第17話 獣人の奴隷
また主人公の周りに可愛い子を増やしてしまった…、設定も見た目も結構迷いましたがちゃんと決めてきました。
それではどうぞお楽しみください。
「はぁ〜。」
グレムはエルド王国内の道を歩きながら大きなため息をつく。
「大丈夫ですか?ご主人様?」
エルは心配そうに声をかけてくれる。
「大丈夫…とはいえないな…あんなことがあった後だからな…。」
そう言ってグレムは今朝の出来事を思い出した。
『私、結婚するならこの人がいい、いや、この人じゃないとダメです!』
そう言って頬にキスをされたグレムはあまりの言動に驚いて、言葉を失って変な声が出た。
『……え?』
グレムはその後の言葉も失いただ立ち尽くしている。秘書が言う。
『な…何をおっしゃるのですか!?そんな気品のかけらもない冒険者などと結婚など!国民も驚くどころではありません!意味がわかりません!』
『あなたは"グレム様"をご存知ないの?ベリル王国を救い、さらには奴隷にまで優しくして人並みの暮らしを保証させることまでしたとても心の清らかな方です!!『気品のかけらもない』?そんなこと私からしたら"政略結婚"がまさにそれですわ!上品も何もないじゃないですか!『互いの国のための結婚』に気品があるとでも言うのですか?』
グレムはやっと我に帰る。秘書は王女の言葉に何も言えない、グレムは少し手助けをした。
『それでは一旦この話は"保留"としませんか?互いの考えはよく分かりましたし、それぞれ新たに考えることもあるでしょう。どうですか?』
グレムは秘書に向かって言う。秘書はムカついたような様子で「フンッ」と言ってからこう言った。
『いいでしょう、でも、結婚については常に考えておきなさい。あなたも一国の王女なのです。王国が衰退するより前に決めないといけません。それと、冒険者と結婚などとは考えないでくださいね。利益も何もありません。』
あれだけ言ったのにこの人はまだ『アリア』という1人の人間について考えてないのか。ただの駒だとでも思っているのか?あまりにもひどい。そう考えているとアリア王女はグレムに言った。
『グレム様…さっき言ったことですけど…』
グレムは気にしていないというように言う。
『ああ、気にしないでくれ。本気ではなかったんだろう?あの状況を打破するには良い判断だったと……』
言葉を遮るようにアリア王女は言う。
『いえ…嘘も何もありません、本気の意志です。グレム様には申し訳ないのは分かっております、無理なお願いなのも分かっております、けど、少しで…少しだけでいいので…私との結婚を本気で考えてください…。お願いします。』
アリアは目に涙を浮かべながら必死にお願いをした。あれは誰がどうみても『本気』だった。
『分かった…考えておくよ…。』
「誰かの頼みとなると…弱いよなあ…。」
グレムは自分の弱さに深く反省している。エルがそれをフォローするかのようにこう言った。
「けど…『放っておけない』と伝えられるのは相手からしたらかなり安心するんですよ…ご主人様。」
エルは自分のことを思い出しながら言っているのだろうか、グレムはその言葉に少し救われた気がしていた。
「ところで、どこに向かっているんです?ご主人様。」
エルは疑問に思って聞く。
「奴隷商店だ。」
その言葉に驚きを隠せないエルは思わず「えっ!?」と声を出してしまった。
エルが良くないことを考える前にグレムは言った。
「前の『巨大蜘蛛』との戦闘時、かなり上手く戦えたとは思ったが、気になる点があってだな…。」
ご主人様のその言葉にしっかりとエルは耳を傾ける。
「エルと俺、両方の負担がかなり大きいことが分かった。例えばエル、エルは人々を介抱した後、援護に回るという役目だった。ただ、介抱する人の数が多いせいか少しバタバタしていただろう。あといくら防御魔法を張っていたとはいえ、魔物から直接エルを狙われたら防御魔法だけでの対処では少し怖い。あの時は残っている敵がほぼ巨大蜘蛛だけだったのがよかったがな。」
「確かに…少し心配ではありました。全員を守り切れるかどうかも少し…。」
グレムとエルは歩きながら話を続ける。
「そして俺の場合、あの時、俺はあの"一体"に全力を注いだ、つまりもっと数がいたらめんどくさいことになっていただろう。エルを守りながら戦うのもやれないことはないが少し厳しい。だから…」
グレムのその言葉の後にエルは続ける。
「だから…もう1人仲間が欲しい…ということですか。」
「そういうことだ、だから決してエルが要らなくなったとかもっと可愛い子が欲しいとかいうわけじゃない、そんなこと本当に考えないでくれ、俺は絶対に仲間を見捨てたりはしない。分かったか?」
そういってグレムは優しくエルの頭をポンと叩いた。
「それを聞いて安心しました…やっぱりご主人様は優しいです。いつも仲間のことを考えていらっしゃるのですから。」
エルがそういうとグレムは少し顔が赤くなり顔を背ける。
「照れるからやめてくれ。」
エルはふふっと笑いながら言った。
「ご主人様も可愛いところあるんですね。」
そう話していると…目的地についた、薄暗い路地に入口がある。
「ここか…毎回入るのにちょっと抵抗感があるな…。」
グレムはそう言って奴隷商店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ〜。」
細身の高い身長の男が店員をしていた。グレムは要件をすぐに言う。
「奴隷を見せてほしい。」
「そうですか、なにか要望などあります?戦闘経験があるとか獣人とか…色々ありますが…。」
「自分で見て決めるよ。」
「承知いたしました、それではこちらへどうぞ。」
奴隷商店の店員に着いて行く2人。
「どうぞ見てください。」
やはりあまりいい空気じゃない、嫌な雰囲気だ。そう思いながらも奴隷を見る。またあまりパッとする子がいないと思っていると、
ガシャン!!
