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第9話 生まれてきてくれてありがとう

これからは投稿するのが少し遅くなるかと思います…ですが毎日1話は出そうと思っているので応援してくださるとありがたいです!


では、どうぞ。

「いよいよだ…。」


グレムはあるカフェに座ってコーヒーを飲みながら悩んでいた。


「そう、今日はいよいよ、我が愛するエルの誕生日…。」


幸いなことに今日もエルは診療所を開いている。準備するにはぴったりの日だ、運がよかった。


そう思いながらある出来事を思い出すグレム。




『はい?あの奴隷の生年月日が知りたい?』


以前お世話になった奴隷商人のおじさんにグレムは聞く。


『あまり女性の歳を確認するようなことは良くないと思いますが…優しいあなたのことなら多分考えがあるのでしょう?』


『ああ、エルの誕生日、サプライズで祝ってやりたいんだ。まさかエルが自分の誕生日を主人が熟知してるとは思わないだろう。』


『なるほど…そういうことならお手伝いしますよ。』


奴隷商人はそう言って各奴隷の生年月日が書かれた本をグレムに渡した。




「既にケーキの予約はとっている…あとは何をプレゼントするかだ…女の子が何を貰ったら嬉しいのか俺には全く分からん。だからそのために…。」


「ま、待たせたわね!」


そこには私服姿のメアが立っている。何故か知らんがかなり気合が入っているのが分かる服装だ。はっきり言って普通に可愛い。


「随分と可愛い服で来たな、似合ってるぞ。」


とりあえず思ったことをそのまま言って褒めてやるグレム。その言葉に対してメアは、


「あ、ありがとう…でも、勘違いしないでよね!あんたにこの姿を見せるためにかなり可愛い服を選んできた訳じゃないんだから!」


いやちょっと待てその突然のツンデレは可愛すぎる、卑怯だぞ。そう思いグレムは少しメアから目を逸らす。


メアはグレムの向かいの席に座る。


「で?一体私に話があるって、なんのこと?」


顔を少し赤らめながらツンッとした態度で聞いてくる。


「実はな…」




「女の子が喜ぶ贈り物って何か知りたい!?何を言っているのあなたは!?」


「実はうちに奴隷なんだが俺がかなり好いている子がいるんだ…どうせならもらって嬉しいものをあげたいんだが…女の子が喜ぶような物が全くと言っていいほど分からないんだ…。だから聞いてみようと思った。」


「それがなんで私なのか…まぁいいわ、その子の為だもの、少しくらい相談に乗ってあげる。」


「ごめんな。この借りはいつか必ず!!」


なぜメアを選んだのか、彼女であればすぐに口で言ってくれる。だから話が早いと思ったのだ。


そういうとメアは言った。


「バッカじゃないの!?この前私は助けてもらったばっかじゃない!借りがあるのはこっちの方よ。これでそれがちゃらになるならいいくらいだわ。」


「ありがとう、メアは結構優しいんだな。」


グレムは笑顔でメアに言う。その笑顔に少しメアは見とれる。


「どうした?ぼーっとして?」


「な、なんでもないわ!で、喜ぶものなんだけど、簡単よ。その女性に気持ちが伝わるならなんでもいいの。」


「なんでもいい?そんなのでいいのか?」


「確かに女性が使える化粧品とかでもいいけど、それよりもっとあなたの選んだ気持ちのこもったものだったらなんでもいいの。女の子はその贈り物の価値を、値段じゃなくて、相手の気持ちの大きさで量るのよ。分かった?」


