第49話 選挙開幕
今回はいよいよ選挙開幕です…色々と面白い展開を詰め込めたと思っていますので、是非、期待して読んでいってください!
それでは、どうぞ!
アルス王は以前、兵士にフェルトが選挙の準備をしていると言われた時は本当に放っておいてもこちらに敵うはずが無いと考えていたが、たった数日でここまで国民の支持を得ていったフェルトを見て、その考えに少し不安を抱いた。
ならば、フェルトを選挙中に暗殺し、国民が皆、自分にしか投票できないようにしてやろうと、実の妹に手をかけてまで選挙に勝とうと思いついた。
国民が投票を行う前に、候補者は最後の演説を行う。その時にはあの化け物のような力を持った冒険者でも、少し遠くで演説を行っている者を助けることは出来ないだろう。だから、その演説中に突然、暗殺を行おうと思っている。
まさに完璧、穴などどこにもない。その時俺はその暗殺をされた妹を心配するように声をかけ、その暗殺者を追うように支持をすればいいだけ。たったそれだけだ…考えるだけでニヤついてしまう。
更にもう1つ、こちらはもう俺に投票を行うように金を国民に配っている。その人数は例えいくらフェルトが頑張ろうと追いつけないほどだ。絶対に俺には敵わない、たとえ、何が起ころうとな。
この国は、俺の、俺だけの国だ。誰にも渡す気は無い。邪魔者なぞいない、絶対君主制の俺が支配する国、誰も逆らわず、逆らえない。俺にとっての楽園だ、そんなものを誰が他人、それも妹なぞに渡そうとするものか。
アルス王は『絶対君主制』という自分の権力に溺れるように浸かっていた。それを邪魔する者は排除する。まるで権力に溺れる欲望の塊のような状態にまでなっていた。
更に彼には他人なぞどうでもよかった。国を動かす際、国民のことを考えたことなど、今まで1度たりとも無い。自分を中心として回る世界にすっかり酔いしれていた。
「明日が楽しみだ。」
そう言ってアルス王は笑っていた。
ついに選挙当日、投票箱の周りを囲むように国民は集まっていた。とても賑やかな中、王城のドアが開き、フェルトとアルス王が出てきた。
2人は真っ直ぐ歩いて来て、ある程度のところで止まった。そこに最後の演説用の拡声器を兵士が持ってくる。いよいよこの国の命運をかけたと言っても過言ではない選挙が始まろうとしていた。グレムたちはその国民たちの後ろからフェルトを見守っていた。
まず、アルス王から演説を始めた、拡声器を手に取る。
「私は、これまで国民に酷い思いをさせてきたかもしれない、だが、これからは心を入れ替え、国民の為に政治を行っていこうと思っている。」
勿論、ただの嘘を並べただけである。アルス王はこうすることで少しでも国民の気を惹こうとしている。
「なので、私に投票を行って欲しい。この妹より、私は遥かに国民のためを思っている!」
そう演説が終わると、国民はざわつき出した。アルス王がこんなことを言うとは思ってもいなかったからである。
だが、そんな中でもフェルトは落ち着いて、次に拡声器を持ち、演説を始めた。その時、アルス王は国民に紛れたある男に合図を送った、そして国民に見えないように下を向いてニヤつく。
「私は、最初、少し不安でした。本当に私なんかがこの国を背負っていけるのかと、国民を幸せにしていけるのかと。」
その言葉に国民は思わず耳を傾ける。フェルトは続ける。
「でも思ったのです、このままではダメだと、国民に不安が残るような政治を行っているのを放ってはおけないと。だから、私はーーー」
その時だった、黒いマスクを被った男が刃物を持って拡声器を持ったフェルトに走って突っ込んでくる。それをみて女性の国民が「キャア!!!」と声を上げる。
フェルトはその場から動かなかった、そして拡声器を手から離す。アルス王は「諦めたのか」と思って笑みを浮かべた…だが…
グレムは少しニヤっとした。なんとフェルトは突っ込んでくる男の刃物を避けながらそのままの勢いで背負い投げをした。
ドォン!!と地面に男を思いっきり叩きつけた音が響く。兵士はフェルトがその男を投げた後すぐにその男を取り押さえた。アルス王は想定外の出来事に固まって動けないでいる。
兵士が言う。
「なんだお前は!!この黒いマスクを取れ!!」
男は被っていた黒いマスクを取られる、ただの一般男性と思われる顔をしている、兵士はその男に問う。
