第22話 交差する竜
いよいよ主人公がその強さを発揮する回です…!
その主人公の圧倒的な強さを是非、楽しんで読んでいってください!
それでは、どうぞ!
「アリア王女!もうすぐそこまでドラゴンが迫ってきております!ご指示を!」
「アリア王女!このままだと国民が!」
「アリア王女!!!この国が滅んでしまいます!早く指示を!」
あちこちから名前を呼ばれるアリア、あまりにも情報が飛び交いすぎてアリアは戸惑っていた。
こんなとき…グレム様ならどうするかしら…グレム様なら…!
王女は必死に考える、その時だった。
バン!!!
城の入口のドアが勢いよく開けられた、開けたのはグレムだった。
「グレム様!!!」
アリアは走ってグレムのところに行き、そして抱きついて言う。
「私…この国の王女なのに…こんな状況に置かれて戸惑ってしまって…一国の王女として恥です…。」
グレムはその言葉を聞いた後、アリアを落ち着かせるために抱きしめ優しい言葉をかける。
「誰だって、どの国だって、ドラゴンが2体も来たら戸惑うし、落ち着けないさ。まだ冷静さを保てているアリアが1番凄いと思うぞ。」
「グレム…様…。」
さらに強くアリアはグレムを抱きしめる。グレムは言った。
「アリア、この国を守る為にも、俺に従ってくれないか?内容には心配になることが色々あると思うが、落ち着いて聞いてくれ。」
アリアは抱きついていた腕を離し、グレムに向かって言う。
「分かりました、グレム様。どうすればいいでしょうか。」
「まず、エルド王国内の住民を城の後ろ側、まぁ言うなれば南側に避難させてくれ。ドラゴンは1体は北東、2体目は北西からまるで交差するように来ている、城の後ろが1番安全で守りやすい。」
アリアは無言でグレムの話を聞いている。グレムは続ける。
「その時、アリアの軍と冒険者たちも同じところに避難させてしまっていい。まぁぶっちゃけ、俺が戦うのに邪魔になっちゃうからな。はっきり言って危ない。」
「1人で…戦うと言うのですか!?」
グレムの言うことを全部飲み込もうとしていたアリアだが、さすがにドラゴン2体相手に1人で戦うなど無謀だと思って声を出してしまった。
「心配するな、少しばかり本気を出させてもらう。」
その言葉を聞いてアリアは思った。これまでの一連の大事がありながら、まだ本気を出していなかったと言うの!?この人は…一体…。
その時、はっと我に返ったアリアはグレムに聞く。
「分かりました、他にすべきことはありますか?」
「いいや、みんなが避難するだけで十分だ。後は俺が片付ける。それと、ドラゴンを倒すに当たって、多少町に被害が出てしまうかもしれないがいいか?」
「構いません、命あっての物種です。町なんて人がいればいくらでも作り直せますから。」
そういった後、アリア王女は振り返って皆に指示を出す。
「皆の者!聞け!住民及び軍隊、冒険者全員を南門に避難させる!急げ!」
「大臣!町のものへの手配は頼んだ。警告は私自身が出す、その方が国民は動くだろう。」
「秘書!すまんがギルドマスターに伝言を頼む!冒険者全員を避難させろと言っておいてくれ!勿論、ギルドの関係者もだ!」
「軍隊長!今の話は聞いていたな?いくらグレム様に指導をもらったとてドラゴンに立ち向かえるようでは到底無い!すぐに軍の兵士にも避難勧告を出せ!」
アリアは一斉に指示を出す。『一国の王女の恥』?どこがだ。ただの冒険者をここまで信用してくれて、それだけの男の言葉に国に避難勧告まで出す。ここまで凄い王女はいない。立派な…とても立派な素晴らしい王女じゃないか。
そうグレムは思っているとアリアはこちらに振り返って言った。
「グレム様…この国を…頼みます。」
挙句の果てに国まで任せると…ここまで信用されると少し恥ずかしいけど嬉しいな。と思いながらグレムは笑顔で言った。
「あぁ!任せとけ!」
