第78話 国の財政と裏切り者
今回はミスイル王国の国の内情編です…財政でのとある問題が何年も続いていて困っている王女をグレムが手伝います…一体国の裏切り者は誰なのか、予想しながら読んでいってください!
それでは、どうぞ!
キリア王女は言った。
「国民には言わないで欲しい、嫌な争いを生むからな、出来れば王宮内で済ませたい。」
「分かりました、細かい事情も聞きましょう。出来る限りのことはします。」
「ありがとう。その問題とは…どう計算しようと国の出費と収入の帳尻が合わないのだ。冒険者に頼むような問題ではないのは分かっている。だが、私は君たちは特別だと思っている…こんなことでも…やってくれるか…?」
「勿論です、その問題を起こしている者を炙り出してやりましょう。」
グレムは少しニヤつきながら言った、続けてグレムは言う。
「その出費と収入の資料を頂けますでしょうか。」
「ああ、勿論だ。あと、場所も移動しよう、ここでは足が疲れる。アルカ!!」
キリア王女がそう言うとあのクエストの時、馬車の近くにいた執事が出てきた。
「ご命令ですか?何なりと。」
「ああ、会議室を一旦借りる。それと、そこにここ5年間分の国の出費と収入の資料を、あと紅茶もあると嬉しい。」
「はい、かしこまりました。仰せのままに。」
そういうと、そのアルカという執事はイソイソと王の間を出ていった。キリア王女が言う。
「会議室まで私がお連れしよう、付いてきてくれ。」
キリア王女はそう言うと王の間から出ていった。それにグレムたちも付いていった。
「入ってくれ。」
着いた部屋は会議に使う用のいくつもの椅子と、中央に大きなテーブルを置いてある部屋だった。ちなみにそのテーブルにはもう先程アルカにお願いした資料が置いてあった。いつの間に…早くね?
「私はここに座るから話しやすい位置にそれぞれ座ってくれるか?」
そう言われて入口側に縦1列にグレムたちは座った、すると早速キリア王女は話し始めた。
「早速だが資料を見てほしい。5年前の出費と収入が書かれている。」
グレムたちはかなり注意して見る。
「この時にはまだ帳尻は合っていた、ちなみに次の4年前の資料もだ。」
4年前の資料はあまり5年前と変わらなかった。出費も収入にもおかしな点は無い。
「だが、次の3年前からだ、見てくれ。」
グレムたちは資料を捲って見る、すると、4年前より明らかに収入は少なく、出費は嵩んでいる。次の2年前には更に収入が減り、出費も増えている。次の1年前にはそのまた更に2つとも減ったり増えたりしている。グレムは幾つかキリア王女に質問をする。
「この5年間、貿易国やその額、また、収入となるこの国の店などに何か大きな変化はありましたか?」
キリア王女は首を横に振ってから答えた。
「貿易国を変えたことも、その貿易に使う資源や商品の量を変えたことも無い。更にはこの国に新たな店を建てた、新たな家を建てたなどという報告も一切聞いていない。」
「なるほど、ではこの5年間の中で国の財政の取り締まりをしている者たちに変化は?」
「確か…新入した者が2人いたな…。現在では出費取り締まりに20人、収入取り締まりにも20人でやっている。それと、それらをどちらもやっている者が5人いる。あと、その新入者はどちらも出費取り締まりだ。」
「この財政に異変が起き始めた年に入ってきた新入者は?」
「1人だな…呼ぼうか?」
グレムは首を横に振った。
「いや、ならいいです。」
「本当に…いいのか?」
「1人…となると誰かと協力してやらないといくら何でも新入者に財政を変化させることは出来ません、疑うのならその上司ですね。更に出費と収入がどちらも同じ時期に変化しているのに出費取り締まり役だけを疑うのは辻褄が合いませんし。」
「と…なると…。」
「そうです、疑うのは新入者ではなく、出費、収入をどちらも取り締まっている者ら5人です。少しその5人に話を伺いたいですね。」
そう言っていると、アルカが紅茶を運びに入ってきた、キリア王女は言う。
「丁度良かった、アルカ、すまないがもう1つ頼んで良いか?」
「何なりと…。」
「国の出費と収入、どちらも取り締まっている5人をこの会議室に呼んでくれないか?少し話がしたい。」
「かしこまりました、紅茶をお入れしてからお呼び致しますね。」
そう言ってアルカは紅茶を入れ始めた。全員に配り終えた所で、アルカは部屋を出ていった。
数分後、その5人がやってきた。全員、「一体なんだ?」という顔をしている。その5人はグレムたちが座っている方とは反対側の椅子に縦1列に詰めて座った。キリア王女が紹介する。
