言った。
『あなたがグレムか!!お会いできて光栄だ!!いきなりだがお願いを聞いて欲しい!!もちろん、事態が解決したら報酬は出す!!』
『ちょっと待ってください…自分たち…今クエストを受注したばかりで…。』
『それならその後でもいい!!クエストが終わったらすぐに王城へ来てくれ!!頼む…!!』
ちょっとタイミングが悪かったな…だが…相当困ってるようだし放ってはおけない。我ながら面倒な性格だな。
『分かりました、出来るだけ早くクエストを終わらせてきますので、待っていてください。』
『本当か!!?助かる!!では、また王城で会おう!!』
女性の兵士は、そう言って走り去っていった。何だったんだ…。
「はい!確かに『キマイラの牙』4本と、『ルビアスネークの目玉、毒袋、牙』ですね、では、報酬は受付からもらっていってください!」
鑑定士がそう言うと、グレムは「ありがとうございました。」と返事を返し、鑑定所から出て、受付へと向かった。
すると、黒髪のポニーテールの受付嬢は驚いて言った。
「ええ!?もう帰ってこられたのですか!?いつの間に…しかも、キマイラ2頭にルビアスネーク1体ですよ!?こんな15分程で…。」
「15分あれば十分ですよ、報酬をもらいたいのですが…。」
「あっそうですか!すみません。今取りに行ってきます!」
受付嬢はカウンター裏へと走っていった。
「結構多かったですね、ご主人様?」
エルが報酬のギルの多さを確認しながら言う、グレムは言葉を返す。
「なんか、クエスト地が畑周辺だったろ?なんであんな所にキマイラとルビアスネークが来たのか分からんが、かなり困ってたらしくてな、そこの畑で働いていた人々が報酬を弾ませてくれたらしいんだ。誰も受けようとしないからな、あの難易度じゃ。」
「そうだったんですか…良かったです、人助けもできて。」
「ああ、全くだ。」
そう話しながらグレムたちは王城へ向かう。珍しく、その王城は赤色のレンガで出来ていて、その周りは大きな湖と木々で囲まれている。入口へは、湖を橋で渡るような構造をしていた。
それがなんとも素晴らしい景色で、思わず、スケッチしてみたいと思ってしまった。グレムたちはその城までかけられた橋を渡っていく。
そして、いざ、王城に入ろうとすると、城の前にいた兵士2人に槍を交差され、止められた。まぁ、そりゃあそうだよなぁ…。
「何者だ!!名前と職業を言え!!」
「冒険者をやっているグレムと申します。…なにか女性の兵士から聞いていませんか…?」
兵士はその言葉に驚き、謝りだした。
「グ、グレム様でしたか!!それは失礼しました!!話は我が王国の騎士団の団長から聞いております!!どうぞお入りください…!!」
グレムはその言葉に少し不思議に思ったが、気にせず、「ありがとうございます。」と言って、王城内へと入っていった。
何も気にせず真っ直ぐ歩いていくと、木や花に囲まれ、中央には噴水が設けられた広場に出た。その噴水の所に、人が立っている。その人は、こちらに気づき、声をかけてきた。紫色のショートヘアーの髪型で、鎧を着ている女性だった。
「やっと来たか!!待っていたぞ!!」
その声は朝、ギルドで聞いた声と同じ声だった。
「ああ、失礼、名前を言っていなかったな。私はこの王国の騎士団の団長を務めている、シュライド=ミネス=エスパーダという、宜しく頼む。」
そう言って彼女は握手をしようと右手を出してきた。グレムは一応自分も自己紹介をしながら握手をする。
「まぁ、知ってると思いますが、冒険者のグレムです。こちらこそ宜しくお願いします。」
そう言って、互いにしっかりと手を握りしめてから離すと、エスパーダが言った。
「早速君たちに頼み事だ、まずは我が国の王と会って欲しい、内容はそれから話す。」
「分かりました。」
グレムが返事をすると、エスパーダは王城内を案内してくれた。ほんの数分で、王の間へとたどり着くことができた、エスパーダは言う。
「くれぐれも失礼の無いよう……いや、君たちなら分かっているか、数々の国を救ってきたんだものな。」
