第62話 他種族国家の希望
今回は他種族国家セント王国の国民たちが互いに認め合い、手を取り合っていくように…という話になります。大妖精様の願いと、人魚と人間の間にできたわだかまりはどうなるのか…。期待しながら読んでいってください!そして…思わぬ刺客も…?
それでは、どうぞ!
グレムたちは朝からある準備に取りかかっていた。
「ローラ、いいか?浮かすぞ?」
「はい、グレムさん!」
「<<浮遊>>。」
グレムは人魚たちの湖から少し水をもらって魔術で水の球を作り、その中にローラを入れて浮かせ、王城までローラを連れていこうとしていた。なぜこうなったかと言うと…
この日の早朝のことである。
グレムたちは王城へと向かった。門は開いていたのでそのまま王城の敷地に入り、そして城の入口のドアを開けて言った。
『朝早くから申し訳ありません、冒険者のグレムと申します。ダイナ王と面会は出来ませんでしょうか。』
すぐに使用人がこちらに来て言う。
『こんなに朝早くからご苦労様です。ということは…急用ですか…?』
『国王にとってもかなり利益となることなので早めがいいかと思い、参上しました。』
『承知致しました。恐らく、王は今起きなさる頃でしょう。準備が出来たらお呼び出しするので、そのソファにでも腰をかけてお待ちください。』
そう言って使用人は忙しそうに王城の廊下を走っていった。苦労をかけてしまったかもな…少し申し訳ない気分だ…とグレムは思う。
3人はソファに腰かける。エルはグレムに確認をする。
『ご主人様…伝えることは、分かっていますよね?』
『ああ、今までに終わらした件の報告と大妖精からの願い、あと人魚たちとの和解だ。忘れないさ、こんな重要なこと。』
『私もご主人様が忘れるわけはないと思っていましたが少し不安で…聞いてしまいました、ごめんなさい。』
『謝ることじゃない。この国の為を思っての不安だろ?確認したくもなるさ、決して悪いことではないぞ。』
『そうですか…そうですよね!ご主人様!ありがとうございます!』
エルは気分が良さそうにニコニコしている。可愛い。そうして数十分が経った頃であろうか、また走ってさっきの使用人が戻ってきた。その使用人は息を整えた後に言う。
『準備が整いました…玉座の間へと案内します。』
グレムはその使用人に言う。
『申し訳ないです、手間をおかけしてしまって…。』
『いえいえ、私たちは国の為に様々な問題を解決してもらっている側です。そのような方たちに、この位のことで文句を言っては王国に住まう者としての恥!気になさらず…ささ、どうぞこちらへ…。』
そう言ってその使用人は玉座の間の前まで案内してくれた。グレムはもう一度使用人に感謝を述べる。
『朝早くからありがとうございました。』
『お礼を言うのはこちらの方です。この国の為に、ありがとうございます。』
それを聞いたグレムたちは玉座の間の扉を開けた。
ダイナ王は予め、玉座に座っておらず、以前話をした時と同じ位置に立っていた。早速、ダイナ王は聞いてくる。
『朝早くから、ご苦労。それで、どうしたというのだ?』
グレムはすぐに返答した。
『まずは報告から、ある程度の大きな問題は片付けさせてもらいましたとだけ言っておきます。』
『ああ!その件はありがとう。魚人や人間、エルフやダークエルフ、さらには獣人やドワーフまでもが皆笑顔で活気溢れるようになった。そして君たちのことをとても嬉しそうに話すのだ。本当に感謝しかないよ、ありがとう。…それで、まだ何かあるのかね?』
『はい、実は話が2つほどあります。立ち話でも宜しいでしょうか?』
『一向に構わん。この国に関してのことなら、遠慮せず言ってくれ。』
『ではまず1つ目、この国の大妖精からの願いです。『人が自然を大切に扱うようにして欲しい』という事です。それも、徹底的に。』
ダイナ王は驚く。
『なんと!?君たちはあの大妖精様に会えたのか!?さらに話も聞いてくるとは…。』
『はい、ダークエルフの彼女、エルが妖精エリアのゴミを片付け、花を踏まないようにしていたら会えたと言っていました。』
