第70話 狂い出す歯車
今回の話は色々と詰め込みすぎて情報量が少し多くなっています…。こちらとしても申し訳ないのですが、一応読者様方の中で整理しながら読んでいってくださるとこの次の話もなんの疑問も無く楽しんでいただけると思います。
それでは、どうぞ!
『お前は守れなかったんだよ!!このリリア姫をな!!』
リリア姫はグレムに服を破かれ裸体にされる。正人は両腕を鎖で壁に繋がれていてどうしようもできない。
『やめろ!!!リリア姫に触るな!!」
『今からお前の目の前でこいつを凌辱してやるよ…光栄に思うんだなぁ!』
『嫌だ!!やめて!!』
リリア姫は叫ぶ、正人は鎖を何とか引きちぎろうと何度も体を前に出そうとする。だが鎖は勿論ちぎれない。正人は叫んだ。
『やめろぉぉおおおお!!!』
「はっ!!」
正人は目を覚ました、横にはリリア姫が座っていた。リリア姫は言う。
「正人様!!起きられたのです…」
リリア姫の言葉の途中で正人はリリア姫に抱きついた。リリア姫は驚いて顔を赤くしながら言う。
「あ、あ、あの!!正人様!?一体どうし…」
リリア姫の言葉の途中で、正人は泣きながら言った。
「良かった…本当に良かった…。」
それを聞いたリリア姫は正人を安心させるように抱き、彼が泣き止むまでそのままでいた。
正人は泣き止むと、自分から聞いてきた。
「あの後…何があった?」
「あのグレムという人は…あなたを殴り飛ばした後、自ら仲間に命令してあなたの怪我を癒してくれました。その時、『傷を治してあげてくれ、本当に戦う意味はなかったからだ。』と彼は仲間に言ったそうです…。……私たちは…あの人のことを少し悪く考えすぎ」
正人はリリア姫の言葉を遮って言った。
「ふざけるな!!弱者への情けのつもりか!?自分が人間に何をしたのかも分かっていないようなことを言っておきながら!!」
突然豹変した正人を見て、リリア姫は思わず驚く、そして言う。
「ど、どうしたのですか?正人様!なぜ怒って…。」
「『なぜ怒って』…?決まっているだろう!!あれだけの罪を犯したやつが、僕に情けをかけてきたからだ!!本当は人間のことなどどうでもいいくせに!!」
「でも!彼は国民から支持されていました!!信頼されていました!!それは確かです!!」
リリア姫がそう言うと、正人はこちらに視線を戻し、リリア姫を睨みつけながら言った。
「お前も…操られているのか…?」
「え…?」
「間違いない、あいつはあれだけの力を持っている男だ。魔術以外の方法で国民たちを操っていたに違いない。」
「正人様…?」
正人は鎧を着て聖剣を持ち、言った。
「あいつ…グレムはどこに行った…?」
「確か…国民たちが言うには…『デルエル王国』に行ったと…。」
「そうか…早く行かないとその王国の人たちも操られてしまう。僕は行く。」
「そんな…正人様!待ってください!私は操られてなんかいません!ちゃんと自分の意志で…」
リリア姫は正人に聖剣を向けられた。
「ひぇっ!正人…様…?」
「操られてしまった人間はそう言うように出来ているんだろう。だから、もう僕は何も信用しない。例え君の言葉であっても。」
そう言って正人はその部屋から出ていった。リリア姫は力が抜けたようにペタンと床に膝をつく。そして言った。
「あの時の正人様は…どこに行ったの…?あの時の…優しくて強い正人様は…。」
そう言ってリリア姫は泣き叫んだ。だが、その胸の内には確固たる決意を秘めていた。
私は神崎 麻里、女子高校生である。美人でスポーツ万能、成績優秀、そして生徒会長でもある。毎日みんなから声をかけられて、毎日男子から告白されている。全部断っているが。
だが、私はこのまるでスターのような生活に飽き始めていた。それ以来、あるものに興味を持ち始めていた。
それは…魔法である。現代人なら誰もが使いたいものだろう。私は魔法が題材となっている小説や漫画、アニメに熱中してしまっていた。たまに学校を休んでしまうほど。
だが、そんなものはいくらどうしたって使えない。そんなことは分かっている、だがそれでも憧れてしまうのだ。いつかは魔法が使えるようになりたいと思っていた。
そんな時、私に転機が訪れた。
学校の下校中である、漫画のように鉄骨がたまたま私の上に落ちてきた。私はその鉄骨にグチャッと潰され、その瞬間、意識が途切れた。
私はその時は『これで死ぬのか…つまらない人生だった。』と思ったが…この後私はそれを『転機』だと思ったのである。
目が覚めると、周りがきれいな黄色い光で囲まれた不思議な空間に私はいた。目の前にはとても豪華なドレスを着た私でも美しいと思う女性がいた。その女性は言った。
【残念ながら…あなたは命を落としてしまいました…。】
そっか…やっぱり私は死んだんだ。じゃあこの人は…天使か何かだろうか。
【私は女神マルク…死後のあなたたちの魂をどうするか決める者です。】
…女神様なんだ…通りで美しいはずだ。
