第48話 『信頼』を得るには
段々と国の命運をかけた選挙が近づいてきます…。それまでにフェルトとグレムは一体どうやって国民から信頼を得ていくのか、楽しみながら読んでいただけたら嬉しいです!
それでは、どうぞ!
次期国王を決める選挙まで残り1ヶ月、フェルトは自分の顔写真を貼り、どのような政治を行っていきたいのかを書いたチラシを町を歩く国民に配りながら、選挙運動を行っていた。
「現国王、エリオライト=セレス=アルスの妹のエリオライト=セレス=フェルトと申します!是非私に清き一票を!!」
すぐそこにいた若い国民たちから声が聞こえる。
「現国王の妹といったって…どうせまた国民をゴミみたいに扱うに違いない、変わらないだろ。」
それが聞こえるとフェルトは笑顔でその若い国民たちに近づいていきながらも、他にもいる周りの人全員に聞こえるくらいの大きな声で言った。
「私は、兄のような絶対君主制を完全に撤廃し!国民の幸せな生活を守るようにしていこうと考えております!なので、これ以上国民の皆様に負担をかけさせず、逆に援助をするような政治や経済を築いて行こうと思っています!」
その周りにいた国民はあの華やかで少し弱々しく感じていたフェルトが勢いのある声と、しっかりとした自分の意志を示したため、思わず拍手をしだした。フェルトは周りの国民に頭を下げていた。
初日からこれほどまで国民を惹きつけられるとは思わなかったな。少し不安だったが、案外大丈夫そうだ。立ち振る舞いもしっかりとしている。支持を集めるのはあまり難しくないかもな。グレムはそう思った。
しかし…グレムは気づく、若者はあまりフェルトの今の言葉を信用していなさそうだ。兄のイメージが強いせいか、本当にそうなるとは思ってなさそうだな。何か、いいイメージをつけられる事があればいいが…。
グレムとフェルトは、初日をそう選挙運動をして過ごした。
2日目、いいニュースが飛び込んできた。グレムはフェルトの元へと向かう。
フェルトはその日も朝から選挙運動をしていた、その途中にグレムがそのいいニュースをフェルトに知らせる。フェルトはその話を聞いた後、「行こう」というように頷いた。
その話の内容は、アムル王国内では大変有名で人気な酒場が、とある問題について悩んでいるという内容であった。
アルス王にはどうでもいい話だが、フェルトにはこれを解決したら国民の信頼を少しでも集められるかもしれないという絶好のチャンスであった。
フェルトは早速酒場の入口のドアを開け、中に入った後、店主に事情を聞き始める。
「困っているという噂を聞いて飛んできました、少しでもお力になれればと思います。どういう問題なのですか?」
店主はフェルトが来てくれたのに驚きながらも話し始めた。
「実は…とびっっっきりいい新しいメニューを思いついたのですが…それを量産するには店の経営上少しお金が足りなくて…絶対人気出ると思うのですが…。」
「その新しいメニューとはなんですか?」
「一応一つだけ作ってみました、お2人さんにも少し食べてもらって感想を聞きたいです。」
その新しいメニューとは、『ドラゴンの肉』を豪快に焼き、上から少し甘い『王蜂』の蜂蜜をかけた、斬新な肉料理だった。グレムとフェルトは少しだけその肉を切り取り、試食させてもらった。
口の中で蜂蜜の甘さとドラゴンの肉特有の臭さが喧嘩をするかと思うと、そのほんのりとした甘さとドラゴンの肉が蕩けるようにまさにベストマッチして、噛む度に幸福感を与えてくれた。グレムが言う。
「たしかに、これは美味いな…。人気が出てもおかしくはない。」
「はい…とってもおいしくて蕩けるようでした。しかし…これが量産できない…ですか…。」
まだあまりよく分かっていない様なので、グレムが一応フェルトの為に補足説明をする。
「ドラゴンの肉はあまり市場には出回らない。何故なら倒せる人が少ないからな。確かに一体から取れる肉の量は多い、だが、限られてはいる。そこまでではないが、少しだけ高級食材なんだ。更に王蜂、王蜂は討伐難易度が星15、ちょうどフェニキライトランクでやっと倒せるくらいのレベルだ。またその蜂蜜を取れる量は多いが、女性からの支持が厚い、そんなわけでかなり値段が高騰している。」
