第63話 "元"魔王の思い
今回はリウムvsグレムの四天王対魔王の戦いです。それぞれの思いが交差する中、グレムはリウムにその思いを訴えます。一体どんなことを打ち明けるのか、何を思うのか、少し考えながら読んでいってください!
それでは、どうぞ!
「やっぱりな…おかしいと思ったよ。」
「あらぁ〜気づいてたのか?僕の存在に。本当につまんない奴だなぁ。グレム様。」
そいつは魔王軍四天王の1人、リウムだった。エルが聞く。
「ご主人様…あの人はまさか…。」
「ああ、そのまさかだ。あいつは魔王軍四天王の1人、リウムご本人だ。」
「アッハハハハハ!!!そう、僕はリウム。魔王軍四天王の1人さ。魔王様を見つけたから後をつけてこの国で何をするのかな〜って思ってたら、人間たちをまとめようとしてた!アッハハハ!!笑えるよねえ!?魔王軍もまとめられなかった奴がそんなことをさぁ!?」
その言葉を聞いてダイナ王は驚きながらグレムの方を見て言う。
「魔…王……様…?」
ダイナ王はあまりの驚きに戸惑っていて、考えがまとまらない。グレムはその様子を見て先に声をかける。
「ダイナ王、詳しいことは後でちゃんと話します。だから今は、国民の命だけを考えてください。奴は俺が食い止めます。」
そう言ってグレムは左手の上に闇の魔術で作った球を弓の形に変えて持つ。そしてもう一度、ダイナ王に言う。
「早く!!奥のエリアへ!!」
ダイナ王はその言葉でやっと我に返って言った。
「分かった…後でちゃんと話してもらうからな。国民のみんな!今すぐここから離れて奥のエリアへ避難してくれ!!」
そう言うと王国の兵士たちがすぐに動き出し、国民たちを誘導する。国民たちはかなり焦っていた。
「守ってみなよ!!あんたが守りたかったものをさぁ!?」
「<<連続射撃>>!!!」
リウムは逃げている国民に向かって矢を放った。その矢が国民にあたる瞬間である。
バキバキバキッ!!!
矢は砕け散って粉々になった。リウムは面白くなさそうな顔をグレムに向ける。グレムはリウムが矢を放つとほぼ同時に矢を放ち、リウムの矢を打ち消した。グレムは言う。
「目には目を、弓矢には弓矢だ。」
「チィッ…。」
国民たちは逃げていく、だがその中に転んだ子供がいるのがグレムには見えた。その子は泣きながら言う。
「うぇ〜ん!!お母さ〜ん!!」
その子のお母さんと思われる人がこちらに走って戻ってきた。それを見てリウムは笑い、弓矢を向けて放ち、言った。
「最初の犠牲者だ!!」
その子のお母さんはその子を守るように抱きしめる。その瞬間、グレムは見えない速度で動き、その母親の前で止まって魔術を唱えた。
「<<反射>>」
リウムが放った弓矢はものすごい速度で返ってきて、リウムの顔の左側を通過した。そしてその矢が奥にあった木に刺さった瞬間、その木は折れて倒れた。
バキバキバキッ!!と音が鳴る。リウムは状況が理解出来ていなかった。僕の放つ矢の速度よりも速く動いたというのか?まさか…魔王様が力を隠していたとしてもそんなことが出来るはずは…。
「早く逃げて!!」
グレムはその母親と子供に言った。母親は子供を抱いてから頭を下げて走って逃げていった。
「フフ…アッハハハ!!!笑えるねぇ!!正義の味方ごっこかい?あの魔王ともあろう人が!」
「残念ながら俺は『辞める』と宣言したはずだ。もう魔王じゃない、言うなれば"元"魔王だ。」
「"元"魔王ねぇ……。」
そう言った瞬間、リウムは素早い速さで移動しながらこちらに向けて矢を何度も放ってきた。矢を撃ちながらリウムは言う。
ビュンビュンビュン!!!
「あんたが勝手に去ってから魔王軍は統制が取れなくなった!誰もまとめられるものがいないからな!!」
バキバキバキッ!!
グレムは話を聞きながらリウムの撃ってくる矢を全て矢で打ち消していく。
「それぞれがバラバラになって自分の道を進み始めた!!ギュスターヴは変な騎士団に勧誘を受け!リアスは自分の故郷に戻ると言い!!サイファは残った魔王軍をまとめようとしていた!!!全部あんたのせいだ!あんたがあんなことを言わなければ…!」
矢の数は段々と多くなってくる、だが、グレムは平気そうに全ての矢を打ち消していく。
「今回も…俺はあんたを殺すために後をつけた!そのために…」
「俺たちが国に疑われるように立ち回ったのだろ?」
リウムはその言葉を聞いた瞬間、動きを止めた。
「何故…分かった…?」
「痕跡を残しすぎたな。エルフには高い値段でものを売り付け、ダークエルフにはエリアの木に放火をし、ドワーフには普通の鉄を通常より脆い鉄にすり替え、獣人にはドワーフの作った武器は壊れやすいと広め、人間には人魚の湖の水を抜く機械を提供し、妖精にはエリアにまるで人が捨てたようにゴミを置いた…最近この国に来たのは俺たち3人、それと同時期にそれらが起こったとなれば俺たちが疑われて当然だ。こんなことをして喜ぶのは…人の不幸を見て笑うお前くらいだ。リウム。」
エルとルリはグレムのその言葉に反応を見せる。リウムは全て気づかれていたことに驚いて声を出せない。グレムは煽るようにリウムに言う。
「単純過ぎたんだよ、お前のやった事は。自分がまいた火種が多すぎて逆に逃げ場を失った馬鹿をやったということだ。」
「黙れ…黙れ!!!」
「そしてそのまいた火種のおかげで逆に俺たちは国から信頼を得ることができた、それを解決することでな。悪い方向に進めようと思っていたら、返って良い方向へと進んでしまった。よくある失敗だよリウム。」
「黙れと言っているだろ!!!」
リウムは矢をグレムに向けてものすごい速さで放つ。その矢をグレムは手で掴んで止める。
「そして…ここでお前は俺に倒され、お前がここに来た意味は全くなかったということになるのさ。」
「舐めるなよ…"元"魔王の分際で!!」
「<<覚醒>>!!!」
ドォン!!