エルはそのグレムの言葉の後、頭を下げながら必死にダイナ王に問いかける。
『お願いします!どうか国王陛下から直々に国民の皆様に言いかけてはもらえないでしょうか!大妖精様の願いなのです…。『自然をぞんざいに扱って自然を脅かす人間の行為が許せない』と言っていました。更に、『私たちには小さな問題でも、妖精にとっては大きな問題だ』とも言っておりました!重ね重ねお願いします!』
エルが言葉を言い終わって数秒経った後だった。ダイナ王は言った。
『…我々は他種族国家だ。どの種族でも国民は国民、大切にしなければならない。分かった、私から直々に国民に呼びかけよう。そしてそれについて新たな法でも考えてみる。大妖精様の願いだ、よくぞ聞いてきてくれた。君には礼を言う、ありがとう。』
ダイナ王がそう言うとエルは頭を上げ、喜んだ様子を見せた後にもう一度ダイナ王に頭を下げて言った。
『ありがとうございます!よろしくお願いします!』
『ああ、任せてくれ。…それと2つ目はなんだ?』
『2つ目は、人魚についてです。実は人魚が人間に抱えていたわだかまりをなんとか克服しようとしてくれていまして、是非、国王にその人魚の代表者と会って、和解をして欲しいのです。』
『そういえば…人魚ともあまり話が出来ていなかったな…悪かった。よし、ならば大々的に国民の前で和解を行おう。その方が、しっかりと信頼を確立できるだろうしな。その時に、大妖精様の願いを呼びかけるようにしよう。…そうと決まれば…今日にでも決行しよう。今日は少し忙しくなるぞ!』
そう言って、ダイナ王は各関係者にその事を呼びかけて周り、朝、国民に王城前に集まるように命令を出した。
そして、グレムたちはその準備に朝から取り掛かったということである。
「すいませ〜ん!ちょっと通ります〜!!」
グレムは王城前に早めに集まっている国民の間を抜けながら水の球に入ったローラを浮かせて運ぶ。
ローラは初めて見る外の景色に見とれていた。
「うわぁ〜!外ってこうなってるんですね!凄いなあ〜。」
「まだまだこんなもんじゃない、外の世界には見たことの無い素晴らしい景色が広がっている。いつか、連れて行ってやるよ。勿論、ローラの仲間も一緒にな。」
「約束ですよ!グレムさん!」
ローラはグレムの言葉を聞いて嬉しそうに返答した。それを見て、聞いていたエルとルリは言う。
「いつの間にあんな子と仲良くなっていたんですか…。」
「ご主人様…本当に女の子に好かれやすい…。」
「なんか言ったか〜?」
『いえ、なんでもないです!』
グレムに少し聞こえていたようで2人は同時になんでもないということを伝える。
「そうか、何かあったらすぐ言えよ?」
『は〜い。』
2人は少し苦笑いで言う。
王城前までその水の球を運び終えると、グレムはそれを地面に浮かせたまま置いた。
「ローラ、大丈夫か?多分この国の王と友好の証として手を繋ぐことになるが…。」
「はい、大丈夫です…。」
そう言う彼女の手は震えている。グレムは水の球に手を突っ込みローラの手を握って魔術を唱える。
「<<勇気>>」
グレムはそう唱えたあとすぐにローラの手を離して言う。
「勇気が出るおまじないだ、少し怖いかもしれないが、頑張ってくれ。」
ローラはグレムの言葉を聞いて元気に返事をした。
「はい!!」
ちょうど約束の時間になった頃だろうか、王城のドアがバン!!と開き、ダイナ王が出てきた。国民たちは歓声を上げ、拍手をする。
そしてダイナ王は入口のドア前にある階段を下りて、国民の前へと来る。ダイナ王がある位置に着いた時にある兵士が言った。
「静粛に!!」
その兵士の言葉に、国民は歓声を上げるのも拍手をするのもやめ、静かになった。そうしてから、ダイナ王は話し出した。
「今日、ここに国民に集まってもらったのは他でもない!国に関わる重要なことを話すためである!」
そのダイナ王の言葉に少し国民はざわつき出す。ダイナ王は続ける。
「君たちもご存知であろう!今この横にいる3人はこの国の種族間の問題を解決し、種族間の関係を親密にしてくれた!それに関してである!」