グレムが一通りの説明を終えると、フェルトは納得したような顔をした。さぁ、どうする?王女様。フェルトは言った。
「分かりました、それでは、私が少し経済面を援助してあげましょう。」
その言葉に店主は驚いた、そして言う。
「いやいや、まさか王族からお金を借りるだなんて!そんなこと、できません!」
「私が国王となれたらこのような制度を盛り込んでみようと思っていました…。こちらが経済面で少しだけ援助を行い、事業が成功したら返してくれればいいというようなものを。」
「でも…利子とかが絡んで…。」
「利子は一切無しです。その代わり、2年後にはしっかりと返してもらうようにします。」
店主はまた驚いた、「2年」も待ってくれて更に利子が無しの援助…しかも人気が出るのがほぼ確定しているメニューについてのもの。これはかなりの利益を得ることができる。そして返す年月も決まっているのなら、十分に用意ができるだろう。経済面についてはたった1ヶ月教えただけなのに、こんなことを考えつくとは…かなりできるじゃないか。そうグレムが思っていると、フェルトは言った。
「その代わり、こんな事があったと宣伝して欲しいのです。このフェルトは国民のことを本当に第一に考えている。だから国を良くする政治を行ってくれるに違いないと。」
店主はほんの少しだけ悩んだがすぐに答えた。
「分かりました、少しの間、お金をお貸し願います。必ず、人気を出して十分に返せるようにしますので、よろしくお願いします。」
「宣伝も…頼みますね。」
「はい!こんなことをしてもらっておいて何も返さないのは1人の人間としておかしいです。私は、今回の選挙、大いにフェルト様を支持しようと思います。」
フェルトはその言葉を聞くと、笑顔になり、頭を下げてから店を出た。
グレムがフェルトに言う。
「凄いじゃないか、あんな政策を思いつくとは思わなかったぞ。」
フェルトは嬉しそうに笑いながら言う。
「いえ、これもグレム様が教えてくれたかいがあっての事ですので…えへへ。」
「まさか1ヶ月でここまで成長するとも思っていなかった。フェルトにはかなり王となる才能があるのかもな。」
「そ、そうでしょうか…。まだ少し不安ですが…。」
そう言うとグレムはフェルトの背中をポンと押し、そして言った。
「大丈夫だ、自信を持て。かなりいい線言ってると思うぞフェルトは。」
フェルトはその言葉を聞いた後、笑顔で言った。
「はい!ありがとうございます!」
それからたった2日のことである、その酒場での新たなメニューは『王蜂の蜂蜜がけドラゴンのソテー』という名前でアムル王国中に冒険者を中心に広まった。その人気は酒場に来たものは必ず頼むくらいのレベルであった。そうして、酒場はかなりの利益を得ることができた。
店主は嬉しそうにフェルトの政策について色んな人に話していった。その噂は国中に広がり、『フェルト様は本当に国民の為を思っている』ということがアムル王国の国民に定着していった。
フェルトはいつものように選挙運動をしていると、あの時あまりフェルトのことをよく思っていなかった若い者たちがチラシを手に、内容をしっかりと読むようになった。更に、以前よりかなり多くの人がフェルトの元へとその演説を聞こうと集まってきていた。フェルトは拡声器を使って大勢に呼びかける。
「私は、より、国民のためになる政治政策をする事を約束します!どうか皆様、私に清き一票をご投票頂けたらとても嬉しいです!」
大勢がその演説に歓声を上げる。フェルトを支持する国民は日に日に増えていった。
王城のカーテンの隙間から、アルス王がその演説の様子を覗いて見ていた。その後、舌打ちをし、城内を徘徊する。そしてある黒いローブを纏った男に言った。
「おい、選挙当日…分かってるだろうな。」
「はい…フェルト様を…暗殺するのですね…。」
それを聞いてアルス王は甲高い笑い声を上げた。
どうでしたでしょうか?
今回は少し短めに感じられたかもしれません。ですが次回はかなり濃い内容となると思うのでしっかりと物語を読んで少しでも把握しておいてもらえると楽しんでいただけると思います!
それでは、また次回お会いしましょう!




