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第77話 3人目の選定者

今回は前回の予告通り、選定者3人を中心としたお話となります。グレムがした対応に2人は何を思うのか、そして、3人目の選定者の過去とは…?予想しながら読んでいってください!


それでは、どうぞ!

ガバッと正人はベッドから起き上がる。俺は一体何を…。ここは…どこだ?立ち上がってカーテンを開ける。暖かい日差しが入ってくる、その外の光景を見て、正人はここがデルエル王国の宿だと言うことを知った。


そうか…俺たちは負けて…この前の麻里と同じようにあいつらに負った傷を治され…ここで寝かせられていたということか…。また、()()()()()()…情けのつもりか!?


正人がグレムたちの対応に少し苛立っていると、麻里も目を覚ました。そして言う。


「おはよう…。」


「おはよう。」


昨日、また圧倒的な力でやられたとは思えないほど正人は普通に挨拶を返した。だが、麻里はまだ少しその事を引きずっているようだった。


麻里は思った。…また()()()()()()…、この対応を受けるのは2回目だ…。あの『魔王』は何を考えているのだろう。人間なんてどうでもいいと思っているのではないのか?そうだとしたらこの私たちへの対応は矛盾している。またよく分からない…。そう麻里が思っていると、正人がふと言う。


「ここにいても仕方がない、取り敢えず外に出よう。」


「うん。」


麻里は返事をし、宿を出る準備を始めた。





宿を出た正人と麻里は、宿の主人に言われたことに考え込んでいた。


『君たち…大丈夫だったかい?なにやら『酷い怪我を負って気絶しているから寝かせてあげておいて欲しい』ってグレム様が言ったんだけど…もう心配ないかい…?』


正人は言った。


「また…この国の人たちも()()()()()()()()…。」


麻里が疑問を抱いたようで聞き返す。


「『操られた』?どういうことよ。」


「俺がここに来る前…アイギス王国という所にいたんだが…その国民たちも最初は女神マルクを信仰して『グレム』の事を悪く思っていた…だが、あいつらが出ていく時には国民は皆、お礼を言っていたらしい。あいつはあれだけの力を持っている男だ。何か魔術以外で国民たちを操っていたに違いない。だから、『操られている』と言ったんだ。」


麻里はその話を聞いたが、納得は出来なかった。そんな力があるのなら、最初から使っているはず。だが、『出ていく時には』と正人は言った。いくら何でもそんな理屈の通ってない話は信じられなかった。その時、天からの声が正人と麻里の頭の中に、直接言いかけてきた。


【勇者正人…救世主麻里よ…。】


『マルク様!!』


正人と麻里は同時に言う。その後に正人は話し出した。


「すみません…2人がかりでも負けてしまって…申し訳ありません…。」


【あなたたちは全身全霊、頑張ってくれました。何も謝ることはありません。】


「寛大な心、感謝申し上げます。…それで、これからはどうすればいいでしょうか…。」


正人は祈るような動作を見せながら女神マルクに問う。その様子は正に()()()であった。


【魔王グレムたちは…どうやらミスイル王国へと向かったようです。あなたたちもすぐ、向かってもらいたいです。その際ですが…仕方ありません、もう1人、救世主としてこの世界に人間を召喚します。あなたたちは今度はその人と協力して、3人で戦ってもらおうと思います。】


「すみません…俺たちの力不足で…女神様の手を煩わせてしまい…。」


【仕方の無い事です。今回が無理なら次を、次が無理ならその次を…です。見届けています、どうか…ご武運を…。】


「今度こそ…成し遂げてみせます!見ていてください!」


正人がそう言うと、女神マルクからの声は聞こえなくなった。正人は早速麻里に言う。


「ミスイル王国へと向かおう。そこにいるもう1人と…今度こそ…!!」


「分かった…。」


だが、そう言った麻里の心には、少し迷いがあった。





俺の名前は五十嵐(いがらし) (あゆむ)、好きなことは読書。長所は…と聞かれると学校の成績しかない。


親に小さい頃から『勉強することは大事だ』と言われていた。その為、俺が良い点数や成績を取ると親が嬉しそうにして褒めてくれるので、いつからか勉強に励むようになっていた。