「誰だお前は!?何が目的だ!!フェルト様に刃物を向けるとは!!」
「い、言えねぇ…言ったら…殺される…!」
「なんだと!?洗いざらい全て話せ!!」
兵士は男を取り押さえながら問い続ける。アルス王はそれを黙って見ていた。フェルトの元にグレムが歩いてきた。そして言った。
「な?良かったろ、教えといて。」
フェルトはこんな事態の中でもそのグレムの言葉に笑顔で返事をした。
「はい!」
そしてグレムはフェルトの頭を2回ポンポンと優しく叩き、兵士が取り押さえている男へと近づいていく。グレムは兵士に問われる。
「なんだお前は!!この男の仲間か!?」
「グレムと申します。」
そうグレムが言うと、兵士は驚きながらも頭を下げて謝った。
「すみません!グレム様でしたか!無礼を働きました!」
グレムは「気にしなくていいさ」というようにその兵士に手を振った後、取り押さえられている男に魔術を使った。そして拡声器をその男の口に近づける。
「<<白状>>」
そうグレムが魔術をかけると、その男は話し出した。拡声器があるため国民にもその声が届く。
「ある…黒いローブの男に…命令されたんだ……かなりの額の金をやるから、フェルト様を暗殺しろと……。」
その話を聞いて国民はざわつき出した。取り押さえられている男は続ける。
「その黒いローブの男に…俺は聞いた……誰がこんなことを…と……そうしたら…黒いローブの男はこう言った……『フェルト様が死んだら、誰が王になると思う?誰が利益を得ると思う?』と……。」
そこでその男は話を止めた。国民はその言葉を聞いて、アルス王を睨みつけた。アルス王は落ち着いた様子を見せながら国民に弁明する。
「待て、私が実の妹を手にかけてまでこの国の王になりたいと思っているとでも?そんなわけないじゃないか。笑えない冗談だ、全く、その男はデタラメを言っているに違いない。しかも俺はそんな男、知らないぞ。」
グレムはアルス王が話し終わるとすぐに拡声器を使って言った。
「アルス王の言い分はこのようです。ちなみに私がこの男にかけた魔術は『白状をする』という効果を持った魔術なのですが、それでも信じられない人がいるかもしれません。なので判断は国民の皆様に任せます。」
グレムはそう言った後、フェルトの元へと拡声器を持ってきて渡し、背中を「頑張れよ」とポンと押した。そして歩いて元いた場所へと戻っていく。
グレムがさっきいた位置に着いたときに、フェルトはもう一度最初から話し出した。
「私は、最初、少し不安でした。本当に私なんかがこの国を背負っていけるのかと、国民を幸せにしていけるのかと。」
国民は少しざわつきながらもそのフェルトの言葉に耳を傾けている。フェルトはまた続ける。
「でも思ったのです、このままではダメだと、国民に不安が残るような政治を行っているのを放ってはおけないと。だから、私はーーー」
その後、数秒間を空け、大きく息を吸い込んだ後、フェルトは言った。
「私は、国民の皆様のために常に国民のことを考えて行動する、国民を第一と考えた政治をしていくことをここに宣言します。国民から不満が出るようであれば、すぐ解決し、問題が起こらないような平和な国を目指していきたいと思っています。その為には、国民の皆様の助力が必要となります、だから、私は国民の皆様にお願いします。」
また数秒間を空け、フェルトは言った。
「国民の皆様、どうか私と共に、素晴らしい国を作っていきませんか。…以上です。」
フェルトが言葉を言い終わった数秒後、ある場所から拍手が起こった、グレムがやっていた。そうするとその周りの国民も皆、拍手をし始めた。フェルトはそれに感動して、嬉し涙を流しながら、頭を下げた。
「では、投票を始めます!」
兵士は投票箱の位置に着く、そして、その正面に国民は長蛇の列を作り出す。
確かにいい演説かもしれなかったが、金の力には及ばない、残念だったなフェルトよ。お前が暗殺されようがされまいが結局結果は変わらないのだ。すまんな。
アルス王がそう思っていると、金を渡して投票をするように言った男が投票箱の前に来た。アルス王は笑みを浮かべた、だが、その男はアルス王の方を少し見た後、アルス王に渡された金が入った袋を投票箱が置いてある机の横に投げ捨て、フェルト側に投票券を入れた。その光景を見て、アルス王は驚きを隠せなかった。
