第19話 罠と喧嘩とフェンリルと
主人公の気持ちがよく分かるように伝えられているか不安ですが今回も頑張って書きました…
是非、楽しんで見ていってください!それでは、どうぞ!
グレムたちはジャイアントオーク3体を倒すクエストを終わらせ、ギルドへ雑談をしながら帰ろうとしていた。その時、目の前に1つの箱が置いてあった。
グレムたちが近づき、中を覗くと小さな銀色の毛並みをした狼らしき魔物が入っていた。
「ヒヒヒ…そうだ…そのままその箱の近くにいろ…。」
クラウスたちは<<潜伏>>というスキルを使いながら木々や草むらの中に隠れてその様子を見ていた。
クラウスは不敵な笑みを浮かべながら作戦の内容を思い出す。
『実はな…この時のために温めておいた物があってな…。』
そう言ってクラウスは仲間の2人に銀色の毛並みをした狼が入っている箱を見せる。
『この色と毛並みは…まさか!?フェンリルの子供ですかい!?』
仲間の男が思わず大きい声を出してしまう。
『シーッ。しかもこのフェンリルの子供…どうやら親が探しているようなんだ。』
仲間のもう一人の男が作戦に気づき言う。
『まさか…あいつらの帰り道にこいつを置いておいてフェンリルを呼んであいつらと戦わせる…ということですか?』
『そういうことだ…だがギルドの規約に『ギルド内のメンバーの争いは許すが生死を問うものは規約違反とみなす』とある…しかし…。』
『そもそも俺らがフェンリルを呼んだような証拠はないですし、さらにフェンリルにあのパーティ全員が殺されちまったらギルドも事故とする…と。』
『よく分かってるじゃねえか。『突然フェンリルが来てあのパーティ全員がやられてしまったんです!!』って言って逃げてきてもいい。さすがのあいつらでもフェンリル相手じゃ話にならねぇだろ…。』
『ドラゴンを倒してなかったらですけどね…。』
『あんなの尾ひれの着いた噂だろ、信じるのもバカバカしい。まともな傷を入れられたくらいだろ。』
『確かに。そんなやつ、前例無いですもんね。』
『それじゃあ…仕掛けに行くぞ…』
3人は拳を合わせ、合図をした。
「ご主人様?これはなんという魔物なんですか?」
エルが見たことの無い魔物に興味を湧かせる。グレムが答える。
「フェンリルの子供だな、なんでこんな所に…。」
まぁ、考えられるのは"1つだけ"なんだけどな…
グレムは勿論勘づいている。
「フェ、フェンリル!?伝説上の生き物かと思ってました…。」
エルはまじまじと見つめる。
「私も初めて見ました…。」
ルリも興味津々だ…そろそろかな。
グレムはそう思ってカゴを壊し中のフェンリルの子供を抱きかかえた。フェンリルの子供はグレムを気に入ったのか顔を舐めてくる。
「コラコラ止めろって。」
嫌ではなさそうな顔をしながら言うグレム、その時。
ドォン!!
何かが降り立った、いや、着地した。
そちらの方を恐る恐る振り返るエルとルリ。そこには、この子の親であろうフェンリルがいた。
「来たか…。」
グレムが言うと、フェンリルが話し始める。
【そなたらか…私の子供を奪い去ったのは…】
エルは言い返す。
「いいえ!私達は道にこの子が捨てられていたのでカゴから出してあげただけであって…。」
【信じられるものか…人間など…あの者以外…】
フェンリルが話す、その時グレムはそのフェンリルの額に大きな傷があるのが見えた。それに気づいたグレムは言った。
「まさか…『ミライ』か…?」
そう言われてフェンリルはグレムを見る、そして言った。
【そなたはまさか…『グレム』…?】
グレムがまだ子供だった頃、
魔王軍の兵士が言う。
『グレム様!そちらは危ないです!』
『大丈夫だって!』
グレムは『フェンリルの森』に入っていく。
『ハァ…全く…グレム様は世話するのが大変だ…フェンリルにやられたらどう魔王様に説明すればいいんだ…』
グレムは奥へ奥へと進む。
『(見たい!まだ見た事のない魔物を!フェンリルを!)』
さらに奥に進むと広間になっているところに着いた、周りは木々で囲まれている。
そしてその中心には…『フェンリル』が寝ているのが見えた。
『あれが…フェンリル…!凄い!』
その言葉が聞こえたのか、フェンリルは体を起こして言う。
【人間の子よ…そなたはここが我の縄張りだと知ってきたのか…?】
『そうだ!そしてお前を見に来た!その姿を見たかったから!』
グレムの無邪気な言葉に思わず笑うフェンリル。
【我をあまり舐めるなよ…?】
『舐めてないさ!だからお前が次攻撃してくる前に怪我をさせといた!』
【何を…】
ズバッ!
