第45話 まずはギルドの問題から
第4章第3話目です!今回はギルドの話となっております。どんなことが起きてしまうのか楽しみにしながら読んでいって頂ければと思います!
それでは、どうぞ!
馬車がアムル王国に着くと、1度フェルトとは別れてグレムたちはギルドへと向かった。まさにいつも通りの動きである。グレムはエルとルリに確認する。
「フェルトの話によると…こっちに向かえばいいんだよな。」
エルが言う。
「確か住宅地が国の左側にあるらしいので右側に寄っていると言ってましたね。」
アムル王国は今まで見てきた王国とはまた違った構造をしており、門を通ってすぐ正面の大通りを中心とすると、国の左側に住宅地と畑などを設け、右側には商店街が広がっている。区画整理がここまでしっかりしている国は初めてだ。国によっても色んな違いがあるなあと少し感動する。
「ご主人様…あそこではないですか…?」
ルリが指を指して言う。その方向にはなんともオシャレな文字の書き方で『ギルド』と書いてある少し小さめの建物があった。周りの商店などのことを考えてであろう、ギルド用の土地の確保は優先順位が下なのか。
グレムたちはそのギルドの近くまで来るとすぐ扉、ではなく、少し下に下がる階段があり、その先に扉があった。その階段を下がってから正面の入口と思われる扉を開けると…
なるほど、こういうことか。一段下に下げることによって、そのギルドは地下に広いスペースをとっていた。簡単に言うと、商店が建つ真下の地下などの使わないスペースを利用しているということである。よって、見た目は小さめに見えて、実はかなり広く作られている。実にいい考えだ、発案者に拍手をしてやりたい。
そう思いながらもグレムは2人を連れて、ギルド内へと入っていく、割と賑やかである。ちょっと苦手かな…雰囲気はいいんだけど…。
「何か御用ですか?」
正面の金髪ツインテールの受付嬢から笑顔で聞かれる。受付嬢可愛い人多くない?気のせい?
「いつもこのような王国に来た時にはギルドに話を通すように言われてまして…。」
グレムがそういうと、その受付嬢は驚いたような表情をして言った。
「まさか…グレム様でいらっしゃいますか!?」
その言葉に、周りにいた冒険者の注目を集めてしまう。あまり良くない…と思う。そう思いながらもギルドカードを受付嬢へと見せる。
見せた瞬間、その受付嬢は余りの喜びにぴょんぴょんとその場で跳ねながら言う。
「私!!あなたの大ファンなんです!!!受付嬢やっててよかった〜!!まさか本当に会えるとは…これ以上ないくらい嬉しいです!!」
ここまでただ来ただけなのにこんなにも喜んでもらえるとこちらも清々しい気分になる。グレムも少し嬉しそうに笑みを浮かべながら頭の後ろに左手を置く。受付嬢は言った。
「あの…良ければ…握手とサインを貰ってもよろしいでしょうか…?」
上目遣いで聞いてきた。そう言われると弱いんだよな〜しかも可愛い女性からの頼みだ。断れん。
「それくらいなら…はい。」
「ありがとうございます!!」
グレムが右手を差し出すとその受付嬢は両手でギュッと握りしめてきた。周りの男冒険者からの目が痛い。受付嬢は数秒そうした後、手を離し、わざわざ色紙とペンを出してくれた。そんなものまで用意してたのか…いやずっと!?俺が来ると信じて!?健気だなぁ…。そう思いながらペンを走らせてグレムは言った。
「あなたのお名前は?」
「カレン…カレンといいます!!」
本当に嬉しそうにしてくれるから書いてるだけなのに何故かこっちも嬉しくなる。最後に『カレンさんへ』と書いて受付嬢に渡した。
「ありがとうございます!!家宝にします!!」
「いやぁ、そこまでの程の物ではないと思いますが…。」
そういうと何故かその受付嬢は顔を赤くしながら言った。
「私に取っては…かなり大きなものなんです…人生を揺るがす位の…。」
何か事情があるのだろう、可愛い!と思いながらグレムはあまり詮索はしないでおく。あと、そういえばと思い、連れてきた盗賊をグレムは差し出す。
「ここに向かう途中で盗賊に出会いまして…全員フェニキライトのギルドカードを持っていました。」
そうグレムが言うと受付嬢は少し驚きながらも言う。
「本当ですか!?ちょうどこの5人にはギルド側で困らされていたんです…本当にありがとうございます!」
受付嬢はカウンター裏の男の人にその5人の盗賊を任せた。すると急に…
バン!!!と後ろの入口の扉が開き、怪我をした者を抱えた男の冒険者が入ってきた。そして言った。
「大変だ!!アムル王国の東門近くまでフェンリルが来ている!!誰か助けてくれ!!」
受付嬢が震えながら言う。
「フェンリル…?討伐難易度星28の…?もしこの国に入られたら、国が滅んでしまいます!!」
受付嬢がそう言った瞬間、グレムたちは動き出した。エルはその怪我をした者の傷を癒してから付いてくる。
受付嬢は言う。
「待ってください!いくらなんでも準備も何も無しにフェンリルと…。」
グレムはそれに対して振り返り、笑顔で言った。
「俺たちは冒険者です、自分らが行かなかったら、誰が魔物から人を守るんですか?…だから行くんです。心配いりませんよカレンさん。」
そのグレムの笑顔には何故か皆が安心できるようなものがあった。グレムたちはギルドを出ていった。
数分の間、ギルド内に静寂が訪れる。受付嬢は我慢できないといったように、ギルドから出て、グレムたちを追いかけに行った。それを見てギルドにいた他の冒険者も走り出した。
東門から出ると、すぐにフェンリルがいた。どうやら興奮状態にあり、こちらに威嚇をしている。グレムは武器を構えるエルとルリに言った。
「待て、何もするな。」
そう言ったグレムは、威嚇をしているフェンリルに少しずつ歩いて近づいていく。フェンリルは今にもグレムの頭を噛み砕いて殺しそうなほど興奮している。それでもグレムは歩いてフェンリルへと近づいていく。
十分近くまでグレムが近づいた時だった、受付嬢が東門まで駆けつけた。その時にはもうフェンリルはグレムに噛みつこうとしていた。
受付嬢は思わず声を上げる。
「グレム様!!」
ガブッッ!!!!