その後もアルス王が金で投票券を買ったはずの国民は皆、金が入った袋を投げ捨て、フェルト側へと投票をしていく。アルス王は投票を終えた者の近くへと行き、言った。
「どういうことだ!!これは!!投票を俺にしろと言っただろうが!!」
そう怒りながら言うと、その国民の1人が言った。
「私たちは貴方にお金を渡された時はそうしようと思っていました、ですが、毎日雨の日も風の日も選挙運動をしているフェルト様はどこまでも健気で、頑張り屋で、貴方より遥かに国民のことを考えていることが分かったんです。」
もう1人が言う。
「それに、さっきの状況で、あまりにも苦しい言い訳をしましたよね?残念ながらあなたは実の妹を手にかけてまでこの国の王になろうとする人です。そんなこと、国民のみんなが思ってますよ?」
「なっ…!!!」
さらに畳み掛けるようにもう1人国民が言った。
「しかも、あなたは絶対に国民のことを考えていません。これまでの政策を改める?馬鹿なことを仰らないでください。あなたは常に自分の利益を優先し、他の者のことを考えない人間です。そんなあなたが、考えを改めるとは思えません。それに対して、フェルト様の演説は素晴らしかったですね。思いがしっかりと伝わりました。」
アルス王は何も言い返さなかった、いや、言い返せなかった。あまりにも核心を突かれたため何も言えなかったのである。アルス王は怒りながら「クソッ」と言ってその場を去り、投票を行っている方へと戻って行った。通りかかった途中でグレムに言われる。
「どうでしたか、そして覚えてますか?『王たるものとは…』なんでしたっけ?」
アルス王は悔しそうな顔をしながら何も言わず、最後の演説をした位置へと戻った。
投票が終わり、集計が行われた。結果は漠然としたものだった。アルス王にはただ1票たりとも入っておらず、フェルトには国民全員分の票が入っていた。フェルトはその結果にまた嬉し涙を流しながら横にいたグレムに言った。
「グレム…様ぁ…グスッ…私…やりました…!」
「ああ、よく頑張ったよ。フェルト王女。」
フェルトはグレムに抱きついた。グレムはそのフェルトを優しく抱きしめながら、頭を撫でる。エルとルリからの視線が少し痛い。…だが、本当に良かった。グレムはフェルトに言う。
「フェルト王女、泣いてばっかりではなく、国民にもその王女としての顔を見せてやってください。みんな、待っていますよ。」
そうグレムがいうと、フェルトは涙を拭き、国民に向かって手を大きく振った。国民は歓声をあげ、一緒になって喜んでいた。
こうして、フェルトは王女となり、ワマル村のダークエルフの件は撤廃され、さらにあのこじつけのような条件は、『無条件で、ワマル村に何かがあったら助ける』という条件に変わった、連れていかれた女性のダークエルフたちは皆、メイドとなって、あのアルスに奉仕をしていたらしい。フェルトはその女性全員を村へと返した。彼女たちは泣きながら喜んでいた。
グレムがそう村長に報告しに行くと、村長のミミは泣きながら抱きついてきて、頬にキスをされた。その時もエルとルリの視線が酷く痛かった、だが、ワマル村の件も解決してよかった。
ワマル村に来ていたフェルトの元へと村長へ報告した事を言って戻ると、彼女は「よかったです」と涙を浮かべながら言った。
彼女の満足そうなその表情を見て、グレムはこれでこの国でやり残したことは無いかなと思い、次の目的地のことについて考えていた。
「クソッ!!暗殺も失敗して、選挙にも負けた!!挙句の果てに政治には参加できないようにされた!!ただの王族になってしまった!!クソォッ!!」
ガンッ!と机を蹴る。そのアルスの元にどこから入ってきたのか分からないが、黒いローブの男が来た。そして言う。
「不満ですか…?」
「当たり前だ!こんな俺以外が統治している国など滅んで…」
「どうしました?」
黒いローブの男が問うと、アルスは急に笑いだした。そして言う。
「そうだ!こんな国滅んでしまえばいいのだ!!そうしよう!!」
そうアルスが言うと、黒いローブの男はニタリと笑い、言った。
「力をお貸ししましょう、影の騎士団の名において…。」
どうでしたでしょうか?
次回は…またもや奴らとの戦いが始まってしまいます…アムル王国はどうなってしまうのか…お楽しみに!
それでは、また次回お会いしましょう!