フェンリルの額に刃物で斬られたような深い傷ができた。
なんだ…今のは…?次の動きを読まれ…更に私が見えない速度で傷を入れられた…、しかもただの人間の子供に…。
フェンリルはあまりの急な出来事に戸惑っている、それを見てグレムは笑いながら言う。
『お前弱いな〜、それで戸惑ってたらやられちゃうぞ。』
そう言ってグレムはフェンリルに近づいていく。
フェンリルは防御態勢を取るが、あまりの強者を相手に足が震えている。
そんな…この私が…こんな子供に…。
そしてフェンリルの目の前まで来たグレムは額の傷に目掛けて魔術を使った。
『<<治療>>』
出ていた血は止まったが、深めに斬りつけたため傷が残ってしまった。
【なぜ…治した…。】
『今日から俺の従者になってもらうからだ。』
グレムのあまりの言葉に笑い出すフェンリル。
【私が?お前の?ははは、大分舐められたもんだな私も。】
グレムは強引に言う。
『名前をつけてやる!今日からお前は『ミライ』だ!将来もっと強いフェンリルになれるように進んで行けるように!未来を俺と一緒に生きてくれるように!』
【子供が言うような言葉では無いな、いいだろう。そなたくらい強い者なら、私は従者で当然だからな。】
『ただし、条件がある!これからはお前は従者であるが同時に『仲間』だ!だから俺がピンチになったら駆けつけてくれ!その代わり俺もお前を守る!そして互いを信用すること!いいな!』
グレムの言葉にまた笑いながらフェンリルは言う。
【ははは、『仲間』か…分かった。そなたを信用しよう、何があっても。】
『いいか…?これは破っちゃいけない約束だからな!』
【契約ではないのか?】
『それじゃあなんか強引な響きがして嫌だ!だから約束だ!』
【そなたがどんな者か分かってきたぞ…分かった…約束だ…。】
「やっぱりミライか!!いや〜懐かしいな〜。」
【まさかこんな所でそなたと再会できるとは思わなかったぞ、グレム。】
1人と1匹が対等に会話をしているのに呆気に取られるエルとルリ、そしてクラウスとその仲間。
「ご主人様…その…フェンリル様と知り合いなんですか?」
「ああ、そうだ。紹介するか、こいつは俺の従者のミライ、子供の頃に手懐けたって感じかな。」
クラウスは驚く。
「手懐けた…?子供の頃に…?フェンリルを…?」
グレムは今度はミライに仲間を紹介する。
「で、ミライ、こっちは仲間のエルとルリだ。」
2人は一応頭を下げる。ミライは2人の首元を見て笑いながら言う。
【奴隷を…仲間か…そなたらしいな。】
「俺らしい…そうか?あんまり自覚はないな…。で、ミライ、この状況なんだけど…お前ならもう気づいてるよな?」
【あぁ、周りに私ら以外の人間がいる。そいつらが犯人か。】
「ちゃんと約束守ってくれてるんだな。ありがとう。」
グレムは『互いを信用すること』を条件につけたのを思い出しながらミライに言った。
【何を言ってる、そなたには助けられてばかりだ。信用しないわけが無い。】
グレムとミライはそう話した後、もう一度グレムが口を開いた。周りのやつらに気づけていないエルとルリは頭の上に?マークを浮かべる。
「おーい、お前ら。もうバレてるから隠れてても意味ないぞ〜。今から10数えるうちに出てこい。出てこないなら…分かるな?」
グレムはそう言った後に数え始めた。
「10、9、8…」
クラウスたちは戸惑っていた、<<潜伏>>を見破られたことなんてない。だからあいつが言ってることは有り得ない…だがフェンリルを手懐けているというのも有り得ない…どうすれば…
「…3、2、1、0。」
0とグレムが言った瞬間、クラウスの目の前にグレムが現れた。怖い笑顔でグレムは言う。
「見ーつけた。」
クラウスが呆気にとられていると、他の2人はミライの口に加えられている。あまりの異常な出来事にクラウスは笑うしか無かった。
「は…はは…。」
グレムたちはその3人をギルドへ連行した。
受付嬢が言う。
「ま、まさか本物のフェンリルを見られるなんて…。」
【そんなに私が見られたのが嬉しいのか?人間よ。】
「はい!とても…綺麗です…。」
【ふふ…そうか…褒められるのも悪くは無いな。】
ミライは嬉しそうに笑う。
ギルド内の人物はみんなミライに釘付けだった。その中グレムはギルドマスターに捕まえた3人を引き渡す、そして言った。
「『ギルド内のメンバーの争いは許すが生死を問うものは規約違反とみなす』…でしたよね。フェンリルは攻略難易度星20超え、普通ならアダムアビスランクでやっと討伐できるくらいです。これはいくらなんでも生死を問うんじゃないんですか?」
ギルドマスターは言葉を返す。