ダイナ王は一度言葉を切り、その後にまた話し出した。
「なんと、この3人の中のグレムという男は、人魚が長く人間に抱えていたわだかまりを解こうとしてくれた!まずそれに感謝しよう!」
ある程度の歓声と拍手がグレムに送られた。グレムは少し恥ずかしそうにする。
「そして!今ここで!その人魚と友好な関係を築いていけるように、それを示そうと思う!」
ダイナ王がそう言うと、国民は大きな歓声を上げた。グレムは、ダイナ王の目の前にローラが入った水の球を置く。
国民は、その人魚の美しさに目を奪われていた。ダイナ王は宣言する。
「今、ここに!人間と人魚は、友好を築いていくことを宣言する!」
そう言って、ダイナ王はローラの方に手を差し出した。ローラは少し怖がりながらも、グレムのかけてくれたおまじないを思い出し、ゆっくりと水の球から手を出しながらも、そのダイナ王の手を握った。
その瞬間、国民は大きな歓声と拍手を2人に送った。ダイナ王はローラが怖がっていたことに気づいていて、すぐに手を離して小声で言った。
「ありがとう、勇気を出してくれて。」
ローラはその言葉に笑顔で返した。そしてグレムはローラの入った水の球を自分たちの方に持っていく。グレムはローラに聞いた。
「どうだ?人間を…許してくれる気になったか…?」
「まぁ…悪い人ばかりでは無いですね!!」
質問の答えにはなっていないが、グレムはそれを聞いて納得し、笑った。ローラもそれを見て笑う。2人が話し終えた時、ダイナ王は言った。
「そして、もう1つ私から話がある。大変重要な事だ、しっかりと聞いてくれ。」
国民はその言葉に耳を傾ける。
「この3人のうち、エルというダークエルフの方が、大妖精様に会ったそうだ。」
それだけで国民はざわつき出す。大妖精様は、よっぽど人前に姿を現さなかったのだろう。
「その時、大妖精様はある願いを言ったそうだ。『人は自然をぞんざいに扱い、自然を脅かしている、それを止めさせて欲しい』と。『なんだそんなことか』と思うかもしれない、だがその小さなことが妖精にとっては大きな問題となるのだ。我が国は他種族国家!できれば、全ての種族に幸せに過ごして欲しい!だから、この大妖精様の願いをどうか聞き入れて欲しい!それに伴い、新たな法律もいくつか考えていく予定だ!私からも頼む!」
ダイナ王は頭を下げた、それによって、国民たちはざわつき出す。よっぽどの事なのだろうと国民は理解した。それぞれが確固たる意志を持ち始める。
そして、ある場所からこんな声が上がった。
「勿論です!!」
それに反応するように他の者たちも声を上げる。
「大妖精様の願いとあらば!!」
「自然を大切にします!」
「絶対に環境を汚染させません!!!」
他にも国民が何人もそのような声を上げた。それを聞いてダイナ王は涙ぐみながら言った。
「みんな!ありがとう!これからは王城の者だけではなく、この国のみんなで国を良くしていこう!!」
わあああああ!!!と国民から歓声が上がる、大きな拍手も送られる。誰もが泣き、嬉しがり、喜んでいた。その一瞬だった。
ヒュン!!!
1本の矢がローラに向かってどこからか放たれた。「キャア!!!」と女性の国民が悲鳴をあげる。
グレムはその矢をローラに当たる前に手で掴んで止めた。グレムはその矢が放たれた方向を見る。すると、ある木の上に黒いローブを身にまとった人影が見える。
「誰だ!!!」
グレムは言う。すると、その者は言った。
「あ〜あ、つまんないの。その女が死んだら結構面白いことになりそうだったのに。」
その人影は黒いローブを脱いだ。グレムはニヤついて言う。
「やっぱりな…おかしいと思ったよ。」
「あらぁ〜気づいてたのか?僕の存在に。本当につまんない奴だなぁ。グレム様。」
そいつは魔王軍四天王の1人、リウムだった。
どうでしたでしょうか?
次回はまさかの魔王軍四天王の1人、リウムと対決!?グレムは彼に何を思うのか、彼はグレムに何を思うのか、それぞれの思いが交差します!乞うご期待下さい!
それでは、また次回お会いしましょう!




