第109話 アナスビア=ストール=アラナ
今回は少し短めですが、ある女の子の話が中心となります。それ以外にも驚くような展開もあるかも…?
楽しみにしながら読んでいってください!
それでは、どうぞ!
「おい、おい!起きろ。サタン。」
サタンはゆっくりと目を開ける、どうやらグレムに斬られた後、あまりの傷の大きさに気絶してしまっていたようだと理解する。そして、その後、木の下まで移動させられ、寝かせられていたことも。だが、少し疑問が浮かぶ。
【何故…何故我を殺さなかった……。また、大災害を起こすかもしれんだろう。】
グレムはため息を「はぁ…」とついてから言った。
「本当にお前はなんも分かっちゃいないな、お前を!殺したら!お前の!召喚の為に!犠牲になった!人が!蘇らせられなくなるだろうが!!」
サタンはグレムが指を自分に向けて近づけ、わざと馬鹿にするような言い方で説明をしたのに少し笑ってしまった。
【フフフ…ハッハッハッハ!!そういえばそうだったな、完全に忘れていたよ……だが私はお主が勝ったら復活させてやるとは言ってないぞ?】
グレムはその言葉にハッと気づいて驚いた顔をした、またサタンはそれを見て笑う。
【ア〜ハッハッハッハ!!!嘘だ、冗談だよ。我は負けた、それも完璧にな……それに……『大災害』を起こさなくても、私は満足した。久しぶりのお前との勝負、かなり楽しませてもらったぞ。】
グレムはサタンの言葉にこう返答する。
「あ〜良かった。そういえばお前、結構真面目だもんな、それは安心したよ。……でも、あんなので楽しかったのか?最終的には俺がまた勝ってしまったが……。」
サタンはグレムの言葉に少し思うところがありながらも、言葉を返した。
【ああ、色んなものが見れて、さらに知れた。お前は30%の力だけで昔我と戦ったこと、仲間の重要さのこと、戦術、そして新たな魔術……どれも興味深いものばかりだった。それに……負けからも学ぶことは多くある。意味の無い勝負など無いからな。】
グレムはサタンの言葉を聞いて、「そうか…」と言ってからサタンに問いかける。
「それで…お前を召喚する為に犠牲になった子の事だが……」
サタンはグレムの言葉の最中で返事を返す。
【ああ、もう我は今すぐ死んでも良いくらい満足した。返してやろう…我の生け贄となった者を……。】
サタンはそう言うと、自分の体から大きな闇の塊を取り出して、グレムへと渡した。
その闇の塊がグレムに渡った瞬間、闇が弾けて、中からアラナが出てきた。グレムは少し涙を流しながら言う。
「良かった……本当に良かった……アラナ……。」
サタンは涙を流しているグレムに言う。
【じき、私も消えるだろう、今回は封印される物も何も無いからな。だから…お別れだ……最後にお前と戦えてよかった……グレム……。】
サタンは足元から体が透けていく、一旦ではなく、完全にこの世界から消えてしまうのだろう。だが、グレムはまるで以前から決めていたように、サタンに言った。
「サタン……俺たちと一緒に……冒険しないか…?」
サタンはあまりの思わぬ言葉に、言葉を失った。
「う〜ん………うん?」
アラナは起きる、自分の家のベッドの上で。
「(あれ…?確か私は……。)」
そう思って、アラナは記憶を辿る。
アラナの父が、アラナが朝食を取っている時に言う。
『アラナ、今日は待ちに待った実技テストだな!!お前の魔術の才能を見せてやれ!!ほら、食後の紅茶だ。』
アラナは魔術師として尊敬している父にそう言われ、嬉しそうにしながら紅茶を受け取って言った。
『ありがとう、お父さん!!私、頑張るから!!』
アラナはそう言って、一気に紅茶を飲み干した。すると、急に物凄い眠気が襲ってきた。その時に父は言った。
『安心しろ、アラナ。これから先は、アラナやお父さんみたいに魔法が使えない人も、受け入れられるようになるからな………だからアラナ……。』
そう言って、アラナの父は意識を失う寸前の自分を抱き抱えてから言った。
『その為の……犠牲になってくれ……。』
アラナは全てを思い出した、だが、それから先は記憶が曖昧で覚えていない。父が言った『犠牲』とはなんだったのだろう、自分を抱き抱えてどこに連れていこうとしたのだろう。様々な疑問が浮かび上がる、すると……