【…もうあの世界には戻ることは出来ませんが、他の世界に転生させることはできます。】
なんだって?…これは…まさか…漫画で見た異世界転生ってやつ!?私は思わず彼女に言っていた。
『もっと詳しくその世界について教えてください!』
【その世界は、人間の他にエルフやドワーフ、妖精、ドラゴンなども住んでいる異世界といった所です。更に、剣や魔法、色んなもので囲まれています。】
私はそれを聞いてすぐに『行きたい!!』と思った。将来魔法が使えるようになったらいいなと思っていた私にとっては大チャンスである。
【しかし…。】
『『しかし…。』?』
【しかし…その世界は今、悪に脅かされています。ですから、あなたには、世界を救う救世主となって頂きたいのです。】
あ〜鉄板ネタね、大体そんな感じだろうとは思ってたけども。
【勿論あなたには私のありったけの加護を与えます。あなたが思っているように凄い魔法をいきなり使うこともできますよ。】
私は即答した。
『行きます!!私!!その世界を救う救世主になってみせます!!』
女神マルクは内心ニヤリと笑みを浮かべた。
【それでは…あなたに『加護』を授けます…。】
そう言うと、その女神の手から光の玉が出てきて、スーッと私の胸の中に入っていった。
私はとてつもないほど力が湧き出る感覚を覚えた。今ならどんな奴でも倒せそうだと思った。
『それで…その悪い奴はなんて言う名前なんですか?』
女神マルクは2回目でも思わず笑みがこぼれそうになった。「きた!!」そう思った。
【グレム…魔王グレムという者です…。】
『分かりました!絶対そいつを懲らしめて、世界を救ってみせます!!』
【それでは…あなたに女神の加護があらん事を…。】
そう女神が言うと麻里の視界は光に包まれた。そして麻里は異世界へと移動した。それを確認した女神マルクは言う。
【これで2人目…フフフッ…グレム…そこら一帯は私のテリトリーなの。どの国へ行こうと逃げ場は無いわ…1人目の奴にも神託を与えようかしら…どうやらまだ私を信用しているお馬鹿さんっぽいし…さぁ…次こそ勇者様と救世主様であのグレムを片付けて…♪】
女神マルクの甲高い笑い声が響いた。
ドォン!!!
光に包まれた後、その光が段々と消えていく。すると、私はいつの間にかある場所に立っていた。
そこにいたある老人が言った。
「おお!女神様の神託通りじゃ!!」
もう1人の老人が言う。
「この世界の救世主が来なさった!!」
私はその老人たちに言った。
「神崎 麻里と申します!!女神マルクの神託の元、この世界を救いに来ました!!」
こうして私は、この世界の救世主として降り立った。
丁度その時くらいだろうか、グレムたちはデルエル王国に着いていた。
「お〜ここがデルエル王国か、いい国だな。他の国には無いものがある。」
馬車を降りて門の中へと入ったグレムたちは早速その町の風景に感動していた。
全体的に建物は赤茶色で統一されていて、道も綺麗に整備されている。そして、あらゆる場所がとても綺麗な花で飾られている。
「ご満足いただけて何よりです!きっと父も喜びます!」
マーシャ姫は笑顔で言った後、言葉を続ける。
「それで、早速皆様には母に会って欲しいのですが…。」
3人は目を合わせる。そしてたまにはいいか、と頷く。そう合図してからグレムはマーシャ姫に言った。
「分かった、一刻を争うくらいだからな、先に会っておこう。」
「あ、ありがとうございます!!」
一行は早速マーシャ姫の母がいる王宮へと向かった。
「こちらです!皆さん!」
マーシャ姫が指した方向には、綺麗に整備された花畑で囲まれたなんとも幻想的な場所に王城が建っていた。
数々の色と種類の花が全て綺麗に咲いていて、とても見ていて飽きない。花に目を奪われている内にマーシャ姫は王城のすぐそこまで行っていた。
マーシャ姫はそこから手招きしている。グレムたちはすぐにそこに向かった。
王城の入口のドアを開けると、奥に玉座に座った王が見える。あれがマーシャ姫の父であろうか。そうグレムが思っていると、マーシャ姫はその玉座の方に走っていって言った。
「お父様!!良い知らせです!!」
「おお、マーシャ、帰ってきたか。ブリリアントバタフライの羽根は本当にあったか?あと…連れてきたその方々は?」
そう言う王にマーシャ姫は抱きつきながら言う。
「実はお父様!こんな事があったんです!!」
「君たちが…?『ブリリアントバタフライの依頼』をクリアしながらさらに私の妻のためにわざわざアイギス王国から『クラスィヴィーの花』を…?」
「はい!お父様!!」
「なんっっって幸運なんだ!!マーシャ!!お前をお使いに行かせて良かった…本当に良かった!!」
王は涙を目に浮かべながらマーシャをこれでもかと抱きしめた。その後に玉座から立って、グレムたちの方に来て言う。
「すまない。自己紹介がまだだったね。私はこのデルエル王国の王を務めているエガト=デルニスタ=キグルという。」
