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第30話 私たちのご主人様

第2章もクライマックスです!


エルとルリそしてグレムの想いが繋がっていきます、この物語を是非見逃さないで見ていってください!


それでは、どうぞ!

グレムは笑顔でギュスターヴを見ている。


「え…?」


ギュスターヴは目の前にいる男に驚き言葉を失っている。グレムが先に口を開いた。


「こんな所で何をしているのかなぁ?ギュスターヴ魔将軍?」


エルとルリはこの状況が理解できていないので頭の上に?マークを出していた。魔術師が言う。


「どうしたんだ?ギュスターヴ!いつものお前なら高らかな声を出して笑い、目の前の敵を叩きのめすじゃないか!?どうしたんだ!本当に!」


その魔術師の言葉で我に返ったギュスターヴは魔術師に聞き返す。


「お前が…喧嘩を売ったのは…まさか…この人なのか?」


ギュスターヴは少し後ずさりしながら冷や汗をかき、そう言った。その言動に不信感を抱きながらも魔術師は答える。


「?あぁそうだ!こいつが!俺がドラゴンを操って人間の王国を滅ぼそうとするのを邪魔しやがったんだ!しかも2回もな!だからこの調子に乗ったやつをぶっ飛ばしてくれ!」


魔術師がそう言うと、ギュスターヴはまた後ずさりしながら言った。


「だ……無理だ……絶対に無理だ!不可能だ!敵う訳が無い!お前知らないのか!?あの人は…あの人はなぁ!!…」


ギュスターヴは魔術師の体を掴みながら言った。


「あの人は!"元"魔王様だぞ!!!だから!俺らなんかが敵う訳が無いんだ!!!」


「は?」


『え?』


魔術師はあまりの驚きに自分が手に持っていた杖を離してしまう、地面に杖が落ち、カランカランと音が鳴る。エルとルリもその言葉を聞いて思わず声を出し、驚いて言葉を失っていた。


ギュスターヴはこの場から逃げようと、自分が来た教会の奥の道に向かって走ろうとすると…


ドォン!!


ギュスターヴが逃げようとした方向の横の壁にポッカリと穴が空くほどの魔弾が飛んできた。勿論、飛ばしたのはグレムである。


ギュスターヴは引きつった顔でゆっくりとグレムの方を見ると、グレムは笑顔のまま言った。


「まさか人の仲間に手を出しておいて逃げようとするわけないよね?ギュスターヴ魔将軍?」


「は…はは…。」


ギュスターヴは逃げるのを諦めた、いや、()()()()()()から逃げるのを止めた。そして考え出す。


「(どうする…!?相手はあの魔王様…まだグレム様が子供の頃でも俺はあの人に敵わなかった!だが…もしかしたら…今なら…全身全霊を込めれば…!)」


ギュスターヴは戦う決意をし、グレムに近づきながら自身への強化をしだした。


「<<筋力増加(エル・パワー)レベル10>>!!<<自己強化(ブースト)レベル10>>!!<<渾身の力(サドット・パワー)>>!!<<会心(クリティカル)>>!!」


次々と自己強化魔術を使って自分を最高の状態へとしようとするギュスターヴ。


みるみる体が大きくなり、上半身の体は筋肉が最高のクラスまで発達し、見ているだけで圧倒されるほどの巨大で強そうな姿へと変わった。


グレムは目の前に巨体の男が来ているというのに、欠伸をしながら右手は口元に、左手はポケットに手を突っ込んでいる。ギュスターヴが言う。


「私の全身全霊を込めて、あなたを殴り倒します、グレム様。」


さっきより声も低くなり、さらに恐怖感が増している。エルとルリはその恐怖感にやられ、2人して教会の椅子の裏に隠れてしまっている。


ギュスターヴは右手と左手を合わせ、ボキボキと音を鳴らした後、大きく右手を振りかぶってグレムを殴った。


ドオオオォォォォオオオン!!!!!


