第24話 勘違いエルフとドラゴンと
エルド王国編が終わり、新たな第2章の話が始まります!
まずはちょっと寄り道…という回です。自信はありませんが、内容は面白くなっていると思うので、是非楽しんで言ってください。
それでは、どうぞ!
「送って下さりありがとうございました!」
グレムは馬車乗りにお礼を言って頭を下げる。それを見て馬車乗りは焦りながら言う。
「英雄様!頭を上げてください!このくらい、エルド王国の馬車乗りとして当然のことをしたまでです!だから…どうか顔を上げて下され!」
馬車乗りのその言葉に感謝しながらグレムは頭を上げた。馬車乗りはそれを見て安心して言った。
「では、どうかいい旅を!英雄様!」
そして、バシンッ!と鞭で馬を叩き帰っていく馬車乗り。グレム達は大きく手を振って見送った。
エルがひょこっとグレムの前に横から顔を出して言う。
「ご主人様、どうしてエルフの森なんかに?」
「エルはダークエルフと言っても種族は『エルフ』だ。もしかしたらエルの故郷とかの情報が知れるかもしれないし、それに次に行こうと思っている王国への道の途中にあったからちょっと寄ってみようかなと。」
「私のために…ありがとうございます、ご主人様♪」
エルはその言葉を聞いて上機嫌だ…だが少し問題がある。それに引っかからなければいいが…。
そう思いながらエルフの森に入ると、道があったので、その道に沿って15分ほど歩き進むと、木でできた門のようなものが見えた。あそこがエルフの里の入口かな?
グレム達はその門の前まで来て言った。
「すみませーん!」
物見櫓から女性のエルフがこちらを見て言う。
「何の用だ!」
「少し聞きたいことが…」
グレムの言葉の途中でグレムが懸念していたことにエルフが気づいたのか、その物見櫓にいた女性のエルフが里の中の者に命令している。これは…最悪のパターンかも…。
門がいきなり開く、そして男性のエルフが突っ込んでグレムに殴りかかってくる。
「ふざけやがってぇ!!!」
あ〜これはダメだな、うん、思っていたことが現実に本当に起こるのは少し虚しいな。
グレムはそのエルフの男に殴られる、だがグレムは抵抗を全くしない。
その様子を見てエルとルリが戸惑いながらも心配して言う。
『ご主人様!!』
そう言って、殴られているグレムの所に行こうとすると目の前に物見櫓にいた女性のエルフが出てきた、そしてこう言った。
「お前ら!大丈夫だったか!?きっとあのクソみたいな人間に酷いことをされたんだろう…あいつはこっちで片付けるからお前らは心配しないで…」
言葉の途中でエルは泣きながらそのエルフに怒鳴った。
「なんてことを言うんですか!?この方は私たちを奴隷なんてような扱いをせず!仲間として迎え入れてくれたんです!この杖とローブだって!わざわざ誕生日まで調べてその日に渡してくれたんですよ!!その人を…そんな…そんな…。」
エルは殴られているグレムを見て膝から崩れ落ち、泣く。だがそのエルフはまだ疑っている。
「きっと催眠魔術でもかけられているんだろうな!!なんてやつだ!そこまでして奴隷を手懐けようとしているのか!?本当に酷い…」
また言葉の途中で今度はルリが言った。
「催眠なんかじゃない…私たちはこの人からちゃんとした温かい『愛』をもらった…それだけじゃない…この人は前のご主人様とは違って私に希望を抱かせてくれた…だから…私たちにとっては本当に最高のご主人様…これ以上その人を傷つけるなら…私たちが許さない。」
そういってルリは短剣を出す、その短剣を見て女性のエルフは言う。
「それは…アダムアビスの短剣…?まさかそんな値段が高いものまでもこの人はあなたに与えたというのか…?」
「そう…これはご主人様からもらった宝物。もう分かったでしょ?私たちは本気でご主人様を愛している。だからここで泣いているダークエルフの涙も本物。」
女性のエルフはその言葉を聞いて未だにグレムの顔面を殴りつけている男を止める。
「何でだよ!こいつはその2人を買い取った最低最悪の…」
そう言ってエルフの男は振り返ると、エルとルリがその男エルフを恨むような目で見ている、それで男は事情を察したのか言った。
「マジ…かよ…。」
「本当に申し訳ありませんでした!!!」
さっきの物見櫓にいた女性エルフが頭を下げる。
「いや、いいんですよ。誤解されるような事をしているのはこちらの方ですし…。」
グレムは殴られた跡をエルに治してもらいながら優しい言葉をかける。