「俺の気持ちの大きさ…。」


そう言ってグレムは胸に手を当てる。


「そう。気持ちがこもってるのが伝わればなんでもいいのよ。それが1番嬉しいと思うわ。あなたよっぽど好きなのね…その子のことが。」


少し嫉妬をするようにメアは言う。


「分かった。ありがとうメア俺自分で探してみる。」


「これだけでいいの?てっきりまだなんかよく分からないから一緒に考えながら探して欲しいとか言うのかと思った。」


「それじゃあメアが言ってた完全な"俺の気持ち"じゃ無くなっちゃうからな。自分で探してみるよ。」


「よく分かってるじゃない。」


メアは小声で言う。


「?何か言ったか?」


「なんでもない。じゃ、頑張ってね!」


そういってメアは去っていった。




「俺の気持ちがこもっているもの…か…。」


そう考えながら大通りを歩いていると、急に大きな声が聞こえた。


「大変だ!!!」


グレムは思わずその方向へ行き、何があったのか確認しに行く。


そこにはこのベリル都内では有名なギム商店の店主、ギムが苦しそうに倒れている。そしてその体には異様な黒い斑点ができている。


医者が駆けつけて言う。


「これは…奇病"ミルス"!!!」


周りがざわつく。


聞いたことがある。その奇病、"ミルス"はかかると全身に黒い斑点ができ、体に何かで刺されたような苦しい痛みが常に走り、かかってからたった3日で亡くなってしまうという病気だ。


この"ミルス"によって国が崩壊したことが過去に数回ある。


ちなみに"ミルス"にかかる原因となるのはミルセウスという虫に刺されることである。


昔はかなりの数ミルセウスがいたので国が崩壊するようなことがあったが、今ではそんなに見られないため、重要視されてなかった。また、この病気は人から人に移ることはない。だが…


ある男が言う。


「ミルスって!あの『ルム』っていう花しか治療法がないんだろう!?どうするんだ!」


それなら見つければいいじゃないかと誰もが思うであろう。だが、それが問題である。


ルムは"心が清らかな人"の目にしか映らない。つまり、心が清らかでない人には見えないのである。その条件は思っているよりかなり難しい。だからこそ見つけるのが困難なのだ。


医者がギムに聞く。


「ギムさん!黒い斑点が体にでき始めてからどのくらい時間経ってます!?」


「2日と…1時間くらいじゃろうか…。」


グレムはその言葉を聞いた瞬間ベリル森に向かって走り出した。


「クソッ!大事なエルの誕生日だと言うのに!」


困っている人を見過ごせない、それが人が死んでしまうようなことであれば尚更放ってはおけない。だがグレムはルムが見えたことはない。絶望的であることは分かっている。


ベリル森に着いた時、一体の緑色の妖精がグレムを誘導するかのように森に入っていくのが見えた。


藁にもすがる思いでその妖精の後について行くとかなり汚れた酷い臭いがする湖についた。まわりはゴミだらけである。


その湖の中央だけ綺麗な水になっている。そこに森の大妖精だろう人が苦しそうに倒れている。


まぁだろうなとグレムは思う。そもそもベリル都内にゴミ処理施設があるのを見た事がない。今までずっとゴミはここに放棄されていたのであろう。


「(綺麗にして!!)」


誰の声だ?とグレムは思う。だがその場所にいるのはその大妖精とこの緑色の妖精だけ…ということは…


「(お願い!大妖精様を助けて!)」


その言葉で分かった、話しかけてきているのはこの緑色の妖精なのであろう。


他にもやらなければいけないことがあるのになあ、そう思いながらもグレムはまず周りのゴミを片付けようとする。


グレムの足元に黒い魔法陣が光りながらほとばしる。そしてグレムは詠唱する。


「<暗黒の炎よ!今我が元に力を貸し、対象の全てを焼き尽くせ!>!!」


「<<暗黒の獄炎(ジ・アレムピュトラ)>>」


湖の周りのゴミが一斉に黒炎によって燃やされていく。


「(これじゃあ木に燃え移っちゃうよ!!)」


緑色の妖精が訴えかける。


「お前…知らないのか。なら教えてやる。この黒い炎には2つ特徴がある。まず1つ目、黒炎は()()()()()()()()()を焼き尽くす。当たったら確かに普通の炎と同じように熱い…が、燃え移ることは決してない。」


グレムは汚れた湖に向かって、燃え盛る黒炎の中を進みながら説明を続ける。


「2つ目、黒炎は炎で"燃やす"のと違ってなるべく近い形で表現するとものを"溶かす"ことと同じことをしている。だからこれによって煙が発生することは無い。つまり、森が嫌がるであろう有害物質は出さないんだ。」


