第71話 出来る限りの事を
遅くなりました…今回は前回の予告通り、主人公たちのこれからの方針を決めるような話になります。しっかりと読んでいってもらえると嬉しいです!
それでは、どうぞ!
グレムたちは無事、デルエル王国に着き、マーシャ姫の母親の命を助けて一段落がついた為、ギルドへと来ていた。
いつも通り入口のドアを開け、カウンターへと向かう。そこにいた受付嬢は赤髪で、頭に髪で団子を作っている、いかにも元気そうな人であった。グレムは早速その受付嬢に言う。
「すみません、王国に来た際はいつもギルドに話を通すようにと言われておりまして…。」
グレムがそう言うと、その受付嬢は数秒、ジーッとグレムの顔を見つめた後に元気な声で聞いてきた。
「ギルドカードを見せて頂いてもいいでしょうか?」
「はい、どうぞ。」
そう言われたので、グレムはすぐに自分のギルドカードを出し、受付嬢に渡した。するとその受付嬢はそのギルドカードをこれでもかと見つめて、ギュッと胸の中で抱きしめた。数秒そうしたと思うと、ギルドカードをグレムに返して、頭を下げてからこう言った。
「今、ギルドマスターを呼んできますね!!それと、私の名前は『ルーラ』といいます。是非覚えておいてください!」
そういった後彼女はカウンター裏へと走っていった。エルが言う。
「随分と不思議な対応をする方ですね…。」
「そうだな〜。何か彼女にはとても強い思いでもあったのだろうか。」
「分かりませんね…。」
グレムたちは「う〜ん」と考えていると、さっきの受付嬢がギルドマスターを連れ、戻ってきた。ギルドマスターが早速挨拶をする。
「初めまして…。私の名前はダルグス・ウッド、冒険者にはよく『冷静沈着な木』と呼ばれている。君の噂はかねがね伺っているよ、よろしく頼む。」
そう言ってウッドは右手を差し出してきた。グレムはその手をギュッと握って言う。
「では、一応。グレムと申します。これからよろしくお願いします、ウッドさん。」
2人はお互いの目を合わせる、その後、すぐに握手していた手を離し、ウッドが言った。
「来てもらってすぐなのに申し訳ないが…少しだけ話を聞いてくれないか?場所も移動したい…。」
グレムは笑顔で返す。
「勿論、いいですよ。」
グレムがそう言うとウッドは「付いてきてくれ。」と言って、歩き出した。グレムたちがウッドの背中について行くと、ルーラも一緒に付いてきた。なんだ?とグレムは思った。
ギルドのある部屋に着いて、ウッドがドアを開け、そして中へと入る。ウッドはソファに腰かけるとその向かいのソファに手を向けて「どうぞ座って。」と言った。
グレムたちが座ると数秒間を空けてから、ウッドは話し出した。ルーラは紅茶を出す準備をする。
「アイギス王国から…来たんだよな…?なら知ってると思うが…女神マルクの件だ。」
グレムは思わず聞き返す。
「女神マルクの…ですか?」
「そうだ、この王国近くにある教会は、その女神マルクを信仰している場所になっている。一応言っておくとね…その女神の神託で、救世主が近々現れると言われていたそうだ。」
グレムはやっぱりかと思い、「はぁ〜」とため息を出す。ウッドは続ける。
「だから…多分君が狙われてしまうかもしれない。そうなると…ギルドとしてはとても良くない事になる。だから…この王国に滞在するとしても…出来るだけ少ない日数にしてもらいたい。」
「それはいいんですか?立場としては、女神マルクの方が正義とされています。このままそうすると、ギルドが悪く思われるのでは…。」
そうグレムが言うとウッドは少しだけ怒ったような口調で言った。
「『正義』?『悪』?たまったもんじゃない。いくら女神の言葉とあれど、ギルドにこれだけ多大な功績を残して、さらには国々を危機から何度も救っている君を…『悪』だというのか…?神がそう言っているからそうだろうと飲み込もうとしてもとても飲み込めない。君にはギルド全体が感謝しているんだ。例え、君が何者であろうと…。」
ウッドが言葉を言い終わるとルーラは紅茶を出してきた。そして言う。
「実は私も感謝してるんですよ、グレム様。」
「ルーラが?…どうして?」
「私はアーベスト=ネイサス=ルーラと申します。これでは…分かりませんか?」
「アーベスト=ネイサス…まさか!?エルド王国のアリアの姉妹か何か!?」
「妹がお世話になりました、それどころか…故郷まで守ってくださって…とても感謝しているんです。本当にありがとうございました。」
まさかこんな所でアリアの姉妹と…というか姉がいたのか…全然知らなかった。と思っているとウッドがまた話し出した。
「こんな風に…君に助けられている人は何百、何千、いや、数え切れないほどいるんだ。それなのにそんな人を悪者扱いは出来ない。だから…分かってくれるかね?」
