14.面倒くさがり、友人の為・・・。
お待たせしました
では
14.
秋と言葉をかわしているうちに目的地につく。そこには既に3人の女子が・・・え?3人?
「おい、なんで3人もいるんだよ」
「いえ、俺にもわかりませんね・・・」
二人とも困惑しながら、3人の女子に近づく。
「あっ!宗谷くん!きてくれたんだ・・・」
おおよそ呼び出した張本人だろう、秋の姿を見ると頬を赤らめて嬉しそうにしている。残りの二人は、がんばれ!大丈夫だよ!などと小さく声をかけている。はたして本当にそうかな?
「はい、お呼びとのことでしたので・・・。それで、仲村さん。お話というのは?」
「えと、その・・・」
仲村さんと呼ばれた女の子がもじもじしている。言いたくても恥ずかしさが前に出てきている感じだろうか。まぁこれからの事を考えると仕方のないことではあるのかもしれないが。
ふと、仲村さんではない少しつり目の女の子がずいっと前に出てきて僕を睨む。あ、やっと認識されたみたい。良かった、僕今まで空気に溶け込んでいるのかと思ったよ。
「ねぇ、その前に宗谷くん。その後ろの、ソレ誰?」
それ・・・。人扱いですらないのは流石に悲しいなぁ。どうでもいいけど。
「ん?あぁ。彼は、橘花縁くんだよ。俺の、大切な人だ」
キャーーーっ!!ねぇ聞きました奥様。今、僕のこと大切な人だって!僕が照れちゃうよ!!宗谷様!
「はぁ・・・わけわかんないけど。
ねぇ、そこの。今から百合子が大切な話を宗谷くんにするから、黙っててね?(威圧)」
そこのって・・・。やっぱり僕はあなたの目には人に映っていないんですかね・・・
まぁ、いいけど?
「あ、はい」
僕は素直に返事する。素直が取り柄だからね。
少し間があき、
「えっと、その・・・ッ。そ、宗谷くんっ!」
仲村百合子さんが意を決して、声を発する。
心の準備が出来たみたいだ。であれば、僕もそろそろ心の準備をしておくか。
「なんでしょう?」
秋が薄く微笑んでいる?ような顔で問い返す。僕にはそう見えたが、秋の心情はわからない。
「っ・・・。あのっ!えっと・・・、
入学式の時に一目惚れして・・・えっと、ずっと、すっ、好きでした!
それで、その・・・っ。」
顔は真っ赤に、それでいて勇気を振り絞って声を出している。正直凄いと思う。自分の気持ちを相手に伝えること自体難しい事のはずなのに、ましてや好きだという想いを口に出して相手に伝える。並大抵の覚悟ではできないはずだ。仲村さんは震えている。僕から見てもハッキリとわかるくらいに。
僕には真似できない。
そして、できればその恋を応援してあげたい。あげたかった。でもごめん、僕はその恋の結末を知っている。
その先を言うのをやめさせてあげたい。
でも、彼女も折角勇気を振り絞って一歩踏み出したのだ。であれば、僕にできることはなんだろうか。
答えは1つ、諦めさせること。
「・・・ッ。わ、私と付き合ってください!」
最後の一言を言い切った仲村さんは目をつぶり、秋の返事を待っている。今にも泣き出しそうな彼女の姿は見ていて痛々しい。
仲村さんの告白を受け、秋は重々しく口を開く。
「仲村さん、ありがとうございます。こんな俺を好きになってくれて。」
秋は一言、一言ゆっくりと発音する。
「ッ!!・・・じゃあ!?」
仲村さんはパッと顔を上げ、言葉を発する。
だが、
仲村さんは勘違いをしている。
その言葉には続きがあるのだ。
はっきりと、相手に聞こえるようにゆっくりと秋は返事をする。
「でも、すみません。俺は仲村さんのお気持ちにはお応えできません。」
と。
少しの沈黙の後、ぐすっと鼻を啜るような音が聞こえる。仲村さんだろう。
「・・・っあの、なん・・・で?」
涙を零しながら、仲村さんは秋に問う。
そこで限界を迎えたのか、仲村さんが膝から崩れ落ちる。それを慌てて、付き添いの女子二人が支えた。
つり目の女子が代わりに問う。
「宗谷くん、どうしてか聞いてもいい?」
仲村さんの背中をさすり、大丈夫だから。と言いながら、つり目の女子は秋を見る。その瞳は、なんでこの子を悲しませるのだ、と秋に訴えかけているかのようだった。
「俺には、好きな人がいます」
秋はゆっくりと言う。
「あまり人に言えるような事ではないのだけれど、仲村さんはその、俺に本気でぶつかってきてくれたので俺もちゃんとした理由でお答えします。・・・ゆかり」
そこで、僕が呼ばれた。
僕は少しだけ胸が痛む。ズキズキと。
僕は無言で秋の隣に立つ。
つり目の女子と仲村さんを支えるもう一人は少し困惑気味。そして、つり目の女子が言う。
「そいつが、なに?」
そこで、秋は僕の手を握る。
恋人つなぎで。
「俺の、大切な人です。」
「「「・・・は?」」」
うん、そうなるよね。
つり目の女子、もう一人の女子、そして仲村さんまでもが声を揃えて言った。は?