この森の環境についても考えながら行動していたことに驚いているのか、緑色の妖精は何も言わない。


そしてグレムはヘドロやゴミが浮かんだ汚い湖の中に右手を突っ込み、


「<<浄化(キールス)>>!!」


と魔術を使った。


その瞬間にグレムが右腕を突っ込んだ水面上に青色の魔法陣ができ、湖の上のヘドロやゴミが集まってくる。


そしてとうとう湖全ての汚れがグレムの右手に集まったときにグレムは湖の中で開いていた右手をぎゅっと握り、汚れを消した。


周りの黒炎で燃えていたゴミもキレイさっぱり全て無くなっている。


グレムは腰を落とし、


「はぁ…終わった…。」


というと、


「ありがとうございました。」


という声が湖から聞こえた。今度は話しかけてきているのはどうやら大妖精様らしい。


「あなたはなんの疑問も抱かず、その妖精に着いてきて、さらにこの辺一帯を綺麗にしました、本当に感謝します。」


グレムは気にするなというように言った。


「いいんだ。俺ができるのは精々人助けだけ、困ってるやつがいたらほっとけないんだ。だからたまたまさ。」


「それでもあなたは助けてくれました、ですがこのままではあなたが割に合いません。何か欲しいものを言ってください、できるだけ答えます。」


グレムは「(別にいいのに…)」と思いながらも少し考えて言った。


「大妖精の杖と大妖精のローブとルムの花をくれ。」


「それだけでいいのですか?もっと多くて大きなものでも…」


「それ以上のものはいらない、俺にとってはかなり重要な品なんだ。それだけでいい。」


「では…。」


大妖精が木の棒を近くの木からとり、杖の形になるように変形させていく…その間木の棒は光っていた。そして1つの杖となった。


大妖精は自分の着ている白い布を少し千切ると、また手の中でそれを光らせ、変形させていき、白いローブを作った。


そして宙に浮かせてグレムに渡した。


「ではこれで…」


帰ろうとした大妖精に咄嗟にグレムは言う。


「待ってくれ、まだルムの花をもらってないぞ。」


「ルム?ならそこに生えているではないですか。」


大妖精が指さす方を見ると確かに花がある。だがそれが見えた瞬間グレムは膝を落とした。


「どうして…俺に…。」


花が見つかったのはいい、だがそれは自分に見えていいはずがないなのだ。心が清らかなはずがないのだ。そう思いながら言った。


「俺は…仲間に本当のことを話せていない…都市のみんなにもだ…話すのが怖くて辛くて、長い間隠し続けている…なのに…なのになんで!!俺にこの花が見えるんだ!!!決して清らかなはずがない!こんな秘密だらけの存在の俺に見えていいはずがないんだ!!」


グレムは泣き、怒りながら地面を拳で叩く。その言葉を聞いた大妖精が近づいてきてグレムに言った。


「でもそれは、あなたが『仲間を失いたくないから』でしょう?」


その言葉を聞いて、グレムは反論する。


「だけどそれは…ただの自分勝手じゃないか!」


それに対して大妖精は言った。


「ただの自分勝手でも、あなたはその仲間を見つけ、信じ、そして優しくしてきたでしょう?秘密なんて誰にでもあります。あなたは、あなたの『仲間を失いたくない』という純粋な願いの元に行動してきたんです。その願いは、何よりも純粋で、清らかなはずです。だから、その花が見えるのは当たり前のことなんですよ。」