高校生になり、問題が難しくなったが俺にはあまり違いが分からなかった。習っただけのことをやる、それだけだ。


それ故に学年内のテストではほぼ常に1位を取っていた。たまに2位になってしまう時はあったが、それでも親は褒めてくれた。親の喜ぶことだけが、自分の生きがいだった。だが…


ある日、親父が不倫した。それを引き金にして、母と父は喧嘩を始め、離婚まで話は進んでしまった。その時、俺は母を選んだ。母はいつでも褒めてくれた、俺の為に美味しい料理を作ってくれた。だから、俺と母2人だけでも生きていけると思っていた…。


ある朝のことであった、珍しく母が先に起きていない。母は俺の為にお金を稼ぐのに必死で、いくつもの仕事を掛け持ちしていた。だから、いつも母は先に起きていた。俺は母を起こしに行った。


「母さん!朝だよ!」


返事はない、母の部屋に入ると母は眠っているようだった。俺は体を揺すりながら言った。


「母さん、仕事に遅刻するよ。起きて。」


母は返事をしない、その時俺は少し異変に気づいた。母さんの手に触れる、冷たい。まさか!!と思い母の心臓の音を聞こうとする。毛布を被っているはずなのにその母の体は冷たかった。


心臓は…動いていなかった。すぐに俺は救急車を呼んだ、だが…後の祭りだった。


母は、()()()していた。きっと体には疲労が溜まっていたのだろう。母は無理をしていたのに…もっと早く俺が気づいていれば…。


俺は病院で泣いた、何時間も、白い布が顔にかけられた母を近くに見ながら。


それから家に帰ってきた。うるさかった親父も、料理をしてくれる母もいない。俺は消えてしまいたかった。だから俺はナイフで手首を切った。切ったとしても誰も気づかない、その家の中で…。





【歩様…五十嵐 歩様…。】


俺を呼んでいる声が聞こえた、俺は目を覚ます。するとそこは黄色い光でつつまれたとても神秘的な場所であった。目の前には、とても綺麗な女性がいた。


「ここは…。」


【ここは天界…亡くなった人たちを導く場所です。】


「そうですか…俺はどうなるんですか?」


【本来は自殺した場合…もう一度人生を元の世界でやり直してもらうのですが…。】


「何か…問題でも?」


【今、実はあなたたちの言う()()()という所、要するに魔法や剣などで囲まれた世界で悪しき者が世界を脅かしています、なので、そこに行って頂けるとこちらも嬉しいのですが…。勿論、私のありったけの加護を付与して、救世主として君臨できるような状態にはします。】


歩は考える。もう一度人生をやり直してみたいが…もう二度と、あんな思いをしたくない。あんな辛い思いをするかもしれないのなら…もうあんな世界は嫌だ。それに、異世界に興味はある、行けるなら行ってみたいと思っていた。


「では、行きます。異世界の方へ。」


【ありがとうございます。あと実は既に2人、その世界に転生した者がいます。その2人は現在、その世界を脅かしている者を追っています。出来ることならその2人と協力して欲しいのです。】


そんなにも強いのか…その()()は。女神様の加護をもらっても2人では倒せないとは…準備が必要そうだ。


「分かりました、協力して、きっとそいつを倒してみせます。」


【それでは…あなたに加護を授けます。】


そう言うと、その女神の手から白い光の玉が出てきて、歩の胸の中に入った。すると、歩は体全体から力が湧き出るような感覚を感じた。これが…女神様の力…。歩は確認するために言う。


「一応聞いておきます…その悪者はなんという名前なのですか?」


【グレム…魔王グレムと言います。】


「そうですか…分かりました。」


【それでは、あなたに女神の加護があらん事を…。】


そう女神が言うと、歩の視界は光で包まれた。その瞬間、歩は異世界へと転送された。歩が行った後、女神マルクは言う。


【今度こそ…!!今度こそよ!!グレム!!私の野望の邪魔は、絶対にさせないんだから!!】


女神マルクは怒りながら言っていた。





ドォン!!!