「住民が?ほほぉ…避難か、国を捨てたかな?それとも…まだその男がドラゴン2体相手に戦えるとでも?ククク…笑わせる、そいつはどうやら1体にも少々手こずっていたぞ?そんなに信用していいのか?」
魔術師はエルドの町の状況が映ったオーブを見ながら2体のドラゴンを操作している。
今度こそ…今度こそだ…、あいつを絶望させてやる…。その為に…まずはその避難した住民を焼き尽くしてやろう…クックック…お前が守ろうとした物を尽く潰してやるよ…。
魔術師は不敵な笑みを浮かべてオーブを見つめていた。
一方そのころグレムは…
「1人で戦う!?ご主人様!私たちを信用してくれていないのですか!?」
エルは席を立ってグレムが言った提案に反論する。
「いやいや…そんなわけじゃない。けど今回は状況が状況だ。2体を相手になんて到底無理だろう。例えば1体をお前たちに任せたとする。その1体が避難した人達を狙ってきたらどうする?守りきれるか?」
エルは不満そうな顔をしたが黙って椅子に腰掛けた。
「私は…それでいいと思う…まだ私たちはドラゴンに関しての経験が浅い…いくら1体といってもご主人様の助力無しでは厳しくなると思う…。」
ルリは分かってくれている、そう思ってグレムはルリの頭を撫でた、ルリは顔を赤くする、それを見たからかエルも言った。
「わ、私も分かりました!分かりましたから!ご主人様の言う通りにします!」
そういって頭を差し出すエル。分かってもらえたから一応撫でてやる…可愛い。
「じゃあお前らも避難してくれ。その時なるべくみんな1箇所に集まるように指示しといてくれないか?」
エルはその言葉に疑問を抱いて言う。
「え?でもそれじゃあ、狙われた時…」
「俺が結界を張る。それもドラゴンが本気を出しても壊れないようなやつをな。」
「ご主人様!結界まで張れるんですか!?」
ルリは耳をぴょこっとさせてしっぽをブンブンと振りながら興味を示す、めちゃくちゃ可愛いやんけ、マジで。
「ああ、まぁ一応な。誰かを守る為には必要だ。身につけておいて損は無いからな…。」
その言葉を言ったグレムは何故か悲しそうだった。ルリはあまり深くは聞かないでおこうと思った。
「これで全員か?」
グレムがアリアに言う。
「ええ!確かに全員います!住民も確認させました!」
「じゃあ、結界を張るぞ。」
大きく息を吸って、グレムは詠唱を始めた。
「<我守るべきものを護るためにこの力を使う者なり。その思いは天より高く、星よりも大きい。守りの神よ!その思いを持って!今!ここに最高の守りを完成させよ>!!!」
「<<絶対なる結界>>」
薄い紫色をした結界がドーム状に避難した人々を包み込む。
「それじゃあ、行ってくる。」
そう言ってグレムはものすごい跳躍力で空高く飛んで行った。
アリアは願っていた。
「勝利の女神よ…どうか、あの方に大いなる勝利を…」
グレムは城の屋根のてっぺんに立ち、こっちに向かって来ているドラゴンたちを眺めていた。
「揃いも揃ってごついの寄越しやがって…。全く呆れたもんだ。」
はぁ〜とため息をついた後、グレムの足元に薄い青色の魔法陣が光りながらほとばしり、そして、空に雷雲が現れ始める。
「<我、青より蒼き雷を操るものなり。雷神よ!今我の体にその蒼き雷の力を宿したまえ>!」
その瞬間グレムに青い雷が落ちた。
ドオォォォン!!
「<<蒼き雷の雷帝>>」
グレムは体の周りに青い雷を纏っている。その姿は正に…雷神のようだ。
「じゃあ…始めますか…ドラゴンさん。」
バリッ!!
光のような速さで北西から来たドラゴンに突っ込むグレム。
「ごめんな…ドラゴン…お前もこんな死に方は嫌だろうに…催眠までかけられて…。」
グレムは右の拳をギュッと握り、操っているものへの憎しみをこめて、ドラゴンを殴ろうと構える。そしてこう言った。
「せめて…最期は一瞬で終わらせてやる…じゃあな…罪のないドラゴン。<<雷帝の鉄槌>>!!!」
バアァァァァアン!!!