「確かにそうだな、これは立派な"規約違反"だ。例え『ドラゴンを倒した英雄様』とあっても今はフェニキライトランク…さすがにこれはダメだな。それにしても…」
グレムは思った。?まだ言葉に続きがあるのか?嫌な予感が…
「それにしても!フェンリルも『仲間』とはどういう事ですか!?あなたは一体何者なんです!!??ドラゴンの件といい今回の件と言い…ますます気になります!!」
そう言って顔を近づけてくるギルドマスター、やっぱりこうなると思ったよ。嫌な予感的中だ。
その時、クラウスが口を開いた。
「フェニキライトランクさんよぉ…」
グレムはクラウスの方を見る。
「お前…自分の奴隷の事を仲間って言ってるんだってな…けど本当はどうせただの雌豚としか思ってないんだろう?」
クラウスはバカにするように言う、グレムはその言葉に反応して聞き返す。
「どういう…ことだ?」
「どうせその2人を夜の楽しみに使う雌豚としか思ってないんだろうって言ってんだよ!!!あぁ!?」
エルとルリはその言葉を聞いて嫌そうに俯く。
グレムはベリルのギルドで出した殺気よりも濃い、誰もが恐れるような黒いオーラを出しながらクラウスの胸ぐらを掴んだ。グレムは完全に怒っている、そして言った。
「今…なんて言った…?」
「あぁ!?聞こえなかったのかよ!」
「今…なんて言ったのかを聞いているんだ。答えろ。」
その時のグレムはあまりの恐怖のオーラで誰もが近づけないほどだった。エルとルリは悔しそうにしながらもグレムを心配する。
「だからぁ!!その奴隷2人の仲間をただの雌豚としか思ってないんだろ」
その瞬間、グレムはクラウスの腹部に強烈なパンチを入れた。
ズドムッッ!!
「がっっはっっ!」
「クラウスさん!!てめぇ!!」
もう1人の男が殴りかかってくる、が、グレムはその拳を軽々しく手で受け止め、そのまま腕をねじった。
ボキボキボキッ!!
「ぎゃあああああ!!!腕があぁぁぁぁ!!!」
もう1人はあまりの恐怖に涙を流しながら、近づいてくるグレムに怯える。
「お前も…俺の仲間を雌豚と罵るのか?」
首を横にブンブンと振る男。
「謝れ。<<重圧>>」
そう言ってその3人全員に土下座をさせるグレム。その3人の体にはとても持ち上げられない鉄の塊が乗っているかのように重力がかかり、頭を上げられない。
「俺の大切な仲間のエルとルリに…謝れ。」
グレムはもう一度言う。
「『仲間を傷つけてすみませんでした』と謝れ。」
さらに体が重くなる3人、床にめり込みそうだ。3人は声を合わせて言う。
『なっ仲間を傷つけてすみませんでした!』
「誠意が足りない、もう一度。」
またさらに体が重くなる3人。
『グレム様の大切な仲間を傷つけてすみませんでした!!』
「よろしい。」
グレムは<<重圧>>を解いた。3人は息が上がっている。
そこまでの様子をギルド内の人はあまりの恐怖に黙って見ていた。
グレムがギルドマスターへ言った。
「では、この3人への処罰、お願いします。」
「あ、あぁ…。」
さっきとは全く違う、普通のグレムだった。さっきのは…思い出すだけで鳥肌が立つ。
ギルドマスターは1度考えないようにしようと思い、3人への対処に専念した。
ミライを見送った後、王宮を目指して歩きながらグレムは2人に謝る。
「ごめんな…あんな思いさせちまって…。」
「ご主人様が謝ることないです!悪いのはあの人たちですから…でも…」
エルは俯きながら言う。
「あんなご主人様は…もう見たくないです…。」
ルリもその言葉に対して頷く。
「分かった、金輪際、本気で怒るのは止めます。」
「やっぱり、怒ってたんですか…。」
「当たり前だろ!仲間をあんな風に言われたら俺だってさすがに怒る!」
グレムはその後に続けて言った。
「だけど…2人をあんな風にバカにされたらまたああなるかもしれない…だからその時は…止めてくれ。」
「勿論です!!」
エルが言うとそれに続けてルリも言った。
「私も止めます!いつも優しいご主人様でいてほしいですから!」
エルが言う。
「あ!それ私の台詞です!!」
「もう言っちゃったもんね〜。」
グレムはその2人のやり取りを見て笑いながら言った。
「あはは!お前ら本当に俺の事好きなんだな。」
『勿論です!!』
2人が声を揃えて言うとまたグレムは笑った。その笑顔を見て、エルとルリも顔を合わせ、笑った。
初めて見たご主人様の本気の笑顔だった。
どうでしたでしょうか。
自分の語彙力の無さに少し絶望しています…。
次回はほのぼのした回になるかと思いますのでよろしくお願いします。
では、また次回お会いしましょう!