光に包まれた後、その光が段々と薄れていき、消えると、俺はある場所に降り立っていた。


「いてて…ここが…異世界…?」


教会のシスターが言う。


「女神様のお導き通り…救世主様が降臨しました!!」


かなり綺麗な人だ…まるで外国人みたいに綺麗な金髪のロングヘアーで、青色の目を持っている。とりあえず声をかけてみる。


「すみません…()()()()()()…でいいですか?ここはどこでしょうか?」


「そんな!救世主様に『さん』付けされる程の者ではありません!『シスター』でいいです!ここはミスイル王国の教会です。他に何か知りたいこととかは…?」


「武器屋の場所…とお金を借りる所ですかね…生憎何も持っていなくて…。」


「武器は女神マルク様が用意してくださいました!!どうやら救世主様は狙い撃つことが得意だと言うことで…。」


そう言ってシスターは弓矢を持ってきた。白と金色のなんとも豪華な見た目をした弓矢であった。


「女神の弓矢です。女神様からの加護でかなり壊れにくく、使い易いはずです!」


そうだ…そう言えば俺は弓道部だった。それも県の大会で優勝したほどの…そんなこと、どうでもよくて忘れていた。


「あとお金ですが…これをお使い下さい!」


そう言ってシスターはお金が入った袋を渡してきた。けどこれは…多分…


「これは…女神様…というかこの教会への寄付金じゃないんですか?」


シスターは驚きながら言った。


「さすが救世主様…何でもお見通しですね、その通りです。ですが、今、正にそれは使い時です。()()()()()()に持たせるのであれば、女神様もお許し下さるでしょう。」


そのシスターの言葉を聞いて、少し後ろめたい感じがしたが、歩は言った。


「必ず、世界を救ったらこの教会に何倍にもしてお金を返しに来ます、約束します。」


そう言うとシスターは少し涙を流してから言った。


「なんてお優しい…はい…!お待ちしております…!」


歩はそのシスターの返事を聞いた後、教会を後にした。





現実世界と変わらない空と太陽、だが町並みは現実世界とはまるで違う。本当に異世界に来たんだな…。さて、女神様の言う通り、その2人を待ちながら、『魔王グレム』の情報を集めよう。あと弓の練習もしておきたいな…。


やる事はかなり多いがその方がやり甲斐を感じる。そう思って、歩は大きく1歩を踏み出した。





「…ありがとう…それでも、問題はあるのだ…。国だからな。来てもらってすぐで悪いが、君たちの力を借りたい。」


キリア王女はとても真面目な表情で言った。グレムは言葉を返す。


「王女様の命令とあらば、手伝いますよ。」


「そうかしこまらなくても良い、君たちには許そう。」


「それで、問題とは?」


グレムが聞くとキリア王女は少し悩むような顔を見せてから言った。


「国民には言わないで欲しい、嫌な争いを生むからな、出来れば王宮内で済ませたい。」


「分かりました、細かい事情も聞きましょう。出来る限りのことはします。」


「ありがとう。その問題とは…どう計算しようと国の出費と収入の帳尻が合わないのだ。冒険者に頼むような問題ではないのは分かっている。だが、私は君たちは特別だと思っている…こんなことでも…やってくれるか…?」


「勿論です、その問題を起こしている者を炙り出してやりましょう。」


グレムは少しニヤつきながら即答した。

どうでしたでしょうか?


次回は主人公が王国の人間相手に大活躍する!?どんな話になるか期待していてください!


それでは、また次回お会いしましょう!

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