第15話 蜘蛛の巣窟
今回は主人公のバトルシーン多めです。エルも可愛く頑張っているので温かい目で見守ってあげてください。
それでは、どうぞお楽しみください。
グレムが言う。
「ここが目的地か…。」
目の前には真っ暗で奥が見えない洞窟がある。
「これじゃあ明かりがないと進めませんね…。」
エルは心配そうに言った。
「そうだな….<<灯火>>」
グレムは自分たちの周りが見えるようになるくらいの明かりを出す魔術を唱えた。光を放つ玉がグレムの手元から出て、肩くらいの位置で止まった。
「とりあえず奥まで進んでみるか…。」
グレムは少し不安に思いながら言う。
ひんやりとした壁、地面は少し湿っている。あまり良くは考えられないようなシチュエーションである。洞窟っていったらこんな感じではあるが…。
しばらく前方に歩いていると目の前に広い場所が見え始めた。
「ここが…巣か…?」
グレムが不安に思いながらもその光の玉を上にあげる…すると、
「キシェエエエエエエ!!」
何かの鳴き声がする、そして周りの壁にその何かが張り付きながら動いているのが分かる。
「俺虫系苦手なんだよな〜はぁ。」
目が慣れてきたのか周りが少し見えるようになると、びっしりと蜘蛛の糸が張ってあり、グレムたちを囲むように蜘蛛が集まっていた。
「助けてくれ〜!!」
どこかから人の声がした、どこだと思いつつ探していると、蜘蛛の糸で包まれたあるものが動いている。おそらく人が入っているのであろう。
そしてグレムはその蜘蛛の糸で包まれているものがいくつも天井から吊るされているのに気づいた。
「これが全部…人だって言うのか…?」
あまりにも多すぎる、犠牲者がさすがに多すぎだ。グレムは少し怒りながら言う。
「エル…俺はちょっとこの蜘蛛らが許せないから容赦なく潰して回る…自分の身は守れるか?」
エルは答える。
「はい!修行の成果、見せてやります!」
「よく言った!」
グレムはそう言うと詠唱を始める、足元には赤い魔法陣が光りながらほとばしる。さらに両手にも赤い魔法陣が光る。
「<我赤き炎を使うものにて、今炎の神の怒りを表し、目の前の敵を焼き尽くす>!!」
蜘蛛が詠唱しているグレムに飛びかかってくる、グレムはその瞬間に魔術を唱えた。
「<<赤炎の煉獄>>」
飛びかかった蜘蛛が全て焼き払われ灰となった。グレムは自分の周りの炎を自在に操り、周りに見える全ての蜘蛛を焼き払って灰にしていく。
「こ、これがご主人様の魔術…!」
あまりの凄さにグレムに見とれているエルにも蜘蛛が向かってくる。それに気づいたエルは詠唱を始めた。
「<光の精よ!今我の言葉に答え、天より全てを貫く槍を授けよ>!!」
エルの杖に光が覆いかぶさって槍のように変形した。そしてそれを向かってきた蜘蛛めがけて突く。
「<<光の輝槍>>!!」
その槍は蜘蛛の体どころか洞窟の端の壁まで貫通した、壁には少し崩れた跡ができた。
エルは修行の日々を思い出す。
『自分の身を守る用に…ですか?』
エルは疑問に思いながらグレムに聞く。
『そうだ、俺はなるべくエルには敵を近づけさせないようにはするが、もし、それができなかった場合のために自衛用の技を身につけておこう。ということだ。』
ご主人の足を引っ張ってしまっていると思ったエルは自分から言った。
『是非!お願いします!自分を自分で守れるように頑張ります!』
『ではまず手始めに光の剣を作ってみよう。』
グレムの言葉に思わず?マークを浮かべるエル。グレムはエルが何も分かってないのを知り、言う。
『実はエルの適正魔法を調べた時、微かだが光の魔力を感じた、2つ以上適性があるのはかなり珍しいがな。だから、多分エルならできる。』
『ええ!?私に光の魔法が…ですか?そんな…回復魔法でも手一杯なのに…。」
エルは少し俯く、だが、ご主人様の為にと思い直ぐにグレムの顔を見上げて言った。
『でも、私、頑張ります!ご主人様の足を引っ張る訳にはいきませんから!』
