第72話 負け犬の勇者様
今回は勇者がついにデルエル王国へと着き、救世主と会うが…?という話になっております!予測できないような展開が待っているので是非、楽しんで見ていってください!
それでは、どうぞ!
グレムたちがデルエル王国に来てから約2日経った頃である。
「ここが…デルエル王国…。」
正人は乗って走らせていた馬を止め、降りる。すると、誰かが向こう側から走ってくる、それは麻里だった。十分正人に麻里は近づくと、正人に言った。
「この国の兵士の方ですか…?ちょっとお尋ねしたいことが…。」
そう言った麻里に正人は頭の鎧を外して少し驚きながらも言う。
「あなたが…女神マルクの言っていた…救世主か…?」
麻里はそう言われると、正人から距離を取って魔法を使う準備をしながら言った。
「なんで…知っているの…?」
「まず、俺は敵じゃない、それは分かって欲しい。俺は和典 正人、転生してこの世界に来た…言わゆる勇者だ。女神マルク様から聞いてないか…?」
「そんなこと…言ってなかったわね…。あんまり信用出来ないけど、こっちも自己紹介をするわ。私は神崎 麻里、女神マルク様から『救世主』と言われて、この世界に参上したの。」
「あまり信用出来ないかもしれないが…聞いてくれ。俺はこの国に来る前に女神マルク様からある神託を受けた。」
正人が馬に乗ってアイギス王国を出ようとしていた時であった。頭に声が響く。
【正人様…勇者正人様…!】
『女神マルク様!?……す、すみません…俺はあいつに負けて…さらにはこのアイギス王国の国民たちを操られた状態にされて…。』
【仕方の無い事です…私も彼があれだけの力を持っているとは思いませんでした。こちらこそすみません…。】
『いえ…女神様が謝る事では無いです…俺の修行不足で…。』
【このままでは、彼にまた人々を操られてしまいます…それをさせない為に、この世界にもう1人、救世主を召喚しました。】
『『救世主』…ですか…。』
正人は自分1人で何とかしようと思っていたのにも関わらず、仕方がなく2人目を女神様に呼ばせてしまったことに下唇を噛んだ。
【1人では無理でも、2人ならば彼を超えられるかもしれません。勇者正人よ…彼女と協力して、魔王グレムを倒しなさい…。】
『分かりました…次こそ、奴を倒してみせます!』
その話を聞いて麻里は言う。
「なるほどね…つまり勇者として戦ったのは良いけどあまりの強さに敵わなかったってわけね。」
「悔しいが…そういう事だ。だが、2人ならば何とか出来るはずだ。とりあえず、行動を共にしよう。」
正人は握手をしようと右手を麻里の前に出す。だが…
パシンッ!!
麻里はその正人の手をどかすように手の甲で弾いた。
「どういうわけだ…?」
正人は少し困惑しながらも、麻里に問う。麻里はすぐに話し始めた。
「要するに…1度負けたっていうことでしょう?女神マルク様からそれだけの加護を貰っておきながら…恥ずかしいことだわ。私ならそんなミスはしない。それに、そんな1度負けた男と行動を共にするなんて…はっきり言って邪魔よ。私なら1人で倒せるわ。」
そう言って麻里はデルエル王国の門をくぐろうとする。正人はその言葉に少し怒りながら言う。
「お前はあいつの力量を分かっていないんだ!!俺だって最初は全然勝てると思っていた!だが奴は神の加護の力を余裕で超えてきた!全力でやっても、一太刀も浴びせられなかったんだぞ!?」
麻里はその言葉を聞いて、振り向いて正人に馬鹿にするように言った。
「はいはい、負けた者がなんと言おうが知らないわ。私ならあなたと協力しなくても余裕で勝てちゃうわよ。だから、遠くから黙って見てなさい、負け犬の勇者様。」
そう言うと麻里はまたデルエル王国の門へと歩いていった。正人は悔しながらも何も言い返せなかった。
「今日は何のクエストを受ける?」
グレムはエルとルリに聞く。エルが不思議そうに聞いてくる。
「ご主人様が私たちに聞くなんて珍しいですね…何か悩んでいたりしますか?」
グレムは思わず「うっ」と言って核心を突かれた反応をしてしまった。
「図星ですね…言ってください!どうしたんですか!」
エルは近づいて言ってくる。こんな時でも可愛いと思ってしまう自分を消してやりたい…だがやはり可愛い…。と思いながらグレムは言った。
「いや、いくらパーティのリーダーと言っても、これまでほぼずっと俺がクエストを決めてきたからさ…2人も行きたいクエストがあって、少し不満を抱いたりしてるんじゃないかなと思って…。」
そう言うとエルとルリは笑顔になって言った。
「そんなわけないじゃないですか!!ご主人様が決めたクエストに行っても、私たちは一切、全く、絶対に不満を抱いたことは無いですよ!!」
「エルの…言う通り…私たちは…むしろ…ご主人様に決めてもらいたい…ご主人様が行きたいクエストが…私たちの行きたいクエストでもある…だから…心配しないで決めて…いいんだよ…?」
「エル…ルリ……ありがとう!!」
グレムはそう言うと2人を抱きしめた。エルとルリは公衆の面前で抱きしめられたので顔を赤くする。
「ちょ、ちょっと!!ご主人様!!いくら何でも…こんな人が多いところで…。」
「それでもしたいくらい思いが募ったんだよ!!本当にありがとう!!」
「お…お礼を言うのは…こっちの方だよ…?ご主人様には…今まで…色んな場所でお世話になったから…。」
「ほっっっっんとうに可愛いな〜!俺はこんな素晴らしい仲間を持てて幸せだよ〜!!」
グレムはギュッと2人を抱きしめ続ける。エルとルリは嬉しさと恥ずかしさでどうにかなりそうだった、その時…
バァン!!!