鎖で繋いでいるのであろうか…それを取ろうと動いたような音がした、そちらの方向へ行く。
また人1人が入れるくらいの箱が置いてあった、その中から音が聞こえる。中を覗いてみると…白い…狐?獣人の女の子が入っていた。その子はこちらを睨むような目で見てくる。だがグレムは言った。
「この子にします。」
「ですがその子は少し問題がありまして…以前の飼い主に暴力を振るったのですぐに返されてしまって…」
店員の言うことが聞こえていないかのようにグレムはもう一度言った。
「この子にします。」
店員はグレムの真面目な顔を見て分かったのか言った。
「分かりました…こちらで代金と引き渡しを済ませますのでどうぞ。」
グレムはすぐにそちらに行って用を済ませた。
外に出るとその子は太陽を見てぼーっとしている。久しぶりの外なのだろうか。と考えているとエルが言う。
「ご主人様…その子…女の子で…しかも結構可愛いです…。」
少し不満を抱いてるようだ…打ち解けてくれればいいが…。
「これからよろしくな。」
グレムはその白い狐の女の子に笑顔で手を差し出す。その子は少し弱々しいが手を握ってくれた、前のご主人様はどんなやつだったんだ?こんなにも落ち着いている子に殴られるなんて考えられない。
「それじゃあ行くか!」
グレムはそう言う。2人はどこへ?と言う顔をする。
「丁度昼頃だし、飯にしよう。ほら、行くぞ!」
グレムは歩き出した、エルもそれについていく。白い狐の女の子は、少し戸惑いながらも2人の後を追っていった。
レストランに着いた。早速席に座るエルとグレム。白い狐の女の子は立ち尽くしている。
以前のエルを見ているようだ…とグレムは思った。その子に椅子に座るように合図をする。
するとその子は恐る恐る席に座った。グレムはすぐにメニューを渡して言った。
「食べたい好きな物を頼んでいいからな。」
その子は言われた途端すぐにメニューを開いて食べたい物を探し出した。
「名前どうしようか…。」
グレムがそういうとエルが言う。
「せっかくですし可愛い名前がいいですよね!」
「そうだな〜『ルリ』とかはどうだ?エルの時とは違って、なんとなくな感じで考えたけど。」
その言葉にその子は反応した、メニューを見るのをやめ、グレムを目を大きくさせて見つめる。そして言った。
「『ルリ』がいい…。」
「そうか、気に入ったか!なら今日から君は『ルリ』だ、よろしくな、ルリ。」
ルリはメニューで顔が赤くなっているのを必死に隠す。やべぇ、可愛い。と思っているとそれに気づいたのかエルはこちらを凝視してくる。テレパシーやっぱり使えるのか!?