グレムはその言葉に元気をもらったのか、立ち上がって大妖精に背中を向けたままこう言った。


「その…ありがとうな…色々と…。」


「お礼を言うのはこちらの方です。あなたの想いの元に助けられたのは私たちなのですから。」


その言葉を聞いた後、グレムはそこにあったルムの花を引っこ抜いて持ち、走っていった。


その遠ざかっていく背中を見て大妖精は言った。


「あなたの心は…誰よりも清らかですよ…グレム…。」




「ギムさん!!」


グレムはまだ人混みができている中その間を通り抜けギムを診ている医者にその花を渡す。


「ほら!ルムだ!これで助かるんだろう!?」


周りの人達は泣いて喜んだ。互いに抱き合う人もいた。


ギムは泣きながら言った。


「ありがとう…ありがとう…本当に英雄様じゃ…。」


「そんな大層なものじゃないって!ただ花を見つけてきただけだ、気にするな。」


「あなたは本当に…」


ギムが言葉を言いかけるとグレムは、


「ごめん!ギムさんこれから俺大事な用があるから!またな!」


そう言ってグレムは走り去っていく。その様子を笑顔でギムは見つめていた。




午後6時頃…


「そろそろ今日の診療所を終わりにしますね!」


エルが言うと客は「えぇ〜」という声を出す。


「ま、またいつかやりますから!」


そう言って片付け、鼻歌を歌いながら宿に帰っていく。


男の客が言う。


「今日、エルちゃん機嫌よかったよな。」


それに対して女の人の客が言う。


「なんか、『ご主人様に特別なものをもらったんです♪』とか言ってたわよ。」


また男の客が言う。


「幸せそうだな…もしご主人様がエルちゃんを泣かせるようなことをしたら殴ってやる!」


女の人の客が言う。


「あんたじゃ敵わないよ!避けられて殴り返されて終わりね!」


そういうと診療所に集まっていた人達は笑いながら帰って行った。




「ご主人様〜!ただ今帰りました!」


部屋は暗い、まだ帰ってないのだろうか…そう思いしょんぼりしながら部屋に入ると…


ぱっと急に明かりがつき、グレムが出てきて言った。


「ハッピーバースデートゥーエル!!」


パンっと言うクラッカーの音とともに席にエルは誘導される。


「今日のために用意したケーキと料理だ!好きなだけ食べろ!」


グレムがそう言うとエルが言う。


「どうして私の誕生日を…?」


「奴隷商人のおじさんから聞いたんだ!せっかくだから祝ってやろうと思ってね。」


「そうじゃなくて!どうして私の誕生日を祝うんですか!?」


グレムはエルの思わぬ言葉に黙ってしまう。


「奴隷である私が誕生した日なんて、祝っても悲しいだけです!!私なんて別に生まれなかったって悲しむ人なんて」


そこで口を塞ぐようにグレムはエルにハグをしてキスをした。驚いてエルは少し顔を赤らめ黙る。グレムが言う。


「エルがいてくれなかったら、俺の人生は悲しいものだったろう。周りの奴らからは恐れられ、ずっと独りで生きてきた。そんな俺の悲しい人生を変えてくれたのは他でもない。エルなんだよ。」


エルはその言葉に反応する。グレムは続ける。


「俺だって最初は感情なんていらないと思ってた。エルと出会う前の俺は怒りと悲しみしかなかった。そんな嫌な感情しかないなら無い方がマシだと思ってた。」


「けど、エルと出会ってからは違った。笑うのも、怒るのも、楽しむのも、悲しむのも、落ち込むのも、全部全部あってよかったって思うことができたんだ。エルのおかげで考えが変わって、人生まで変わったんだ、だからエル。生まれない方が良かったなんて言わないでくれ。悲しむ人がいないなんていわないでくれ。俺は君に助けられたんだ、だから…」


グレムは大きく息を吸い込み、言った。


「エルーーー生まれてきてくれて、ありがとう。」


エルは涙を流した、今まで見てきたものより大粒の涙を。


「そしてこれだ!!!」


グレムはプレゼントBOXをエルに渡す。


「開けていいぞ!」


エルがそれを開けると、大妖精の杖と大妖精のローブが入っていた。それをエルが見たのを確認したあと、グレムは言った。


「エル、俺と一緒に冒険をしよう!嫌な過去を全部忘れて、そして忘れられない最高の思い出を作る、そんな素晴らしい冒険を!」


エルは涙を流しながら笑顔で頷いた。

今回もよくまとまっていたかな…?少し不安ですが楽しんでいただけたなら嬉しいです。


また次回もよろしくお願いします!

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