第74話 出会いはいつも突然に
今回はグレムたちが受けた、あるクエストの話になります。一体どんなクエストで、どんなことが待ち受けているのか…期待しながら読んでいってください!
それでは、どうぞ!
グレムたちはこの前受注したクエストを受けに、ある場所まで来ていた。
「確かこの辺のはず…あ、あれかな?」
グレムはある馬車を見つけた。白と金色を使った、何とも高貴な雰囲気が漂う馬車である。ちなみに、馬車を引かせている馬も白馬。
グレムはその馬車の近くにいたいかにも『執事』と言った感じの黒いスーツを着た老人に話しかける。
「すみません、依頼を承った者なのですが…。」
「御足労ありがとうございます、早速頼みたいのですが…。」
「分かりました、すぐに警護に当たりますね。」
「待て。」
馬車の中から声が聞こえた、声からして女の人だろう。そして続けてその中にいる女性は言う。
「依頼主がわざわざ受注してくれた者たちの顔を見ないのは不敬であろう、その逆もそうだ。」
そう言ってその女性は馬車の中から出てきた。スラリとした足、綺麗な白い肌、そしてとても美人な整った顔、美しい白い髪のロングヘアー。どこを見ても綺麗としか言い様のない、とても美しい女性が出てきた。そしてグレムたちを見て言う。
「あなたたちが受注者か…ふむ…冒険者と言う割には随分と整った顔をしている、そして身なりもかなりいい。これはいい受注者に当たったと言えるかな。」
少し冒険者に対しての偏見が凄いが、とてもクールな女性っぽい。多分俺が思うに…
「おっと、いけない。自己紹介が遅れたな。私はミスイル王国の王女を務めている、リリューシャ=パール=キリアと言う。宜しく頼む。」
ですよね〜王女っぽいと思いました〜随分としっかりしてそうですね〜。グレムはそう思いながらも自己紹介を返す。
「私は冒険者のグレムと申します、そしてこちらのダークエルフは仲間のエル、こちらの獣人は仲間のルリと言います。」
するとそのキリア王女はグレムの顔をジーッと見つめたあと、エルとルリもまるで見定めるかのように見て言った。
「『グレム』…と申したな…その割にはあなたからは随分と優しさを感じる。仲間も2人とも元奴隷ではあるが…とてもいい装備をつけ、更には何千万ギルもする宝石の指輪まで買ってあげている…。随分と大切にしているのだな。そういえば、その2人のことを『仲間』と言っていたな。何故だ?」
グレムは突然の質問に驚きながらも答える。
「この2人は世界にたった2人しかいない大切な人だからです。そんなにも大切な人を、奴隷とは呼びたくありません。だから、親愛の意味を込めて、『仲間』と呼んでいます。」
キリア王女は「ほう」という少し笑みを作った顔をしてからこう言った。
「どうやら本物のようだ、言動からその優しさ、寛容さが見てとれる。失礼した、少し試させてもらった。最近のフェニキア国王会議でもあなたの名前が取り上げられ、賞賛されたほどであったからな。それも国、ギルド、どちらにも良い風を吹かせてくれる人としてな。その場の誰もが君に期待していた。」
そう言ってキリア王女はグレムの肩に手を置いて続けて言った。
「一体君がどのような人なのか見てみたい。それに、私も君には期待しているよ。それでは、宜しく頼む。」
そう言ってキリア王女は馬車の中に戻って行った。執事は馬車に乗り込む前に頭を下げて言った。
「それでは、皆様、どうか宜しくお願い致します。」
「任せてください。」
グレムは笑顔で返した。
今回の依頼及びクエスト内容は、『馬車の護送』というものである。依頼主、キリア王女によれば、ここからミスイル王国までの道には盗賊が多く出ることで有名な場所を通るので、連れているミスイル王国の兵士5人のみでは心許ないと思い、冒険者に依頼を出したという。
本来であればフェニキライトぐらいの実力があれば盗賊くらい何とか出来ると思うが、多少不安があったらしく、ならば信頼出来るアダムアビスランク以上を呼ぼうということに決めたらしい。護送するのが一国の王女となれば、妥当であろう。
周りを警戒しながら移動している途中に、キリア王女は馬車の窓を開け、グレムに聞いてきた。
「君たちのパーティの職構成はどうなっているんだ?」
「自分は前衛から後衛までできる魔術師で、エルは後衛の回復術士兼魔法使い、ルリは前衛の短剣使いです。」
「ふむ、前衛2人に後衛1人。悪くない…ただ君が魔術師というのが気になるな。珍しい役職だ。」
エルはそれを聞いて自慢するように言う。
「ご主人様はとっっっても強い魔術師なんですよ!!上に立てるものはいないくらいです!!」
「ほう…それは気になるな…戦闘になったら期待しておこう。」
エルめ…余計な事を…だが可愛いから許す、可愛いは正義。
グレムたちはたまに会話を挟みながら、数十分で、その盗賊が出ると有名な場所まで来た。そこは上り坂で、左右は木や草に囲まれている。なるほど、盗賊が出やすいわけだ。これならどこから来るか予想できない。…普通の冒険者ならな。
辺りは盗賊が出るとは思えないほど静かで、全く音がしない。だが、その妙な静けさの中でグレムは確かに人の気配を感じていた。一応2人に伝える。
「エル、ルリ、周りを囲むようにかなりの数いる。警戒しておけ。」
『はい!!』
2人は元気に返事をした、その直後である。
左右の茂みから盗賊が10人ほど出てきて、馬車を囲まれた。それでもグレムは無表情で落ち着いている。その盗賊の1人が言う。
「お前ら!!命が惜しけりゃ身ぐるみとその馬車の中にいる王女を置いていきな!!」
ミスイル王国の兵士5人はいきなり囲まれたので焦っている。馬車の中の王女はと言うと…グレムたちの実力が見れるいいチャンスだと笑みを浮かべていた。
グレムはその盗賊の言葉を聞いて言った。
「やなこった、こちらもこれが仕事だからな。」
「なら、死ねえぇぇぇ!!」
盗賊は全員同時に飛びかかってきた。その瞬間にグレムは「はぁ」と息をついて言う。
「ルリ、我慢しなくていいぞ。」
ドドドドドドドドドドンッ!!!