殴られたドラゴンはまるで雷が落ちたように黒焦げになり、下に落ちていく。
幸いにも町の広場に落ちた。被害は少なく済んだか…さてもう一体だ。
バリッ!!
グレムはまた恐ろしいほどの速さで移動した。
「なんだ!?何が起こった!?」
魔術師は突然の出来事に焦る。
「青い雷が城の上に落ちたと思ったら…一体のドラゴンがやられていた…!?バカな!?何が起こったんだ!?……だが…どちらにせよやつは避難した奴らを捨てたらしいな!こっちはがら空きだ!」
エルが言う。
「あ、あれはドラゴン!!ご主人様が言ったように、こっちを狙って…?」
魔術師がドラゴンを操作しながら言う。
「ハッハッハ!焼け死ね!!バカどもぉ!!!」
ドラゴンは火を吹いて避難民たちを焼き殺そうとする。避難民は悲鳴を上げた。
「キャアア!!!」
だが…
「な…なんだこれは…!?」
結界が張られていて全く避難民には当たっていない、それどころか火はかき消されている。
「こ…こんな結界を使えるやつは世界に数えられるくらいしかいないぞ!!そんなやつが相手をしているというのか!!?」
バリッ!!
一筋の青い光がこっちにやって来た。
アリアはよく目を凝らしてその遠くの青い光を見る…
「あれは…グレム様!雷を纏っていらっしゃるの!?なんて…綺麗な…。」
グレムは言った。
「やっぱり避難した人々を狙ってきたか…悪いやつが考えそうな事だ…だから…許せないんだ!!!」
グレムの周りに大きな青い魔法陣が光りながらほとばしる。その様子を避難した人達は全員見ていた、雷雲がグレムの頭上に集まる。
「<<雷神の裁き>>!!!」
グレムがそう唱えると、グレムの周りの青い雷が雷雲へ吸い込まれた後、一瞬でドラゴンの頭上から青い雷が放たれた。
ドドオォォォォオン!!!
物凄い音ともに、青い雷を受けたドラゴンは黒焦げになって下へ落ちていく。
空は何事も無かったかのように晴れていく。それとともに結界が解けた。ドラゴンがやられた様子を見た避難民たちは歓声を上げ、グレムの下に集まるように走り出した。
誰もが泣き、笑い、喜び、抱き合い、グレムを称えていた。それを見てグレムは下へ降りると、アリアがエルより先にすぐに抱きついてきた。
「おいおい、アリア王女?公衆の面前ですよ?」
グレムが心配するとアリアは泣きながら言った。
「そんなことどうでもいいです!…グレム様…無事でよかったです!!!あのドラゴン相手にここまで戦って下さって…国をお守りして頂きました!感謝で胸がいっぱいです!」
避難した人たちも同じように思っていた、姫様が代表して言ってくれて良かったと思っていた。
「いやいや、ただ向かってきた魔物を倒しただけだ。ただの冒険者だよ。」
「いいえ。」
アリア王女の秘書がそう言って近づいてくる。そしてグレムに向かって頭を下げた。
「あの時は…すみませんでした。バカにしたような口を聞きさらには『野蛮』などと…到底許される行為ではありません。」
「いやいや、高い身分の人たちから見たら確かに『野蛮』でしょう。ちゃんと働いてお金を貰っている人からすればそりゃそうですよ。気にしてません。」
「いえ、それでもあなたは、冒険者の中で誰よりも勇敢で、誰よりも寛大で、そして誰よりも優しい。人としても敬うほどの素晴らしき人だと分かりました。私からも感謝します。」
そう言ってもう一度頭を下げる秘書、グレムは褒められすぎて少し照れてしまい何も言えなかった。
そして、グレムにはその場にいた全員から拍手が贈られた。
グレムはそれでもみんなに頭を下げ続けていた。
どうでしたでしょうか?
主人公のかっこいいところが上手く表現出来ていたか心配ですが、楽しんでいただけたのなら何よりです。
それでは、また次回お会いしましょう!