ギルドの扉が思いっきり開いた。あまりの音の大きさに少し驚きながらもグレムたちはそちらの方を向く。
すると、そこには麻里が立っていた。麻里が言う。
「すみません!『グレム』という人の情報を伺いたいのですが!!」
するとギルド内の冒険者は一斉にグレムの方を向いた。グレムは麻里からかなりの魔力を感じていた。うわっ、めんどくせ〜。
すると麻里は視線が向けられているグレムたちの方に歩いてきた、そして言う。
「あなたたちが、何か『グレム』と関わりのある方ですか?」
グレムは返答に困りながらも「はぁ〜」と大きなため息をついてから言った。
「その探している本人と言ったらどうしますか?」
そう言った瞬間、麻里はグレムたちに向けて炎の魔法を使った。
ボワアアアアアァァァァ!!!
だが、その炎はグレムの手の中に吸い込まれていく。
シュウウウゥン!!
そして、その魔法は完全にグレムに消された。グレムは麻里を見て言う。
「いきなり攻撃とは失礼だな…、しかも、民間人がいるギルド内で炎属性の魔法を使うとは…被害を考えなかったのか?」
「あんたに言われたくない言葉ね!それだけ人を殺しておきながら!」
「だからそれが全部嘘なんだって…はぁ…どうせ信じないから戦うんだろう?なら場所を移そう、ここは皆が巻き込まれて危ない。」
「魔王様とは思えない言葉ね、このゲス野郎が。どうせ人間たちに恩を売っておいて信頼を得ようとしてるんでしょう?そしてその後に殺戮するんでしょう?ほっっんとうに最低ね。」
ルリが言う。
「ギルドを燃やそうとしたのに…よくそんな事が言えるね…。」
ギルド内のみんなはその言葉に頷く。麻里は頭にきたようで怒りながら言う。
「場所を移すのなら早くしてくれないかしら?どうして動かないの?」
「お前が喋るからだろうが…少し静かにしとけ。」
「<<沈黙>>」
グレムが魔術を麻里にかけると、麻里は口が開けなくなった。麻里はなんとかその魔術を解こうとするが、解けられない。
グレムたちは麻里を連れ、デルエル王国を出て、大きな平原へと来た。グレムはエルとルリに言う。
「申し訳ないが…エルとルリは手を出さないでくれないか…?これは俺の問題だ、俺で解決したい。」
エルがその言葉を聞いて少し怒り気味に言う。
「はいはい、分かりました、ご主人様がそう言うなら。全く、ご主人様のことを何も分かっちゃいないんだから。」
「ルリも…ちょっとあいつのこと許せないけど…黙って見てる…スカッとするようやっちゃって…。」
「おう、任せろ。多分2人の好きな魔術が結構見れるぞ。楽しみにしておいてもいいかもな。」
グレムはそう言うと麻里の方へ歩き出した。エルとルリはその言葉を聞いて目を輝かせている。
グレムは麻里にかけた<<沈黙>>の魔術を解く。すると、すぐに麻里は話し出した。
「苦しかったわよ…この野郎…ボコボコにしてやる…!」
グレムはその麻里に対してこう言った。
「1つだけ言っておこう、魔法使いは魔術師には勝てない、覚えておくんだな。」
「戯れ言を…!」
「いいや、事実だ。」
そう言うと、早速麻里は大技を出してきた。
「<<地獄の業火>>!!」
ボワアアアアァァァ!!
凄まじいほどの炎がグレムに向かってくる。だがグレムは1歩も引かず、魔術を唱えた。
「<<欠落する炎>>」
麻里が出した炎魔法は全てグレムの目の前で消えていく。その光景にエルとルリは驚いていた。
あっさりと大技を消された麻里は少し驚きながらも次の魔法を使う。
「<<雷神の怒り>>!!!」
麻里がそう唱えると、空が瞬く間に黒い雲に覆い尽くされゴロゴロと雷が鳴るが…
「<<快晴>>」
グレムが右手を上に上げながらそう唱えると、右手から光の弾が出て空の黒い雲に当たった。すると、その黒い雲は全て無かったかのように消され、空は素晴らしいほどの快晴となった。
麻里は驚く、がまだ魔法を使い続ける。こんなはずじゃない!!私一人でも!余裕で倒せる筈なんだから!!