リウムはリミッターを解除し、黒いオーラを身に纏う。リウムは言った。
「お前が魔王城を出てからずっと、僕はお前を倒すためだけに修行を重ねた!!その成果を見せてやる!!」
「ほお…それは楽しみだ。」
その瞬間からまた2人の姿は消えた。全く見えないスピードのなかで矢を撃ち合っている。リウムは思う。
「(いくら魔王をやっていた者だとしても…弓矢を使うのは初めてのど素人…完全に僕が有利なはずだ…、いつか必ず相手はミスをする…チャンスを待てば…倒せる…!)」
そう思っていた時、グレムは言った。
「それはどうかな…。」
そう言った以降のグレムの矢の精度、速度は段々と上昇していく。リウムは押され始めていた。
「(相手は弓矢の初心者!こんなはずはない!僕が押されるなんてことは…有り得ない!!)」
「ほらほらどうしたリウム。弓矢については天才とまで言われたお前が、俺なんかに押されているぞ。」
「黙れぇ!!!」
リウムは実際、少し焦っていた。こんなはずはないと何度も思いながら。
僕が何日修行を重ねたと思っている!!僕がどれだけ努力をしたと思っている!!こんな…こんな魔王軍を捨てた奴なんかに…魔王を突然やめて、自由に生きだした奴なんかに…負けるはずがない!
リウムは全力で矢を撃ちながらそう思う。すると、こちらの矢を全て打ち消しながら、グレムが喋りかけてきた。
「リウム…俺だってな…できればお前らと一緒が良かった…最後まで魔王軍をまとめる役目を続けたかった。…お前らはこう思っているだろう、魔王様に捨てられたと。だが、それは違う。お前らが捨てられたんじゃない、俺が捨てられたんだ。」
「何を…!」
「『統制が取れなくなった』?馬鹿か。俺がいた時もお前らはまとまろうとしなかった、統制を取ろうとした俺の言葉を聞かなかった。幾度話す内容を考え直しても提案した時点で即却下。そんなもので統制が取れていたとでも?」
「少なくとも…!魔王軍に残った者たちはあんたに頼っていた!あんたがいた時は…四天王以外の部下たちはあんたの命令に背かなかった!あんたが魔王としてその場にいたからだ!今は…」
「『四天王以外の部下たちは』?本当にそうか?ファイラスのことを思い出してみろ。あいつも俺の意見に背いていた筈だ、忘れたのか?」
「っ……。」
「俺が魔王としてそこにいたとしても、お前らは命令しか聞かない。提案や俺の考えは聞かなかった。まるでロボットみたいにな。お前らは誰も、何も分かっちゃいない。俺が…どれだけそんなお前らのことを思っていたのかも……!」
グレムがそう言った瞬間から攻撃の激しさが増した。リウムはグレムに撃たれた矢を打ち消すので精一杯だった。いつの間にか、立場は逆転していた。
「俺が何の為に『人間との和平』を提案したのか分かるか?俺が何の為にそれを却下されても諦めなかったのか分かるか!?それは…それはっ…!!!」
ビュン!!!
その時グレムから放たれた1本の矢はリウムが打ち消すことが出来なく、真っ直ぐリウムに向かっていく。グレムは感情を抑えきれなく、少し涙を流しながら言った。
「お前らが誰一人傷つかないで済むように!!誰も死なないようにしたかったからだ!!」
ザクッ!とその打ち消せなかった矢がリウムの右胸に刺さった。リウムはその言葉と、矢に衝撃を受け、その場に膝まづいた。そして、リウムは言った。
「グレム…様……ガフッ!」
リウムは血を吐く、グレムはその様子を涙を流しながら悲しそうな目で見ていた。リウムは刺さった矢を自分の体から抜き、立ち上がった。そして…
「失礼しました…。」
そう言ってリウムがバサッとローブを広げると、もうその場所からリウムはいなくなっていた。
グレムは力が抜けたように地面に膝をつく。心配してエルとルリがすぐに傍に駆け寄った。すると、グレムはまだ涙を流しながら言った。
「俺は何を間違ったんだ…何がダメだったんだ…何が…いけなかったんだ…。」
ルリは言う。
「ご主人様は…間違えてなんかない…間違えて、ダメで、いけなかったのは、ご主人様の部下の方…。王の気持ちを分かってくれなかった、ダメな部下の方…。」
エルも言う。
「もしご主人様が魔王を辞めちゃダメだったのなら…今まで多くの国とその国民の命を救ってきたのは…間違いになります。だから、これ以上も、これ以下もありません。ご主人様は何も間違えてはいませんよ…。」
ルリはハンカチでグレムの涙を拭い、エルは背中を優しく摩って、2人はグレムを慰め続けた。グレムは2人に泣きながら言った。
「ありがとう…。」
と……。
どうでしたでしょうか?
話の内容でもわかると思いますが第5章も次の話で最後になると思います。最後は最後でよくまとめていくので、乞うご期待です!
それでは、また次回お会いしましょう!