店員を呼び、注文をする。また少し奴隷用に料理を注文するのが珍しいのか店員は戸惑ったが、問題なさそうだ。
料理が運ばれてきた、ルリは久しぶりのまともな食事に感動しながらも直ぐに食べ始めた。その勢いは止まらなかった。
それを見たグレムとエルは目を合わせて少し笑い、2人も料理を食べ始めた。
料理を食べ終わると、すぐに服屋へと向かった。ルリを奴隷服のままでいさせるわけにはいかない。
「いらっしゃいませー!!」
店員の挨拶が聞こえるとすぐにグレムは言った。
「この子に似合う服を見繕ってください。」
ルリは少し拒否しようとしたが、店員に試着室に連れていかれた。店員はあまり奴隷については気にしていない様子であったので、少し安心した。
「おお、可愛いじゃないか。」
グレムの言葉にルリは顔を少し赤くする、マジで可愛いな。
動きやすいTシャツにハーフパンツ。一般的な服だがルリの見た目とばっちり合っていて可愛く見える。
「ありがとう…ございます…。」
ルリは顔を赤らめたまま感謝の言葉を言ってくれた。よし、次に行くか。
外に出ると今度は武具屋へと向かった。無論、ルリの装備を揃えるためである。
「ルリ、戦闘はできるか?」
『獣人だから相当強いんだろうな!期待してるぞ!』
ルリは昔の主人の記憶を思い出す、そして自信なく言った。
「少し…なら。」
「そうか、じゃあ装備を揃えに行こう。」
ルリは思っていた。この人も、私の使える武器を知ったら、使えないやつだとか思うのかな…。
武具屋につき、早速中に入って色んな武具を見るグレムたち。
エルは…まだあの杖とローブで大丈夫かな。十分以上に戦えているしな。グレムはそう思っていると、何かに見とれているルリが見えた。
なんだろう?と思いながら見るとそれはアダムアビスでできた綺麗な青色をしている短剣だった。
「そうか、ルリは短剣使いなのか。」
その言葉を聞いたルリはまた昔の記憶を思い出す。
『短剣使い!?使えねぇじゃねぇか!剣使いの劣化版だ!そんなもの使うんじゃねえ!ここまで使えない職業とは思わなかったぞ!』
怒られると思い、ルリは身を縮めていると、グレムは言った。
「いいじゃないか、短剣使い。珍しいけどな、よく使えるな〜しかし結構難しくないか?」
全く思っていた言葉とは違った優しい言葉だった。ルリは思わず疑問に思って聞く。
「ご、ご主人様は…短剣使いは使えないとは思わないのですか…?」
「何言ってるんだ、立派な前線武器じゃないか。使うには立ち回りとか戦闘スタイルを結構意識しないと難しいが、使えないわけじゃない。本当に立派な前衛だと思うぞ。」
ルリはグレムの思わぬ言葉に驚いていた、自分の職業を肯定してくれた人物は初めてだった。
「短剣使いなら揃えるもん揃えないとな!よし、少し奮発するか!店員さん!このアダムアビスの短剣、いくらだい?」
「ご主人様、待って、別にこれじゃなくても…。」
ルリはグレムに遠慮する。
「何言ってるんだ、最高の装備で戦いたいだろ?いい装備の方が戦いやすいからいいじゃないか。」
ルリは少し戸惑っている、店員が言う。
「お客さん、その短剣は1200万ギルですよ?冗談はさすがに…」
ルリも値段を分かっていたから遠慮したんだろう…だが…
ドンッッ!!
店員がいるカウンターの上にギルが大量に入った袋を出す。
「ルリ、短剣使いに必要なものは他になんだ?」
「胸当てと…腰当てがあれば…ヘルメットとブーツは重くなるから使わない…。」
「じゃあアダムアビスの胸当てと腰当ても追加で!」
店員は驚きながらも頭を下げて言う。
「あ、ありがとうございます!!」
グレムはルリの方を笑顔で見た、ルリはその笑顔を感謝の気持ちをこめて見つめ返していた。
「ご主人様…本当に良かったんですか…?短剣使いなんかの私のために…こんな高い装備…。」
ルリは心配そうに聞く。グレムは返答する。
「よっぽど前の主人に短剣を馬鹿にされたんだな、そいつの顔面殴ってやろうかほんとに。大丈夫だよ、その分戦闘で頑張ってくれたらいいんだから。装備の値段くらい気にするな。」
ルリはグレムの言葉に心を救われたようだった、初めて職業を理解してくれた、思わず涙がこぼれる。それを見てエルは小声でルリに言った。
「ご主人様はこういう方なんです。仲間のこととなれば本当に優しくしてくれるんですよ。」
ルリはグレムの背中に抱きついた、グレムは驚いて言う。
「どうした!?急に!」
「いえ、ご主人様が少し好きになっただけです。気にしないでください、えへへ。」
ルリは嬉しそうに笑いながら言う。
「なんだそれは?よく分からんがまぁ、よかった。」
グレムは少し笑いながら言った。エルはその様子を嬉しそうに見つめていた。
どうでしたでしょうか?
エルとルリの名前の響きがとても良いと思っています。呼びやすいし。
次回はバトルシーン多めになるかと思います、それではまた次回お会いしましょう!




