第60話 人間と人魚
今回は前回の予告通り、王国の内情、グレム編!です!タイトルを見ればわかると思いますが、人魚との話になります。かなり人間の悪い所が出ているので、胸糞悪いシーンもあるかと思いますが、是非、最後まで読んでいって欲しいです。あと、『人間』にルビが着いていない場合は、普通に『にんげん』と読んでもらって大丈夫です。一応言っておきます!
それでは、少し長くなりましたが、どうぞ!
お母さんから言われていた。
『人間には何があっても近づいちゃダメ!!』
何故だろう、私は人間に近づいてみたい、そして、仲良くなりたい、話がしてみたい。そう思っていた。
ある夜のことである。人間が数人、人魚エリアの湖の近くに来てこう言ってきた。
『出てきてよ、話がしたいんだ!』
私たちは湖の奥深くにいた。お母さんは人間の方を睨みつけ、私たちを上に上がらせないように手で守っていた。
だが、私はお母さんのその言葉と行動に背いて湖の上に上がろうと泳いだ。お母さんは叫ぶ。
『行っちゃダメ!!!』
私はそれでも人間と話をしたいと思った。どんなことをするのだろう、何を食べるのだろう、何を好むのだろう。私の心は知りたいことで埋め尽くされていた。やっと知ることが出来るそう思っていた…。
だが、私が湖から顔を出した瞬間、人間は私を網で捕まえてきた。そしてその人間たちは私を地上へと引きずり出し、網から出して逃げられないように全員で囲み、こう言った。
『ありがとよ!嬢ちゃん。ちょっと鱗を貰うよ〜へへへ。金になるんだ。』
人間たちは私の尾ひれの鱗をバリバリと剥がし始めた。痛い痛い痛い!!!尾ひれから血が流れる。そうするとその人間の中の1人が言った。
『確か…人魚の血を飲めば健康になれるんだっけな…貰っておこう。ちょっと痛いよ〜お嬢ちゃん♪』
その人は私の体に刃物を突き立て血を出させた。痛い!!痛いよ!!私はあまりの痛さに涙を流した。
『確か人魚の涙を飲めば不老不死になれるとも聞いたぞ?取っておけ。』
人間たちは私から全てを奪っていった。『もうやめて!!』そう思った瞬間である。
『ア〜〜〜〜♪』
お母さんが湖の上に出てきて歌った。すると人間たちは頭を抱えて『痛い!』と言い出した。私はその隙を見て湖の中へと潜った。お母さんはそれを見て歌うのをやめ、私の方に来て頬を叩いた後、言った。
『人間たちは私たちをああ使うの!!だから湖から出ちゃダメなの!!心配したんだから……。』
お母さんは涙を流し始めた、そして私を抱きしめた。
こういう事なのか…と私は自分の体で痛感した。そして、もう二度と、湖の外へは出ない。そう誓った。
それから数十年経ったある日の昼の事である。黒い服を着た人間が湖の近くに来て言っている。
「種族間での問題を解決しに来ました、人間で冒険者をやってるグレムと申します!少しお話をお聞かせ願えませんか?」
そう言ってまた、私たちを湖の上へ上げて、何もかもを奪い去る気だ。その口車には乗らない。そう思っていた。
そこに、『いつもの人たち』が来た。あの時、私から全てを奪っていった人たちである。その人たちと黒い服の人は仲間なのかと思ったら、少し話をした後、黒い服の人がその『いつもの人たち』を殴り始めた。喧嘩でもしているのだろうか。
私は興味本位で少し湖の上に上がって行った、何をしているのかが気になったからである。気づかれないようにゆっくりと水面から顔を出す。
すると黒い服の人…グレムと言っていたっけ?その人が『いつもの人たち』にこう言っているのがよく聞こえた。
「お前らのせいで…人魚のみんなは顔を出さないわけか…ふざけるな!!」
そう言って『いつもの人たち』を殴り飛ばす。『いつもの人たち』の中の1人がその人に言う。
「そ、そうは言っても!鱗は金になるし、涙を飲めば不老不死まではいきませんが長生きが」
その言葉の途中でその人も殴られた、そしてグレムという人は言った。
「人魚のみんなだって生きているんだ!じゃあお前らが同じ状況だったらどうする!?獣人に捕食対象と見られていて、『人間を食えば不老不死になれる』と言われ、食われたらどう思う!?皮を剥いで焼かれ、それを売るような獣人がいたらどう思う!?」
「………。」
その言葉に私は衝撃を受けた、今までそんなことを言ってくれた人はいなかったからである。思わず涙が流れる。『いつもの人たち』は何も言い返せないで黙っている。
「せめてそれを分かってから来るんだな!馬鹿どもが!!」
グレムという人はそう言って、『いつもの人たち』を全員もう一度殴り飛ばした。殴り飛ばされたその『いつもの人たち』は逃げるように去っていった。