『そうか…じゃあまず詠唱からしてみよう…。』
エルが光の槍で蜘蛛を貫いたのを見たグレムは思っていた。
「(まさかたった1週間で身につけられるとは思わなかったがな…、エルには素質がかなりある、魔法に関したら間違いなく俺以上だ。)」
魔法が使えないグレムは少し自分の能力に悲しみながら炎を振るう。
その炎で吊るされているものを地面に落としていく。
「エル!蜘蛛を潰しながらあれを落として集めておくからそいつらを介抱してやってくれ!おそらく全員人だ!」
それを聞いたエルは答える。
「了解しました!」
グレムはエルの返事を聞いた瞬間から蜘蛛を焼き払いながら人が視認できないスピードで自分で落とした蜘蛛の糸で包まれたものを回収してエルの元まで持ってきた。
丁度全て集め終わった頃であろうか、さっきまであんなにいた蜘蛛たちがもう数匹になっている。だが…
「やっぱり出てきたか…遅いぞ、『特異種』。」
洞窟の奥からさっきまで倒していた蜘蛛とは比べ物にならないほどの大きさの蜘蛛が現れた。
クエスト地を目指している時…
『ところでご主人様、『特異種』ってどんな魔物を指すのですか?』
『ああ、それか。特異種は元々の魔物よりさらに強い、つまり攻略難易度が明らかに高い魔物のことを言う。例えば、巨大蜘蛛はプラチナランクで3人か4人パーティなら楽々倒せる。だが特異種となると話は別。他パーティと組んで全員で殴りかかっても倒せるか微妙だ。防御力も攻撃力も普通より格段にレベルアップしている、つまり、桁違いの敵だな。』
『そうなんですか…かなり手強そうですね…。』
『心配するな、俺が何とかする。』
グレムがキッパリ言い張ると、エルは笑顔で言った。
『はい!期待してます!』
エルが包まれたものの蜘蛛の糸を裂きながら言う。
「あれが…『巨大蜘蛛』…親玉ですか…。」
「エル、恐らくあいつは分かっているとは思うがかなり手強い。最初は俺一人でやる、そいつらの介抱が終わったら援護してくれ。」
グレムはそう言うと手に出していた赤い魔法陣を青に変色させて詠唱を始める。
「相手は『特異種』だ…全力で行かせてもらう。エル、周りのことを気にしない様な戦い方をするかもしれないから防御魔法は張っておいてくれ。」
そう言われエルはすぐさま詠唱を始めた。グレムとほぼ同時である。
「<我赤き炎を青き炎に変換させるものなり。炎の神よ、今我の体にその青き炎を宿したまえ>!!」
「<光の精よ、弱き者を守るために、今天から盾を授けたまえ!>」
「<<青き炎の悪魔>>」
「<<光の輝盾>>」
グレムは体の周りに青い炎を纏い、エルは自分の周り一帯を囲むように光の盾を張った。
「ご主人様!お気をつけて!」
「ああ!任せろ!」
そう言った瞬間、グレムは恐ろしいほどのスピードで巨大蜘蛛に接近し、顔面を殴り飛ばす。
「ギシャアアァアアアァ!!」
その巨大蜘蛛は顔面が青い炎で焼けたため、悲鳴をあげた。グレムに負けじと、毒を口から発射する。
グレムはそれを軽々しく避け、また顔面を殴った。巨大蜘蛛は洞窟の壁まで吹っ飛び壁にぶつかる。顔面はまた焼けたが、あまり効いていないのか、今度は悲鳴を上げなかった。
「2度結構本気で殴ったのにこれか…さすが特異種…遠慮はいらなそうだ。」
グレムはニヤリと笑いまた巨大蜘蛛を殴り飛ばす。3回、4回、5回殴ったところでグレムは巨大蜘蛛の正面の空中に移動し、言った。
「ふぅ…でもそろそろ終わらせるか。」
グレムはそう言うと右腕を上げ、体に纏っていた青い炎を右の掌に集中させる。
それを見た巨大蜘蛛はグレムにすぐさま飛びつこうとするが….
ドドォン!!
<<光の輝槍>>が体に当たり少し怯んだ。エルが言った。
「ご主人様の邪魔はさせませんよ。」
グレムはそれを見てニヤッと笑った後、右の掌に集中させていた青い炎の塊を巨大蜘蛛に向かって投げつけた。
「くたばれ、蜘蛛。<<青き炎塊>>」
ドォォォォォォン!!!
