第64話 みんなに囲まれて
第5章もこれでラストとなります。"元"魔王とバレてしまったグレムに対して国の者たちはどういった対応をするのか…予想しながら読んでいってください!
それでは、どうぞ!
『魔王カイロス=グレムを絞首刑とする!!!』
ダン、ダン、ダン…。
グレムは手錠を掛けられ兵士に押されながら絞首台への階段を上る。
エルとルリが叫ぶ。
『ご主人様!!』
『ご主人様…!!!』
グレムは死んだような目をしている。グレムは絞首台へと上り着く。
『何か言い残すことは無いかね?魔王カイロス=グレム。』
グレムは見守ってくれているみんなを見て言う。
『今まで世話になったな…ありがとう…。』
エルとルリが泣きながらもう一度叫んだ。
『ご主人様!!!!』
その瞬間、絞首台の床は開き、グレムは首を吊られた。
『ご主人様!!』
おかしい…俺は死んだはず…まだ声が聞こえるなんて…。
「ご主人様!!起きてください!」
「はっ!!」
グレムはベッドから起き上がる。夢だったのか…夢でよかった…。
「ご主人様…うなされてた…大丈夫…?」
「あ、ああ。大丈夫、大丈夫だ。ちょっと悪夢を見ただけで…。」
「大丈夫じゃないじゃあないですか!一体どんな悪夢を…。」
「まぁ…あれだ、昨日、国王に『明日の朝に王城に来い』と言われたからか、絞首刑にされる夢をな…。」
エルが必死に言う。
「そんなこと絶対にさせません!!!ご主人様がこの国の為にどれだけ頑張ったと思ってるんですか!!」
ルリも続けて言う。
「そうなったら…絶対に助けて…この国から逃げる…ご主人様は…死なせない…!」
「アハハ…まぁさすがに無いと思うが…。」
そう言ってグレムはベッドから立って準備を始める。いつもの黒いローブを着て…良し!
「じゃあ、行くか!」
『はい!』
グレムの言葉にエルとルリは同時に返事をした。
宿屋を出て、王城へ向かうと…
「何だこれは…?」
王城までの真っ直ぐな道にレッドカーペットが引かれていて、その赤い道の脇にロープを張り、セント王国の種族全員が集まって歓声を上げている。
わああああああ!!!という素晴らしいまでの国民たちの歓声が聞こえる。そしてグレムに気づいた国民が言う。
「おい、グレム様が来たぞ!!!」
そうその人が言った瞬間、更に歓声の声が大きくなり、まるでグレムたちを祝っているようだった。とても魔王と分かった者に送るものではない。
グレムたちは少し驚きながらも王城へと向かって進んでいく。すると通った横の国民から感謝の言葉を述べられる。
「グレム様!!ありがとうございました!!」
「この国を…本当に感謝しかないです!!」
グレムは「あ、ああ。」と返事をして進んでいく。すると今度はあの時助けた子供が横から手紙を渡してきた、その母親は後ろで笑顔で見守っている。
「グレム様!!これ…。」
グレムはその子から手紙を受け取り、そして言う。
「今…開けてもいいか…?」
その子はこくりと頷いた。グレムは手紙を開く。すると、グレムと思われる絵の上に『グレム様、助けてくれてありがとう』と書いてあった。グレムは少し感動する。そしてその子の頭を撫でて言う。
「俺からも言うよ。手紙、ありがとう。」
そう言うと子供は嬉しそうに「うん!」と言って笑顔になった。グレムたちはまた王城の方へと進んでいく。
すると今度はエルフの代表者、リイクに声をかけられた。
「おい、グレム君。魔王と聞いた時は驚いたが、私は何があっても君の味方だ。あの時の感謝を、私は忘れない。」
そう言って、リイクは握手のために手を差し伸べてきた。
「そんな大したことでは無いですけどね。」
グレムはそう言うと、手を出して、リイクの手をしっかりと握りしめ握手をした後、リイクに手を振って去っていった。
次にはあの時の狼の獣人とドワーフがルリに、ダークエルフの代表者クロエがグレムに声をかけてきた。
「ありがとな!狐のお嬢ちゃん!!あれ以来客が来すぎて大繁盛だ!これも狐のお嬢ちゃんのおかげだよ!」
ルリはこう返した。
「そんな…私はただ…試しただけで…。」
そこで狼の獣人に言われた。
「その『試しただけ』に救われたんだよ!あれ以来、大剣を使ってみているが使いやすいのなんのって!壊れないし、振りやすい!お嬢ちゃんには感謝しかねぇよ!」
ルリは言う。
「あれで…良かったのなら…良かった…。」
そのドワーフと狼の獣人はそれを聞いて笑い合った。
クロエがグレムの手を握りながら言う。
「例えあなたがどんな者であったとしても、あの時の感謝と、喜びは絶対に忘れない。これからもダークエルフとエルフの関係は良く続いていくだろう。あなたのおかげだ、ありがとう。」
「ああ、君らがお互いにいい関係をこれからも続けて行けるように、俺も願ってるよ。」
そう言うとクロエは少し涙を流し、「すまない。」と言った。グレムはクロエの頭を撫でる。するとクロエはより一層涙を流しながらもう一度言った。
「本当に…ありがどう…!!」
グレムはクロエの頭を優しく2回ポンポンと叩いた後、王城へとまた向かっていった。
なんと今度はローラが水槽に入った状態で待ってくれていた。その隣に、あの時の魚人がいる。そしてさらにその隣に美しい女性が…
「メルシュ様!!?」
エルはその美しい女性を見て言った。え?あの大妖精様!?