「あんなに殴ってすみませんでした!!!大体奴隷を持つやつは最低なやつが多いので、同じエルフが奴隷の首輪をして連れられていると聞いたから…つい!」
そう言って男エルフも頭を下げる。
「いや、いいんですよ。さっきも言った通り誤解されてもおかしくない状況にしたのはこちらですし…。」
そのあまりにも寛大な言葉に感動して頭を上げる男エルフ、だが…
「私はあなたたちを許してませんからね。」
『うっ。』
エルがそう言うとそのエルフ2人はその言葉に心を痛める。
「私も…ご主人様が何もしてないのに殴られたのは…許せない…。」
『ううっ。』
ルリもそう言うと、またその2人はその言葉に心を痛めた。
その場面を見ていたグレムが苦笑いしていると、この里の長が出てきた。
「すみません、こちらの若い者が早とちりをしてしまって…。」
そう言って頭を下げる里の長、グレムはそれに対して言葉を返しながら頭を下げる。
「いえいえ、とんでもないです。」
長は椅子に腰かけると自己紹介と質問をし始めた。
「私は一応この里の長をしています、ギリス=ミルモと申します。グレム様…でしたか?このエルフの里にはどのようなご要件で?」
「まぁ、次に向かうところの途中にあったからというのもそうなんですが、この仲間のエルが『ダークエルフ』なのでなにか少しでも故郷の情報を知れたらと思いまして…。」
「そうですか……しかし…残念ながらエルフとダークエルフでは貴方様が思っているほど仲がいい訳では無くてですね…大体の集落の位置しか互いに把握してません、申し訳ない…。」
「一応場所だけでも聞いておいてもよろしいでしょうか…?」
「このフェニキア大陸には複数ありまして…そうだ、地図に大体の目印をつけてあげましょう。そうすればあなた達も分かりやすく…」
村長がそう言いながら地図に印をつけていると、怪我をした者を抱えたエルフが入ってきて言った。
「大変だ!!この里の先の道に!ドラゴンが来やがった!こいつは1人で立ち向かおうとして…くそっ!」
グレムはそれを聞いてエルとルリに合図をすると席を立って部屋から出ていこうとする。長が言って止める。
「待ってくだされ!旅の方!もしやあのドラゴンを倒しにいくなどとは考えていませんよね!?」
グレムはこう返す。
「目印、ありがとうございました。あと俺たち、一応冒険者なんで。」
そう言って3人はアダムアビスランクのギルドカードをその部屋にいたエルフ全員に見せ、その場を出ていった。長が言う。
「あれは…アダムアビスの…。」
女性のエルフが長に問いかける。
「ミルモ様!今の方!名前、なんて言ってましたか!?」
「確か…グレムと…。」
「グレム…!!エルド王国での2体の竜を屠ったっていう英雄じゃないですか!!!」
その言葉を聞いた瞬間グレムたちを追うように里の長は走り出した。その場にいた他のエルフたちも長に着いていった。
「相手は…ガイアドラゴンだ!」
グレムが言った、エルが走りながらグレムに聞く。
「他のドラゴンと何が違うんです?」
「ガイアドラゴンは…地の神ガイアが創ったと言われているドラゴンでな、全身を硬い岩で覆われている。」
「じゃあ、さすがにこのアダムアビスの短剣でも…。」
ルリが心配そうに言うと、グレムは安心させるように頭を優しくポンと叩いて言う。
「心配するな、もう作戦は考えてある。勿論、ルリにも働いてもらうぞ!エル!あれやるぞ!」
「えぇっ!?まだ試作段階なのに〜ちゃんと出来ますかね…。」
エルは急なご主人様の要望に少し心配する、グレムは安心させるように言った。
「エルならできるさ!信頼してるからな!」
そう言ってグレムは笑顔でエルに言った。
エルは自分の"作戦の位置"で止まった、そして走っていくグレムとルリを見て小声で言う。
「『信頼してる』はずるいですよ…ご主人様。」
エルはそう言って笑う。そして詠唱を始める。
「<光の精よ!今我の言葉に答え、天より全てを貫く槍を授けよ>!!」
エルの杖に光が集まり槍の形になるそして…
「<<天の輝槍>>!!」
その光の槍はどこまでも伸びていき、ドラゴンの脇腹を貫いた。
「ギキャアアアアアァァァ!!!」
ドラゴンは悲鳴を上げると共にエルの方へ視線を向けて狙おうとする。
その時、グレムとルリはドラゴンの視線がエルに向いている間に背後に回り込んでいた。そしてグレムが言う。
「ルリ!行くぞ!」
「はい!ご主人様!」
ダンッッッ!!!