グレムの左肩に、思いっきりフェンリルは噛み付いた。左肩から血が流れる、とても痛いはずだ。それなのにグレムは表情ひとつ変えず、右手でフェンリルの頭を撫でて言った。
「怖かったろう?辛かったろう?ただ王国の近くを通ろうとしただけなのに、武器を出されて、攻撃されて…理不尽だよな…気持ちはわかる…俺もただ人間と仲良くしたかっただけなのに、仲間だと思ってたやつに裏切られ…バカにされて…。」
グレムがフェンリルを撫でながらそう言うと、興奮していたそのフェンリルは徐々に落ち着いていき、噛む力が弱くなっていく。
「すまなかった、先に武器を出したこちら側が完全に悪い。だけど、俺に免じて許してくれないか?俺もあまり絶滅の危機にあるお前を殺したくはない。だから…許してくれ…。」
グレムがそう言うと、今度はフェンリルは噛み付いていた左肩から牙を外し、少しの涙を流しながらグレムの左肩を舐めた。そうすると、噛み付かれたはずの左肩の傷が治っていく。フェンリルの回復魔法である。グレムは言った。
「ありがとう…。さぁ、もうお行き。」
そういうと、フェンリルはまたグレムの顔を少し舐めてから、その場から立ち去って行った。
その様子を眺めていた冒険者と受付嬢は驚きを隠せなかった。
今…何を…?グレム様がフェンリルに噛み付かれたと思ったら、言葉を通わせたようにグレム様の話を聞いて、あのフェンリルは自ら傷つけた左肩を治してから去っていった…。あんなことが…できるの…?あの人は……なんて凄い人なんだろう…。まさか『討伐対象』の魔物を優しく見逃すなんて…。普通の冒険者なら思わない…。
受付嬢は目の前で起こったことに未だ驚いたまま、グレムの凄さに感動していた。
エルが言う。
「噛み付かれた時はどうしようかと思いましたよ!!まさか、見逃すなんて!あんな事するのはご主人様位です!!普通やられたらやり返します!!」
ルリがその後に言った。
「けど…フェンリルは確かに数が少ない…それを思ってまで見逃すのは…やっぱり優しい…そんなご主人様が…私は好き。」
言った後に顔を赤くするルリ、あ〜もう可愛いですね。抱きつきたい。
その衝動を抑えるためにルリの頭をグレムは撫でる。ルリは嬉しそうしながら言った。
「けど…ご主人様…フェンリルと心を通わせるのって…どうやってやったの…?…私が同じ状況に出くわしても…同じように出来るとは思えない…。」
「いいや、難しくはないさ。自分が思ってることを正直に伝えれば分かってくれる。魔物だって、人間と同じなんだよ。」
「成程…です…。」
グレムがそういうとルリは納得したような顔でこちらを見つめ、目をキラキラさせながら言った。エルが続いて言う。
「けどご主人様?見逃しちゃったらまた被害が起きるんじゃ…。」
「そうかもしれないけど、実はフェンリルはこちらから手を出さない限りあっちからは攻撃してこないんだ。それを知ってれば、別に隣にいたって無視すれば大丈夫なんだぞ。」
「そうなんですか〜、それを聞いて安心しました、勉強にもなりました。ありがとうございます。」
「なんだそれ。」
グレムはエルの言葉に少し笑いながら言葉を返す。
グレムたちが東門を通ろうとすると、まだ受付嬢と冒険者が固まって集まっていた。グレムが言う。
「ああ、見に来てたんですか。すいませんね、わざわざ来てもらったのに見栄えする所なくて。」
そういうと受付嬢は目をキラキラさせてグレムに顔を近づけて言った。
「そんなことありません!!まさかフェンリルと心を通わせるなんて…そんなことが出来る冒険者なんて聞いたことありません!!凄かったです!!益々好きになりました!!」
「そうでしたか…それならよかった…ん?…好き…?」
グレムは受付嬢の言葉を再確認するように思い出しながら言う。そうしていると受付嬢の顔がみるみる赤くなっていく、そして言った。
「あ、…いや、……なんでもないですーー!!!」
そう言いながら受付嬢はギルドに戻るように凄い速さで走っていった。
これは次会う時少し気まずくなりそうだな〜とグレムはそう思いながら、エルとルリを連れ、そのまま王宮へと向かっていった。
どうでしたでしょうか?
次回はフェルトと会う前にその兄の王様と…?楽しみにしていてください!!
それでは、また次回お会いしましょう!