「<<海王の激流>>!!」
バシャアアアアァァァァ!!!
凄い威力の水流が麻里の手から放たれる。グレムはまた表情1つ変えず、魔術を使う。
「<<逆流する水>>」
麻里から放たれた凄まじい激流はグレムの目の前で跳ね返されたように戻ってきた。麻里は叫ぶ。
「きゃあ!!!」
バシャアアアアアン!!
その凄まじい激流は麻里を飲み込んだ、が、幸運なことに、少し流されただけで済んだ。
麻里は怒ったように魔法を唱える。
「<<天の裁き>>!!!」
光の穴が空に開き、そこから光が降ってくる。グレムは全く避けようとせず、右手を上に上げて魔術を唱えた。
「<<吸収する闇>>」
グレムの右手から闇が出て、グレムの頭上に闇の穴が出来た。その穴にその光は全て吸収されていった。
麻里は驚いて声を出せない、どの凄い威力の魔法を使おうとあいつには1つたりとも届いていない。こんなはずは…。麻里がそう思っていると、グレムは話し出した。
「少しは理解したか?『魔法使いは魔術師には勝てない』というのを。それで…これでお前のターンは終わりでいいか?今度はこっちからいくぞ?」
麻里は構える、グレムは魔術を無詠唱で唱えた。
「<<雷帝の怒り>>」
ビュン!!
目に追えないような速さで真っ直ぐその雷は麻里に向かってくる。なんだ、これくらいなら避けられるじゃない。そう思う、すると、グレムはいつの間にかある程度距離の空いた左側にいた。そしてまた魔術を唱える。
「<<炎帝の業火>>」
ボワアアアアァァァァ!!!
凄まじいほどの炎が左側から向かってくる。今度はまたいつの間にかある程度距離の空いた右側にグレムがいて魔術を唱えてきた。
「<<絶対零度の氷結>>」
パキパキパキパキ!!!
右側から地面が段々と凍ってきている。麻里は後ろに避けようとしたが、その後ろに、またグレムがいて、魔術を唱えた。
「<<竜巻の斬撃>>」
これまでに起こったことは、全て一瞬で行われていたため、全方向から全ての魔術が同じくらいの速さで麻里に近づいてきていた。麻里は上に逃げようとジャンプした。
だが、上には…グレムがいた。そして言った。
「落ちろ、救世主様。」
ドォン!!!
麻里はグレムに殴られて地面に叩きつけられた、麻里はすぐに立ち上がったがーーーーその時にはもう遅かった。その時、麻里は思った。戦いが始まる前から、私は詰んでいたんだと。
バリバリバリバリ!!!
ボワアアアアァァァァ!!!
パキィン!!!
ズバババババ!!!
「きゃああああああぁぁぁ!!!」
麻里はあまりの痛さ、熱さに叫んだ。全ての魔術が同時に麻里の体に襲いかかる。そして、麻里は黒焦げになり、半身凍り、半身燃え、更に背中には大きな傷跡が出来て、倒れ、意識を失った。
グレムは「ふぅ」と息をついてから言った。
「エル〜、こいつを回復させてやってくれ〜!」
「は〜い!!」
エルは走ってグレムの方に行く、ルリもエルに付いていった。
「<<完全回復>>」
もう誰だか判別がつかないようになるくらいボロボロになった麻里はエルの回復魔法で元の姿へと戻っていく。魔法をかけながらエルは言った。
「しかし…さすがご主人様です!!一瞬すぎて分かりませんでしたが全方向から魔術を使って、更に上に逃げるのを読むなんて…!」
「まあ、ああいう状況になったら上に逃げるだろう。それしか逃げ場が無いからな。誰でも予想できるさ。」
ルリが言う。
「でも…全方位から魔術を一瞬で出すなんて…ほぼ見えなかった…気づいたらいつの間にか…この子は魔術に囲まれていた…。ご主人様…凄かった…。」
グレムはルリの頭を撫でる。そして言う。
「ありがとう、ルリ。…これで懲りてくれたらいいんだがな〜、でも多分次は協力してくるだろうな。」
「『協力』?ですか?」
エルが不思議そうに尋ねる。
「ああ、あの時の、勇者様と。」
グレムは雲ひとつない空を見上げていた。
その様子を、遠くから正人は見ていた。
どうでしたでしょうか?
次回は、この麻里の行動に、女神マルクが激怒します…そうしてやっと麻里は正人と協力しようとして…!?乞うご期待ください!
それでは、また次回お会いしましょう!