「グレム君、私に近い方から名前はアルカード、セロス、ミンダ、ゼル、ラットと言う。」
ミンダがすぐに言う。
「なんで私たちは集められたんですか?」
グレムが言った。
「この中に国の財政の取り締まりを誤魔化している人がいるからです。」
キリア王女が言う。
「グレム君!まだ決まった訳では…!」
その時、少しだけ不自然な反応を見せた男がいたのをグレムは見逃さなかった、グレムは続ける。
「失礼、キリア王女の言う通り、まだ決まった訳ではありません。皆様からじっくりとお話をお聞きしたいなと思っています。」
キリア王女は「何を言っているんだ」と思い「はぁ」とため息を漏らす。
「今から全員にある質問をしようと思います、ただの日常的な事です、普通に答えていただければ結構ですよ。」
5人は「この男は何を言っているんだ」と思いながら質問を聞いた。
「流れの速い川で親友が溺れかけている時の事です。あなたはかろうじてその彼の手を掴むことができました。ですが、あまりの流れの強さに自分も引っ張られてしまいます。そんな時あなたはどうしますか?それでも腕を掴み続けるか、親友の腕を離すかどちらかでお答えください。キリア王女に近い方から順にお聞きします。ではアルカードさん、どうぞ。」
彼はそうグレムが言うとすぐにこう返した。
「そんなの掴み続けるに決まってるじゃないですか!!親友のことは放っておけません!!」
「では次はセロスさん。」
「私も掴み続けます、自分だけ助かっても…残るのは後悔だけでしょう。それなら全身全霊を尽くします。」
「ミンダさんどうぞ。」
「すいません、まだはっきりとした回答を出せないので最後に回してもらってもよろしいでしょうか。」
「確かに、悩みますからね。準備が必要でしょう、最後に回しますね。では申し訳ありませんがゼルさん。」
「私は…離します。もし一緒に流れてしまった時、どちらも助からないのなら掴まなければ良かったのにとその親友に言われるかもしれないからです。」
「では次にラットさん。」
「私は意地でも掴み続けます。流されるのではなく、助ける方で。その為だったら命なんていくらでも賭けますよ。」
「ではミンダさん、最後にどうぞ。」
「私もゼルさんと同じように…」
言葉の途中でグレムはミンダに言った。
「言い忘れてましたね、同じ回答は受け付けません、自分なりの理由を考えてください。」
「そ、そんなの聞いてませんよ!!」
「そりゃあ、言ってませんからね。でもおかしいですね、日々、この国の為にいや、この国の国民の為に働いている皆さんであれば、この位の質問、他の皆さんと同じように理由もつけて答えられると思うのですが。」
ミンダは何故か少し焦っているように、攻撃的な口調で言ってきた。
「…いきなり呼び出されたかと思ったら顔も知らない男に急に変な質問されて!考えつかなかったから後に回してもらったにも関わらず!こういう回答にしようと思ったら先に言われたから同じですと言ったら『同じ回答は受け付けません』はおかしいでしょう!!」
グレムはその言葉を聞いて顔色ひとつ変えず、返答した。
「それでは今から時間を与えますから考えてください。それなら文句はないでしょう?」
ミンダは言った。
「ふざけるな!!もう帰ります!!」
そう言ってミンダが部屋を出て行こうとすると、キリア王女が背筋も凍るような声で言った。
「おい…待て、誰も帰っていいとは言ってないぞ…?ちゃんとこの方の質問に答えてからにしろ。」
その言葉を聞いてミンダは怖くなり、自分が座っていた席に戻って座った。グレムはそれを見て言う。
「今から数分だけ時間を取ります、なのでその間に回答を考えてください。」
ミンダは俯いていた。
五分ほど経っただろうか、かなり時間を取った、グレムはミンダに回答を問う。
「だいぶ時間を与えました、ではミンダさん、回答をどうぞ。」
「わ、私は……。」
そう言った後ミンダは数秒間を空けた…ではなく、そこで言葉を出せなくなったと言うべきか。グレムはミンダに言う。
「そうですよね、答えにくいですよね。長年共にやってきた仲間に嘘をついているあなたには。」
その言葉を聞いてミンダは顔を上げ、反応をした。グレムは続ける。
「先程の問題を例えてみましょう。流れの速い川をこの国の財政、溺れかけている親友を同僚としましょう、こうすると分かりやすいです。なぜ、ミンダさんは回答出来なかったのか…それは、自分がその問題を抱えている財政の原因であり、長年一緒に仕事をしてきた同僚を見捨て、自分の命…いや、自分の利益だけを考えて行動したからです。この質問は、ミンダさんにとって最悪のシチュエーションと言えるでしょう。なぜなら、現在自分がその状況に立たされているのだから。」