「ッ!!・・・ふざけないで!」
少し間があいた後、つり目の女子が言う。
いや、怒鳴った。まぁ気持ちはわかるよ。
「吉田さん、何を根拠に俺が巫山戯ていると?」
秋は真剣な眼差しだ。
「いや、おかしいでしょ!!
どう見ても、男でしょ!!!!」
あ、僕のことをほ乳類のヒト属としてみてくれたのね。ありがとう。嬉しいよ。
「・・・吉田さんは、男が男を好きになるわけがないと言いたいんですか?」
「ッ。そ、そうよ!おかしいわよ!そんなの、あり得ないわ!」
「何がおかしいのでしょうか、外国では同性婚というのも、ありますよ?
外国に限らず、普通に存在しますよ?
今、目の前にいるではないですか。」
秋は早口で捲し立てる。
吉田さんと呼ばれた女子は今、自分の価値観では計り知れない事を受け付けることができていないのだ。
そう、同性を好きになるなんてことは普通はない。
なんてのは個人の価値観でしかない。
普通に、存在するし、否定的な人がいてそれを受け入れてくれない事に苦しんでいる人だっている。周囲からの奇異な目を耐え凌いでいる人だって普通にいるのだ。
「ッ、でもっ!」
「なんでしょうか」
「さやかちゃん、もういいよ。・・・ありがとう。」
少しの沈黙の後、
仲村さんが、吉田さんを止める。
「百合子・・・」
「宗谷くん、お返事ありがとう。そして、さやかちゃんが、ごめんなさい。」
「いえ、あまり受け入れられないというのははなから承知の上ですので。構いません」
秋は薄く微笑み、返す。
この微笑みははっきりとわかる。
「ううん、えっとその。言いづらいことを教えてくれてありがとう。私、正直ね・・・
全然ありだと思うの。うん。
橘花くん、だっけ?
ふふっ、ねぇどっちが受け?もしかして宗谷くんが総受け?それだけ知りたいなぁーなんて。
・・・はぁぁあーーー。振られちゃったなぁ。でもなんだか、スッキリしちゃった。あとご馳走様。」
唐突に仲村さんが早口になり、よくわからないことを口走った。この子アレだ。
「さっ、帰ろ。さやかちゃん、ゆきちゃん。」
晴々とした顔で仲村さんは女子二人に促す。
その当の本人たちは、
え?
え?
と困惑した表情を浮かべている。
わかるよその気持ち。僕も今、え?ってなってるから。
仲村さんはルンルンとした足取りで帰っていく。え?なんでそんな嬉しそうなの?
バタバタと、吉田さんと、ゆきちゃんと呼ばれた女の子も仲村さんの後を追う。
「まさかの結末で僕は困惑している」
「俺もですよ」
二人して、困惑。
のちに、苦笑い。
「さ、生徒会室いきましょうか。」
「そうだな・・・」
そう言い残して、僕らはその場を後にした。
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