2人はとんでもない跳躍力でドラゴンの背中の真上まで飛んだ。そしてその背中めがけ直滑降しながらグレムが言う。
「あいつの背中の硬い岩、殴ってぶっ壊してやるからそこに出てきたドラゴンの肌にでかい1発ぶち込んでやれ!」
「了解しました!」
グレムはドラゴンの背中目掛けさらに加速して直滑降し、思いっきり背中をぶん殴った。
「おらぁ!!!!」
ドカアァァァアン!!!
ガラガラと背中に生えていた岩が崩れ落ち、その背中周辺にドラゴンの肌が見える、ルリはそこに目掛けて技を放った。
「くらえ!!<<交差する爪痕>>!!!」
ズババァァン!!!
「ギシェアアアアアァァァ!!!」
グレムが岩を砕いて出てきた肌にバツ印の大きな傷跡ができ、それに悲鳴をあげるガイアドラゴン。
「エル!!あとは頼んだぞ!!」
グレムは大きな声でエルに呼びかける。そしてエルはコクリと頷き、詠唱を始める。
「<光の精よ!我が目の前にある邪悪な魔物を消し去る天からの光を授けたまえ>!!!」
そうエルが詠唱すると、ドラゴンの頭上に大きな光の穴が出てきた、ドラゴンはルリの攻撃で怯んでいて動けない。そして、エルは魔法を唱えた。
「<<天の裁き>>!!!」
ドォォォォォン!!!
光の穴から眩く光る光の柱がドラゴンを包み込むように降ってきた。
「ギシェエェエエエエエエ!!!」
ドラゴンはその光の束を受けて、悲鳴をあげる。そして…
ドサッ
ドラゴンは力尽きて倒れた。
「良かった…できたあ…。」
エルは安心してため息をついた。
グレムとルリはエルの元へ走ってきた、そして3人はハイタッチをする。
パァァン!!
「良くやったぞ!エル!成功したな!」
バフっとエルをグレムは抱き寄せる、エルは顔を赤くしながら喜ぶ。
「ご、ご、ご主人様のおかげでしゅ!ひゃい!」
エルは突然抱きしめられたので戸惑っている、グレムが離すとエルの顔は真っ赤になっていた。
「ん。」
そう言ってルリが抱きしめてほしそうにこっちを見てくる。くそ可愛い。
「ルリもよくやった!いい体力削りだったぞ!!」
そう言ってグレムはルリも抱きしめる、ルリは思ったよりグレムが強く抱き締めてくれたので嬉しくて顔が赤くなる。
「ご、ご主人様が…背中の硬い岩を壊してくれたから…。」
グレムはルリを離すと言った。
「2人とも謙遜しすぎだぞ。ドラゴン相手にちゃんと戦えていたじゃないか!それだけでも十分だろ!」
グレムは笑顔で言う、2人は顔を赤くしながらグレムのその笑顔に見とれている。
そこにエルフの里からエルフたちが集まってくる。そしてその里の長が前に出てきて言った。
「ありがとうございます、私たちはあなたたちに救われました。本当にありがとうございました。」
「気にしないでください。ただいたから倒しただけです、お礼なんていいですよ。あ、そうだ。このドラゴンの素材なんですけど、竜の心臓と竜の目玉と竜の鱗、それと竜の牙1本だけもらえますか?それ以外はエルフさんたちが貰ってしまって大丈夫です。」
「あなた方が倒したのですから素材なんてお気になさらず…しかし…本当にそれ以外は貰ってしまってよろしいのですか?」
「はい、自分たちに必要なのはそれくらいですから。それに、エルフの里も、実はちょっと資源足りてないんでしょう?」
里の長はやれやれと言った感じの表情をした後に言った。
「英雄様には全てお見通しですか…分かりました、ありがたく受け取らせて頂きます。」
「それじゃあ、自分たちはこれで。」
グレムがそう言うと、長が言った。
「待ってくだされ!これをもらってくだされ!」
それは木の形をしたブローチだった。
「これは?」
グレムが聞くと、長は言った。
「エルフ内共通の『信頼』を示すサインの様なものです。今後エルフの里にお邪魔してもそれがあれば今日のようなことにはならないでしょう。」
「そんなものを…貰っても大丈夫なんですか?」
「私たちがあんなことをしたのに許してくださった寛大さと、その優しさ、ドラゴンの討伐までもして下さったあなたには十分持っていても問題ないと思います。感謝の印と思ってください。」
「分かりました、ありがとうございます。それでは!」
グレム達はそう言って去っていった。
里の長が言う。
「皆、この恩、忘れるでないぞ。」
『はい!』
そこにいたエルフたち全員が大きく返事をした。
その時の空は、雲ひとつない晴天だった。
どうでしたでしょうか?
次からは新しい王国編が始まります。期待して待っていてくださるとありがたいです!
それでは、また次回お会いしましょう!