グレムはそのウッドの言葉を聞いて、少しだけ感動していた。そして言った。
「嫌です!」
「はい!?」
ルーラが思わず声を上げる、グレムは話し出す。
「自分は冒険者です、自由なんです。だから、絶対に自分の思いを貫き通します。困っている人がいるから助ける、それだけの事を出来るだけでいいんです。それを阻もうとする者がいたんだとしたら、例え相手が神であろうと立ち向かいます。それにーーーー皆には自分がどういう人間なのか、ちゃんと分かって欲しいですから。」
その言葉を聞いてウッドは口を抑えてから笑い始めた。
「はっはっはっはっ!!!やっぱり君はいい人間だ!そうだな、自由だから、誰にも邪魔されたくないものな!たとえ相手が、どんな奴だったとしても。」
ルーラは笑っているウッドを見て言う。
「何笑ってるんですか!!それに…グレムさん!あなたは命を狙われるかもしれないんですよ!?それなのにそれでいいんですか!?」
「自分の行きたい道を邪魔するものが出てきたら、普通、どかしませんか?それと一緒ですよ。自分が人を助けようとしているのを邪魔しようとする者がいたならどかさないといけません。どかす時に何があろうと、その後、自分が救った人が笑って喜んでいてさえくれれば、自分はいいんですよ。」
ルーラはその言葉に思わず涙ぐみながらも言う。
「あなたは…自分よりも他の人のことを…。どうしてそんな、身を滅ぼすような事を…。」
「どうしてでしょうか?自分もあまり考えたことは無かったですね。でも多分、好きなんだと思います。いつも救った人たちが、笑って、泣いて、喜んで…そんなことが出来るって…とても素晴らしいことだと思うんです。だから、その人たちのために戦うんですよ。」
グレムは今までに救ってきた数々の国の事を思い出しながら言った。ベリル、エルド、エルフの里、ダリア、マシル、デガル、ワマル村、アムル、セント…今の俺はその国々のみんなの思いが集まって出来ている。決して忘れはしない…素晴らしい思い出と共に…。ウッドが言った。
「分かったよ、でも、出来るだけ君の名前が広まらないようにはするからな。あと…気をつけてな。」
「はい、勿論です。ありがとうございます。」
ルーラが近づいてきて言った。
「あなたはギルドの誇りです。絶対に、死なないでくださいね?…約束…ですよ?」
「はい、約束です。」
グレムは笑顔で返した。そしてエルとルリを連れてその部屋を出ていった。ウッドは言う。
「本当に…誇らしい…素晴らしい人だ…。絶対に守り抜く…ギルドの名にかけて…!」
ルーラは思いを込め、返事をした。
「はい!!」
「私、やっぱりご主人様のような人に買われて良かったです!」
「私も…やっぱり…ご主人様が…ご主人様でよかった…。」
エルとルリはそう言った、グレムは嬉しそうにしながらも笑顔で2人に言葉を返す。
「俺も、2人を仲間にできて良かった。こんなに素晴らしい思い出と、冒険が出来たんだから。」
「な〜にこれで終わるようなこと言ってるんですか!!」
エルが少し怒ったように言う。ルリが続ける。
「そう…まだまだ…冒険は最初の方…。これからも続いていく…。」
「よし、じゃあ気を取り直してこのクエストに行こう!『オーガ2頭の討伐 討伐難易度星28』!!」
エルがそれを聞いて言う。
「ひえぇ…結構強そうなのいきますね…!」
「でも…丁度練習台…欲しかった…ルリ…頑張る…!」
グレムは言った。
「心配するな!俺たちなら何があっても大丈夫だ!!俺が保証する!」
「妙に説得力ありますよね…ご主人様は。」
「その強さゆえに…だと…ルリは思う…。」
3人は話しながらクエスト地へと向かっていった。
そう、まだ冒険は始まったばかり。これから何があろうと、何が起ころうと、未来は誰にも予測できない。
ならば、俺はこの世界の未来で、誰からも英雄と呼ばれるような存在に絶対になってやる。
その為に、俺は自分がどういう人間なのか、出来る限りの事をして、この世界に証明する。例え、それを阻む者が、どんな人間であろうと、この世界の神であろうと、俺は諦めない。
これは明るい未来を紡いでいく物語。そして、この世界を、このどこまでも腐った世界を、正していく物語。こういうのが、英雄談として語り継がれていくのだろう?
ガチャッ
「お父様!!」
「おお、リリア、どうしたんだこんな朝早くから。」
「私……グレムという人間について調べるために旅に出ます!!」
ゾルグ王はあまりの驚きに声を出せなかった。
どうでしたでしょうか?
次回は2人目の選定者が正人と出会うが…!?乞うご期待下さい!
それでは、また次回お会いしましょう!