グレムという人は後ろにいる私に気づいた。私はまだ少し怖くて湖へと潜る。それを見てそのグレムという人は湖の前で正座をしながら言った。
「今まで怖がらせてしまってすまなかった…。完全に人間側が悪いのは分かっている。こんなことを言われてもそれで済むような問題では無いのも分かっている。だけど、一度、たった一度だけでいい。許してくれ!今後こんな事が絶対に起きないようにするから!話を聞かせてくれ!」
その人はその姿勢から地面に手をつけ、頭を下げながらそう言った。あの姿勢は知っている、人間の中では最大の謝罪を意味する姿勢だ。私はそれを見て再び湖の上へと上った。
私は水面から顔を出す、するとそれに気づいたグレムという人は私の方を見て言う。
「許して…もらえますか…?」
私はその言葉に少し戸惑った。あの時、人間につけられた心の傷はまだ痛む。人間に対しての恐怖心もまだ完全には癒えていない。だが、何故だろう。この人からは『あの人たち』とは違った何かを感じる。何か、とても温かいものが…。私はとりあえず疑問に思っていたことを聞いてみる。
「……さ…。」
「『さ』?」
人間と言葉を交わすのは初めてで、少し緊張してしまって声が出せない。だが私は諦めずそのグレムという人に必死に言葉を伝える。
「さ、さっき…どうして『あの人たち』を殴ったの…?」
「ん?ああ、君たち人魚は人間に怯えていたから出てこなかったんだろ?人間に少し話を聞いてみたら人魚の鱗を剥いで金にするんだとか言いやがったからさ、人魚だって生きているんだ、人魚は物じゃないって殴りながらでも伝えたかったからかな。ああいう奴らには多少痛みをもって伝えないとダメなんだ。嫌な話だがな…。」
私はその言葉を聞いて思わず涙ぐむ。どうしてか分からないが何かとても温かいもので身体中を包まれたような感覚がしたからである。私はさらに聞く。
「じ、じゃあ、あなたはなんで私たちから鱗を取らないの?お金…大事じゃないの?」
「それは…さっき言ったろ?『人魚だって生きているんだ、人魚は物じゃない』って。確かにお金は大事だが、人魚だってそりゃあ生きてるんだから尾ひれの鱗を取ろうとしたら痛いだろうし、血が出ちゃうだろ?そんな君たちに嫌な思いをさせて金を稼ごうとするんなら、自分の臓器を売った方がまだましだね。」
赤の他人であるのに、私たちのことを案じてくれている…?しかも私たちを傷つけてお金を取るくらいなら…自分の内臓を売ると…?自分よりも他人のことを思う人なのだろうか。私は考える。すると、今度はそのグレムという人から話しかけられた。
「それで…許してくれるかな…?」
私はそう言えばそうだったと思う。だが、まだ気持ちの整理がついていない、ここは…こう言おう。
「まだ…許せない…。」
私はそう言った時、ある事に気づいて怖くなった。許せないと言ったらこの人は怒るのではないかと思ったのである。人間はそういう生き物だ。常に自分のことしか考えていな…
「そっか……まぁそれはそうだよな…。長い年月、ああいう奴らに脅かされてたら、そんなすぐには許せないよな…。」
私はその言葉に驚いた。この人はどこまで優しいのだろう、どこまで寛容なのであろう。常に自分のことしか頭に無い人間と違って、この人は、一体どうしてこんなにも…。
「よし、それじゃあ少しずつでも許していってくれたらいいよ。それで…何か聞きたい事とかあるか?なんでもいいぞ。人間は何を好むのかとか…人間はどんな文化があるのとか…話しているうちに、自然と仲良くなれたら良いだろう?」
私はその言葉を聞いた後、すぐに気になっていたことをいくつも聞いた。グレムという人は私の全ての質問にしっかりと答えてくれた。私はその人と話すうちにかなり打ち解けていき、いつの間にか陸に上がり、グレムさんの傍に座っていた。楽しくなって、尾ひれをピチピチとさせながら、その人の話を聞く。太陽はすっかり沈んできていた。
すると、突然その人は言った。
「そういえば、君の名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「ロ、『ローラ』、『ローラ』って言うの。」
「そっか、いい名前だな。しっかし、ローラは凄い可愛いな。人魚だからか分からないけど、とても美人に見える。」
私はその言葉に衝撃を受けた。何故だろう、顔が赤くなるのが分かる。そしてとても恥ずかしくなる。身体中が熱くなり、胸がドキドキする。私はあまりの恥ずかしさに湖の中に潜った。すると、グレムさんは私にこう言った。
「また明日も来るからな〜!!」