飛びかかってきた盗賊10人は、全員空中で気絶した、そしてそのまま地面に落ちる。
ミスイル王国の兵士たちは何が起こったのか把握出来ず、狼狽えている。キリア王女はその光景を馬車の中から見ながら驚いていた。一体…あの一瞬で何が…。そんな時、ルリはしっぽを振りながらグレムに言った。
「ご主人様…!撫でて撫でて…!!…どうでした…?」
グレムはルリの頭を撫でながら言った。
「ああ、良かったぞ。しっかりと相手の急所を狙っていたしな、偉い偉い。」
キリア王女は驚いて聞く。
「一体…今何をした?」
「このルリが全員が気絶するように短剣で殴っただけですよ、それだけです。」
「それにしても…あの一瞬で…か…?」
「はい、あれだけの時間があればこの位余裕ですよ。」
キリア王女はそのグレムたちの実力に驚いていた。ここまでとは思わなかった…。彼らに比べれば我が軍隊など…ただの雑魚の集まりでしかない…。
そう思っていると今度は坂上から声がした。
「放て!!」
ビュンビュンビュン!!
坂上にいた謎の弓使いが一斉に矢を射った。その数は何十本もあり、数えきれない。
エルが防御魔法を張ろうとするとグレムはエルに「何もしなくていい」と手で合図をした瞬間に上へと飛んだ。そして、飛んできた矢を全てグレムは掴み地面に着地した。そして言う。
「たった数人にこんな何本も矢を使うんだ…なっ!!!」
ビュン!!!
グレムは掴んでいた矢を全て投げ返した。それらは綺麗に坂の上の弓使い全員の頭に刺さった。その盗賊の弓使いの1人は言った。
「うっ…そっお…。」
ドサドサドサドサッ!と坂の上にいた盗賊たちは全員倒れる。
「さっすがご主人様です!!」
「ごめんなエル、エルも少し働きたかっただろう?」
「いえいえ、ご主人様が代わりにやって下さったのはとてもありがたいことです!!むしろこちらがお手を煩わせてしまい…。」
「いやいやそんなことはない、気にするな。次からは遠慮なくやっちゃっていいから。」
「はい!!ご主人様に褒められるよう、精一杯頑張ります!」
キリア王女はそのやり取りを聞きながらさっきのグレムが矢を投げ返したのを見て驚いていた。矢だぞ?弓がないとあんな速度で放てる筈がない…、しかも、綺麗に全員の頭に矢を突き刺した…どう矢を操ったんだ?驚かされてばかりだ…。これが…本当にアダムアビスか…?