ガチャ……
アラナの部屋のドアが開いた、そして入ってきたのはグレムだった。
「お、起きたか。丁度、紅茶を入れ終わった頃だったんだよな。どうだ?調子は?」
アラナは何よりも先にグレムに言った。
「な、なんで先生がここにいるの……?」
グレムは「まぁそう言われるよな」というような表情をして、紅茶を入れて運んできたトレーを棚の上に置いてから、話し出した。
「君のお父さんは……君を犠牲にして大悪魔、サタンを復活させた。だから、君のお父さんは今捕まっている………」
そう言って、一旦グレムは自分用にも入れておいた紅茶を少し飲んでから言う。
「はぁ………で、君の家に来てみたら、母親までもがいないから、たった1人で君を家にいさせるわけにはいかないとカイルこうちょ………校長先生から言われたから、俺が保護者代わりとしているわけだ。」
アラナはそのグレムの言葉を聞いて、頭を抱え出す。
「私を……『犠牲』に……?……そんな事、する訳ない!!お父さんがそんな事…!!!」
グレムはアラナが納得していないようなので、言葉を付け足す。
「どうやら君の父親の父親……その人が昔に、自分からサタン復活をさせたらしいな。それも、魔法だけが優遇されるからという理由で。」
そうグレムが言うと、アラナは俯いて悔しそうな顔をした、グレムは続ける。
「だから君の父親も思ったそうだ、自分の娘が同じような仕打ちを受けているのを見て、これは何とかしなければと……それをなぜ自分じゃなく、アラナを犠牲にしようと思ったのかは分からんがな………死にたくなかったのかもな。」
アラナは何も言わなかった、いや、言い返せなかった。全てが事実であり、正に今起こっていたようなものだからである。またグレムは言う。
「あと…君の素性も調べさせてもらった……ちょっと個人情報を調べるのは嫌だったがな…それは申し訳ないと思っている。……調べたところ、君の本名はアナスビア=ストール=アラナ、最初に会った時、『アナスビア』で引っかかっていたが、君の家系は代々魔法が使えないという事で知られていた。……魔法の適性が無かったのではなく、最初から魔法を使えなかったんだな。君は……よく耐えたよ。」
アラナは俯きながら少し悲しそうにしていた、が、ある疑問が湧いたので、グレムに聞く。
「そうだ!それなら、私が犠牲となって復活させられたサタンはどうなったの!?まさか…国は大災害で……。」
アラナは自分が犠牲になったことで、国を滅ぼしてしまったのではないかと罪悪感を覚える。そうしているアラナに、グレムは言った。
「ん?ああ、それなら大丈夫、倒したから。」
アラナは間髪入れず、その言葉に対して思わず疑問を重ねた。
「は?」
グレムは分かっていないようなのでもう一度しっかりと言う。
「だから、サタンは『倒した』んだって。勿論、俺の仲間と一緒にな。だから、全く国に『大災害』なんざ起こっちゃいない。……だから、気にするな。」
グレムは笑顔でそう言った、アラナは驚きながらも目に涙を浮かべる。
「(私は、この人から色んなものをもらっておいて、さらには自分が起こしたようなことの後始末まで……どこまで優しいの?どこまで人思いなの?どうしてそんなに……私に尽くしてくれるの……?)」
アラナが目に涙を浮かべてこちらを見ているのを見て、グレムは心配する。
「ああ!ごめんな!!なにか心にくるようなこと言っちゃったか?嫌な事があったか!?俺がここにいるのが嫌なのか!?」
グレムはあたふたとしながらアラナの涙を止めようと必死になって言葉をかける。その様子を見て、アラナは思わず「ふふっ…」と少し笑ってからグレムに抱きついた、グレムは突然の事で、思わず驚く。
「え?あの〜アラナちゃん…?」
アラナは大きめな声で言った。
「私やっぱり、先生のこと、だ〜い好き!!!ふふふっ…。」
アラナが出したその言葉には、一切の曇りもなく、嘘もなく、尊敬の念もなく、ただ真っ直ぐに、自分の心から湧き出た本心であった。
どうでしたでしょうか?
次回はこの章もこれで終わり………とはいきませんよ!?まだ『残っていること』があると思いませんか!?その話が中心になります!予想して、楽しんで待っていただけたらと思います!
それでは、また次回お会いしましょう!