私は何故かその言葉を聞いた瞬間嬉しくなった。
だが、その日の夜のことだった。
「おい、確かか?」
「そうだ、あいつは確かに『また明日も来る』と言っていた、つまり今日は帰ったんだろう。その言葉通りなら、もう今日はここには来ないはずだ。」
「よし、じゃあ手筈通りにやるぞ!」
『おう!!』
その日の朝、人魚の湖に来て、グレムに殴られていた『いつもの人たち』3人を含んだ男5人は、夜のうちに湖の水を抜き、人魚たちから奪えるものを全て奪おうとしていた。
ローラはそれを感知した。そう言えばグレムさんは言っていた…。ローラはグレムと話したある内容について思い出す。
『もし…また『あの人たち』が来たら…何をしてきますか?』
『う〜ん。俺のただの推測になるがいいか?』
『は、はい!是非!』
『恐らく奴らは誰も気づかない夜に湖の水を抜いてくると思う。』
『な、なぜでしょうか…?』
『君ら人魚たちは湖の奥深くまで潜って人間たちに捕まらないようにしてるんだろう?なら湖の水を抜いてしまえば君たちは泳げなくなるから身動きが取れなくて捕まえやすくなる。ただそれにはかなり大がかりな準備が必要だ。この数十年、それをやってこなかったのは準備が出来てなかったから。だから、今ならもう十分過ぎるぐらいの準備が出来てるだろう。』
『そ、そんなことをされたら、みんな掴まってしまいます!どうすれば…いいですか…?』
『水を抜かれるのなら歌って頭痛を起こさせる暇も無いだろうな。だから人魚たちには打つ手がほぼ無いだろう。』
『そ、そんな…。』
その時、グレムはローラの両肩を掴んで言った。
『だけど、心配するな。絶対にそんなことはさせない。俺が何とかするから安心しろ。』
不思議とその言葉にはとても説得力があり、私は安心感に包まれた。
ゴオオオオオと何かが動く音がする。きっと湖の水を抜くための何かなのだろう。だが、グレムさんは『心配するな』と言った。私は、その言葉を信じる。だってあの人は、他の人間とは違うから。
人間の声が聞こえる。
「よし、これで準備は整った!水を抜くぞ!」
「じゃあ早速このホースを湖の中に…」
バリバリッ!!!
「ぎゃあああああ!!!」
湖にホースを入れようとした男の手に雷属性の魔法を受けたような痛みが走る。
「なんだ!?どうした!?」
「分からねぇ…分からねぇが、俺たちと湖の間に、何か雷を纏った壁のようなものがある!」
「なんだと!!?」
水を抜こうとしていた男たちはぎゃあぎゃあと騒いでいる。
ローラは湖の中からあることに気づいた。どうやらこの湖を囲むように透明な結界が張ってあるようだ。
まさか…私が恥ずかしくって湖の中に潜った後…グレムさんはこれを…私たちのために…?
ローラは涙を流す。ただ質問をしただけなのに…ただ数時間話しただけなのに…あの人は…私たちのことを常に思って…!その時ある声が聞こえた。
「やっぱりな。」
ランプの光が湖の中からでも分かる、そして、この声は…。
「お前たちはあれだけ俺が説得したのに聞こうともせず、遂には気づかれないように夜に作戦を決行した。…見逃すチャンスは一度与えたのにな…。」
グレムさんだ、間違いない。その声を、私は忘れることは無い。なぜなら私は…
「ローラたち、人魚を金のなる木としか思っていないお前らにもう言うことは無い。覚悟は出来てるんだろうな…?」
そうグレムが言った瞬間、グレムは目で捉えることのできない速度でその男たち5人全員をぶん殴った。
ドゴゴゴゴゴォォン!!!
5人はそのまま地面に倒れ、気絶した。グレムは一緒に連れてきた王国の兵士たちに言う。
「後の処理はお任せします。」
「了解しました!」
兵士たちは敬礼をしたあと、その男たち5人を縄で縛ってから、牢屋へ入れるために連れて帰って行った。
グレムは結界を解き、湖の中を覗きながら言った。
「ローラたち!大丈夫だったか!?」
ローラはその声とグレムの姿を確認するや否や、ものすごいスピードで湖を上がってきて、水面からジャンプし、抱きついてきた。そして言う。
「ありがとう!グレムさん!!」
グレムはローラの胸で口を塞がれ、苦しそうにしている。そうすると、他の人魚たちも地上に出てきて、グレムに抱きついてきた。そして全員で言う。
『ありがとう!!』
グレムはとんでもない圧迫感の中で意識を失いかけていた。
その声を、私は忘れることは無い。なぜなら私は……この人のことが大好きだから!!
どうでしたでしょうか?
次回はセント王国の内情エル編になると思います。今度の問題は一体誰から出されているのか、乞うご期待ください!
それでは、また次回お会いしましょう!