キリア王女はあまりの事態に思わず息を呑む。まさか…これほどまでとは…。
そうキリア王女が思っていると、もう数で押すしかないと踏んだのか、盗賊たちがあちこちから一斉に出てきた。それを見てグレムとエル、ルリは戦闘準備をする。グレムが言った。
「行くぞ、エル、ルリ。」
『はい!!』
その瞬間からグレムとルリの姿は消えた。だが、高速で動く何かが盗賊を何人も倒しているのだけが分かる。その時、エルはこう言ってから魔法を唱えた。
「王女様は安心しててくださいね?」
「<光の精よ!!今ここに、他者を守り通す天上の壁を建て給え>!!」
「<<天上の壁>>」
キリア王女が乗った馬車の周りに、白い透明な壁が出来上がる。その壁は飛んでくる矢や投げ物を全て跳ね返し、馬車には傷一つつかせなかった。
その間に何人もの迫り来る盗賊を、とてつもない速さでグレムは殴り倒し、ルリは斬り伏せていた。だが、キリア王女は次から次へと盗賊が飛びかかってくるので、数が絶えることは考えられなかった。
しかし、2人は余裕で多人数を相手に無双していた。たった数秒の間に何十人も倒していく、それ故に、キリア王女が絶えることの無いと思われた盗賊たちも段々と数が少なくなってきていた。
そうなった時にグレムは言う。
「残りの数が少ないから魔術で一斉に殲滅する、詠唱する間、ルリ、少しだけ時間を稼いでくれ。エル!ルリのサポートを。」
『了解です!!』
2人は同時に返事をした、グレムはそれと共に詠唱を始める。グレムの足元に黒い魔法陣が光りながらほとばしる。
「<我闇を操る者なり。今、目の前の敵を全滅させる圧倒的な力をこの場に示さん>!!」
「くらえ、<<殲滅する闇雨>>」
グレムは右腕を上に上げる、すると、その掌から闇で出来たとてつもない魔力の球体が出てきて、その闇の球から更にいくつもの闇の球が出て、黒い線を描きながら上へと飛び、まるで雨のように、盗賊のもとへと降り注ごうとしていた。
その数は数えきれないほどで、とても避けられるものでは無い。盗賊たちはそれを理解して、そのある1人が膝から崩れ落ちながら言った。
「お、終わりだ…。」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
いくつもの闇の魔力で出来た球は盗賊の元へと、降り注いだ。
ズドドドドドドドドドンッ!!!!
盗賊たちはその『闇の雨』に容赦なく蹂躙された。ある者は心臓を貫かれ、ある者は頭部を破壊され、ある者は体全体に風穴を開けられた。
その光景に少しキリア王女は吐き気を催したが、それよりもグレムの魔術の凄さに目を奪われていた。こんな魔術…見た事がない…彼はなんて凄い魔術師なんだ…。
その場にいた盗賊は全滅した。グレムが「ふぅ」と言って一息つくと、エルとルリが目を輝かせて近づいてきた。ルリはしっぽを振りながらグレムに抱きついて言った。
「ご主人様…!ご主人様…!すごい魔術でした…!!ルリ…感動しました…!」
「そりゃ良かった、ルリも、よく時間稼ぎしてくれたな。ありがとう。」
そう言ってグレムはルリの頭を撫でる。ルリはとても嬉しそうに笑顔になりながらグレムにさらにギュッと抱きつく。今度はエルが言ってきた。
「あんな魔術…初めて見ました!!ご主人様はいったいどれだけあんな凄い魔術を隠し持っているんですか!!?とても凄かったです…!!」
「ありがとう。エルもサポートと、馬車の守り、ありがとな、お礼だ。」
そういうとグレムはエルをギュッと抱きしめた。エルはあまりの恥ずかしさに顔を赤くしながらもとても嬉しがる。
「い、いえっそんな!おっ、お役に立てたのなら何よりです…!」
グレムは数秒間、エルを離さなかった。あぁ…女の子特有のいい匂いがする…!
キリア王女はそうしてグレムたちが話をしているのを馬車の中から笑顔で見ていた。
色々とあったが、有名な盗賊が出る場所を越えると、ほぼ何事もなくミスイル王国へと着くことが出来た。ミスイル王国門前で、キリア王女は馬車から降りてグレムたちに言う。
「今回の依頼の件、君たちに任せて良かった。まずは礼を言う、ありがとう。それに…とてもいいものを見せてもらえたしな。」
キリア王女はそう言うとグレムの方を見た。おそらく、あの魔術のことだろう。キリア王女はその後に言った。
「今回は報酬も弾ませてもらう、なに、こちらからの少しのお礼だよ。期待しておいてくれ、それともう1つ…」
そう言うとキリア王女は服の中から1つの手紙を取り出した。それをグレムに手渡す。
「それは申し訳ないがデルエル王国のキグル王に渡してくれないか?内容は…キグル王から聞いてくれ。」
グレムはキリア王女に言葉を返す。
「分かりました、丁度デルエル王国には1度戻る予定でしたので問題ないです。それでは、ありがとうございました。」
「こちらこそだ、君たちがこの王国にやって来るのを心待ちにしているよ。」
そう言ってキリア王女は馬車に戻り、王国内へと入っていった。さすがに分かっていたか…次の俺たちの行き先を。そう思ってからグレムは2人に言う。
「じゃあ…帰るか!」
『はい!!』
3人はデルエル王国へと戻っていった、だが…
その帰路の途中のことである。
「よお、魔王様…。」
「待っていたわ…この時を。」
目の前には2人の男女…正人と麻里が立っていた。
「今度こそ…お前を倒してやる。」
正人のその言葉に、グレムは「またか…。」と思っていた。
どうでしたでしょうか?
次回はなんと…またバトル!?正人と麻里の作戦とは!?そして、グレムはどうなるのか!?乞うご期待下さい!
それでは、また次回お会いしましょう!