そう言ってエスパーダは笑顔になり、王の間の扉を開けた。その後、エスパーダは少し前へ出てから膝を床について言った。
「ミハエル陛下!!グレム様御一行がご到着されました!!」
王は玉座から立ち上がってこちらへと歩いてきた。全体的に細い体で、病気にかかりやすそうに見えた、めっちゃ失礼なこと思っちゃってるな。すると、王は言った。
「よく来てくれた、グレム君たち。私はアルガルド王国の国王代理を務めている。アルガルド=グルニル=ミハエルという、宜しく頼む。」
そう言って王は握手を求めてきた、その弱々しそうな手をしっかりグレムは握って言う。
「冒険者のグレムと申します。…それで、『国王代理』とは…どういうことでしょうか…?」
その言葉を言った瞬間、エスパーダは俯いて悔しそうな顔をした。王も、少しばかり俯いている。グレムはその様子を見て、余程悪いことでもあったのだろうか、と心配する。
王は数秒間を空けてからグレムに言った。
「それは…君たちに頼む依頼の内容にも関係するんだ、説明する、付いてきてくれ。」
グレムたちは互いに目を合わせ、少し心配しながらも、ミハエル王に付いていった。
ガチャ
王城のある一室の扉を開ける、そこは、大きなベッドが置いてある寝室だった。だが、そこに横になっている人間は…
「え…?」
グレムが驚くと、エルが悲鳴を上げる。
「きゃあ!!一体…どうして…何があって…。」
「何…これ…。」
ルリはその横になっている人に近づいて、かけられている布を少し捲る。すると、その人には、全身、あらゆる所にまるで焼き焦げたような痕があり、所々が黒くなっている。グレムが言った。
「呪いか…。」
そう言うと、ミハエル王は頷いてから言った。
「その通りだよ、よく分かったね。これは呪いだ。彼は本当は王になるはずだった…彼の名前はアルガルド=グルニル=ケイローンという。…僕の兄だ、何をやっても上手くいき、他人からの信頼も厚い男だった。そんな兄が…素晴らしい兄が……どうして呪われた!?訳が分からない…。」
ミハエル王は膝を床につけて俯いた、そしてそのままの状態でグレムたちに言う。
「君たちへの依頼は…この兄の呪いを解くことではない、呪いは付与されたらその原因が完全に無くなるまで残り続ける…だから…君たちには…この呪いの原因を見つけてほしい、一体…どんな奴が、何を思ってこんな事をしたのか…その原因が知りたい!!…かなり難しいことだが…やってくれるか…?」
グレムはミハエル王の肩に手を置いて言った。
「今あなたは…彼の過去…もしくは人生をも掘り起こして、原因を見つけようとしています…その中には…王がとても嫌な思いをするものもあるかもしれません…しかも、全く関係の無い私たち冒険者を巻き込んでまで真実を知ろうとしています…それでも…原因を知りたいのですか?」
「…そう言われるかもと思っていたよ…分かった…引き続き自分で調べるよ…。さすがに君たちにそこまでしてもらうわけにはいかな」
グレムはミハエル王の言葉を遮って言う。
「もう一度言います、それでも原因を知りたいのですか?。」
王は立ち上がってグレムの方を向いて言った。
「……知りたい…!!」
「なら、全身全霊でお手伝いさせて頂きます。」
王は少し驚いて言う。
「どういうことだ…?君たちは…他人の過去を掘り起こすのを嫌って、この依頼を断ろうとしていたんじゃ…。」
「何言ってるんですか、依頼主の意志は感じ取れましたし、許可ももらいました。なら冒険者のやることは1つですよね?」
ミハエル王はそう言っているグレムをじっと見つめていた、一体彼は何を考えているのだろうと思いながら。グレムは言葉を続けた。
「例えどんな依頼でも、引き受けた依頼は依頼主が納得するまでやり通す。それが、冒険者のやる事でしょう?」
ミハエル王はその言葉に衝撃を受け、涙を流した。
どうでしたでしょうか?
次回は、グレムたちがその呪いの真相を明らかにしていく話になると思います…乞うご期待下さい!
それでは、また次回お会いしましょう!