凄い音ともに巨大蜘蛛は焼き尽くされ灰となった、跡形もなく消え去っている。
討伐確認のための素材の巨大蜘蛛の目玉は殴った時に取っておいたので問題はない…よし。
グレムがエルの方に向かうと、エルの周辺では介抱した人々が泣きながら喜んでいた。やはり、蜘蛛の糸で巻かれていたのは人だったのか。グレムはエルを褒め始める。
「よくやったぞエル!!あの巨大蜘蛛に邪魔をしたのはかなり良かったな!」
そう言ってエルの頭を撫でるグレム。エルはとても嬉しそうにして言う。
「ご主人様の役に立てて良かったです、えへへ。」
「えへへ」ってなんだ可愛すぎかよと思っていると助けた人たちがお礼を言ってきた。
「ありがとうございました!」
「生きてて良かったです!本当にありがとう!」
「お姉ちゃんたちありがとうね!」
子供までもが捕まっていた、さらには冒険者も混ざっていたが、討伐したのが俺らだったのが気に入らなかったのかあまりよく思っていないようだ。気にしないでおこう、めんどくさいし。
「じゃあ、帰るか。」
グレムはそう言ってエルと蜘蛛に捕まっていた人たちを連れてエルドへ帰っていった。
グレムとエルは蜘蛛に捕まっていた町の人々をそれぞれ見送りながらギルドへと戻ってきた。勿論その捕まっていた冒険者も一緒に。
ギルドのドアを開けると、ギルド内の人々が驚いた様子で見てきた。とりあえず鑑定所に行こうとするとギルドマスターが急いで降りてきて言った。
「グレム様!無事でしたか…よかったです。」
「はい、依頼の巨大蜘蛛、しっかり倒して捕まっていた人々も解放しましたよ。」
「ありがとうございます、本当に助かりました。報酬は少し待っていてください。とりあえずその目玉?のような物は鑑定所に渡してきます。」
「いやいやそれぐらい自分で行きますよ、さすがに悪いです。」
「それじゃあこの感謝の気持ちはどうすればいいんですかあ!!」
また出ましたね、キャラ濃いんだよな〜。
「私、グレム様方が出発した後も心配で…本当に心配したんですからね!!!」
ギルドマスターは涙ぐみながら言う。
「もう既にお礼の言葉はもらいました、それだけで十分です。こちらもお役に立ててなによりなので。」
グレムがそう言うとギルドマスターは涙を拭いて言った。
「本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」
あ、戻った。
「はい。」
2人は握手を交わした後、ギルドマスターはその場を去っていった。急に他の冒険者のパーティの女の人に話しかけられる。
「よお!あんたら巨大蜘蛛を倒してくれたんだって?うちの仲間が捕まっててさ、助けてもらえて感謝してるんだ。ありがとな。」
横にいた男が言う。
「だが助けてくれと言った覚えはないがな。」
助けてもらっといてそれかよと思ってしまった。それをフォローするように女の人が言う。
「まぁ、こういうやつだが感謝はしてるんだ。本当にありがとな。しかしよく倒せたよなぁ、『特異種』、フェニキライトランクはレベルが違うのがよく分かったよ。」
「そうか?お前たちも頑張ればいけると思うぞ?」
「冗談でも嬉しいよ、ありがとう。」
そう言ってそのパーティは去っていった、いや冗談じゃなくて本心だったのだが…
「ご主人様は本当に優しいですね、私ならあの態度気に入らなくて怒ってしまいます!」
エルがそう言うとグレムは言った。
「いや俺でも怒る時は怒るぞ。まぁあんまり気にするな、さ〜て宿に向か……あ!!!」
グレムは急に何かを思い出したように言った。エルはそれに対して驚きながら聞く。
「ご主人様…どうかされました?」
「そういえば王宮に行く約束してた…。」
エルもうっかりしていたと思って言った。
「そういえばそうでした!でももう夕方ですし…どうします?」
「怒られる覚悟で行くか…だいぶ待たせてるもんな…。」
グレムとエルはとぼとぼと王宮を目指して歩いていった。
どうでしたでしょうか?
これからも続けていきますのでどうか宜しくお願いします。
それでは、また次回お会いしましょう!