あまりにも強すぎる力で殴ったため、教会の壁はそのパンチの風圧で壊れ、後ろへ飛んでいき、また、教会の椅子もいくつか飛んでいった。


ギュスターヴのパンチをした前面はほぼ更地となった。あまりのその威力に心配してエルは奇跡的に吹き飛ばなかった椅子の裏から顔を出してご主人様の名前を呼ぶ。


「グレム様!!大丈夫…」


エルはその光景に驚いた。ギュスターヴも同じように自分の目の前で起こった現象を信じられないというように思わず汗をかく。


「(本気だぞ?全身全霊だぞ!?仮に"元"魔王様であったとしても…このパンチをこんな軽々しく…!そんなこと…!あ、ありえない!!)」


グレムはその恐ろしいほど強力なパンチを右手1本で受け止めていた。


ギュスターヴは目の前で起こった現象がありえないということへの矛盾と、その目の前にいる圧倒的な強者の前に絶望し、恐怖した。その時、グレムは言った。


「ギュスターヴ…お前…今、何を感じた?」


ギュスターヴはまだ驚いていて声を出せない、が、グレムは分かっていたので続けて言った。


「絶望したろ?恐怖したろ?余りにも大きすぎる俺との圧倒的な力の差に。…ギュスターヴ…お前、俺の部下が失態を犯した時、俺がいつもどうしていたか覚えているか?」


ギュスターヴはそう言われて思い出す。




グレムの父が言う。


『ギュスターヴ!息子の1番大切にしている遊び道具を壊してどうするんだ!あの子に何をされても知らんからな!』


ギュスターヴはグレムを恐れていた。


…きっと殴られる…まだ子供なのにグレム様は強すぎる…きっとめちゃくちゃ痛いんだろうな…。


バタバタとグレムが走ってきた、ギュスターヴは殴られる覚悟を決めて言った。


『すみません!グレム様が大切にしていた遊び道具をうっかり壊してしまいました!どんな罰でも受けます、許してください!』


グレムはそのギュスターヴの言葉を聞いて一瞬驚いたが、すぐにギュスターヴの頭を撫でて言った。


『失敗くらい誰にでもある。ギュスターヴ、あんまり気にしなくていいよ。ちょうどそれにも飽きてきた頃合いだったし、別に壊れても怒らないよ。』


ギュスターヴはそのグレムのあまりにも優しい言葉に顔を上げ、もう一度聞いた。


『本当に…私に何もしないのですか?』


『あぁ!だって、大切な()()だもんな!』


グレムは笑顔で言った。




ギュスターヴが言う。


「グレム様は…どんな失敗をした時であっても…部下を傷つけるようなことはしませんでした…。」


「なぜだかこれで分かったろ?怒った時にもしこの圧倒的な力をみんなに振るったら、部下たちは皆恐怖して俺に従う。だけど俺はみんなが恐怖して俺に従うような軍にはしたくなかった。どうせならみんなで笑いあって、励ましあって…そんな素晴らしい軍を作り上げたかったんだ。」


ギュスターヴは無言でグレムの話を聞いていた、グレムは続ける。


「だから戦争の話もそうだ。人間たちを魔王軍の圧倒的な力で平伏させたら、それは()()で支配することになる。そんなの嫌だったんだ、魔王軍も人間も誰もが笑いあって、楽しく過ごせるような世界にしたかった…なのに…」


その言葉をグレムが言った瞬間、辺りに凄まじく黒いオーラが漂った。そこにいた魔術師、エルとルリ、そしてギュスターヴまでもがあまりの恐怖に震える。


「…なのにお前らは…そんなことを考えもせず!全てを暴力で解決しようとして俺の話をろくに聞かなかった!それで起こった戦争に人間たちが何を思うかも考えないで!!!圧倒的な力の前にやられたら残るのは恐怖のみだ!!そんな暴力で作った国なんざすぐに内乱が起きておしまいだ!!…だから…だから!!」


グレムはポケットに突っ込んでいた左手を出し、思いっきり握り締め振りかぶって、ギュスターヴの腹部を殴りながら言った。


「だから!!俺は魔王軍を辞めたんだ!!この戦争にしか脳のない!バカどもめ!!!」


ドオォォォオン!!!


殴られたギュスターヴはその後ろの教会の壁をどこまでも突き破って吹っ飛んで行った。どこに行ったか見えなくなるほどに。


その後グレムは虎の威を借る狐のようなその魔術師の方を見て言った。


「お前も…あんな風に殴られたいか?」


「クソッ…クソッ!!」


その魔術師の足元に紫色の魔法陣が光りながらほとばしる。魔術師は瞬間移動魔術で逃げようとしていた。だが…


バリィン!!


足元にあった紫色の魔法陣が音を立てて割れるように消え去った。


「な…なにが…。」


「妨害魔術だ…この薄汚い狐め。」


そう言って魔術師の近くまでいつの間にか来ていたグレムが魔術師をぶん殴った。


ドゴォオ!!!


「ぐはっっ!クソッ…。」


ドサッ


魔術師はその場に倒れ、気絶した。グレムはすぐさま魔術でその魔術師を縛る。


「<<束縛(ミルム)>>」


そしてその魔術師を引きずりながらエルとルリの方へ行くとグレムは2人の首輪を鍵で外し、言った。


「おめでとう、これで君たちは自由だ。」


「え?…ご主人…様…?」


エルは咄嗟に首輪を外され、驚きながらもグレムに聞く。グレムは話した。


「これで分かったろ?オレは魔王軍の要するに"元"魔王だ。隠していて悪かったな、大切な()()なのに…。」


「そうじゃありません!どうして…首輪を…?」


エルはもう一度グレムに問う、グレムは答える。


「だからつまり、これから俺の周りにはおそらく嫌でも強力な魔王軍のやつらが寄ってくるだろう。それで2人は命を落とすかもしれない。だから、()()したんだ。そんなことで2人が命を落とすのは嫌だからな。…だから…ここでお別れだ…。」


グレムはそう言って歩き去っていこうとする。すると、2人がグレムの服の袖を掴んで同時に言った。


「嫌です。」


「嫌だ。」


「分かってるのか?これから先は本当に命を落とす事になるのかもしれないんだぞ?だから連れて行けな…」


エルとルリは涙目になりながらグレムの言葉を遮り、言った。


「私たちは!それでもあなたを『ご主人様』と呼びます!そしてどこまでもついていきます!絶対に離れません!だって…グレム様は!例え"元"魔王だったとしても!私を()()と呼んでくれた、たった1人のご主人様なんですから!」


「私は…ご主人様に色んなものをもらったのに…何も返せていない…だから…まだまだご主人様と一緒にいたい!…例え死ぬかもしれなくても!頑張って強くなって!最後までご主人様に着いていきたい!」


「お前ら…。」


グレムは2人のその言葉に涙を流しながら言った。


「本当に…いいのか…?」


2人は息を合わせて言う。


『はい!』


「こんな俺でも…いいのか?」


『はい!!』


「また()()って…呼んでもいいのか?」


『はい!!!』


そう返事をした瞬間、2人も涙を流しながらグレムに抱きついた。そしてこう言った。


『だって…私たちのご主人様は…グレム様だけだから!!』


グレムは服の袖で涙を吹き、笑顔で言った。


「そうか…じゃあ、またよろしくな!」


『はい!』


その時の空はいつもよりも青く、そして綺麗に見えた。

どうでしたでしょうか?


第2章はまだこの後の話が少し残っているので、その次の第3章に期待を膨らませておいてもらえると嬉しいです!


それでは、また次回お会いしましょう!

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