【少しならば…あのエリアからも出てこれるのですよ。】
「それでも…どうしてここまで…?」
【あなた方に、感謝を言いに来たのです。王の言葉が聞こえました、国民に、呼びかけているのを。その隣の男性が、あなたの言っていたその人なのですね?確かに、彼の心からは何か温かいものを感じます。…ありがとうございました。】
「自分も会えて光栄です。多分、自分では話を聞ける条件に見合ってないと思ってましたから。」
【フフフ…そんなことは…ないかもしれませんよ?】
「えっ。」
グレムは驚いていた。エルは「やっぱりそうだろう」と言った顔をしている。
ローラが我慢できずに言う。
「グレムさん!私たちにも構って!!」
「はいはい、分かったよ。」
グレムはローラたちの方に向かった。エルシュはエルにもう一度言う。
【あなたには感謝しかありません、本当にありがとうございました。】
「いえいえ、満足いただけて何よりです!」
【皆で笑うというのはいい事ですね。】
エルシュは笑いながら言う。エルは笑顔で返した。
「はい!全くです!」
「グレムさん…魔王だったんですね…やっぱり只者では無いと思ってました!」
ローラは何も気にしてないように言う。グレムはこう返す。
「少し怖いとか…ないのか?」
「全然ないですよ!だって…グレムさんはいい人だって分かってますから!どんな人だろうと、大好きですよ!グレムさん!」
「よくみんなの前で恥ずかしがらずに言えるな。」
グレムは少し笑いながら言う。すると、隣の魚人が喋りかけてきた。
「あれ以来、人間との間で争うことはあまり無くなりました。本当にありがとうございました。」
「あんな小さいこと、気にしないでいいさ。これからも、どんどん仲良くなっていってくれよ?」
「はい、約束します。」
それを聞いたグレムは少し安心して、エルとルリを連れ、また王城へと向かって行った。
門の近くまで来ると、王城の正面の入口のドアが開き、ダイナ王が出てきた。てっきり王城で話をするのかと思っていたが…どういう事だ?とグレムは思う。
ダイナ王は真っ直ぐこちらへと歩いてきて、門を開け放った、そして言った。
「今ここに!王の名の元に!彼ら3人に名誉勲章を授ける!」
すると大きな歓声と拍手がグレムたちに送られた。グレムはどういう事か分からなくてダイナ王に聞く。
「あの〜今回はてっきり制裁を加えられるのかと思ってたんですが…。」
「何を言う!あれだけ国を助けてもらっておいて、"元"魔王であったから処罰を下すなど、国民の反感を買うに決まっている!それに、私自身も君には感謝しかないんだ!本当に…本当にありがとう!」
ダイナ王はそう言うと、グレムたち3人の胸辺りに勲章を付け始めた。そしてダイナ王は笑いながら言う。
「名誉勲章だらけになってきたな。どれだけいい事をしてきたんだ…"元"魔王などと言われておきながら…。」
「自分のやりたかったことを実現させただけですよ。ただ、それだけです。」
「そうか…、国民のみんな!!彼らにもう一度拍手喝采を!!」
ダイナ王のその言葉に国民はわあああああああ!!!という大きな歓声と、拍手をグレムたちに送った。その音は国中に鳴り響いた。
「も、もう行ってしまうのか?せめてもう一日…イテテテテ!!」
見送りに来たリイクがそう言うと言葉の途中でクロエはリイクの耳を引っ張り、そして言った。
「グレムたちは冒険者だ、それを邪魔だてするな。自由気ままに行かせてやろう。」
水槽に入ったローラがグレムに言う。
「絶対!絶対!!ぜぇっったいに!!また来てくださいね!?グレムさん!約束ですよ!!」
「ああ。また、会いに来るよ。」
「私の為に…?キャー!!」
ローラは顔を赤くして嬉しそうにする。グレムは笑顔でローラを見ていた。
メルシュがエルに言う。
【あなたには私の加護を授けます。】
そう言うとエルの手の平に緑色の光が集まり、そのまま胸の中に入っていった。エルは言う。
「いいんですか!?こんな大事なもの…。」
【あなただからいいのですよ、エル。】
メルシュは笑顔で言った。その顔を見て、エルは笑顔でお礼を返した。
「ありがとうございます!!メルシュ様!!」
【お礼を言うのは私の方ですよ、エル。】
エルとルリが馬車に乗り込む、そしてグレムは最後に馬車に乗り込もうとする前に、振り向いて見送りに来ていたダイナ王に言った。
「本当にいいんですか?」
「ああ、君が魔王だったということは秘密にしておいてやろう。これも、恩返しのひとつだ。」
「ありがとうございます、ではまたいつか!」
「ああ、またいつか!」
馬車は進んで行った。セント王国の国民たちは馬車が見えなくなるまで手を振っていた。
ピョコッとルリの顔が前に出てきて、そして言う。
「ご主人様…次の行先は…どこなの…?」
エルがそれに対して反応する。
「あー!!私が聞こうと思ってたのに!!」
グレムはそのやり取りを聞いて笑った後に言った。
「次はアイギス王国…かな!」
「どこまでも着いて行きます!」
エルはそう言ってグレムの右腕を抱きしめる。グレムは言った。
「次も、楽しい冒険が出来るといいな!!」
馬車は目的地を目指し、どこまでも走っていった。
どうでしたか?
これにて、第5章、終幕となります。次の第6章では何が起こるのか…期待して待っていてください!
それでは、また次回お会いしましょう!