「まさか!」とその場の全員が思い、ミンダの方を向く、ミンダは必死に言い訳をする。
「そ、そんなわけないでしょう!!私だって、同僚が困っていたら心配します!あなたは根拠も証拠も無いのに私が犯人だと言っている!!おかしいんじゃないですか!?」
その言葉をミンダがグレムに投げかけた瞬間、またキリア王女が背筋の凍るような声でミンダに問いかけた。
「根拠も証拠もどうでもいい、今、私が知りたいのはお前がやったのかやってないのかだ。包み隠さず真実を話せ、いつも言っているだろう?」
そのキリア王女の言葉を聞いてミンダは震えながら、それでもこう言った。
「や、やってません!!女王陛下まで私を疑うのですか!?」
「…だ、そうだ…グレム君。」
キリア王女はグレムにそう言う、グレムは仕方がなく魔術をミンダに使う。
「はぁ…本当は使いたくなかったんだけどな。<<白状>>。」
そうするとミンダは1度頭をガクンと下げた後、顔をもう一度上げてから操られたように真実を話し始めた。
「私は…出費と収入を取り締まる中で…もっと利益を得られないかと考えました…。そうすれば、国の為にもなると…ですが、そのような都合のいい方法は思いつかず…考えた後、挙句の果てに、『自分だけが利益を得られればいいや』と思うようになりました。」
他の出費と収入、どちらも取り締まっていた4人は、そのミンダの言葉に驚いた、そして睨むように見る。
キリア王女は、その言葉を聞いて、とても冷たい目でミンダを見ていた。
「だから、出費と言って国からお金を直接もらい、更には国の収入からお金を抜き取りました。帳尻が合わなくても、私は長くこの仕事をやってきた身です。信頼を得ているから疑われないだろうと思いました。…質問もこの方の言った通りです。長年付き合ってきた仲間を裏切って、そんなことをしてしまった私には、堂々と手を掴み続けるとは言えません。だから、回答を言えませんでした。」
そこまで言ったミンダからグレムは魔術を解いた、ミンダはすぐに何を言ってしまったんだと思い、戸惑う。
グレムはミンダに言う。
「この城で働いている人全員は、国の為、国民の為に日々、全力で仕事をしているんです。それをあなたみたいな自分の利益だけを考えるような人間がいたせいで、3年間もこの問題に王だけでなく、皆さんは苦しんでいたんです。信頼されているからといってその地位を利用し、罪から逃れようとするその行動は、重い罪に値します。…この場の皆さんに何か言うことがあるのでは?」
ミンダは頭を深く下げて泣きながら言った。
「誠に…申し訳……ありませんでした…!!」
キリア王女はミンダを冷たい目で見ていた。
話が終わった後に、キリア王女にグレムは呼び出された。キリア王女は言う。
「解決してくれてありがとう、君の言葉の通り、3年間も私は苦しんでいた、その取り締まりをしていた者もだ。かなりスカッとしたよ、本当にありがとう。」
「本当は魔術無しで済ませたかったんですがね…その方がキリア王女もちゃんと納得出来ると思ったんですが…。」
「そんな事は無い、それをしたら、解決にだいぶ時間をかけてしまうだろう。早く解決することに越したことはないさ。」
「それなら良かったのですが…。」
「君は本当に優しいな。気にしないでいい、ああいう者にはあれくらいの罰があって当然だ。…あと、いつから彼だと感づいていた?」
「最初に、『この中に国の財政の取り締まりを誤魔化している人がいるからです』と言った時、少しだけ彼は不自然な反応をしました、その時からですね。」
「あの言葉にはそんな意味があったのか…成程、考えつかなかった…。次から使わせてもらうよ。」
「次使うことが無いことを期待しています。」
そういうとキリア王女は笑った。
「ははは!!その通りだな、だが…。」
「分かってますよ、まだ問題があるんでしょう?この際です、最後まで付き合いますよ。」
そのグレムの言葉にキリア王女は少し驚きながらも嬉しそうにした。
どうでしたでしょうか?
明らかにこいつだろと思うような感じだったとは少し自分でも思いましたが、長所が戦闘だけではない主人公の一面を見せられたかと思います。
次回も国の内情は続きます…一体どんな問題なのか、予想しながら、期待していてください!
それでは、また次回お会いしましょう!