そう言って王は握手を求めてきた。グレムは相手が王なので少し遠慮する様子を見せたが、しっかりと王の手を握って言った。
「冒険者のグレムと申します。娘さんから国王陛下の事は聞いています。」
「グレムか…さぞアイギス王国では辛い思いばかりだっただろう…。」
その名前を聞いて少しキグル王はグレムを心配する。グレムはこう返した。
「辛い思いもありましたが、自分のやりたいことはできました。そのお陰で、最後は王こそ出てこないものの、国民にはほぼ全員からお礼を言われて出てきたぐらいです。それに、とても可憐なあなたの娘さんにも出会えましたしね。」
「可憐…♪」
マーシャ姫はその言葉を聞いて少し顔を赤くしながら嬉しがる。
「そうか…すまない。後で話はまたゆっくり聞こう。今は我が妻の安否が優先だ…いいかね?」
グレムはキグル王の言葉にこう返した。
「勿論です、私たちはその為に来たのですから。」
ガチャッとドアを開けると、開かれた窓の外を見ている女性が、ベッドで横になっていた。
その女性はこちらに気づき、顔を向けるとこう言った。
「なんだい…?遂に死に目を見に来たのかい?」
マーシャ姫は泣きながらその女性に抱きついて言う。
「お母様!!そんな事言わないで下さい!!今日は…お母様の病気を治しに来たのです!!」
「無駄だよ…あれだけ医者に言われたじゃないか…『これを治せる医学は現在では無い』って…。」
「それが…あるんですよ。」
グレムは持ってきた温かいハーブティーにクラスィヴィーの花の蜜を搾り、マーシャ姫に渡して言う。
「飲ませてあげてくれ。」
「はい…!」
マーシャ姫は返事をするとそのハーブティーが入ったティーカップをゆっくりと母の口元へと持っていき、ハーブティーを飲ませた。
「これで一体何が変わるっ…」
その女性はそこで言葉を言うのを止めたかと思うと、ベッドから自分で起き上がった。彼女は自分でも驚いている。更に体を少し動かしてみる、問題なく動く。彼女は自分の掌を見ながら言った。
「一体…何を飲ませたんだい?ただの…ハーブティーじゃないのかい?」
マーシャ姫は嬉し涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら言う。
「『クラスィヴィーの花』です!お母様…!この方たちが…見つけてきてくれたんです!」
そう言ってマーシャ姫は母親に抱きつきながら「わああああ!!!」と泣いた。キグル王も「本当にこんな事が…。」と言って泣き崩れた。
それを見てエルも少しもらい泣きをする。ルリも感動しているようだった。彼女は自分の娘、マーシャ姫を抱いて涙を流し始めながらグレムたちに言った。
「ありがとう…本当にありがとう…!!まさか、またこうやって自分の娘を抱けるとは思わなかったよ!!…あんた…名前はなんて言うんだい…?」
「冒険者のグレムと申します。」
「『グレム』かい…悪い者だけじゃあないんだね…あんたのような名前の人でも…。」
グレムはその言葉を聞いて少し驚く、そしてそのままマーシャ姫の母に聞いた。
「まさか…この国も女神マルクを信仰しているんですか…?」
グレムは拳をギュッと握りしめる。それをエルとルリは見て心配する。
「アイギス王国程じゃないけどね…、王国の外れに教会があったろう?…一応少しだけ女神マルクを信仰しているんだ…。何か…まずい事でもあるのかい?」
マーシャ姫は母の言葉を聞いて俯きながら言った。
「グレム様方は…アイギス王国から来られたのです…それも…酷い扱いを受けて…。」
「なんてこった、私は恩人にそんな事を…すまなかったね…。さぞ辛い思いをしてきただろう。」
「いえ、大丈夫です。辛い思いだけではありませんでしたから。」
グレムは笑顔でそう言いながら感知していた。その教会の方から強い魔力を感じるのを…。
「<<地獄の業火>>!!」
ボワアアアアァァァ!!
「<<海王の激流>>!!」
バシャアアアアァァ!!
「<<氷結の大地>>!!」
パキイィン!!
「<<風の斬撃>>!!」
ズバァァ!!
「<<天の裁き>>!!」
ドオォォォン!!!
「<<闇の裁き>>!!」
ズドオオオォォォォ!!!
ある老人が麻里の魔法を使う姿を見て言う。
「凄い…あれだけの魔法を詠唱無しで…。」
もう1人の老人も言う。
「さすが救世主様じゃ…これで世界は救われるだろう…。」
麻里は思っていた。凄い!!魔法という魔法が全部使える!!これならグレムとかいう奴も簡単に倒せちゃうんじゃないかしら?ふふふっ…楽しくなってきた!!本当にこの世界の救世主になってやる!
麻里はありとあらゆる魔法を試しながら笑っていた。
どうでしたでしょうか?
次回はすぐバトル…とはいきません…主人公たちのこれから進んでいく道を明確にするような話となります。主人公の思いがどれだけのものなのか…期待していてください!
それでは、また次回お会いしましょう!




